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開始
ユージーン
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物心つく前から、傍にいた侯爵の息子キアン
同い年で、私の遊び相手にと、いつも一緒に過ごしてきた。
淡い薄紫色の髪はサラサラ柔らかく、光によって色を変える珍しい瞳が特徴の儚げな子。
物静かで大人しく私にいつもついてまわって、心から慕い好かれているのを感じていた。
何を言おうとも、全て信じて従ってしまうのは、どうかと思うけど・・・
好意は嬉しいけれど、私の物であれば何でも、捨てた物でさえ宝物にするのはやめてもらいたい。
他の者と仲良くしようとすると、引き留めてくるのは少し鬱陶しい。
だけど、6歳のあの日、落馬した私を庇い頭を打ってキアンは変わった。
誰からも魅力的だと褒め称えられていた自慢の眼を隠すように前髪を下ろし、表情も見えにくくなった。
綺麗な髪だと私が一度口にした言葉に、ずっと伸ばしていた髪も短く切って活動的になった。
私に対しての慕う気持ちも好意も消え、距離をおこうとし始めた。
近しい人からの初めての拒絶にショックを受けた。
何度も何度も話しかけ、やっとキアンは私を見てくれた。
仕方ないなって顔は同じ年には見えなかった。
人が変わったように敬語も敬う態度も一切なくなり、大人達は不敬だと、側近を外すよう父王に進言したが、私は記憶を失った今のキアンにこの先もずっと傍にいてほしかった。
周りのように、王族として腫れ物のように扱うのではなく、一人の個として扱い見てくれるキアンが嬉しくて、大好きになって、もっと仲良くなりたいと、距離を縮めようと頑張った。
表情が見えないのが嫌で、事ある毎に前髪を上げ綺麗な眼を、顔を見た。
キアンに変わりないのに、まるで別人に見えた。
今までと違い、強い意志のある、輝きを増した瞳に惹き込まれた。
一生残ってしまった額の傷跡は、何でか私の印のようで嬉しかった。
傷のおかげで今のキアンと出会えたようで、傷が出来て良かったとさえ思った。
以前と同じように顔を合わせ過ごしていたが、キアンはある時から一人で熱心に調べものをし、ノートを作り始めた。
経路や国の貨幣価値、習慣、馬車の時間など・・・どこかに行くのだろうか? 誰からも何も聞かされていないが・・・。
それと同時期に護身術と剣術を始め、勉強に精を出すキアンに一抹の不安を覚えた。
何だろう・・・まるで、遠くに行く準備をしているような・・・
キアンのノートを盗み見れば、他国への行き方や理想の暮らし方がびっしりと書かれていて予感が当たったのを知る。
キアンが離れて行く? 私の前からいなくなる?
そんな時、キアンが以前から何度も暴漢に襲われ、異常な事態だと耳にして、この機会に城へ住まわせ逃げられぬよう父王へ嘆願した。
帰らなければ暴漢に襲われる危険もなくなり、何より今まで以上に一緒にいる時間が増える。
キアンはショックを受けていたようだが、私から離れるなんて嫌だ。
これからも変わらず側近として過ごし、良き友でいてもらいたい。
一生、ずっと私のそばにいてもらうんだ。
他には誰もいらない。
12歳になり中等部へ入ると成長が始まりキアンを軽々と抜いて見下ろすまでになった。
それに比べキアンはあまり成長せず、華奢なままだ。
沢山食べたり体を鍛えたり、色々と努力してたけれど、どれも効果はなく、母親に似たらしい。
思い悩む顔は儚気で、そばにいるのに、つい目で追ってしまう。
白く柔らかそうな項に吸い寄せられる。
周りは顔を隠しているようなキアンを私の傍に置くのはどうかと口にするけれど、誰よりも努力し剣術や護身術を習い、成績を残す勤勉なキアンに強く言える者はおらず、隠された髪の下の顔を知れば皆押し黙った。
不敬な態度も、ある時から皆の前では見せなくなり、文句のつけようがない側近として動くのに、また頭を打ったのかと医者に診せたらキアンが怒った。
その様子に何も変わっていないと胸をなで下ろした。
キアンに変わりないけれど、記憶を無くす前に戻ってしまうのは何でか嫌だ。
完全に一線を引き側近に徹しようするキアンに不快感を示せば、2人だけの時は今までと変わらず戻ってくれて、特別感に嬉しさが増した。
そんなある日、キアンが姿を消した。
何も言わずに離れるなんて事、ない。
嫌な予感がして、探しまわった。
体育倉庫から煙が上がるのを見て、そこへ行き目にした光景に初めて人に対し明確な殺意を抱いた。
キアンは強姦されかかっていた。
私以外の者が勝手にキアンに触れ傷つけている。
後少しでも遅かったら取り返しのつかない惨事になっていた。
暴漢達を全員伸して、キアンを隠し城へ連れ帰った。
今にも泣きそうな顔をし沈むキアンはずっと震えている。
私だけのキアンなのに、何故他の奴等が勝手に触れこんな顔をさせる?
全員拷問の末処刑したが、気が納まらない。
それに・・・何を燃やしていたのかと、回収させた燃え残りの紙は、以前と変わらない逃亡計画で、暗い気持ちが沸き上がった。
そうして再び私と距離を取ろうとするのも、よそよそしいのも、前準備をしているのか?
絶対に逃がさない。
優しくすれば、キアンは申し訳なさそうに距離を縮めてくれる。
そう、このまま一生私のそばにいればいい。
夏休みに思い出作りをしたいと口にされた時は、もう閉じ込めようと思った。
けれど純粋に興味だけの様子が見れ、夏休みに旅行へ誘えば久方ぶりに見る心からの笑顔に自分も微笑みを返していた。
あぁ、やっぱりキアンが大好きだ。
客船で旅に出て2日目、キアンはまたも襲われた。
やはり異常だ。
王族の私でなく皆キアンだけを襲う。
こんなに頻発するのは明らかにおかしい。
何かあるのだろうか・・・?
キアンは船内の娯楽施設で過ごしたがったが、危険を考慮し出来るだけ部屋で過ごす事にした。
部屋も広いから、そう退屈もしないだろう。
陸に着くまで部屋で過ごし、共に眠った。
隣で無防備に眠る姿に、腹の奥が熱くなり、指先で唇に触れれば想像以上の柔らかさに驚いた。
気付けば唇を重ね、キアンの口中を思うまま貪っていた。
あぁ、私はこうして触れたかったのだと気づいた。
それからも眠るキアンに口づけ続けた。
次第に物足りなくなり、肌へ触れた。
よく眠れないらしいキアンに、体に害のない安全な、睡眠作用のあるお茶を飲ませ、意識のない身体を開発していった。
気付かれぬ場所に跡を沢山残せば心が幾分満たされた。
時々意識を戻すが、翌日目覚めれば夢だと思い込んでいるキアンに何食わぬ顔をし、触れ続けた。
そのまま抱いてしまいたかったけれど、それをすればキアンを壊してしまいそうで、全てが終わってしまう気がして留まった。
既に体の変化に違和感を抱いている様子にこれ以上の事は出来ない。
15歳、高等部の寮へ入ると周りの目もなくなり、キアンとの距離をつめるべく、警戒されぬよう触れ接し、甘やかして過ごした。
クラスメイトの隣国の王子や公爵の息子たちに何故か怯えた様子で、庇護欲を掻き立てられる。
いつも以上にそばにいるようになって私は嬉しいけれど・・・気が緩んだせいか、キアンが再び姿を消した。
以前と同じ状況に焦って探せば、明らかにおかしな生徒がいるのが目に入る。
くぐもった声に扉を蹴破り、キアンを手籠めにする輩を死ぬ直前まで殴り続けた。
そのまま刎ねてしまいたかったが、キアンが心配で警備の者へ処分を告げ後を任せる。
露わになった肌に制服をかけ、頬に触れれば、キアンは号泣した。
こんなに取り乱すキアンは初めてで、どうしていいのかわからなかった。
介抱し、優しくすればその度キアンは傷つき泣きそうな顔をする。
何故だ・・・?
私の何がキアンを傷つける? どうしたらいい?
その日以降、キアンは何かに追われるように勉強と側近に精を出し、余裕がない程忙しく過ごすようになった。
夜になれば夢に魘され飛び起きる。
怯えた目で私を映すのに、大丈夫だと、落ち着くまで何度も声をかけ抱きしめた。
どんな悪夢を見ている?
絶対に話してはくれないが、襲われた事が原因なのは解る。
お茶もあまり意味がない。薬を使う事は避けたい。
何も出来ない自分が悔しかった。
剣術と護身術に今まで以上に取り組み、夢も見ない程に疲れ、事切れるように眠りに落ちる姿は痛々しい。
その甲斐あって側近の地位は揺るぎないものとなったけれど・・・全く嬉しくなかった。
学年が上がり、何か区切りがつけられたのかキアンは以前の元気を取り戻した。
心配をかけて悪かったと、今までありがとうと礼を言われ、ようやく安心できた。
前と変わらぬ日常が戻り、図書室で過ごしていると、下級生がキアンに声をかけてきた。
背後の輩の話が耳に入れば、どうやら人気者らしい。
一瞬目があったが、周りの奴等と同じだ。
けれどキアンは違ったようだ。
雰囲気が明らかに変わり、下級生に興味を持った事に心がざわついた。
私以外の者に興味を持つ必要はない・・・笑いかけるな・・・会話もするな・・・私だけを見ろ。
以前話していた、天然で可愛い子 のイメージの下級生に警戒した。
下級生に言われ、ずっと隠していた顔を曝したのに、どちらにかわからぬ殺意が沸いた。
私が言っても一度も顔を曝さなかったのに、あの下級生の言葉ならば曝すのか。
直ぐに元に戻したが、曝した顔を見た周りの眼差しが変化したのに苛立ちが募る。
こいつら全員の目を潰してやりたい。
誰の目にも触れさせぬよう閉じ込めてしまえたら、どんなにいいだろう。
いっそ今すぐそうしてしまおうか・・・部屋はある。
キアンは下級生に私が接触しようとすると、近づかぬよう苦言を呈してくる。
まるで想う者を私に取られまいとしているような言動に、どす黒い感情が沸き出してくる。
再び逃亡案を作成し、クラスメイトの男子に口止め料を払い薬を入手しているのを見つけた時は、自分でもよく踏み留まれたと思う。
毒薬だと?
逃亡できなかったら死ぬつもりなのか? 誰と逃げるつもりだ? あの下級生か?
離れるなど、自死するなど絶対に許さない。させない。
夏休みに下級生と勉強をするのだと聞かされ、我慢の限界がきた。
城に連れ帰り、家庭教師をつければいい。
もう学園に通う必要もない。
馬車に押し込めば、傷ついた顔で「お前なんか大嫌いだ」と言われ、抑えてきた暗い感情が一気に噴出した。
閉じ込め、私以外誰にも会わせず、触れさせず、この先、生きていけるのは私のそばだけしかないと思い知らせてやればいい。
私なしでは生きていけなくしてしまえばいい。
元々私のものだ。
何をしようが構わない。
気持ちがなくとも、その他の全てを手に入れる。
絶対に逃がさない。離れるなど許さない。
愛を告げれば、逃げるように視線が彷徨った。
誰を探している?
お前は私だけのものだとわからせてやらないと・・・
限りなく優しく甘やかしたいと思う反面、どこまでも追い詰め酷くしたいと思う暗い気持ちが抑えられない。
枷を手首に嵌めれば、恐怖にキアンの顔が引きつった。
そう。
死ぬまで私の前でだけ、生きればいい。
その瞳に私だけを映し求め続ければいい。
キアンは永遠に私だけのものだ。
どれ程泣き叫ぼうが、拒絶されようが、絶対に手放したりなど、しない。
何があろうと、絶対に。
------------
すみません。
自分の確認不足でショート版を下げました。
詳細は近況ボードにて確認していただけたらと思います。
本当に申し訳ございません。
同い年で、私の遊び相手にと、いつも一緒に過ごしてきた。
淡い薄紫色の髪はサラサラ柔らかく、光によって色を変える珍しい瞳が特徴の儚げな子。
物静かで大人しく私にいつもついてまわって、心から慕い好かれているのを感じていた。
何を言おうとも、全て信じて従ってしまうのは、どうかと思うけど・・・
好意は嬉しいけれど、私の物であれば何でも、捨てた物でさえ宝物にするのはやめてもらいたい。
他の者と仲良くしようとすると、引き留めてくるのは少し鬱陶しい。
だけど、6歳のあの日、落馬した私を庇い頭を打ってキアンは変わった。
誰からも魅力的だと褒め称えられていた自慢の眼を隠すように前髪を下ろし、表情も見えにくくなった。
綺麗な髪だと私が一度口にした言葉に、ずっと伸ばしていた髪も短く切って活動的になった。
私に対しての慕う気持ちも好意も消え、距離をおこうとし始めた。
近しい人からの初めての拒絶にショックを受けた。
何度も何度も話しかけ、やっとキアンは私を見てくれた。
仕方ないなって顔は同じ年には見えなかった。
人が変わったように敬語も敬う態度も一切なくなり、大人達は不敬だと、側近を外すよう父王に進言したが、私は記憶を失った今のキアンにこの先もずっと傍にいてほしかった。
周りのように、王族として腫れ物のように扱うのではなく、一人の個として扱い見てくれるキアンが嬉しくて、大好きになって、もっと仲良くなりたいと、距離を縮めようと頑張った。
表情が見えないのが嫌で、事ある毎に前髪を上げ綺麗な眼を、顔を見た。
キアンに変わりないのに、まるで別人に見えた。
今までと違い、強い意志のある、輝きを増した瞳に惹き込まれた。
一生残ってしまった額の傷跡は、何でか私の印のようで嬉しかった。
傷のおかげで今のキアンと出会えたようで、傷が出来て良かったとさえ思った。
以前と同じように顔を合わせ過ごしていたが、キアンはある時から一人で熱心に調べものをし、ノートを作り始めた。
経路や国の貨幣価値、習慣、馬車の時間など・・・どこかに行くのだろうか? 誰からも何も聞かされていないが・・・。
それと同時期に護身術と剣術を始め、勉強に精を出すキアンに一抹の不安を覚えた。
何だろう・・・まるで、遠くに行く準備をしているような・・・
キアンのノートを盗み見れば、他国への行き方や理想の暮らし方がびっしりと書かれていて予感が当たったのを知る。
キアンが離れて行く? 私の前からいなくなる?
そんな時、キアンが以前から何度も暴漢に襲われ、異常な事態だと耳にして、この機会に城へ住まわせ逃げられぬよう父王へ嘆願した。
帰らなければ暴漢に襲われる危険もなくなり、何より今まで以上に一緒にいる時間が増える。
キアンはショックを受けていたようだが、私から離れるなんて嫌だ。
これからも変わらず側近として過ごし、良き友でいてもらいたい。
一生、ずっと私のそばにいてもらうんだ。
他には誰もいらない。
12歳になり中等部へ入ると成長が始まりキアンを軽々と抜いて見下ろすまでになった。
それに比べキアンはあまり成長せず、華奢なままだ。
沢山食べたり体を鍛えたり、色々と努力してたけれど、どれも効果はなく、母親に似たらしい。
思い悩む顔は儚気で、そばにいるのに、つい目で追ってしまう。
白く柔らかそうな項に吸い寄せられる。
周りは顔を隠しているようなキアンを私の傍に置くのはどうかと口にするけれど、誰よりも努力し剣術や護身術を習い、成績を残す勤勉なキアンに強く言える者はおらず、隠された髪の下の顔を知れば皆押し黙った。
不敬な態度も、ある時から皆の前では見せなくなり、文句のつけようがない側近として動くのに、また頭を打ったのかと医者に診せたらキアンが怒った。
その様子に何も変わっていないと胸をなで下ろした。
キアンに変わりないけれど、記憶を無くす前に戻ってしまうのは何でか嫌だ。
完全に一線を引き側近に徹しようするキアンに不快感を示せば、2人だけの時は今までと変わらず戻ってくれて、特別感に嬉しさが増した。
そんなある日、キアンが姿を消した。
何も言わずに離れるなんて事、ない。
嫌な予感がして、探しまわった。
体育倉庫から煙が上がるのを見て、そこへ行き目にした光景に初めて人に対し明確な殺意を抱いた。
キアンは強姦されかかっていた。
私以外の者が勝手にキアンに触れ傷つけている。
後少しでも遅かったら取り返しのつかない惨事になっていた。
暴漢達を全員伸して、キアンを隠し城へ連れ帰った。
今にも泣きそうな顔をし沈むキアンはずっと震えている。
私だけのキアンなのに、何故他の奴等が勝手に触れこんな顔をさせる?
全員拷問の末処刑したが、気が納まらない。
それに・・・何を燃やしていたのかと、回収させた燃え残りの紙は、以前と変わらない逃亡計画で、暗い気持ちが沸き上がった。
そうして再び私と距離を取ろうとするのも、よそよそしいのも、前準備をしているのか?
絶対に逃がさない。
優しくすれば、キアンは申し訳なさそうに距離を縮めてくれる。
そう、このまま一生私のそばにいればいい。
夏休みに思い出作りをしたいと口にされた時は、もう閉じ込めようと思った。
けれど純粋に興味だけの様子が見れ、夏休みに旅行へ誘えば久方ぶりに見る心からの笑顔に自分も微笑みを返していた。
あぁ、やっぱりキアンが大好きだ。
客船で旅に出て2日目、キアンはまたも襲われた。
やはり異常だ。
王族の私でなく皆キアンだけを襲う。
こんなに頻発するのは明らかにおかしい。
何かあるのだろうか・・・?
キアンは船内の娯楽施設で過ごしたがったが、危険を考慮し出来るだけ部屋で過ごす事にした。
部屋も広いから、そう退屈もしないだろう。
陸に着くまで部屋で過ごし、共に眠った。
隣で無防備に眠る姿に、腹の奥が熱くなり、指先で唇に触れれば想像以上の柔らかさに驚いた。
気付けば唇を重ね、キアンの口中を思うまま貪っていた。
あぁ、私はこうして触れたかったのだと気づいた。
それからも眠るキアンに口づけ続けた。
次第に物足りなくなり、肌へ触れた。
よく眠れないらしいキアンに、体に害のない安全な、睡眠作用のあるお茶を飲ませ、意識のない身体を開発していった。
気付かれぬ場所に跡を沢山残せば心が幾分満たされた。
時々意識を戻すが、翌日目覚めれば夢だと思い込んでいるキアンに何食わぬ顔をし、触れ続けた。
そのまま抱いてしまいたかったけれど、それをすればキアンを壊してしまいそうで、全てが終わってしまう気がして留まった。
既に体の変化に違和感を抱いている様子にこれ以上の事は出来ない。
15歳、高等部の寮へ入ると周りの目もなくなり、キアンとの距離をつめるべく、警戒されぬよう触れ接し、甘やかして過ごした。
クラスメイトの隣国の王子や公爵の息子たちに何故か怯えた様子で、庇護欲を掻き立てられる。
いつも以上にそばにいるようになって私は嬉しいけれど・・・気が緩んだせいか、キアンが再び姿を消した。
以前と同じ状況に焦って探せば、明らかにおかしな生徒がいるのが目に入る。
くぐもった声に扉を蹴破り、キアンを手籠めにする輩を死ぬ直前まで殴り続けた。
そのまま刎ねてしまいたかったが、キアンが心配で警備の者へ処分を告げ後を任せる。
露わになった肌に制服をかけ、頬に触れれば、キアンは号泣した。
こんなに取り乱すキアンは初めてで、どうしていいのかわからなかった。
介抱し、優しくすればその度キアンは傷つき泣きそうな顔をする。
何故だ・・・?
私の何がキアンを傷つける? どうしたらいい?
その日以降、キアンは何かに追われるように勉強と側近に精を出し、余裕がない程忙しく過ごすようになった。
夜になれば夢に魘され飛び起きる。
怯えた目で私を映すのに、大丈夫だと、落ち着くまで何度も声をかけ抱きしめた。
どんな悪夢を見ている?
絶対に話してはくれないが、襲われた事が原因なのは解る。
お茶もあまり意味がない。薬を使う事は避けたい。
何も出来ない自分が悔しかった。
剣術と護身術に今まで以上に取り組み、夢も見ない程に疲れ、事切れるように眠りに落ちる姿は痛々しい。
その甲斐あって側近の地位は揺るぎないものとなったけれど・・・全く嬉しくなかった。
学年が上がり、何か区切りがつけられたのかキアンは以前の元気を取り戻した。
心配をかけて悪かったと、今までありがとうと礼を言われ、ようやく安心できた。
前と変わらぬ日常が戻り、図書室で過ごしていると、下級生がキアンに声をかけてきた。
背後の輩の話が耳に入れば、どうやら人気者らしい。
一瞬目があったが、周りの奴等と同じだ。
けれどキアンは違ったようだ。
雰囲気が明らかに変わり、下級生に興味を持った事に心がざわついた。
私以外の者に興味を持つ必要はない・・・笑いかけるな・・・会話もするな・・・私だけを見ろ。
以前話していた、天然で可愛い子 のイメージの下級生に警戒した。
下級生に言われ、ずっと隠していた顔を曝したのに、どちらにかわからぬ殺意が沸いた。
私が言っても一度も顔を曝さなかったのに、あの下級生の言葉ならば曝すのか。
直ぐに元に戻したが、曝した顔を見た周りの眼差しが変化したのに苛立ちが募る。
こいつら全員の目を潰してやりたい。
誰の目にも触れさせぬよう閉じ込めてしまえたら、どんなにいいだろう。
いっそ今すぐそうしてしまおうか・・・部屋はある。
キアンは下級生に私が接触しようとすると、近づかぬよう苦言を呈してくる。
まるで想う者を私に取られまいとしているような言動に、どす黒い感情が沸き出してくる。
再び逃亡案を作成し、クラスメイトの男子に口止め料を払い薬を入手しているのを見つけた時は、自分でもよく踏み留まれたと思う。
毒薬だと?
逃亡できなかったら死ぬつもりなのか? 誰と逃げるつもりだ? あの下級生か?
離れるなど、自死するなど絶対に許さない。させない。
夏休みに下級生と勉強をするのだと聞かされ、我慢の限界がきた。
城に連れ帰り、家庭教師をつければいい。
もう学園に通う必要もない。
馬車に押し込めば、傷ついた顔で「お前なんか大嫌いだ」と言われ、抑えてきた暗い感情が一気に噴出した。
閉じ込め、私以外誰にも会わせず、触れさせず、この先、生きていけるのは私のそばだけしかないと思い知らせてやればいい。
私なしでは生きていけなくしてしまえばいい。
元々私のものだ。
何をしようが構わない。
気持ちがなくとも、その他の全てを手に入れる。
絶対に逃がさない。離れるなど許さない。
愛を告げれば、逃げるように視線が彷徨った。
誰を探している?
お前は私だけのものだとわからせてやらないと・・・
限りなく優しく甘やかしたいと思う反面、どこまでも追い詰め酷くしたいと思う暗い気持ちが抑えられない。
枷を手首に嵌めれば、恐怖にキアンの顔が引きつった。
そう。
死ぬまで私の前でだけ、生きればいい。
その瞳に私だけを映し求め続ければいい。
キアンは永遠に私だけのものだ。
どれ程泣き叫ぼうが、拒絶されようが、絶対に手放したりなど、しない。
何があろうと、絶対に。
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本当に申し訳ございません。
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