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エルフ国リナルドと暴風龍テンペスト

暴風龍テンペストとセバスチャン③

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前回のあらすじ

 あれは私が悪いです。はい。はーんせーしーてまーす。



※視点が三人称です

 セバスチャンは静かに馬車を出て歩き出す。

 ここはまだエルフの国だ。

 と言うか街をすら出ていない。

 あの龍が街を破壊するにはまだ時間がある。

 ゆっくりと緊張を解すぐらいの時間はあるだろう。

 セバスチャンは初めての実践に少し不安を覚えていた。

 ノアに作り出されたセバスチャンの失態は実質ノアの失態だ。

 まず負けることはないが、万が一はある。

 油断は絶対にしてはいけない。

 セバスチャンは眼をゆっくりと開く。

 セバスチャンの眼に黒目は無い。

 その代わりに眼球に魔法陣が書かれており、それが黒目の代わりになっている。

「さて、我が神に間違っても汚名を着せてはいけません。本気で行かせてもらいますよ」

 セバスチャンはコツコツと足音を鳴らし、暴れようとしている龍に向かって歩いて行った。


 ノア屋敷でノアの次に強い人間種と言われれば皆口を揃えてこう答えるだろう。

 それはセバスチャンだと。

 唯一ノアの召喚した契約魔物達と戦える存在、それがセバスチャンだ。

 ステータスはさほど高くない。

 たが技術と魔術が異常だ。

 アヴェが本気で殺しに行ってもその場から1歩も動くことなく全てを捌く。

 それも一切の魔術を使わずに。

 動きを先読みして最低限の動きだけで全てを捌く。

 リリーが魔術を使って殺しに行けば、全く同じ出力で全て相殺する。

 魔術に関しては天才的なマーリンですら、できない芸当だ。

 まるで鏡の自分を相手をしているような程正確に、同じ出力で相手の魔術を完全に相殺。

 それができるのがセバスチャンだ。

 だが、そんなセバスチャンにも足りないものがある。

 実践経験だ。

 普段ノアの執事として世話をするセバスチャンは、殆ど街にいる。

 圧倒的に実践が足りない。

 戦場の、殺し合いの空気を、彼は知らない。

 生温い模擬戦ではダメなのだ。

 アヴェもリリーも本気で殺しに来てくれているが、セバスチャンは殺す気など毛ほどもない。

 ノアの盾となる以上、実践経験は積むべきだ。

 今回の暴風龍テンペストには感謝しなくてはならない。

 数少ない実践をできる機会をくれたのだから。

 無駄にはしない、そう思いながらセバスチャンは射程距離に入る。

「【飛翔フライ】」

 魔術を発動させてセバスチャンは宙に浮く。

 【飛翔フライ】は空を飛ぶ魔術だ。

「さて、私は速攻で終わらせてもいいのですが、それでは意味が無い。幸いイン様が結界を張っているようなのでたっぷり実践経験を積まして貰いますよ」

 いつの間にかインが張っていた結界はエルフの街を大きく覆っている。

 どんな攻撃が来てもこの結界に阻まれて街に被害は出ないだろう。

 セバスチャンは不安と共に戦闘を開始するのだった。


作者「生きてるぞ、ただいま」
 
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