ペットになった

アンさん

文字の大きさ
上 下
37 / 75

クロ爆食

しおりを挟む



旅館へ戻ると、クロはまた窓に張り付いた。


気に入ったのなら、何度でも入ると良い。


窓を開けてやりクロへお風呂用の荷物を渡し、俺はさっき買った食い物を冷蔵庫へと入れていく。


「りゅるー」


グイグイとクロに服を引っ張られ、そちらを見るとクロは風呂へ指先を向けた。


「どうした?入らないのか?」


服を脱いで真っ裸のクロを抱き上げ風呂場へ向かう。


湯の温度を確認してからクロを入れてやるが服を離さない。


「クロ?どうしたんだ?」


「んー、んー」


グイグイと何度も服を引っ張り、湯と俺を交互に見る。


「一緒に入りたいのか?」


頭を撫でてやってから手を離させ、着ていた服を脱いで部屋内へ放り投げ湯に浸かる。


すぐに俺に背を預けたクロはチャプチャプと湯の表面を叩きだした。


そういえば、家でも一緒に入るから風呂は一緒に入るものだと思ってしまっているのだろうか?


こんなに広いのに俺の傍から離れないし、ヒトが泳ぐことも加味された作りなのだからもっと遊んでも良いのにな…遊び方が分からないのか?


遊び方なんて決まりは無いし、好きに体を動かせば良いだけなんだがな…景色を見て息を深く吐き出している姿は、ヒトより人らしい。


体が温まり顔の赤くなってきたクロを抱き上げて風呂場を後にする。


そろそろ夕飯時…クロは食べてくれるだろうか?






杞憂に終わりそうだ。


並べられた和洋折衷の食事を器用に食器を使って食べている。


熱いものはちゃんと冷まし、好き嫌いなくどれも食べている。


量が量なので頼んだ配膳の者も、クロの食べ方にほぉと感嘆した。


「器用に食べられるのですね。ヒト、ですよね?」


「そうだな、小さい子供のようだろう?」


「ええ、まさに。躾、大変だったのではないでしょうか?」


「いや、俺は躾ていない。自分でやりだしたからな」


「ご自分で?それはそれは、聡明で」


手を休めることなく食べ続けるクロの動画を撮り続けながら、俺も箸を進める。美味いな。


ふんふんと鼻息荒く茶碗を配膳の者渡して自分からオカワリし、目に入るものをどんどん食べていくクロは、キラキラと目を輝かせている。


クロ用としてテープで机の上に枠を作ってもらった。


おかげで、近付けずともテープ内にあるものはどれも美味しそうに食べている。


生食は医者に止められているから肉も魚も火が通ったものを注文し、野菜も温野菜がメインになるように調整してもらった。


良いな、実に良い。


これで今晩しっかり寝てくれるなら、もう何も言うことは無い。


食後のデザートまでキッチリ腹に収めたクロを布団へ寝かせてやる。


最近はベッドで寝かせていたから床で寝るのは久々だな。


持ってきていたホットドールに抱きついてクロの目が半開きになってきた。


寝てくれそうだ。


頭を撫でて「おやすみ」というと、クロは直ぐに意識を手放した。


おやすみ、クロ。


確り寝ろよ。


それで、明日も沢山食事をとって遊ぼうな。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...