ペットになった

アンさん

文字の大きさ
上 下
27 / 75

******* ****

しおりを挟む


イタイ、サムイ、クルシイ。


クライ、ウルサイ、クサイ。


ナンデ、オレ・・・ーーーー。




とある所に光が差し込み、その場所に居た者の項垂れていた頭が上がった。


長い髪の間から覗く目は鈍く光り瞳孔が開ききっていて、口から漏れるのは獣の唸り声と唾液だった。


折り畳まれていた身体は、強い反動を持って半透明な物にぶつかった。


怯む事も痛がる事も無く何度もぶつかり続け、半透明な物にヒビが入っていく。


やがて大きな音をたて、割れた。


唸り声はさらに大きくなり、咆哮に近くなっていく。


割れた半透明な物の先に居た者達は飛び起き、その存在を視認すると叫び声と共に手当り次第に物を投げる。


部屋に侵入した存在は、牙を剥いて動く者達に飛びかかった。


静かな、まだ日が登りきる前の朝方に、複数人の断末魔の様な声が響き渡り、住民たちは目を覚ました。


牙を剥いた存在は、そんな瑣末な音等には反応せず、ただただ暴れ続けた。


時には殴り、時には蹴り、時には噛み付き・・・細く小さな身体で、巨体な相手にも食ってかかった。


じきに何かを叩く音の後に、閉ざされていた扉が開いた。


その扉を開いた者達は驚いた事だろう。


部屋に溢れる大量のゴミと虫、そして血を流しながら逃げ惑う人達と、獣のように人を追いかけ回し攻撃する姿を見て。


目が血走ったかのように見開かられ、口からは血の混ざった液体が滴り落ちていく。


言葉ではなく唸り声と耳をつんざく様な叫び声を発し、ピリピリと空気が張り詰めているような感覚に襲われた。


巨体な男が扉を開いた者達に何かを叫び、その声に反応して扉を開いた者達は部屋に足を踏み入れた。


だが、その声に反応したのは扉を開いた者達だけではなく、牙を剥く存在も同じく反応し飛びかかった。


巨体に投げ飛ばされようが物で殴られようが関係なく、何度も何度も襲いかかる。


巨体以外にも2人・・・強い匂いを持つ者と少し小さな者が声を上げれば、牙を剥く存在はその2人にさえも襲いかかる。


肉を持って行かれるような強さで噛みつかれ、長く伸びた爪で引っ掻かれ突き刺される。


痛みにより悲鳴をあげれば、更に強く力が入れられ逃げるにももう満身創痍であった。


牙を剥く存在は、扉を開いた者達には反応しなかった。


押さえつけようと伸びる手を避け、巨体に飛びかかる。






押さえつけられ、全身を拘束された者は人の言葉を吐いた。


「コロス、コロス、コロス」


細く掠れた声で部屋にいた3人を睨みつけながら何度も紡ぐ。


血みどろの口から何度も発せられる恨むが如くの物騒な言葉に、現場に野次として来ていた者達は騒然としただろう。


全身を拘束された、骨と皮しかないような小さな存在の不気味さに・・・その者に襲われ涙を流し痛がる異常者達の姿に。


???ver

とある場所から発せられた言葉達に、皆が皆口を覆い視線を泳がせた。


「だから言っただろう!虐待されてると!死ぬかもしれないと!聞かなかった奴等が良くもまぁ今更「何故教えなかった」だなんて言えたな!証拠か?聞かせてやろうか?!お前達に話して俺達が異常だと言った時の録音でもよお?ええ?!」


「そうだそうだ!何度も連絡入れただろうが!何が「大丈夫でした」だ!このザマを見ろよ!もうイカれちまってるじゃねぇか!」


「毎日毎日、同じ様な事を言うなって言ったのは誰?!あの状況を見てからじゃないと意味が無いって言うの?!私達の言葉を無視し続けた結果でしょ!!」


騒いでいるのは、同じアパートで暮らしていた住民達だった。


確かに見た時がある・・・スーツや警察の格好をした人達が頻繁にあの明け広げられた扉の部屋に訪れていた所を。





ーーー。


オレニ、ハムカウヤツハ、テキダ。


ニガサナイ、ゼッタイ。


オレノ、ムレダ、ワタサナイ、ダレニモ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。

追放しなくて結構ですよ。自ら出ていきますので。

華原 ヒカル
ファンタジー
子爵家の令嬢であるクロエは、仕える身である伯爵家の令嬢、マリーに頭が上がらない日々が続いていた。加えて、母が亡くなって以来、父からの暴言や暴力もエスカレートするばかり。 「ゴミ、屑」と罵られることが当たり前となっていた。 そんな、クロエに社交界の場で、禁忌を犯したマリー。 そして、クロエは完全に吹っ切れた。 「私は、屑でゴミですから、居なくなったところで問題ありませんよね?」 これで自由になれる。やりたいことが実は沢山ありましたの。だから、私、とっても幸せです。 「仕事ですか?ご自慢の精神論で頑張って下さいませ」

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。 木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。 何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。 そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。 なんか、まぁ、ダラダラと。 で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……? 「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」 「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」 「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」 あ、あのー…? その場所には何故か特別な事が起こり続けて…? これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。 ※HOT男性向けランキング1位達成 ※ファンタジーランキング 24h 3位達成 ※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。

処理中です...