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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル

召喚魔法

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 翌日、俺とニーナは泊まっている部屋にいた。

「そろそろ仕込みを始めよう。とりあえずは下見だな」

「という事は鼠ですか?」

「あぁ」

 ニーナに返事をしながら、俺は早速魔法を使う。本来魔法は、詠唱と言われる呪文を唱えるのが一般的だ。

 詠唱をする事により魔力を魔法に変換し、魔法のイメージの固定化がされると言われている。

 間違ってはない。が、それらを脳内でキチンと組み立てることが出来れば、詠唱はいらないのだ。

 これは詠唱破棄と呼ばれる技術で、低位級の魔法なら割と簡単にできる。

 ただし、それ以上になると一気に難易度が上がる。

 魔法には低位、中位、上位、最上位の4段階の階級があり、最上位級の魔法ともなればたった一撃で小さな街を滅ぼせる破壊力を持つ。

 流石にそこまで強力な魔法は、1人では撃てるものではなく、何十人もの魔導師が儀式を行わなければならない。

 隙が大きすぎる上に、暴発してしまった場合の被害が計り知れないので、よっぽどの事がなければ使わない魔法だ。

 そんなやべー魔法の詠唱破棄なんて、とてもではないができるとは思えない。

 中位級ですらできる人は、限られてくるというのに......

 ニーナが使っていた、探知魔法も低位級魔法に分類され、ニーナは詠唱破棄をして使っている。

 生活魔法は別だ。あれば理論を知らなくてもできるように、昔の天才が考えたらしい。

召喚サモンラット」

 俺は、手の平サイズの小さな鼠を1匹召喚する。

「.............問題なし。ニーナ、部屋の周囲の警戒を頼む」

「了解ですマスター」

 そして、俺が使う魔法は『召喚魔法』。

 生活魔法を除けば、唯一使える魔法だ。

 魔力を生命に変換し、新しい生命や物を創り出して召喚する。これが召喚魔法であり、俺が『最弱』と呼ばれる所以でもある。

 この召喚魔法、召喚できるものによって難易度が変わる。

 例えば鉄の剣。鉄の剣は低位級に分類されるが、灰輝鉄ミスリルの剣は上位級に分類される。

 これには理由がある。まずは物体が保有する魔力量の2倍、魔力を消費しなければならない。

 鉄に含まれている魔力など、たかが知れてるが、灰輝鉄ミスリルに含まれている魔力は一般の魔導師4~5人分だ。

 その2倍の魔力を消費しなければならないとなると、消費魔力は魔導師の8~10倍。とてもでは無いが、気楽に召喚できるような代物ではない。

 更には、その物を一切間違いなくイメージ出来なければならず、鉄の質感から温度、柔らかさ、光沢、純度、etc..それらを完璧にイメージ出来なければ、召喚魔法を使ったとしても不完全に出来上がった鉄の剣が召喚されてしまう。

 灰輝鉄ミスリルはとても貴重な鉱石で、滅多に出回ることは無い。余程いいコネが無いと灰輝鉄ミスリルの剣など手に入れられず、じっくりとイメージトレーニングはできないだろう。

 魔物や動物を召喚する場合は、イメージトレーニングは地獄と化す。

 例えばゴブリンを召喚したければ、身体の構造を知り、匂い、感触、などを完璧にイメージできるようになら無くてはいけない。

 それはもう地獄だ。

 俺はゴブリンは無理!!と言ってゴブリンの召喚は諦めた為使えないが、何人かゴブリンを召喚できる奴らを知っているが、マジで尊敬する。いやほんと、心の底から。

 そんな辛い事を乗り越えて、ようやく召喚魔法も使えるようになっても、戦闘では役立たないことが多い。

 そりゃそうだ。ゴブリン1匹召喚したところで、村人にすら負けるような雑魚だからな。

 だが、召喚魔法にはあることがあできる。

 それは、命令と五感の共有だ。

 命令は単純。命令通り自分の召喚獣が動いてくれる。流石に生き物ですらない、剣などは無理だが魔物や動物はどんなに複雑な命令でも実行出来る。それが、その召喚獣のスペックを超えてなければだが.........

 そして、五感の共有。これはその名の通り、自分の召喚した召喚獣の五感を共有できる技術だ。

 これの凄いところは、隠密に優れている所だ。俺が今召喚した、ラットがいい例で街中にいてもおかしくない動物の為、見かけても疑問を持たれない。そのまま、情報が欲しいところに潜り込み、情報を抜き取れる。

 完璧な隠密ができるのだ。

 ただし、この五感の共有はかなり難しく、熟練の召喚術師が魔物一体と五感共有を行えるのが限界と言われている。

 五感を共有している間も自身の感覚はあるので、脳が情報過多で焼き切れるように痛くなるのだ。

 まぁ、例外も何人か知っているが。

 俺も、もちろんその例外の1人だ。から力を失って、召喚魔法コレしか無くなった時から、俺は召喚魔法を極めてきた。

 この世界中の誰よりも、召喚魔法については詳しく、そして熟練していると自信を持って言える。

「魔法陣からも召喚獣を出しているけど、バレてないようだな」

 召喚獣を召喚する場合、このような手順で召喚する事になる。

 魔法を選択→召喚する魔物(物)を選択→魔力を練り変換→座標の固定→イメージをしながら魔力をその形にする→召喚

 6つの段階を踏み、召喚するのだが、4つめの座標の固定は自分の視界ないでなければ固定が出来ないのだ。

 その為、視界内に入ってなくても座標を固定できる技術として、魔法陣を使う。

 使い方は簡単で、召喚したい場所に魔法陣をセットして、自分の魔力を少しだけ流しておく。これで座標を把握出来、視界内に入ってなくとも召喚ができる。

 他にも、五感共有から座標を固定して召喚もできるが、かなり集中力を使うので今回はやめている。

 魔法陣はこの街を回っていた時に、いかけておいた。

「さて、ラット達には頑張って貰わないとな」

 街に解き放たれたラット達の足音が、死神からの招待状だということに人々が気づくのは、まだ、先だ。
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