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第六章 花の記憶

(57)花の記憶 その3-1

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 一方、助手席に克也を乗せた孝の車は、海岸沿いの道路を走っていたが、渋滞に巻き込まれていた。

「まぁ、休日は仕方ないね。でも、ちょうどよかった」

 孝はウインドーを半分開けると部屋では吸わない煙草を取り、一本火をつけた。

「優菜ちゃんとこもうるさいみたいだけど、うちも真奈美が……ね」
「僕は、慣れてるんで大丈夫ですよ」
「ありがとう。お言葉に甘えるよ」

 孝は美味しそうに煙草を吹かしながら、克也に話し始める。

「最近の真奈美の様子、気がついてた?」
「まぁ、僕は、何となく……です。愛子が、すごく気にしてました」

 朝食中の会話で、愛子が真奈美を気にかけていたことをそのまま孝に伝える。

「そうかぁ。やっぱり分かっちゃうもんなんだね」
「言われてみて、自分も気がついたところありましたけど、真奈美さんは、綾女さんと実のところ、どうなんですか」

 克也は孝に核心をついた質問をする。

「それはね……。二人が仲悪いってわけじゃないんだ。真奈美、それに僕との付き合いが長い分、まぁいろいろあったんだよ。その話は今はしないけど、そのうちゆっくり話すよ」
「そうですか……」
「たぶん今頃、真奈美は、愛子ちゃん成分を補充してるところだよ」
「それって……、あ、そういうことですか」

 孝の言葉に一瞬克也は、はてなマークが浮かんだが、すぐに察することができた。
  
「どうやら、真奈美は旅館で愛子ちゃんにいかされて、目覚めちゃったっぽいんだよね」
「ああ……、あの時ですか」

 克也は温泉旅館で真奈美を羽交い絞めにしたときのプレイを思い出す。

「普段が責めに回ることばっかりだから、意外と受けは弱いのかもしれないね。僕はそんなことないっていうのは知ってるんだけど」

 孝は笑いながら克也に言う。

「そうなんですね。いつもやられっぱなしだから、分かんなかったです」
「真奈美にかなう人って、愛子ちゃんと克也くんくらいだと思うよ」
「ええっ、僕もですか」

 克也は驚いた表情を見せる。

「克也くんは、もっと自信もっていいよ。何なら次の週末、真奈美を貸すから試してみるといいよ」

 孝はにやけながら克也に言う。

「あはは……。興味はありますね」
「じゃ、そのラインは決定ってことで」
「それにしても、どこか、いい場所あるんですかねぇ……」
「たぶん無理。だとしたら……、って考えてること、克也くんだから話すけど」

 孝は自分のアイデアを克也に丁寧に話し始めた。克也はそれを聞き、目を爛々と輝かせていた。
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