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第六章 花の記憶
(51)花の記憶 その1-2
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日が陰り始めた頃、ぐっすりと眠っていた愛子と拓美が昼寝からようやく目覚める。
眠い目を擦りながら拓美が愛子に抱きかかえられて寝室から出てくるとそのまま浴室に入って愛子と一緒にシャワーを軽く浴びる。その後、四人で一緒に夕食をとることになり、ショッピングモールで食材の調達をして、愛子と綾女がキッチンで準備を始めた頃だった。
ピンポーン
「あら、誰かしら」
綾女が愛子とキッチンに立ちながら後ろを振り向く。
「僕が出るよ。この時間だとたぶん……」
拓美とリビングで遊んでいた克也が玄関へ向かう。
「ぼくもいくー」
拓美が克也の後をとてとてとついていく。克也が玄関の扉を開けると、かわいいクマのエプロンを掛けた真奈美が居た。
「こんばんわー。あらっ、かわいい子……、って、もしかして、拓美くん?」
「あ、真奈美ママだー!」
「ママ!?」
克也は驚いて思わず大きな声をあげる。
「そういうことは、綾女もいるんだー。ま、いっか」
「居ちゃ悪い? 真奈美?」
リビングから綾女がひょいと顔をのぞかせる。
「ふふっ、大きくなったねぇ。拓美くん」
「うん。真奈美ママ、おひさしぶりー」
真奈美は拓美の前でしゃがんで抱きしめて頬ずりする。
「と、とりあえず上がります? これから夕食ですが」
「ううん。今日はとりあえず報告だけ。これから孝さんとお出かけなのよ」
「そうなんですね。で、いいことあったみたいですが?」
克也はニコニコ顔の真奈美を見て察する。
「ふふっ。さすが克也くん。来週末のホテル、何とかとれたよ」
「本当ですか? 結構人気で難しいって聞いてたから、無理かもって思っていたんですが」
克也も喜びの声をあげる。
「あと、ホントは人数的なところで厳しいところもあったんだけど、孝さんコネクションで何とか。孝さん的には仕事になっちゃうけど、まぁ、仕方ないねって」
「この前の旅館と同じパターンですね。しかも予想以上に人数増えちゃいましたけど」
「そこも私はいろいろ意外だったなぁ。特に、そこにいる綾女さん?」
リビングでじっとふたりの様子を観察していた綾女に真奈美が視線を送る。
「な、何よぅ。私だって関係者じゃない。仲間外れは嫌よ」
綾女はむすっとしながら真奈美の方を見る。
「いずれは話そうって思ってたけど、まさか綾女から飛び込んでくるとは思わなかったし、あと、愛子ちゃんのこともね」
真奈美は抱きしめていた拓美の頬に軽くキスをすると、立ち上がって拓美に手を振る。
「拓美くん。もうちょっとお話ししたかったけど、それはまた来週ね。じゃ、愛子ちゃんも、また連絡するからー!」
「はぁーい。真奈美さん」
遠くから愛子が返事をするのが聞こえると、真奈美は颯爽とドアを閉めて行ってしまった。
「ホント、真奈美にはかなわないなぁ……」
綾女はため息をつきながらキッチンへと戻っていく。
「でも、来週、楽しみになりましたね」
戻ってきた綾女に向かって愛子が話しかける。
「うん。すっごい楽しみにしてるよ」
その後ろから、拓美を抱いて克也が戻ってくる。
「さっき、気になったんだけどさ……、真奈美ママって?」
「あー、それねぇ……」
綾女はテーブルにお皿を並べながら克也に答える。
「真奈美は私との付き合いの方が長いけど、お姉ちゃんとも付き合い長いのよ。ほら、ソープつながりで。一緒のお店にいたこともあったり」
「そういうことは……」
「まぁ、あとは深く考えなくても分かるでしょ。真奈美だよ」
「そ、そうですね……」
「もしかすると、拓美くんの童貞は、真奈美が……、てことだったかもって話よ」
すると、ソファーに降ろしてもらった拓美が綾女と愛子に向かってニコニコしながら言う。
「ぼくは真奈美ママだいすきだよ?」
「うんうん。拓美くんが好きな人は、お姉さんもみんな大好きだよっ。それで、今日は拓美くんの大好きなハンバーグだよ!」
愛子はフライパンから焼き上がったハンバーグを拓美に見せるようにお皿に盛りつける。
「わあーい! おいしそう!」
拓美がソファーから立ち上がって食卓に向かってくる。
「じゃ、ご飯にしよっか」
それから四人は愛子特製のハンバーグに舌鼓を打つ。美味しそうに頬張りながら食べる拓美を見ながら三人は幸せな気持ちになるのだった。
眠い目を擦りながら拓美が愛子に抱きかかえられて寝室から出てくるとそのまま浴室に入って愛子と一緒にシャワーを軽く浴びる。その後、四人で一緒に夕食をとることになり、ショッピングモールで食材の調達をして、愛子と綾女がキッチンで準備を始めた頃だった。
ピンポーン
「あら、誰かしら」
綾女が愛子とキッチンに立ちながら後ろを振り向く。
「僕が出るよ。この時間だとたぶん……」
拓美とリビングで遊んでいた克也が玄関へ向かう。
「ぼくもいくー」
拓美が克也の後をとてとてとついていく。克也が玄関の扉を開けると、かわいいクマのエプロンを掛けた真奈美が居た。
「こんばんわー。あらっ、かわいい子……、って、もしかして、拓美くん?」
「あ、真奈美ママだー!」
「ママ!?」
克也は驚いて思わず大きな声をあげる。
「そういうことは、綾女もいるんだー。ま、いっか」
「居ちゃ悪い? 真奈美?」
リビングから綾女がひょいと顔をのぞかせる。
「ふふっ、大きくなったねぇ。拓美くん」
「うん。真奈美ママ、おひさしぶりー」
真奈美は拓美の前でしゃがんで抱きしめて頬ずりする。
「と、とりあえず上がります? これから夕食ですが」
「ううん。今日はとりあえず報告だけ。これから孝さんとお出かけなのよ」
「そうなんですね。で、いいことあったみたいですが?」
克也はニコニコ顔の真奈美を見て察する。
「ふふっ。さすが克也くん。来週末のホテル、何とかとれたよ」
「本当ですか? 結構人気で難しいって聞いてたから、無理かもって思っていたんですが」
克也も喜びの声をあげる。
「あと、ホントは人数的なところで厳しいところもあったんだけど、孝さんコネクションで何とか。孝さん的には仕事になっちゃうけど、まぁ、仕方ないねって」
「この前の旅館と同じパターンですね。しかも予想以上に人数増えちゃいましたけど」
「そこも私はいろいろ意外だったなぁ。特に、そこにいる綾女さん?」
リビングでじっとふたりの様子を観察していた綾女に真奈美が視線を送る。
「な、何よぅ。私だって関係者じゃない。仲間外れは嫌よ」
綾女はむすっとしながら真奈美の方を見る。
「いずれは話そうって思ってたけど、まさか綾女から飛び込んでくるとは思わなかったし、あと、愛子ちゃんのこともね」
真奈美は抱きしめていた拓美の頬に軽くキスをすると、立ち上がって拓美に手を振る。
「拓美くん。もうちょっとお話ししたかったけど、それはまた来週ね。じゃ、愛子ちゃんも、また連絡するからー!」
「はぁーい。真奈美さん」
遠くから愛子が返事をするのが聞こえると、真奈美は颯爽とドアを閉めて行ってしまった。
「ホント、真奈美にはかなわないなぁ……」
綾女はため息をつきながらキッチンへと戻っていく。
「でも、来週、楽しみになりましたね」
戻ってきた綾女に向かって愛子が話しかける。
「うん。すっごい楽しみにしてるよ」
その後ろから、拓美を抱いて克也が戻ってくる。
「さっき、気になったんだけどさ……、真奈美ママって?」
「あー、それねぇ……」
綾女はテーブルにお皿を並べながら克也に答える。
「真奈美は私との付き合いの方が長いけど、お姉ちゃんとも付き合い長いのよ。ほら、ソープつながりで。一緒のお店にいたこともあったり」
「そういうことは……」
「まぁ、あとは深く考えなくても分かるでしょ。真奈美だよ」
「そ、そうですね……」
「もしかすると、拓美くんの童貞は、真奈美が……、てことだったかもって話よ」
すると、ソファーに降ろしてもらった拓美が綾女と愛子に向かってニコニコしながら言う。
「ぼくは真奈美ママだいすきだよ?」
「うんうん。拓美くんが好きな人は、お姉さんもみんな大好きだよっ。それで、今日は拓美くんの大好きなハンバーグだよ!」
愛子はフライパンから焼き上がったハンバーグを拓美に見せるようにお皿に盛りつける。
「わあーい! おいしそう!」
拓美がソファーから立ち上がって食卓に向かってくる。
「じゃ、ご飯にしよっか」
それから四人は愛子特製のハンバーグに舌鼓を打つ。美味しそうに頬張りながら食べる拓美を見ながら三人は幸せな気持ちになるのだった。
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