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アンさん

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人間×人間 将軍×元敵軍人 ⑥

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「いいですか、ソラウィス殿」


「うん?」


酒の効果でポカポカと温かい体を冷ますため水を飲みながら、目の前で何故か困った様に笑うアレオンを見やる。


「お酒というのは、飲んでもいい年齢が決まっているのです」


「ふーん?」


基本的に成人年齢で飲める様になるんだろ?


確かこの国は二十歳で成人のはずだし、問題なくね?


「分かりますか?」


「知ってるよー。お酒は成人してからでしょー?」


まだ半分思考力があるから、酔っぱらいだけど酔ってないぞ、半分だけなら酔ってるけどな。


「では何故お酒を飲んだのですか?」


飲みたい理由なんて、決まってるじゃねぇか。


「えー、パーッてやりたかったから?」


「パーッてなんですか?」


「仕事終わったら、皆パーッてしたいでしょ?俺もパーッてしただけー」


「酔ってますね…ああ、もう……」


「大丈夫、大丈夫。俺ちゃーんと理解してるぞ。酒は飲んでも呑まれるなーって」


「……はぁ…」


「なーんだよ、もー。いいじゃねぇか、酔ってもさー」


まだ呑まれてないから大丈夫だって。


「お酒は!成人してから!だと!言ってるのです!」


「んー?じゃー、大丈夫ー」


「どこがですか!」


「俺、二十超えてるしー。ちゃーんと飲める量は分かってるってー」


吐いちまったらもったいねぇもんなぁ。


「「「え゙?!」」」


「待て。ソラ、お前今幾つだ」


ガーディが真面目な顔で聞いてくるから、少し笑える。


年齢なんて知らなくったってなんも困んねぇのに、なんでそんな硬い顔してるんだよ?


「今?二十二だなー。あっはは、変な顔ー」


「「「二十二?!」」」


「本当か?」


「え、何だよ?当たり前だろ?態々年齢詐欺んねぇよ?女じゃあるまい」


なーに言ってんだかー、と呟きながら水を飲み干し立ち上がる。


「よーし、ちょっと冷めたしもう一件巡るぞー」


伸びをしてから、じゃ、と皆に挨拶して部屋を出ようとしたらすかさずアレオンに止められた。


「だめ、だめですよ。そんな酔っていてもう一件だなんて…!」


「えー、これぐらい普通だろ?前なんて気付いたら知らねぇ部屋で寝てたし、そんな【ミス】もうしねぇってー」


「え、何…ダメダメ!ぜーったいダメです!ほ、ほら、ここに持ってきますから!お酒!」


「えー、軍の酒高そうだしー。俺今やっすい酒でパーッてしたいんだけどー」


「俺達が買ってくるから!ここにいろ!な?」


「えー?店に行くんなら俺も行くってー」


「ソラウィス殿、頼みますから!ここに!居てください!」


「そんな声出さなくてもー…分かったよ…ハニーディールとぺーランなー。肴はなんでもいいー」


ハニーディールは甘い酒で、ぺーランは少し苦い酒。


これが交互に飲むと止まんないんだよなぁ。


ラニービーっていう辛い酒と、テーゼンっていう滅茶苦茶酸っぱい酒も有名だなぁ…この二つは度数も高いし、あんま飲まねぇけど。


椅子に座り直し、髪飾りを解いて髪を一纏めに縛る。


「何の肴かなぁ…ナッツ系とか?豆もいいけど、肉もいいなぁ。なぁ、ガーディ、何が来ると思う?……何?そんな真顔で」


「ソラ。成人していたのか」


「はぁん?何?喧嘩?喧嘩売ってる?酒の席では無礼講だぞ?分かってんのか?」


「いや、確認しただけだ」


「何?さっきからお前らも黙ってるしー。好き好んで犯罪犯さねぇって。楽しかったら参加するかもだけどー。あっははは」


「ソラ、ウィス……ちょ、ちょっと……」


「んえ?なーんだよ?」


「ここ軍基地だから!」


「知ってるよー。だぁから店行くって言ったのに、誰かさん達が買ってくるーって、ここにいろーって言うからいるんじゃねぇか。もー、忘れたのか?歳?歳とったのか?んー?」


「ぐっ、煽りが……!」


「耐えろ!耐えるしかない!酔っぱらい相手だぞ!」


「酔ってても俺つえーから、だーいじょうぶー」


「ぐぅっ」「うぐぐぐ」


「あっははは、はははは!なーに転んでんだ?何かの遊びか?俺も参加するぞ?」


「だ、ダメだ!いいか?!酔っぱらいは椅子に座っているべきだ!」


「あーはー、大丈夫!スキル使ったらすぐ覚めるから!」


「使うな?!こんな事で無駄な能力を使用するな!」


「あっははははは、スキルは使うもんだろ?使ってレベルあげるもんだろ?なーんだよ、お前も酔ってんのかー?お揃いだなー、あはは「ガァンッ」ふあっ」


少し飛び跳ね音のした方に顔を向ける。


「どーしたー?ガーディ?んんー?」


机の上にコップを力いっぱい置いたらしく、コップにヒビが入っている。


「あははは、コップ割れてるー。どーしたー?んん?新しいコップ買ってやろうか?あはは」


「は?」


「あっはははは、はー、最っ高。まーた暑くなってきた。酒は?肴は?まだ?」


「いや、おま……」


「よーし、食堂へ行こう!肴といえば飯!飯といえば食堂!よし、腹減った。ガーディ行くぞ!飯!」


「いや、おい……」


「あは、お酒は楽しいな。色んなやつの色んな事が知れるからな!俺は今最高に楽しいぞ。お前らは顔死んでるけどな!あっはははは!」


「ソラウィス……お前…飲み過ぎじゃ……」


「なーに言ってんだ?酒は百薬の長だぞ。寝落ちるまで飲んだら後は起きるのを待つだけだ!明日は明日の風が吹く!」


「もう支離滅裂だぞ」


「あっは、もしかしたら明日、むしろ今!死んでも後悔と未練は残さねぇタチだからな!楽しまねぇと損だぞ!」


「…酔っぱらいー…勘弁してくれ……」


「あははは、安全な街でしこたま酒をたらふく飲んで、明日も生きてりゃ幸福以外の何物でもないだろ?戦争なんて、一瞬で死んじまう死地だぜ?酒なんて飲んでられなかったんだから、今飲まねぇとなー…あっははは、お前らなーんでこっち見てんだ?足元気をつけろー、あっははは」


「……とめ、ますか…将軍……」


「いや、最後まで付き合おう。知らぬ部屋で寝起きなどさせるつもりは無い」


「でしょうね」


「おいー、行くぞー?なーに話してんだ?仕事か?仕事なのか?だったら俺一人で行くから、お前ら仕事頑張れよー。あっははは、大丈夫、道は覚えてるぞー」






「あっははは、ははははは!お前らよえーなー?ちょこーっとしか飲んでねぇのにもう終わりかー?んんー?」


「ソラウィス……お前…やば……」


「あっははは、落ちたー。次はー?誰だー?俺に勝ってみろー?あはは!あははは!」


「これだけ飲んで、まだ潰れないんですね」


「んえ?まだ飲めるぞー?呂律が回ってるし視界も良好。歩いてもフラつかねぇし、吐き気も無し!あっははは、酔ってからが本番ってねぇー?あははは!」


「酔っていると理解している方が難解とは……初めて知りました」


「初めて!あは、俺も初めて飲んだ時はしこたま飲んで吐いて倒れて起きたら朝で持ってた金全部無くしたぞ?回収したけどな!あっははは、やられたらやり返す、これぞ冒険者の在り方だー、あははは!」


「聞きたくない言葉が聞こえた」


「ソラ、一体誰に取られた?」


「えー?覚えてねー。きょーみねぇーしー。なー、これ美味いのか?変な色ー」


「ソラ、思い出せ」


「あははは!【マジで覚えてない!アレ誰だったけなー?見た時何回か…】あっは、やっぱ思い出せないー!だって好みじゃないからー!あははは、これ美味しー!大将オカワリー」


「大将いねぇから!店じゃねぇの!酔っぱらい、よそってやるから皿よこせ」


「あははは、カミさん?お前俺のカミさんなの?あははは!オーカーワーリー」


「やめろ!冗談でもそんな事言うなよ!」


「あははは、真面目ー。ちょーまじめー。何?それ何?俺も食いたい」


「おい!人の皿から奪うな!ちゃんと盛ってやるから!」


「やだ、美味しくなかったらいらないー!ああ゙ー、どこ行くの俺の飯!」


「俺のだ!お前のはあっち!」


「ちょっとぐらいいいだろー。なーんだよー…ガーディ、それ美味い?」


「食ってみるか?」


「あー…んっは、うまー。これも盛ってー!酒!ハニーディール!あははは!うまーい」


「酔っぱらい…いいかもしれない」


「良くないです。全く。二人きりの時にお願いします」


「あっは、そりゃ無理だー」


「……っ…!」


「何故ですか?」


「えー?ガーディと二人きりとかー…あっは、将軍と?お前ら俺の事信用しすぎー!殺しちゃうよ?」


「おい酔っ払い、いいか?軍基地の酒の場で、殺人を仄めかす言葉は避けろ」


「あははは、お酒で潰してミンチにしちゃうぞー?……ミンチ?ハンバーグ!ハンバーグ食べたい!」


「怖いわ!!!」


「あははは!監視の目がねぇと、重要人物はすぐ消されちゃうからなー?俺も仕事なら頑張るよー?あははは!」


「「「ソラウィス殿!」」」


「あははは!あっははは!うーそー。俺、この街好きだしー?この街守ってる奴に手は出さねぇよー?まー、逆なら?……消す。すぐ。一瞬で。邪魔者はいらない…みたいな?あははは!」


カラリカラリと仮面が揺れおっと、と仮面を押さえる。


「あっは、あぶねー。酒の席で仮面外すとか、まじ無いー。あははは!ハンバーグまだ?」


「おま、笑い事じゃねぇ!いつもの強力な接着はどうした?!」


「えー?あははは、寝る間は外すだろ?いつ寝落ちても良いように、してるだけー。あははは、よーし、もういっぱーい」


「ああ、ああ……冗談でしょう?全員!分かってるな?」


「「「はい!」」」


「うおっ、何?何?俺もそこ並ぶ」


「いいから、座れ!転けて仮面が取れたらどうするつもりだ?!」


「えー?お前ら仮面付けてねぇじゃん。俺の顔にきょーみあんの?あっは、取れたら恥ずいの俺だけじゃーん?あははは!」


「ああ、もう……酔っぱらい……」


「それにしても、ソラはよく飲むな」


「安い酒は飲んでなんぼ!高い酒は注がれてなんぼってね!いつもはシーヴィと度数の高い酒飲み比べては潰れるまで飲み明かしてたんだけどなー…シーヴィ恋人出来ちまったし、はぁー、結婚すんのかねぇ」


「おや、おめでたいではないですか」


「相手【魔王】だけどなー。あははは、あいつまじ強運!俺にも半分分けて欲しいぐらいだ!あははは!でも俺初恋拗らせてるから、運は酒運がいいなー!あははは!あはははははは」


「あ?」


「っ、初恋、ですか?」


「そー!そーなんだよ!あははは!俺ちょー一途!あははは!」


「相手は誰だ?」


「えー?そりゃー……あははは!だーれだー?」


「ソラ。俺は本気で聞いている」


「ええー?あっは、案外近くにいるかもなー?あははは、俺口硬いから、いーわーなーいー!あははは!」


「ソラ」


「あははは!なーに怒ってんだ?あー、あれか!恋路の応援か?あははは!初恋は実らねーもんだぞー?あははは!」


「付き合うつもりは、ないのか?」


「ねぇーなぁー。だぁーって」


あの時、体に走った衝撃を俺は最近・・また感じたんだ。


「俺に恋愛は無理。生まれてこの方、愛された時のねぇ俺が、誰かを愛すなんて、絶対無理。想いこそすれ、繋がりが欲しいとは思わねぇよ。それに、俺冒険者だからな。そいつより先に死ぬよ」


「っ」


「なーんて、真面目な話しちゃったりー?あははは!まぁ!夢は見るもんだろ?俺、そいつが誰かと幸せになれるんなら、なーんも思わねぇよ?未来が見えるって、すげぇだろ?」


「そういえば…未来視持ちでしたね…。相手は、ご結婚されているので?」


「え、してない。でも、無理だな。だってそいつの未来…誰かが傍にいるし」


「諦めるのですか?」


「んー?んー…正直、よく分かんねぇ……シーヴィにも言われるんだ。遅くなる前に、何とかしろよって。あいつの勘、当たるんだよなぁ…あーあ、【俺もあいつ位強かったらなぁ】…あー、やだやだ」


最後の一口を飲みきり、ぷはっと息を吐く。


「さっさと宿とってねーよお。じゃーな!ごちそーさん!」


「ああ…帰らせるとでも?」


「え、何?何何?え、こっわ」


伸びてきた手をよけ、後ろに下がると後ろから脇を固められた。


「ソラウィス殿、申し訳ありませんが…今はゆっくりとお休み下さい」


ニコリと笑ったアレオンの手から魔術が発動され眠気に襲われる。


「え、今?あれ?俺今日で死んじゃう?やだー、こーわーいー」


影移動で食堂の出入口へ移動し、扉を開けようとすると、バチリと小さく静電気が走った。


「あっれー?魔力霧散したんだけど…軍基地こっわ!ちょ、まじか!じゃー!また!」


酔った頭じゃ思考力は低い。


前々から作っておいた魔術での外へ飛び、そのまま川へ飛び込む。


「やっば、さっむ」


水底で結界を張り、俺は少し寒いここで一泊しよう。


うう、こんな事なら、もっと飲んでおけば…明日飲み直そう。


そう決意し、俺はそのまま眠りについた。



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