上 下
20 / 22
始まりの街ゴスル

いざ!!ランキング狩り!!①

しおりを挟む
 時間は巻き戻ってイベント初日。

 睡月は寝る場所を見つけるために、森の中をうろついていた。

「うーん......どうしようかな。木の上で寝た方が見つかりにくいだろうし、日当たりのいい高い木がある場所にしよっかな」

 首に巻きついているスンを撫でながら歩き回ること5分。

 ようやく睡月が納得いく寝場所を見つけた。

 木が生い茂っており、上の方の枝は下の方にある葉で隠れて見えなくなっている。

 わざわざ木に登らないと見つけることが出来ない場所だ。

「ここなら日当たりもそこそこいいし、見つかりにくいね。それじゃここで寝るか」

 木の枝に座り、体を木の幹に預けて睡月はすやすやと寝息を立てて寝始めるのだった。

 イベント2日目、睡月は見つかることなく初日を寝ていた。

「ふーん。イベントのランキングが来てるね.....最終日ぐらいは参加しようかな?最後の12時間ぐらいは参加してもいいかも」

 戦闘をしていても睡月の場合は寝ている事に変わりはない。

 強いていえば、【睡拳】を使っている時に貰うダメージの痛みが鬱陶しいぐらいだ。

「折角イベントに参加したんだから、せめて10ポイント位は取っておこうかな。記念の10ポイント!!......まぁ、今は寝るけどね」

 最終日の残り12時間を参加することに決めた睡月は、再び木の幹に体を預けるとすやすやと寝るのだった。

 そして最終日、0時になるまでしっかり寝た睡月はメールを読んでいた。

「へぇ~このランキングに乗ってるパーティーの人達を倒せばポイント2倍か。私はソロだから5人パーティーだったら10ポイント入るのか~......」

 睡月はランキングトップにいるパーティーの所持ポイントを見る。

 10位:113ポイント
 9位:119ポイント
 8位:124ポイント
 7位:128ポイント
 6位:130ポイント
 5位:135ポイント
 4位:138ポイント
 3位:174ポイント
 2位:182ポイント
 1位:196ポイント
 
 パーティー名は睡月にはよく分からないが、大体は5人パーティーだろうと予測する。

 実際その予測は正しく、ランキングに入っているパーティーは全て5人パーティーだ。

「えーと....位置は大体みんな集まってるからこの時間で回りきれるかな?全部倒したら500ポイントかー。行けるかな?」

 マップはかなり広いが睡月の持つスキル【睡拳】を使えばかなり速く移動できる。

 1位になれなくても、もしかしたらランキングに入れる可能性があるのではないかと思った睡月は、早速行動を開始するのだった。

「最初は森エリアにいるこのパーティーからだね!!よーし頑張っちゃうぞ~!!」

 これが悪夢の始まりだった。

━━━━━━━━━━━━━━

 首がねじ曲がったガンテツはポリゴンになって消えていく。

 ロトは素早く剣を引き抜くと、距離を取るように指示をだす。

 SWOでは首を折られたり、心臓を貫かれると即死してしまう。

 攻撃を受ける事が多いガンテツが、そのような初歩的な事を知らないわけがない。

 つまりガンテツは、即死に細心の注意を払っていたのにもかかわらず、首を折られたのだ。

 しかも自分達に気付かれずに。

 相手がどのようなスキルを使っているのか分からない以上、下手に戦いに行くのは危険すぎる。

 パッと見ソロのようだが、周りに仲間がいるとも限らない。

「ガンテツが一瞬で殺られた。これは相当不味いぞ」

 ボソリとロトが呟いた瞬間、パジャマ姿の少女は視界から消えていた。

「何?!」

 ロトは必死に探すが見つからない。

 ゴキィ!!と先程聞いた音と同じ音が自分の背後から聞こえた。

 ロトは本能的にヤバいと感じその場にしゃがむ。

 ロトの髪をかすりながら、とてつもない風圧が背中を押し出した。

 バランスを崩し、四つん這いになるとゆっくりと後ろを振り返る。

 そこには既に事切れたパーティーメンバーと黒の悪魔が居た。

「まさか、ゲームでこれ程恐怖するとは思わなかったよ」

 ロトは自分の切り札である【勇者の加護】を発動。

 横に素早く転がると、間一髪で攻撃を避けた。

 ロトの切り札【勇者の加護】。

 使用時間は5分間。

 その間、ロトのステータスは全て3倍になるというものだ。

 5分を過ぎると、ステータスが半減される上に丸一日このスキルを使えない。

 まさに切り札と言うに相応しいスキルだ。

「出来れば、このスキルは隠しておきたかったんだが....な!!」

 ロトは素早く接近すると首を撥ねようと剣を振る。

 ロトのレベルは34。

 素のステータスがかなり高いロトの攻撃を避けれるわけが無い。

 そう普通のプレイヤーなら。

 寝ていることが発動条件と言うかなり特殊なスキル。

 使いこなすことが普通は出来ないスキル。

 彼女はそれを使いこなす。

 【勇者の加護】よりも強力な効果を持つこの少女の前ではロトの渾身の一撃はゴブリンが棍棒を振る事と大差なかった。

 剣が少女の首に届く前に、ロトの視界は上下反転する。

(これが首がおられる感覚か.....しかし、こんなに強いプレイヤーがいたとはな...俺もまだまだという事か)

 膝から崩れ落ち、ポリゴンになって消えていく。

「おーし!!まずは50ポイント!!あと9回!!行くぞ~!!」

 黒のパジャマを来た少女、睡月は更にランキングに入っているパーティーを倒すため、洞窟から移動するのだった。


スキル解説
【勇者の加護】
アクティブスキル クールタイム1日
効果:自身のステータスを5分間、3倍にする。スキル効果が切れると自身のステータス50%ダウン(デスすると元に戻る)。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

緑の魔女ルチルの開拓記~理想の村、作っちゃいます! 王都に戻る気はありません~

うみ
ファンタジー
 緑の魔女と謳われた伯爵令嬢ルチルは順風満帆な暮らしを送っていた。  ところが、ある日突然魔力が消失してしまい国外退去の命を受けることに。  彼女が魔力を失った原因は公子と婚約したい妹による陰謀であったが、彼女が知る由もなかった。  令嬢としての地位を失い、公子との婚約も破棄となってしまったが、彼女は落ち込むどころから生き生きとして僻地へと旅立った。  僻地に住む村人は生気を失った虚ろな目をしており、畑も荒れ放題になっていた。  そこで彼女はもふもふした大賢者と出会い、魔力を取り戻す。  緑の魔女としての力を振るえるようになった彼女はメイドのエミリーや一部の村人と協力し、村を次々に開拓していく。  一方、彼女に国外退去を命じた王国では、第二王子がルチルの魔力消失の原因調査を進めていた。  彼はルチルの妹が犯人だと半ば確信を持つものの、証拠がつかめずにいる。  彼女の妹はかつてルチルと婚約していた公子との婚約を進めていた。    順調に発展していくかに思えた僻地の村であったが――。 ※内容的には男性向け、女性向け半々くらいです。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

処理中です...