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開始

恐怖 & ランドン

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ユージーンはランスに会っても、前のように変わる事はなかった。
あんなに執着していたのに、全く近寄ろうとさえしない。
その事に改めて安心したのだけれど・・・・・・これは一体どういう事なんだ!?

ユージーンの俺に対する執着が、束縛が、嫉妬が凄い。
凄いなんてもんじゃない。

いくら俺が避けていようとも、ランスと少しでも接するような事があれば拘束と玩具による仕置きをされ、数日間動けなくなる程に抱き潰される。
他の面々は、差し障りのない会話ならば、まだ問題はないけれど・・・内容によってはいつもより激しく責め立てられる。
前に曝した眼のせいで、今まで接点の無かった者からも声をかけられる事が多くなって大変な事になっている。
こんな状況で俺から誰かに話しかけようものなら、どうなるのか想像がつかなくて、怖くて何もできない。

最近では授業にも出れずベッドの上で過ごす時間の方が長くなってきている。
周りからは病み上がりで体調が悪いのだと思われているようだけれど、楽しむ筈だった学生生活はどこへいったんだろう・・・。
寮の部屋から出たら緊張しっぱなしで休まる時がない。
楽しむどころか苦行の毎日だ。

何でこんな事になってるんだ・・・前のような生活に戻れる筈だったのに、学園に戻っただけで、全く別の生活になってる・・・。

今もランスが様子を窺っては俺に接触しようとしてくる。
やめてくれ!!
青姦した後風邪もひくし大変だったんだ!
発熱しててもお構いなしに抱いて来るユージーンは本当に鬼畜だった。
いつもより熱くて気持ちがいいね とか言いやがった!!
まぁ・・・完全に寝込むギリギリのところで解放してくれたけど・・・俺の体の事、俺以上に熟知してるのが本当に怖いわ。

恐ろしい事にユージーンはいつの間にか医学の知識も持っていた。
やけに手慣れた動きで点滴やら出来てたのはこれか・・・
どうやら以前から勉強していたらしい。
医者にも俺を診せるのが嫌とかどんだけだよ・・・将来は俺の為だけに医師免許とるんだと言われれば閉口するしかない。
お前、王子だろ・・・どこ目指してるんだよ・・・?
きっと、俺が知らないだけで、色々まだあるんだろう・・・末恐ろしい。




自分では上手くいかないからか、先生を誑しこんだらしく、授業中に教師特権を使われランスが待つ部屋へ連れ出されてしまった。

マジ勘弁してくれ・・・。

もう、寮に引きこもろうかな・・・。
城に帰ろうかな・・・。
ユージーンもその方が喜ぶし。
俺の心も休まる。
拘束やマニアックな玩具が減る分、体も休まるだろうし、今よりずっと楽になる筈だ・・・多分。
でも、またベッドの生活か・・・喜々として抱き潰すんだろうな・・・俺って一体何なんだろう。
そして、やっぱりここは、地獄の学園のままだったんだ。 
大丈夫だなんて思っていた俺が大馬鹿だったんだ。

また、のんびり旅行したいな・・・ 
腰痛に効果のある温泉とか行きたい・・・今度聞いてみようか・・・
性欲減退のスポット、どこかにないかなぁ・・・安らぎが欲しい・・・

「・・・と・・・ちょっと!聞いてる!?」
「・・・なに? 早く戻りたいんだけど」
遠い目で窓の外を眺める俺に、ランスは可愛らしい顔に不快感を表し詰め寄った。
だから、やめてくれ。
近寄るな。

「だから、一番気に入ってたキャラ、ユージーンなんだよね。
 もの凄く!プレイ楽しみにしてたのにさ・・・。
 ハッピーエンドはユージーンで行こうと思ってたのに、君のせいで台無しだ」
「・・・・・」
答えない俺に構わずランスは話し続け、胸ポケットから大事そうに小さな袋を取り出し、中身を俺に見せた。
「!」
見覚えのある錠剤に体が強張る。
「ディエゴに頼んで媚薬作ってもらった。
 これでユージーンと寝れば、正気に戻って本来のルートに戻ると思うんだよね。」
「・・・・・」
それ、本当に使うつもりなのか・・・? 

「それでウロボロスのネックレスもらう。
 それをもらったら余程の間違いがない限りハッピーエンドなんだよ。」
「・・・・・・へぇ・・・。」
そのネックレス、俺、今してるよ・・・ プレゼントされた・・・ 


・・・・・・・・・え? 


何・・・? ちょっと待って・・・
俺の立ち位置って・・・まさか、そこなの・・・?
もしかしなくても・・・・ユージーンとの主人公ポジ・・・?
ランスの場所にいるのか?
え? 
嘘だろ? 冗談だろ?
どこでどうしてそうなった!?
そんな要素なんてどこにも無かったよな!?
ユージーン、俺の事、お気に入りの玩具じゃないのか!?
王子様のお遊びじゃないのか!?
え? え?
何が起こってるんだ!?
どういう事なんだ!?
意味がわかんねぇ!
ちょっと待って!
えええ!? 落ち着け俺!! 


「ディエゴに会うの、本当に大変だったんだから! 全然病んでなくてガリ勉になってるし! 
 何度も身体使って元に戻したんだよ! 一体どういう事!? 君何かしたの!?」
ランスの剣幕に我に返った。
「いや・・・俺は別に・・・ちょっと、だけ・・・か、な?」
大変怒っていらっしゃる・・・可愛い顔が怖い。
「ちょっとであんなになる訳ないじゃない! 信じられない!」
「・・・・すみません???」
ディエゴは薬剤機関で猛勉強させられ当然学園にも出てきていない。

ランスとのHで元に戻るのか・・・そんな裏技があるんだ・・・だから媚薬・・・。
でも全てが元に戻るわけじゃないだろ?
どうやったってそれは無理だろ。
今のディエゴが調合を間違えるなんてないだろうし、ユージーンに飲ませる薬だったら作るわけがない。
ランスと使えると唆されたか?
それに、あの時と同じ媚薬なら、ユージーンにはあまり効果ないと思うぞ?
俺には効果ありまくって地獄を見たが・・・忌まわしい錠剤を見せられて、思い出したくもなかった記憶に鼻がツンときた。

「だから、飲ませるの協力して」
「断る」
涙が引っ込んでイラッとした。
ユージーンがランスと寝るのは、嫌だ。
「何で!? ユージーンから解放されれば君は自由なんだよ!?」
「・・・嫌だ」
本来はそれが正しいんだろうけど・・・嫌だ。
ユージーンが選ぶ事なのに、薬を使ってとか、卑怯なのはどうかと思う。
主人公なんだし正々堂々といけばいいのに。
そうすれば応援・・・は、悪いけどしたくないなぁ。
「君はバッドエンドキャラなんだから、ちゃんとルートに沿って進んでよ!」
「・・・それが自由、なのか?」
・・・もしかして、俺に凌辱されて死ねって言ってるんじゃないよな?
まさかそこまで酷くないだろ?

「キアンが輝くのはバッドエンドなんだよ!!
 製作者もちゃんとコメントしてたでしょ!
 【一番凌辱に力が入ってます】
 【愛無き哀れな裏の主人公】って!
 プレーヤーがどれだけキアンのスチル手に入れるの頑張ってたと思ってるのさ!?
 一番見たかったユージーンとの凌辱は見れなくて残念だけど・・・
 男娼、奴隷、獣、全部生で見せてよ! すっっっごく心待ちにしてたのに!!
 下水の場所も見つけてあったのに!!」
マジかー!! 
断言した!! 信じらんねぇ!!
しかも製作者!! 神!! やっぱりろくでもねぇ!!!
【哀れな裏の主人公】って何だよ!? すっげぇ不吉な響きじゃねぇか!!
ランス! 絶対俺の事ただの動くスチルとして見てるだろう!
「絶対嫌だ!」
「今までユージーン独り占めしてきたんでしょ! キアンのくせに!」
もぉやだ、本当にやだ、駄目だランス。
俺どうしたらいいんだよ。
ランスに掴みかかられ、押しのけた時、ドアが開いた。

「「あ・・・」」
話題の本人が立っていた。
言い知れぬ恐怖に襲われ血の気が引いていく。
ユージーンに、聞かれた・・・?


「っ助けて下さい! 突然キアン先輩に襲われて!」
立ちすくむ俺とは逆に、ランスはユージーンの元へと駆け寄った。
ランス、そうきたか・・・確かに好感度が上げれそうだ。
切り替えが早い。
「・・・・そう。キアンが君を・・・」
俺を見るユージーンは無表情で、何を考えているのかわからない。
怖くて直視できない。
握り締めた拳に爪が食い込む。
「僕、凄く怖くて・・・殿下が来てくれて、良かった・・・っ」
胸元に縋りつくランスは本当に可憐で愛らしく、何も知らなければ絆されそうになる程だ。
こんなにも可愛らしいのに、俺に凌辱されて死ねと言う・・・

ユージーンはどうするんだろう?
ランスの可憐さに惹かれて今度こそ変わってしまうんだろうか・・・? 俺にはどうにも出来ない。

「離れてくれる?」
「え?」
「軽々しく触れないでくれるかな。汚れる。」
「あ・・・の・・・・?」
「キアンに近づくのもやめてくれる? 不愉快だ」
「っ!」
冷ややかに告げるユージーンに、ランスの顔がみるみる青ざめていく。
「余計な事してると、心臓えぐり出すよ?」
「あ・・・あ・・・・」
「沢山いるお気に入りの誰かと過ごしていれば余生楽しめるんじゃないの?」
今にも殺しかねない冷酷な雰囲気のユージーンに、ランスは小さな悲鳴を上げて転がるように部屋から飛び出して行った。

「・・・・・」
立ち竦む俺にユージーンが近寄ってくるのに小さな震えが起こる。
聞かれた? どこから聞いてた? 俺はどうしたらいい?
視線を合わせる事も出来ず、俯く俺の手を包み開かれ、爪痕を撫でられる。
「・・・・・・いつから?」
「早く戻りたいんだけど から」
最初から・・・
「何?意味のわからない話してたけど、酷い内容だったよね。
 どういう事か説明してくれる?」
「・・・・・・言っても・・・信じないよ」
「キアンの言う事なら信じるよ」
頬を撫でられ顔を上げれば、優しい眼差しのユージーンがいた。
ユージーンは、信じてくれる・・・。
「・・・俺・・・っ ?・・・・・!?」
話そうとして、声が出ない事に気付いた。
俺の異変にユージーンも顔色を変える。
首を絞め上げれたように息ができない。苦しい。

「キアン!」
目前が真っ暗になって、意識が遠のいていく。
そういえば幼い時、ここはゲーム世界だと何度か告げようとして、その度具合が悪くなってたっけ・・・忘れてた。
ゲームだと言うなって神様の思し召しかよ・・・
それともキアンの不幸設定のせいなのか・・・?
クソゲーめ・・・






「偶然通りかかって良かったよ。後は私が看るから、君はもう教室に戻りなさい」
「いえ、寮に連れ帰ります。私が看ます」
「君の言うように貧血だろうが、君は医者ではないだろう。 
 私は医師免許を持っている。
 いくら王子でも、学園では一生徒、容認できない。戻りなさい」
「・・・・」
「起きたら連絡入れるから、戻るんだ」

ユージーン、誰かと話してる。
誰だ・・・?
ドアの閉まる音・・・教室に戻ったのか・・・ ここ・・・どこだ・・・?
俺、どうしたっけ・・・?

・・・あぁ、倒れたんだ。
地下牢の時、口にしても何も起こらなかったのに何でだ・・・?
ゲーム世界だって言わなかったからか・・・? 死にかけだったからか・・?
立ち聞きされてるのは大丈夫だったのに・・・自分の意思で告げるなって事か・・・?
頭が重い・・・

「さて・・・綺麗で美味しそうな子だね」
消毒液の匂いに、保健室だと気づいて一気に意識が覚醒し飛び起きた。
そんな俺の髪を除け、額に手が当てられる。
「・・・っ!」
カニバリズムのランドン保健医がいた。
「熱はないようだ」
「・・・」
こんなに近くで会うのは初めてだけれど、独特の雰囲気がある、物静かで優しそうな人だ。
何も知らなければ魅力的な紳士にしか見えない。
でも本性を知る俺には恐怖でしかなく、自然と体が竦む。
「震えているね・・・まだ具合が悪いかい?」
呼吸しやすいよう、ボタンを緩められた胸元に指を這わされ、息をつめる。
「・・・どうしたんだい? 心音を確認したいのだけれど。」
聴診器持ってないのにどうやって聞くんだよ!? それ、嘘だろ!?
第一キスマークだらけで恥ずかしくて見せる事など出来ない。

漆黒の瞳が細められるのに冷や汗が浮かんでくる。
---品定めされているようで、怖い。
「もう、平気です。お世話になりました。」
ベッドから降りようとして、引き戻される。
上から顔を覗き込まれて体が強張った。
「その眼・・・アースアイは初めて見た。
 とても・・・とても綺麗で美味しそうだ。興味を惹かれる」
ペロリと舌なめずりし、目元を指先で撫でられるのに恐怖に喉を引き攣らせる。
く、食われる!! 
「も・・元気になりましたので失礼します!」
逃げようとして、腕を捕まれる。
怖い、絶対食う気だ! 何かする気だ!!
「後数時間、ここで過ごしなさい。・・・話がしたい。」
「っ結構です! 殿下のそばに戻ります!!」
押しのけ保健室を飛び出せば、ドアのすぐ前にユージーンがいた。
丁度入ろうとしていたらしい。
ユージーンを見て、ランドンは追ってくるのをやめたようだ。
怖かった・・・眼、採られるかと思った・・・。
まだ、恐怖に心臓が早鐘を打っている。

「何かされたのか?」
黙って首を横に振れば、ユージーンが優しく抱きしめてくる。
「急に倒れるから驚いた。動いて平気?」
「大丈夫だ。心配かけた・・・ごめん、ありがとう」
「・・・うん」


ランスとの会話は、あれ以上聞いてくる気はないらしい。
俺もまさかあんな風になるなんて想像していなかった。
今後も伝える事は出来ないだろう。



何か考え込んでいる様子のユージーンを窺い見れば、大丈夫だというように笑みを返された。


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