57 / 127
October
遊園地
しおりを挟む
金曜日の熱が消えないまま、土曜日が過ぎ、あっという間に地獄のような日曜日。
待ち合わせに指定された遊園地の最寄り駅は人が多く、既に帰りたいという感情でいっぱいだったが、遠くから久我先輩の姿を見て余計にそう思ってしまう。
「お、二人とも集合早かったな~。てかほんまに連れて来てくれたんや、流石」
「…可愛い女の子は?」
「…これには深い事情がありまして…」
待ち合わせ場所に着くなり、隣にいた理久はすごい形相で俺に迫った。
それもそうだ。俺はあの日可愛い女の子が来るだのなんだのと適当な嘘を並びに並べ、なんとか理久をここまで連れてこさせたのだ。
怒るのも仕方ない。しかも長年喧嘩していた久我先輩がいるとなると更に。本当にごめん。
原因は久我先輩なのだから仲裁してくれたらいいのに、当の本人はまるで他人事のようにキョロキョロと周りを見渡していた。そして誰かを発見した瞬間、「お、きたきた」といつもより一段と陽気な声で手を振る。
「ごめん、遅くなって」
「全然。むしろ時間ピッタリやし」
「…この2人は?」
やってきたのは全く今の状況を飲み込めていない会長。
俺は勿論理久も怒るのを忘れて、ポカンと口を開けたまま互いを見つめる。この場で状況を把握しているのは調子の良い笑みを浮かべる久我先輩だけのようだ。
暫く見つめあった後。
ようやく今何が起きているのか飲み込むことが出来て、今度は俺が久我先輩に迫る番だった。
「…どういうことですか、これ」
「あー…3人やと橘寂しいかなって思って…ダブルデート的な…いってえ!!」
「アホか!!」
嘘とはいえ元彼をこんな場所に連れてくるやつがいるか。
しかもこのタイミングで。最悪にも程がある。
ここ最近色々な出来事があったせいで余計に腹が立ち、思わず久我先輩の頭に本気で1発平手打ちをかました。会長と理久はそんな俺を特に止める様子もなく、ただ黙って見ている。きっと2人とも同じ気持ちだったに違いない。
「まあ折角やから4人で楽しもうや。な?」
「………」
周りの人は目の前に見える遊園地にはしゃいでいるにも関わらず、空気は最悪。久我先輩以外今から遊園地に行くという雰囲気ではなかった。
というか正直、ここに来るまでは駅まで行くだけ行って遊園地には行かずに帰ろうと思っていたのに。
楽しそうに歩き始めた久我先輩を仕方なく追うように後をついていくも皆の足取りは明らかに遅い。
段取りよくチケットを渡され、入場するとそこは本当に夢の国のようで今まで見ていた景色とは違い、洋風な街並みが広がっていた。
「人すごいね」
「日曜やからな、やっぱりどのアトラクションも並んでるわ」
そう言いつつも久我先輩は場内の地図見ることなくすんなりと歩き進めて、入口から少し離れたところにあるアトラクションの列に並んだ。見た感じ恐らく絶叫系だろう。
待ち時間は1時間近くあったが、その間ずっと喋り倒している久我先輩に3人で適当に相槌を打っていると暇をすることもなくいつの間にか順番が回ってきた。
乗り物の形状から2人乗り。4人の俺たちは2人2人で別れなければならない。
「俺は湊と…」
「ミヤマエくんは俺と乗ろうや」
「は、嫌だ!ちょ…!」
どう別れるか揉める暇もなく、久我先輩に強引に連れて行かれた理久は席に着くなり「バー降ろしますねー」と安全バーまで降ろされ、なすがまま状態。嘘をついてここまで連れてきたのは俺だが流石にどうすることも出来ないのでとりあえず心の中で謝罪だけしておく。
「絶叫系得意なの?」
「まあまあ。会長は?」
「苦手ではないけど、好きではない」
「なんですかそれ」
「疲れるから好んでは乗らないってこと」
そんな会話を繰り広げていた俺達にも安全バーが降ろされ、逃げ場がなくなったところで急に不安が過ぎった。
先程の会話でついまあまあだと言ってしまったが、よく考えたら中1以来こういう絶叫系のアトラクションに乗った記憶が無い。しかもその時は顔を青くしながらもう一生乗らないと誓った気がする。
久々すぎてそんなことすっかり忘れていた。
そんなこと今思い出しても遅く、無情にも乗り物は少しずつ音を立てて上昇を始めて、1番上に辿り着いた瞬間、物凄いスピードで加速して。
ーーーその辺りからもうあまり記憶がない。
待ち合わせに指定された遊園地の最寄り駅は人が多く、既に帰りたいという感情でいっぱいだったが、遠くから久我先輩の姿を見て余計にそう思ってしまう。
「お、二人とも集合早かったな~。てかほんまに連れて来てくれたんや、流石」
「…可愛い女の子は?」
「…これには深い事情がありまして…」
待ち合わせ場所に着くなり、隣にいた理久はすごい形相で俺に迫った。
それもそうだ。俺はあの日可愛い女の子が来るだのなんだのと適当な嘘を並びに並べ、なんとか理久をここまで連れてこさせたのだ。
怒るのも仕方ない。しかも長年喧嘩していた久我先輩がいるとなると更に。本当にごめん。
原因は久我先輩なのだから仲裁してくれたらいいのに、当の本人はまるで他人事のようにキョロキョロと周りを見渡していた。そして誰かを発見した瞬間、「お、きたきた」といつもより一段と陽気な声で手を振る。
「ごめん、遅くなって」
「全然。むしろ時間ピッタリやし」
「…この2人は?」
やってきたのは全く今の状況を飲み込めていない会長。
俺は勿論理久も怒るのを忘れて、ポカンと口を開けたまま互いを見つめる。この場で状況を把握しているのは調子の良い笑みを浮かべる久我先輩だけのようだ。
暫く見つめあった後。
ようやく今何が起きているのか飲み込むことが出来て、今度は俺が久我先輩に迫る番だった。
「…どういうことですか、これ」
「あー…3人やと橘寂しいかなって思って…ダブルデート的な…いってえ!!」
「アホか!!」
嘘とはいえ元彼をこんな場所に連れてくるやつがいるか。
しかもこのタイミングで。最悪にも程がある。
ここ最近色々な出来事があったせいで余計に腹が立ち、思わず久我先輩の頭に本気で1発平手打ちをかました。会長と理久はそんな俺を特に止める様子もなく、ただ黙って見ている。きっと2人とも同じ気持ちだったに違いない。
「まあ折角やから4人で楽しもうや。な?」
「………」
周りの人は目の前に見える遊園地にはしゃいでいるにも関わらず、空気は最悪。久我先輩以外今から遊園地に行くという雰囲気ではなかった。
というか正直、ここに来るまでは駅まで行くだけ行って遊園地には行かずに帰ろうと思っていたのに。
楽しそうに歩き始めた久我先輩を仕方なく追うように後をついていくも皆の足取りは明らかに遅い。
段取りよくチケットを渡され、入場するとそこは本当に夢の国のようで今まで見ていた景色とは違い、洋風な街並みが広がっていた。
「人すごいね」
「日曜やからな、やっぱりどのアトラクションも並んでるわ」
そう言いつつも久我先輩は場内の地図見ることなくすんなりと歩き進めて、入口から少し離れたところにあるアトラクションの列に並んだ。見た感じ恐らく絶叫系だろう。
待ち時間は1時間近くあったが、その間ずっと喋り倒している久我先輩に3人で適当に相槌を打っていると暇をすることもなくいつの間にか順番が回ってきた。
乗り物の形状から2人乗り。4人の俺たちは2人2人で別れなければならない。
「俺は湊と…」
「ミヤマエくんは俺と乗ろうや」
「は、嫌だ!ちょ…!」
どう別れるか揉める暇もなく、久我先輩に強引に連れて行かれた理久は席に着くなり「バー降ろしますねー」と安全バーまで降ろされ、なすがまま状態。嘘をついてここまで連れてきたのは俺だが流石にどうすることも出来ないのでとりあえず心の中で謝罪だけしておく。
「絶叫系得意なの?」
「まあまあ。会長は?」
「苦手ではないけど、好きではない」
「なんですかそれ」
「疲れるから好んでは乗らないってこと」
そんな会話を繰り広げていた俺達にも安全バーが降ろされ、逃げ場がなくなったところで急に不安が過ぎった。
先程の会話でついまあまあだと言ってしまったが、よく考えたら中1以来こういう絶叫系のアトラクションに乗った記憶が無い。しかもその時は顔を青くしながらもう一生乗らないと誓った気がする。
久々すぎてそんなことすっかり忘れていた。
そんなこと今思い出しても遅く、無情にも乗り物は少しずつ音を立てて上昇を始めて、1番上に辿り着いた瞬間、物凄いスピードで加速して。
ーーーその辺りからもうあまり記憶がない。
1
お気に入りに追加
1,133
あなたにおすすめの小説
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
見習い騎士の少年がマッサージ屋に行ったらひどい目にあった話
TAKO
BL
騎士を目指して毎日頑張ってるルー少年。
だけど体の疲れが全然取れず鍛錬がキツイ。そんな時に腕のいいマッサージ屋の話を小耳に挟んで……。
中身のないエロです。
攻めは複数 × 可愛い少年見習い騎士
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
【BL-R18】敗北勇者への快楽調教
ぬお
BL
※ほぼ性的描写です
人間の国々を脅かす魔王を討伐するために単身魔王の城へ乗り込んだ勇者。だが、魔王の圧倒的な力に敗北し、辱めを受けてしまうのだった。
※この話の続編はこちらです。
↓ ↓ ↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/17913308/135450151
【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う
R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす
結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇
2度目の人生、異世界転生。
そこは生前自分が読んでいた物語の世界。
しかし自分の配役は悪役令息で?
それでもめげずに真面目に生きて35歳。
せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。
気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に!
このままじゃ物語通りになってしまう!
早くこいつを家に帰さないと!
しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。
「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」
帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。
エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。
逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。
このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。
これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。
「アルフィ、ずっとここに居てくれ」
「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」
媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。
徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。
全8章128話、11月27日に完結します。
なおエロ描写がある話には♡を付けています。
※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。
感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ
魔族に捕らえられた剣士、淫らに拘束され弄ばれる
たつしろ虎見
BL
魔族ブラッドに捕らえられた剣士エヴァンは、大罪人として拘束され様々な辱めを受ける。性器をリボンで戒められる、卑猥な動きや衣装を強制される……いくら辱められ、その身体を操られても、心を壊す事すら許されないまま魔法で快楽を押し付けられるエヴァン。更にブラッドにはある思惑があり……。
表紙:湯弐さん(https://www.pixiv.net/users/3989101)
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
R18、最初から終わってるオレとヤンデレ兄弟
あおい夜
BL
注意!
エロです!
男同士のエロです!
主人公は『一応』転生者ですが、ヤバい時に記憶を思い出します。
容赦なく、エロです。
何故か完結してからもお気に入り登録してくれてる人が沢山いたので番外編も作りました。
良かったら読んで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる