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獣人×獣人 狼×豹 ⑤
しおりを挟む「むぅ。俺と、その…番になっただろう?」
「なったね」
ニコニコと笑うむぅの手を両手で包み込む。
尻尾が自分の右足に巻き付き少し逆立っている。
「ヒート期間中の仕事も今一段落して、俺は1ヶ月休暇を貰ったんだ」
「1ヶ月も?珍しいね」
緊張で心臓が五月蝿いし、断られたら…と考えたらやっぱり少し視界が滲む。
「だ、だから、その…むぅが学校お休みの時に…その…で、でーと、って奴を一緒にしない?」
足元に転がっている雑誌に書いてあるのは「番と一緒にお出掛け特集」。
2人で街を歩くと普段は見えなかった新しい発見や、仲が更に良くなるという言葉達が並んでいて…これだ、と思った。
今まで一緒に出掛けてはいたけれど、それは仕事関係ばかりでアテの無いお出掛けは無かった。
「でーと?…ああ、デートね。良いよ、どこか行きたい所はある?」
「…行きたいとこ…」
無い。
だって、用事がない限りさっさと家に引っ込むヒキコモリの俺が、行きたいとこなんて…。
「街を散策する?すぅはいつも仕事ばっかりで普通に歩くだけ、なんて経験はないでしょ?」
「う…ない…」
ユルリと揺れていた自慢の長い尻尾が一瞬でベッドに落ちた。
「じゃぁ、オススメのカフェに行こう。すぅの好きな紅茶とケーキがあるお店だよ」
「けーき…」
ケーキ屋以外でケーキを食べるなんて…いや、あるにはあるけど…でも…。
「それ、大きい?」
甘いものはおなかいっぱい食べたいから、いつも大きいの選んでたけど…小さいのだったらどれにしようか悩む時間が要る。
「ううん、小さいよ。だから色んな種類食べてみようね」
「色んな、種類」
1個じゃないんだ。
ああ、そんな事より、むぅと一緒に、お出掛け…て、手を繋いだり出来る?
もしかしたら、あの恋人繋ぎってやつが…できたり…いや、ダメだそんな、ハードルが高すぎる。
やっぱり隣を歩くぐらいが丁度いいよね。
出来れば、いつもより近く…いや、いつも近いな。
じゃぁ、えっと…えっと…どうすれば…。
お出掛けといったらお洒落しないと。
むぅが好きそうな格好はどんなだっけ…。
うう、先が思いやられるよ…。
「楽しみだね、すぅ」
「うん」
現金な身体は素直に、尻尾をピンとたてていた。
「で、でーと、って奴を一緒にしない?」
そんなお誘いを貰ってしまったら、断る理由なんて何処にもない。
でも、すぅは元々ヒキコモリ気味で仕事以外では外に出たがらなかったのに…。
チラリとすぅがさっきまで食い入るように見ていた雑誌を見て、成程と思った。
これ以上仲を深めようとするなんて…なんて健気なんだろう。
行きたい場所も無く誘うだなんて、気が早ったのかな?
ああ、1ヶ月も休みだなんて…毎日会えるって事だよね?
学校も夏休みに入るし…お義父さん、すぅの事溺愛してるから察したんだろうな。
デート、デートねぇ。
すぅの口から聞けるとは思わなかったなぁ。
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