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開始

地下牢への道

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始めは、何となくいつもとは違う怠さに、軽い違和感を覚えた程度だった。

激しい行為に常に怠くて、気にもしていなかったけれど、前より気絶する回数が増え、その時間も長くなり同時に体力も落ちていった。
食事があまり喉を通らなくなり、疲れかと思っていたけれど、眩暈を起こすようになった。

ユージーンは直ぐに気づいた。
何かの薬を飲まされ点滴を受けたけれど変化はなく、今までの事がまるで嘘のように凌辱されなくなった。

・・・そういえばユージーンの凌辱エンド、最期は病死だったんだっけ。
・・・・・・やっぱり、そろそろなんだ・・・。

憔悴していく俺を見かねてか、ユージーンは部屋から出してくれた。


・・・・・・あぁ、ついにこの日が来てしまった・・・・






ユージーンの部屋を抜け、離宮へと向かう内廊下を進んでいく。

人払いしているのか、誰一人会う事もない。
俺の世界にはユージーンだけだ。

夏の始まりだった筈なのに、窓の外は落ち葉が舞い寒そうだ。
久しぶりの外の明るさに目を細める。
「もうすぐ冬休みだよ」
抱きかかえられたまま移動し、庭園のよく見える離宮のソファーへと下ろされる。
「・・・半年近く経ってたのか・・・学園は?」
「たまにね。倍の課題やってるから問題ない」
「そう・・・」
まるで何年も経過していたかのように感じる。

「キアンは、このまま城にいればいいから」
やっぱり・・・
「これから地下牢に入れられるんだろ・・・」
堪えていた涙が零れ落ちた。
ずっと恐れていた時が来てしまった事に体が一層冷えていった。
「キアン? 何を言って・・・」
「お願いだから・・・殺してくれ」
「っ!!」

従順になり、弱った俺はもう不要になったんだろう? 
満足して飽きたんだろう?
これから地下牢で、死ぬまで王族達の慰み者として過ごす地獄が始まるんだろう?

自死が許されないなら、もう、今の状況ではお前に頼むしか、残ってない。
軽々と処刑を行えるお前なら、何も問題ないだろう?
それさえも嫌だから地下牢へ入れるのか?
本当に、本当に嫌なんだ・・・・耐えられない。

「・・・・ユージーン以外の奴に抱かれるの、無理だ」
「キアン・・・」
どんな顔してるかなんて、見なくても想像できる。
きっと、あの残酷な眼差しで見下ろしているんだろう。
「頼むから・・・お願いだから、斬首台へ送ってくれよ」

地下牢で慰み者になるのは嫌だ。
このまま苦しんで死ぬのは嫌だ。

泣きじゃくる俺をユージーンは優しく抱きしめた。
想像と全く違う抱擁を受けて、訳がわからず余計に涙が溢れる。
「・・・何で、牢なの?」
「お・・・俺に、飽きたんだろ・・・っ 満足して、邪魔に、なったんだろ・・っ
 これからは・・・牢で・・・他の奴等の慰み者に、されるんだろ・・・っ そんなの、嫌だっ いやだ・・・やだ・・・っ」
その前に頼むから終わらせてくれ。
斬首台に早く送ってくれ。
「・・・私なら、いいの?」
「も、ユージーン俺を散々抱いてるじゃんか。
 お前だから・・・我慢、できたけど、他の奴とか、も・・・絶対無理・・・っ 嫌だ・・・っ」
「私以外は無理なんだ・・・」
「いやだ・・・っ 絶対に嫌だ・・・・っ」
牢は嫌だと懇願する俺を何故かユージーンは嬉しそうに見つめてくる。
何だよ。
何でそんなに嬉しそうな顔してるんだよ。
俺には死活問題なんだ。
逃れる為にどれだけ頑張ってきたと思ってるんだ。
これ以上は、もう無理だ。 精神が壊れる。それを望んでるのか?

「そうか、私はいいのか」
口づけられて、そのまま優しく貪られる。
何だよ、こんな優しい口づけ・・・・最後の挨拶かよ。 
幼馴染だから最後に優しくしておこうって事なのか?
こんな嬉しそうな、優しい顔、却って残酷だ・・・本当に酷い奴だな。

「牢に行く事無く、私だけなら、死を望む事もせず、逃げる事もせず、ずっと、ずっとそばにいるんだね?」
王族達の相手も、他の攻略者達の相手も、男娼も、奴隷も、獣も何もかも全部嫌だ。
誰にもあんな事されたくない。触られたくない。
「・・・ユージーンだけなら・・・そばにいる。逃げない。」

「私だけには抱かれるんだ? 私だけを見てくれるんだ?」
頬を両手で包まれ、瞳を覗かれる。
柔らかな眼差しが俺を映している。
以前と変わらない優しい微笑みで、嬉しそうに額の傷跡に口づけを落とすのに、愛しそうに唇を何度も啄むのに、冷えた体に血が通い始める。

俺に・・・・もう飽きたんじゃ、ないのか? 
これからも抱くつもりか? 
地下牢に行かなくて・・・慰み者にならなくて、いいのか?

「ユージーンだけなら・・・・・・しんどいけど・・・我慢、する。
 見るのは・・・。 今までもずっと一緒だっただろ?」
何を見るんだよ?
「・・・・・・・・・ま、今はそれでいいか。許してあげるよ。」
何がだよ。
お前のH、酷い事するし苦しいんだよ。
本当に毎回しんどくて大変なんだ。
しつこいし、マニアックだし、大きいうえ絶倫だし、訳わかんねぇし・・・

でも、他の奴に犯られるならユージーンがいい。
逃げる事も、死ぬ事もできないのなら、牢に行かずにユージーンだけで済むなら、受け入れる。
安泰が無理ならば、一番安全な道を選ぶ。 
もしかしたら、安全とはいえないかもしれないけれど・・・でも、大丈夫な予感がする。
「本当に、牢に入れないんだな? この先も、絶対に絶対に入れないんだな?」
「・・・そんな酷い事しないよ。こんなに愛してるのに。」
---愛って何だ? 
「散々酷い事してて、言ってる事がわかんねぇ」
「キアンが私以外を見て、暴言を吐くから」
「・・・? 誰も見てないぞ?」
暴言は吐いた。
まさかあれに怒ったのか? 
不敬なんて今更だろう? 散々してきてる。
『大嫌い』は初めてだったけど、たったそれだけで?

ランスと一緒にいる俺に怒ってたんだろ?
もの凄い怖い眼で見てたもんな。
あまりに怖すぎて何度も泣きそうになったくらいだ。
ランスに近づく俺が邪魔で、取られたくなくって怒ってたんじゃないのか?
・・・・・・
・・・・・・・・・・んん??
「・・・・・・・・・やっぱり愛とかわかんねぇ」

キアンはバッドエンドだけで愛はないんだぞ。
この世界を作り出した製作者という、ろくでもない神様が決めた事なんだ。
神様の作った世界の強制力、お前知らないだろ。
俺は今まで散々な目に遭ってるから、嫌と言う程身に染みて知ってる。

「飽きる事は絶対ないから。死んでもないから。」
「・・・・・・受け入れれば・・・前のような生活にも、戻れるのか?」
ユージーンには凌辱されてしまったけれど・・・地下牢での王族達による慰み者が回避できたのなら・・・今まで足掻いてきた事で何らかの変化があったんだ・・・。
それで地下牢を逸れる事が出来たのか?
地下牢への道は、もう無くなったと信じていいのか?
「・・・閉じ込めたいけど、キアンが病気になったら嫌だしね・・・絶対に自傷せず、私以外他の誰にも目を向けず、この先もずっと、私のそばにいると誓うなら、いいよ。」
地下牢に怯え続けるのは、もう嫌だ。
あの監禁部屋に戻るのも、嫌だ。
「誓う。俺はこれからもずっと、ユージーンのそばにいる。他の誰も見ない。」
そもそもこの酷い世界で見る奴もいない。
「うん」
嬉しそうな、幼い頃と変わらない、よく知る笑顔を見せられて、その表情に、地下牢に入れられる事はないのだとようやく心から安心できた。

深く口づけられて、それに応える。

今・・・・地下牢への道は消えた・・・・この先も、ユージーンのそばにいれば、俺は大丈夫だ。

卒業までまだ心配は尽きないだろうけれど、今のユージーンがいてくれれば乗り切れる気がする。


              


「・・・で、何でそんなに牢に拘るの?」
「・・・今までいっぱい牢に入れてきてた・・・最近手も出さなくなったし、飽きて邪魔になったんだなって・・・」
「医者に診せる為に出したんだけど・・・。
 本当に具合の悪い時に、そんな酷な事するわけないよ。
 何でそんな極端な考えになったの・・・慰み者って・・・本気で怒るよ?
 それに、牢に入れたのも処刑したのもキアンを害した者だけだよ。
 キアンが望んだとしても、絶対牢になんか入れないよ。」
「・・・信じる。」
本当の事なんて、言えない。
信じてもらえない。

でも、ランスどうすんだよ?
こんな事言ってて、やっぱり気が変わりました、なんて無しだぞ?
そんな事したら誓い速攻で破るぞ。

「部屋から、出してあげる。」

自由にするのを酷く残念そうに言うユージーンに押し倒され、久方ぶりの外の景色を背景に身体を開かされた。
俺、弱ってんだけど・・・。容赦ないな・・・。

もう具合悪そうに見えないのか?
確かにさっきまでと全然違う・・・





「私のものだ・・・キアン。私だけの・・・忘れないで」
「・・・・・・・あ・・・」
何度も何度も呪文のように囁かれ、奥へ注がれて俺は意識を手放した。





地下牢への恐怖と不安から解放されて、俺は初めて安堵した眠りにつく事ができた。



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