猫被りも程々に。

ぬい

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February

02※

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「……疲れた」

部屋に入った瞬間、どっと疲れがきて取りに来たはずの問題集をやる気分ではなくベッドに寝転んだ。もうこのまま寝てしまいたいくらいだったが、先程から本棚の本を取り出しては戻す動作を繰り返している会長に寝られる訳もなく身体を起こして問い掛ける。

「…何してるんですか」
「いかがわしい本とかないかなって」
「そんなのねーよ」

そう言っても信じる気は無い様で、本棚の次はベッドの下、机の上と順に物色。一通り見て何も無いことが分かると諦めた様子でベッドに腰掛けた。

「1冊くらいはあると思ったのに」
「残念でしたね」

不満そうな顔をした会長は暇潰しに本でも読もうと思ったのか不意にベッドボードに置いてあった本を手に取る。
その瞬間、本の隙間からヒラリと一枚の写真がシーツの上に落ちて、自然と「あ」という声が上がった。それが何か分かったと同時に俺は写真を隠すように蹲る。

「…退いて」
「嫌です」

絶対退きたくない。こんなの見られたら死ぬ。
頑なに退けようとしない俺に会長は容赦なく脇腹を擽ってきた。
そんな攻撃にも暫くは耐えていたが、正直あまり擽りに強くない。地獄のような時間に耐えきれず、身体を捩るとその隙に身体の下にあった写真を奪われてしまい、それを見るなり会長はへーと微笑んだ。

(……いっそ俺を殺せ……)

あの写真は会長が文化祭で燕尾服を着た時のもの。
しかも誰かから貰った、という訳でなく親衛隊の集会に行った時に売ってあってつい自分で買ってしまったものだ。

「この写真どうしたの?」
「……親衛隊の子から貰いました」
「こんなの貰えるほど親衛隊で仲良い人いたっけ」
「……嘘です。500円で買いました」

見透かしたように言われてあっさりと正直に全て白状してしまった。結構いい値段するなと言っている会長の顔が見られない。俯いた顔が上げられない。頼むから今すぐ自分の部屋に帰ってくれ。

「買わなくても写真くらい撮らせてあげるのに」
「うるさいな、もう返してくださいよ」

奪い取ろうと思って手を伸ばすと会長はその手を上手く躱して掴んだ。毎度の馬鹿力で手を振りほどこうとしても振りほどけない。

「これ見て抜いた?」
「……その質問答える必要ありますか」
「答えてくれたら返してあげる」

枕元に置いてある時点で察して欲しい。いや察してるからこそわざと聞いてるのか。相変わらず性格が悪い。
答えないと離してくれそうになかったので俯いて小さい声で呟くように答える。

「……抜いた」
「なんて?」
「抜きましたけど何か!!」

顔を上げて声を荒らげると満足したのか掴んでいた手は解放された。すぐさま写真を奪い取り、どこかに収めようと立ち上がった瞬間、引き戻すように腕を引っ張られて今度は会長の膝の上に乗せられる。

「…なんで勃ってるんですか」
「そりゃあ勃つでしょ」
「離れてくださ……ん…っ、」

お尻に硬いもの当たって、口を閉じろと言わんばかりに唇を重ねられた。無理矢理口内をこじ開けて舌を絡められたら会長の服を握り締めるだけでろくな抵抗も出来ない。身体の力が抜けて、手に持っていた写真が床に落ちる。

「…は、…ほ、んとだめ……」
「声出さなきゃバレないから」
「そういう問題じゃ、…っ、ぁ…、」

服の上から乳首を優しく撫でられるともう頭はふわふわで何も考えられない。でも隣の部屋から聞こえた甘ったるい声で辛うじて我に返った。

「隣も楽しんでるね」
「…ほんと、マジで殺、す…、」

そんなことを言っている最中も胸は完全に指に弄ばれていて息は絶え絶え。我に返ったのもほんの一瞬で、先程からむず痒い刺激で触られている胸を思わず強請るように反らす。

「直接触って欲しいなら服くわえて」

髪の毛を撫でながら言われ、溶けかけた頭はもう直接触れてもらうことしか考えられず、素直に服を捲って咥えた。乳首を撫でて摘まれると声が漏れるが服をくわえてるお陰でそこまで大きな声は出ない。
親指と中指で摘んだまま人差し指で優しく擦られたり、ぎゅーと摘んだまま軽く引っ張られたりすれば声が出るのは時間の問題だった。

「ん゙…っぅ゙…ふ、…ぅ゙…っ」
「声出てる」
「…ら、…って、…っ、」

こんなの耐えろっていう方が無理だ。
クリスマスに以来乳首だけで達する方法を覚えてしまって、正直もうイってしまいそうだった。でも先程から丁度いい力加減で弄ばれているせいか中々イけない。

「も゙……いきた…ぃ、…」
「声聞こえてもいいの?」
「だ、め…、ん゙っ、…っ、」
「じゃあ我慢した方がいいね」

そんな状態が暫く続いて限界を迎えた俺が小さな声で訴えれば、宥めるように乳首を優しく吸われる。歯を食いしばってなんとか刺激に耐えながら、先程から疼いている後ろの穴に硬くなっている会長のものに布越しに擦り付けた。

「ん゙っ、ン…ぅ……ふ……っ」

でも当然疼く穴はそれだけの刺激で足りる筈もなく。
我慢出来ず、咥えていた服を裾を口から離すと乗っかっていた身体を離して会長の鞄からゴムを取り出す。

「何やってんの」
「…見たら、わかるでしょう…」

俺は自分の履いていたスウェットを脱いで、会長のも脱がせると勃ちあがっている性器にゴムをつけて唾液を垂らした。そして再び身体の上に乗っかり、挿入しようと性器に触れた瞬間、その手はすぐに絡めとられた。

「セックスしないって言ってなかった?」
「…言った、けど、我慢出来、ない……」

手を離してくれそうもない相手に力で勝てないことは分かっていたので穴に性器を擦りつけるように腰を動かせば、会長は眉間に皺を寄せて息を吐く。

後もうひと押しだと分かり、今度はしがみついて「凌さんのいれたいです」と耳元で言うと手は解かれて一気に奥まで挿入された。

「あ゙、~っ…、!」
「こういう時だけ名前呼ぶのはずるい」
「あ゙、っ、!は…ぁ゙…、っ!ん゙…っ…!」

息を整える暇もなくそのまま腰を動かされて声がひっきりなしに漏れる。

乗っかる体勢から押し倒すような体勢に変えられてからはより一層動きが激しくなり、なんとか口元に手を当てて声を抑えようと思っても完全に抑えるのは不可能。隣の部屋に聞こえてしまうのは分かっていても目の前の快感には勝てない。

あっという間に絶頂を迎えそうになって、会長に背中に手を回すと急に動きが止まった。

「そういえば声聞かれたくないんだっけ」
「そんなの、今更…ぁ゙…っ、」

今度は奥に押し付けるようにぐりぐりと突かれて達する手前で身体が震える。
今更そんな気遣いされても遅い。もうとっくの前から我慢出来てないことは分かっている筈なのに俺の反応を楽しむように達せない程度にゆっくりと抜き差しされ、生理的な涙が伝った。

「辛い?」
「つら…い……っ、も、動いて…くださ…っ…」
「可愛いな」
「ん゙…っ、ふ…ぅ…っ、ン…っ、」

濡れた頬を優しく撫でた後、唇が重ねられる。少しでも快感を拾いたくて貪るように舌を絡めれば、飲み込みきれなかった唾液が顎に垂れた。
その間も大して腰を動かしてくれなかったが、キスのせいかじんわりとした刺激が走って気持ち良い。

「ん゙、ふ、…~~、っ…!」

夢中で絡めていると不意に上顎をなぞられ、中途半端なところで止まっていた快感が一気にせり上がってきた。身体が痙攣して、苦しさのあまり会長の身体を押し返す。

「…もしかして、イった?」
「…は、…っ、多、分……」
「そっか」
「ぁ゙~っ、まっ、…、あ゙ァ…っ、!」

どうやら会長はイカせる気はなかったらしく驚いたような表情をするとすぐに笑って、痙攣する中に耐えきれなくなったのか腰を激しく動かした。

奥を突かれる度、精液か我慢汁か分からないものが鈴口から垂れる。

「ぁ゙~、は…っ、…、あ゙っ…~~っ、!、は…っ、…」

暫く律動していると会長は大きく息を吐いて、中のものを抜いた。ゴムの中には精液が出ていて、達してしまったことが確認出来る。

「声、隣に聞こえたかな」
「確実に聞こえたでしょうね…」

後半から隣の事などすっかり忘れてしまっていた。
お互い肩を揺らしながら当分は息を整えて、後処理を無言で済ませた後、咥えていたせいでぐちゃぐちゃになった服を脱いで新しいものに着替える。

それからは洗面所に向かうため、扉を開けると何かに大きなものにぶつかった。

「「あ」」     

扉の後ろを覗くとそこにいたのは顔を真っ赤にした理久と苦笑いを浮かべている久我先輩。何をしていたのか瞬時に理解し、洗濯カゴに入れようとしていた服を持つ手が震える。

「……いつから居ましたそこに」
「…橘がイきたいって言ってるあた…」
「死ね!!!」

かなり前からじゃねーか。
恥ずかしさのあまり久我先輩を持っていた服で思い切り叩くと「だってこっちだけ見られんの不公平やし」と訳の分からない言い訳をされた。あんな現場見たくて見たわけじゃない。なのにお返しにセックス現場聞き耳立てられるってどんな不幸だよ。

「にしても2人とも淡白そうなのに結構……ていうか橘って意外と可愛く喘ぐんやな~」
「………」

何だこいつ。めちゃくちゃうざい。
久我先輩はまるで弱味でも握ったようににやにやしながら話しかけて来て、廊下に追い出してやりたくなったが一応先輩なのでぐっと黙って耐える。

「や~普段は性欲なんてありませんって顔してるのにほんま意外やわ」
「………」
「もしかして快感に弱いタイプ?いつもあんな風に強請ってるん?」
「………」
「ていうかセックスしないって言ってた本人がまさかあんなノリノリになるとは思わんかったな~」
「………何が言いたいんですか」
「え」

暫く頑張って耐えたがもう限界。
無視して洗面所に向かうはずの身体は気が付けば胸倉を掴む勢いで久我先輩に迫っていた。

「さっきからなんですか文句あるんですか」
「や、文句はないけど……」
「じゃあなんですか。俺がイきたいって強請ってたらおかしいって話ですか。あんなこと言ったくせにセックスすんなって話ですか。言っておきますけど俺だってするつもり無かったですよ。でも仕方ないじゃないですか。気持ちいいことされたら我慢出来ないんですもん。ていうかそっちもやってましたよね。俺の事からかう権利あるんですか?」
「ないです…」
「なら黙っといてくれません?めちゃくちゃうざいんで」
「はい、すいませんでした…」

苛立ちのあまり一気に捲し立てると久我先輩は反省した顔で引き下がった。謝罪が聞けたので少しスッキリした気持ちで身体を離すと久我先輩は助けを乞う様に会長の元に向かう。

「何あれ、めっちゃ怖かったんやけど…」
「相当恥ずかしかったんじゃない?」

まるで他人事のように答える会長に羞恥心というものは無いのかと問い掛けたくなった。なんでヤってるとこ聞き耳立てられたのにそんな余裕なんだよ。少しは焦れよ。

「前から思ってたけど、支倉ってほんまいい性格しとるな」
「そう?」
「相当Sやろ、キミ」

洗面所から戻っても立ったままそんな会話をしていて、久我先輩の話に心の中で同意しながら自室に戻るために横をすり抜けた。会長はその言葉をあっさり認めるのかと思いきや何故か少し考えたように視線を動かす。

「いや湊がMだか…」
「合わせてやってんだよ!」

無視して部屋に戻るはずが人のせいにしてくる会長に思わず口を挟んでしまった。通販でわざわざあんなもん買ってきておいてよく俺のせいにできたな。

「橘はそう言うてるけど」
「じゃあそういうことでいいや」

何だ、その仕方ないから折れてやったみたいな反応は。めちゃくちゃムカつく。
納得いかないまま部屋に戻ってすぐベッド寝転ぶと扉越しから「おもろいもん聞いたしそろそろ寝よか~」と呑気な声が聞こえた。早く寝ろ。そして一生目覚めるな。

そんなことを思いながらウトウトしている最中。
会長は俺を壁際に寄せて当たり前のように隣に寝転び冷たい足を絡めてきた。

「…せま」
「文句あるなら床かソファーで寝てください」

背を向けてそう言うと今度は向かい合うように抱き寄せられる。人肌の温かい感触に目を瞑るとあっという間に意識は夢の中へと消えていった。
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