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ぷいん・・・?
しおりを挟むお昼寝から起きると、今度は食べ物がいっぱい並んでいるお店に入った。
何だか色んな臭いが混ざってて、眉間に皺が寄った。
あの場所よりマシだけど、臭うものは臭う。
硬い肉や臭い魚を鼻を摘みながら飲み込む。
りゅるのご飯の方が美味しい。
臭いしココから早く出ようとりゅるを説得し、頷いたりゅると一緒に部屋を出て深く呼吸を繰り返す。
煙い様な独特な臭いと珍妙な味にお昼に食べた卵たちが口から出てくるかと思った。
次に入った部屋は甘い匂いが漂っていた。
甘い物大好き。
1番はぷいんっていう黄色くて甘いヤツ。
茶色い所が少し苦くて…でもそれが合うとっても美味しいもの。
あめも好き。
白くて甘いあの液体と同じ味の、しかも長い間楽しめる素晴らしい物、それがあめ。
うええええ。
何これ?何これ?!
甘いのに、なんか臭い!
りゅるに貰った紙にグニグニした臭い物を吐き出す。
無理、飲み込めないよ、こんなの。
口直しに隣の物を口に入れて後悔した。
美味しくない!
オレの口には合わない。
水筒を受け取り中身を飲み干す。
甘い物は何でも美味しいと思ってたけど、認識を改めるよ。
りゅるがくれるモノが美味しいんだね。
りゅるが口に入れてくれたあめは、いつもより美味しく感じた。
ああ!
これ、これ、ぷいん、だ。
違う匂いがするけど、味もちょっと違うけど、絶対ぷいんだ。
店の人の裾を引っ張りオカワリを貰う。
美味しい。
これずっと食べていられる。
手の届かない所に置いてあるぷいんをずっと見ていたらりゅるに抱き上げられた。
ああ、ぷいんが遠くに……。
店を出て直ぐに、小さなぷいんを貰った。
え、開いてないよコレ。
どうやって開けるの?
少しの間悩んだけど、全く分からなくてりゅるに開けてもらった。
なるほど、そこ引っ張れば開いたんだ。
すぐに無くなってしまいそうな小さなぷいんを少しずつ舌で舐めとる。
ああ、これもあめみたいにずっと口の中に残ってくれたら良いのに。
「ギュア、ギャァァルルァァ!!」
唾を飛ばしながらこちらに向かって叫ぶ人間に、オレは目を見開いた。
何となく、何となくだけど、ぷいんを欲しがっているのが分かった。
美味しいもんね、ぷいん。
半分残っているぷいんを見てから、りゅると人間を交互に見てぷいんを放り投げる。
痣のある細い腕に少し目を伏せる。
昔のオレと同じ……同じ、空腹を持つ者。
入れ物にさえ噛み付く未練と、リードを持つ人を見る怒気を孕む目。
りゅるはオレに沢山くれる人。
この人は節制し我慢を強いる人。
……ペットは、無理をしてでも飼わないといけないものなの?
空腹ほど怖いものは無い。
りゅるの服を強く掴み手を振った。
……もうすぐ空腹で死ぬ、彼に。
知らなかった。
知りたくなかった。
でも、見てしまったから。
空腹に耐えきれず、人を食う人間を。
人を食って、殺されてしまう人間を。
オレも……最期は、お腹いっぱいで死にたい。
その為に、オレはりゅるを食うだろうか?
分からない、けど。
赤いお肉は好きじゃないから、食べないと思う。
それに、噛みきれないだろうし…うーん……やっぱり、最期もぷいんが良いな。
お腹いっぱいぷいんを食べられて、近くにりゅるが居て頭を撫でてくれたのなら……オレに未練はないと思う。
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