if物語

アンさん

文字の大きさ
上 下
16 / 74

獣人×獣人 狼×豹 ⑤

しおりを挟む


「むぅ。俺と、その…番になっただろう?」


「なったね」


ニコニコと笑うむぅの手を両手で包み込む。


尻尾が自分の右足に巻き付き少し逆立っている。


「ヒート期間中の仕事も今一段落して、俺は1ヶ月休暇を貰ったんだ」


「1ヶ月も?珍しいね」


緊張で心臓が五月蝿いし、断られたら…と考えたらやっぱり少し視界が滲む。


「だ、だから、その…むぅが学校お休みの時に…その…で、でーと、って奴を一緒にしない?」


足元に転がっている雑誌に書いてあるのは「番と一緒にお出掛けデート特集」。


2人で街を歩くと普段は見えなかった新しい発見や、仲が更に良くなるという言葉達が並んでいて…これだ、と思った。


今まで一緒に出掛けてはいたけれど、それは仕事関係ばかりでアテの無いお出掛けは無かった。


「でーと?…ああ、デートね。良いよ、どこか行きたい所はある?」


「…行きたいとこ…」


無い。


だって、用事がない限りさっさと家に引っ込むヒキコモリの俺が、行きたいとこなんて…。


「街を散策する?すぅはいつも仕事ばっかりで普通に歩くだけ、なんて経験はないでしょ?」


「う…ない…」


ユルリと揺れていた自慢の長い尻尾が一瞬でベッドに落ちた。


「じゃぁ、オススメのカフェに行こう。すぅの好きな紅茶とケーキがあるお店だよ」


「けーき…」


ケーキ屋以外でケーキを食べるなんて…いや、あるにはあるけど…でも…。


「それ、大きい?」


甘いものはおなかいっぱい食べたいから、いつも大きいの選んでたけど…小さいのだったらどれにしようか悩む時間が要る。


「ううん、小さいよ。だから色んな種類食べてみようね」


「色んな、種類」


1個じゃないんだ。


ああ、そんな事より、むぅと一緒に、お出掛け…て、手を繋いだり出来る?


もしかしたら、あの恋人繋ぎってやつが…できたり…いや、ダメだそんな、ハードルが高すぎる。


やっぱり隣を歩くぐらいが丁度いいよね。


出来れば、いつもより近く…いや、いつも近いな。


じゃぁ、えっと…えっと…どうすれば…。


お出掛けといったらお洒落しないと。


むぅが好きそうな格好はどんなだっけ…。


うう、先が思いやられるよ…。


「楽しみだね、すぅ」


「うん」


現金な身体は素直に、尻尾をピンとたてていた。






「で、でーと、って奴を一緒にしない?」


そんなお誘いを貰ってしまったら、断る理由なんて何処にもない。


でも、すぅは元々ヒキコモリ気味で仕事以外では外に出たがらなかったのに…。


チラリとすぅがさっきまで食い入るように見ていた雑誌を見て、成程と思った。


これ以上仲を深めようとするなんて…なんて健気なんだろう。


行きたい場所も無く誘うだなんて、気が早ったのかな?


ああ、1ヶ月も休みだなんて…毎日会えるって事だよね?


学校も夏休みに入るし…お義父さん、すぅの事溺愛してるから察したんだろうな。


デート、デートねぇ。


すぅの口から聞けるとは思わなかったなぁ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

孤独な戦い(1)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

男色官能小説短編集

明治通りの民
BL
男色官能小説の短編集です。

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

身体検査が恥ずかしすぎる

Sion ショタもの書きさん
BL
桜の咲く季節。4月となり、陽物男子中学校は盛大な入学式を行った。俺はクラスの振り分けも終わり、このまま何事もなく学校生活が始まるのだと思っていた。 しかし入学式の一週間後、この学校では新入生の身体検査を行う。内容はとてもじゃないけど言うことはできない。俺はその検査で、とんでもない目にあった。 ※注意:エロです

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...