ペットになった

アンさん

文字の大きさ
上 下
53 / 75

ぷいん・・・?

しおりを挟む



お昼寝から起きると、今度は食べ物がいっぱい並んでいるお店に入った。


何だか色んな臭いが混ざってて、眉間に皺が寄った。


あの場所よりマシだけど、臭うものは臭う。


硬い肉や臭い魚を鼻を摘みながら飲み込む。


りゅるのご飯の方が美味しい。


臭いしココから早く出ようとりゅるを説得し、頷いたりゅると一緒に部屋を出て深く呼吸を繰り返す。


煙い様な独特な臭いと珍妙な味にお昼に食べた卵たちが口から出てくるかと思った。


次に入った部屋は甘い匂いが漂っていた。


甘い物大好き。


1番はぷいん・・・っていう黄色くて甘いヤツ。


茶色い所が少し苦くて…でもそれが合うとっても美味しいもの。


あめも好き。


白くて甘いあの液体と同じ味の、しかも長い間楽しめる素晴らしい物、それがあめ。






うええええ。


何これ?何これ?!


甘いのに、なんか臭い!


りゅるに貰った紙にグニグニした臭い物を吐き出す。


無理、飲み込めないよ、こんなの。


口直しに隣の物を口に入れて後悔した。


美味しくない!


オレの口には合わない。


水筒を受け取り中身を飲み干す。


甘い物は何でも美味しいと思ってたけど、認識を改めるよ。


りゅるがくれるモノが美味しいんだね。


りゅるが口に入れてくれたあめは、いつもより美味しく感じた。






ああ!


これ、これ、ぷいん、だ。


違う匂いがするけど、味もちょっと違うけど、絶対ぷいんだ。


店の人の裾を引っ張りオカワリを貰う。


美味しい。


これずっと食べていられる。


手の届かない所に置いてあるぷいんをずっと見ていたらりゅるに抱き上げられた。


ああ、ぷいんが遠くに……。


店を出て直ぐに、小さなぷいんを貰った。


え、開いてないよコレ。


どうやって開けるの?


少しの間悩んだけど、全く分からなくてりゅるに開けてもらった。


なるほど、そこ引っ張れば開いたんだ。


すぐに無くなってしまいそうな小さなぷいんを少しずつ舌で舐めとる。


ああ、これもあめみたいにずっと口の中に残ってくれたら良いのに。






「ギュア、ギャァァルルァァ!!」


唾を飛ばしながらこちらに向かって叫ぶ人間に、オレは目を見開いた。


何となく、何となくだけど、ぷいんを欲しがっているのが分かった。


美味しいもんね、ぷいん。


半分残っているぷいんを見てから、りゅると人間を交互に見てぷいんを放り投げる。


痣のある細い腕に少し目を伏せる。


昔のオレと同じ……同じ、空腹を持つ者。


入れ物にさえ噛み付く未練と、リードを持つ人を見る怒気を孕む目。


りゅるはオレに沢山くれる人。


この人は節制し我慢を強いる人。


……ペットは、無理をしてでも飼わないといけないものなの?


空腹ほど怖いものは無い。


りゅるの服を強く掴み手を振った。


……もうすぐ空腹で死ぬ、彼に。






知らなかった。


知りたくなかった。


でも、見てしまったから。


空腹に耐えきれず、人を食う人間を。


人を食って、殺されてしまう人間を。


オレも……最期は、お腹いっぱいで死にたい。


その為に、オレはりゅるを食うだろうか?


分からない、けど。


赤いお肉は好きじゃないから、食べないと思う。


それに、噛みきれないだろうし…うーん……やっぱり、最期もぷいんが良いな。


お腹いっぱいぷいんを食べられて、近くにりゅるが居て頭を撫でてくれたのなら……オレに未練はないと思う。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある婚約破棄に首を突っ込んだ姉弟の顛末

ひづき
ファンタジー
親族枠で卒業パーティに出席していたリアーナの前で、殿下が公爵令嬢に婚約破棄を突きつけた。 え、なにこの茶番… 呆れつつ、最前列に進んだリアーナの前で、公爵令嬢が腕を捻り上げられる。 リアーナはこれ以上黙っていられなかった。 ※暴力的な表現を含みますのでご注意願います。

最強魔法師の壁内生活

雅鳳飛恋
ファンタジー
 その日を境に、人類は滅亡の危機に瀕した。  数多の国がそれぞれの文化を持ち生活を送っていたが、魔興歴四七〇年に突如として世界中に魔物が大量に溢れ、人々は魔法や武器を用いて奮戦するも、対応しきれずに生活圏を追われることとなった。  そんな中、ある国が王都を囲っていた壁を利用し、避難して来た自国の民や他国の民と国籍や人種を問わず等しく受け入れ、共に力を合わせて壁内に立て籠ることで安定した生活圏を確保することに成功した。  魔法師と非魔法師が共存して少しずつ生活圏を広げ、円形に四重の壁を築き、壁内で安定した暮らしを送れるに至った魔興歴一二五五年現在、ウェスペルシュタイン国で生活する一人の少年が、国内に十二校設置されている魔法技能師――魔法師の正式名称――の養成を目的に設立された国立魔法教育高等学校の内の一校であるランチェスター学園に入学する。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

処理中です...