【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

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獣王国サベレズと武道大会

リリーとアヴェ②

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前回のあらすじ

 アヴェvsリリー。どっちも頑張れ!!



 アヴェはリリーの目の前まで歩いてくると、ゆっくりと構える。

「あぁ、こういうことですか」

 踏み込めば懐に入れる間合い、リリーはアヴェの構えの意味を察して手の甲を合わせる。

 確か詠春拳と呼ばれる中国武術の構えだったか?詳しくないから間違ってるかも。

 かつてはあのブルー○・リー主演の映画、燃え○ドラゴンで出てきた構えだ。

 ピタリと手の甲を合わせたリリーとアヴェは、お互いに出方を探っているのか、中々動かない。

 また15分者動かないのかと思ったが、今回は30秒経った頃にでリリーが動いた。

 手の甲を合わせた右手を、素早く突き刺し目潰しをしようとする。

 アヴェはそれを予知していたかのように、最小限の動きで避けると、リリーの脇腹に左拳をねじ込ませる。

 しかし、リリーはそれを左足で強引にガードすると、崩れた体制からアヴェの手を持ち、投げ飛ばす。

 合気だ。私は合気なんて教えた覚えはないから独学で習得したのか?だとしたら天才だ。

 アヴェは空中で器用に体制を整えて着地すると、リリーに向かって右足の蹴りを放つ。

 リリーは首を傾けて避けたが、避けきれずに頬を掠ったようだ。

 その証拠にナイフで切ったかのように頬が裂けている。

 あまりの速さに衝撃波が発生し、リリーの後ろにある闘技場の壁が粉砕される。

 攻撃を避けたリリーは、カウンターとしてアヴェに殴り掛かるが、その拳が届くことは無かった。

 アヴェは振り切った右足を曲げて、リリーの後頭部を踵で蹴ったのだ。

 ラビットパンチならぬ、ラビットキックである。

 あまりの勢いよく蹴ったものだから、リリーが闘技場にめり込んでいる。

 普通の選手ならこの時点で勝負ありだが、流石はリリー。

 アヴェのカカト落としがリリーを撃ち抜く前に、立ち上がりその場を離脱する。

 当たる瞬間に気づいて、何とか威力を殺したようだ。

「チッ、避けましたか」

「ふらつく......」

 リリーは額が切れており、血が顔から溢れだしている。

 しかし、直ぐに回復魔術を使用して傷を癒す。

 だが、失われた血は戻らないので、軽い貧血の症状が出ているようだ。

「今のでやられておけばよかったものを、次はもっと痛いですよ?」

「舐めないでください。私は、痛み程度で怯むほど弱くありません」

 アヴェとリリーの魔力が膨れ上がっていく。

 どうやら本番はこれからのようだ。
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