ペットになった

アンさん

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クロと朝食

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朝起きると、クロはまだ俺の腕の中で眠っていた。


あの後は起きなかったのだろう。


くわぁ、と欠伸をひとつしてから起き上がり洗面所へ向かう。


「りゅるー」


歯を磨いていると起きたクロが俺の元へ走ってきた。


クロ用に歯ブラシに歯磨き粉を乗せてから渡し、2人並んで歯を磨く。


もう少しすれば朝食を食べに行って、また風呂にでも入るか。


口を濯ぎ顔を洗って、クロが終わるまで後ろで待ってやり服を着替えに部屋に戻る。


「クロ、服はどれにする?」


クロの荷物を広げて選ばせる。


家に居る時はクロ用のクローゼットからクロが自分で選んで着ているが、流石に出先に大量には持って来れないから、この荷物の中から選んでもらうしかない。


ひょいひょいと迷いなく服を選んだクロが着替えだしたので残りの衣服は鞄付近に積んでおく。


俺も着替えて、クロにハーネスを付けて部屋を出る。


さて、クロは朝食を食べてくれるだろうか?






夜同様量が多いので配膳の者を頼み、席に案内してもらう。


「線をひいてくれたのか」


「はい。昨晩なさっていらっしゃったので」


「助かる。クロ、ここに座れ」


正面に座らせ、持ってきていたクロ用の食器を置いてやり配膳を頼んだ。


出されたパンをミルクと一緒に食べだしたクロを見て、短く息を吐いた。


良かった。今日も食べてくれそうだ。


クロは朝米派だ。


配膳が終わって直ぐに箸を持って米を食べだした。


「クロに白米じゃなく炊き込みご飯を頼む」


少しでも栄養あるものを食わさないといけないしな。


魚の骨を器用に外し熱いものは確り冷ます、まさに人の食事の摂り方をするクロに自然と視線が集まる。


昨日とは違う配膳係に、茶碗を渡しても受け取ってもらえず頭を傾げたクロは、茶碗を渡すのではなく線の外に置いてオカワリを催促しだした。


教えられずに自分なりに考えたようだ、とても賢い、偉いぞクロ。


確り噛んで味わってもいて、今の所茶碗蒸しとオムレツが好きそうだな。


本当に卵が好きだな、クロは。


献立表と有料の個品に目を通し、クロが好きそうなものをどんどん頼んでいく。


甘い物にも目を通し、ある一定数頼んだ後に持ってきてもらうように手配した。


配膳の者が昨夜と同じ者に交代し、クロは配膳の者を見て手渡しで茶碗を渡した。


おお、ちゃんと人の区別がついているんだな。


「んる、るーる」


「はい、どうぞ」


配膳の者は笑顔でクロのオカワリをよそい、クロに手渡す。


「るぅー、るるー」


普通のヒト相手だと目が合えば吠えられるし、手を出せば引っ掻かれたり噛まれたりするから、この配膳の者は肝が据わってるな。


クロは基本的にそんな事はしないが、いつそうなるか分からない以上、さっきの配膳の者みたいにある一定の距離は普通あけるだろうに。


がっつくわけではないが、クロはそれなりに早食いだ。


早いペースで並んだ料理がクロの腹に消えていく。


「んゆ、るーるる?」


口に合ったものを配膳の者に言い、好きな物を好きなだけ食うクロに、元気になって良かったと口角が上がる。


「お待たせしました、どうぞ」


「る、ゆるるー」


顔色も良いし、良く鳴くし、沢山食べるし、今日は良い日になりそうだ。





お腹が膨れたクロは、自分から椅子を降り俺の元に歩いてきた。


「んーゆ」


目を擦っている辺りどうやら眠くなったようだ。


俺の食事が終わるまで、待てなかったか。


抱き上げて膝の上に座らせ背中を撫でてやると、頭を俺の胸元に預けて眠りだした。


食って寝て遊ぶ、今のクロに必要な事だ。


「毛布をご用意致しましょうか?」


「いや、良い」


ゆっくりと食事を摂り、俺はクロを抱えて部屋に戻った。




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