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ごくらく・・・?
しおりを挟む大きな荷物を持ったりゅるはオレと手を繋いで家を出た。
どこに行くの?
家の前に止まっていた車に荷物を乗せ、ヤギみたいな人と一緒に乗った。
誰、この人。
りゅるは何言かヤギみたいな人と話し、オレをいつもの様に抱いて頭を撫でてくれる。
暖かい…眠い。
一緒に持ってきたイヌ…犬型のぬいぐるみを抱きながらりゅるの膝の上で船を漕ぐ。
どこ…行くんだろ…。
クロ、と呼ばれ目を開ける。
車から降りて連れて行ってくれたのはおトイレだった。
丁度したかったから、いつもの様に個室に入り用を足してから洗浄ボタンを押し、個室を出て手を洗いりゅるに寄る。
頭を撫でてくれたりゅるに笑いかけ、抱っこしてもらう。
いつもと違う、人がいっぱいいる場所。
車もいっぱい止まってて、時折人間も見る。
お店に入って何か買ったりゅるは、また同じ車に戻ってきた。
さっき買ったのは、どうやらご飯らしい。
一口食べて見ると、甘くて美味しかった。
でも、何か胃のあたりがぐるぐる?重い?気がするから1個だけ頑張って食べて、また目を瞑った。
背中を撫でてくれるりゅるの手はいつも暖かいな…そんな事を思っていると直ぐに眠りについた。
目を覚ますと、見慣れぬ景色が広がっていた。
山ばっかりだ。
あと大きな、家?
皆頭を下げて何か言ってる。
りゅるの横を歩き中に入るとスゴく天井が高かった。
すごい…キレイ…キラキラしてて良い匂い。
りゅうがオレの背中に繋がる紐を誰かに渡して、オレに待ての合図をしてから遠くに行ってしまった。
「くぅ~ん…きゅぅぅん」
喉から出てくる音を止められず、オレは持っていたイヌに顔を埋める。
「りゅ、うる、くぅ~」
まだ、戻ってこない?
チラリと視線を上げるが、りゅるは誰かと喋っていてコチラを見ることも無い。
しゃがみこみ、ガジりとイヌの耳を噛む。
「クルル、くぅ、きゅぅぅん」
視界の端でオレの背中に繋がる紐を持った人が何か話しかけてくるが、オレの視線はりゅるから動かない。
少ししてから戻って来たりゅるに抱き上げてもらい抱き着く。
ポンポンと背中を叩いてくれるりゅるは少し困った顔をしていた。
なんで?
オレ、これ知ってる!
温泉でしょ?
部屋の外にある湯気の立つお風呂を見て、窓に引っ付く。
入りたい、だって暖かそう、良い天気だし景色も良いよ?
りゅるの方を見ると、お風呂のセットを持って戸を開けてくれた。
洗い場に立ち、服を全部脱いでカゴに入れ頭から湯をかぶる。
早く入りたい。
いつもより丁寧に身体を洗い、頭もしっかり泡立つまで洗う。
お風呂好き。
りゅるがヨシの合図をくれたので、足からゆっくり浸かる。
良い温度。
肩まで浸かってふぅぅと長く息を吐き出す。
ああ、お風呂に入れるって幸せ。
冷たいお風呂はもう入りたくない。
後ろからりゅるに抱き締めて貰えたので、いつもの様に身体を預けて身体の力を抜く。
身体の力を抜くと浮いてしまうなんて、りゅると出会うまでは知らなかった。
ああ、うるさいテレビが言ってたな。
お風呂に入って、ごくらく、って。
多分今が、ごくらく、なんだろうな…。
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