2 / 4
2頁
しおりを挟む
そのうち砂丘地帯に入った。
朝の間に移動して、太陽が天高い位置に来る頃、小さなオアシスの木陰で一服した。
すると、遠くの空気が揺らめいている方から、人影がふらふらと歩いてくるのが見えた。
人影はオアシスを見つけると、息も絶え絶えに駆け寄ってきた。
まだ若い青年で、やつれた顔にたくさんの無精髭を生やしている。青年は泉に顔を突っ込むと、獣のように一気に水を飲んだ。
しかし勢い余って、途中で咳き込んでしまった。
「あんまり一度に水を飲むと、体に良くないよ。人間の体は、ぼくたちのように便利にはできていないからね」
DRKは、声を掛けずにはいられなかった。
青年はDRKの姿に気付くと、飛び上がって驚いた。
「おまえは何者だ」
青年は訝しげな顔で、DRKの体をじろじろと見回した。人に見られることには慣れていたので、DRKは特に不快に感じることはない。
「ぼくはヒトコブラクダのDRK。伝説のオアシスを探しているんだ」
「何だって!?」
青年は、思わぬところで同志を見つけたと喜びの声をあげた。どうやら彼も目的地は同じらしい。
「その割りには、ずいぶん場違いな荷物ばかりだね」
今度はDRKが、青年をじろじろ見回す番だった。青年の背嚢には高そうな宝石や装飾品ばかり詰め込まれていて、旅に必要な道具は何ひとつ入っていなかったのだ。
「それに、人間のくせに日中の砂丘を歩いてくるなんて、自殺行為に等しいよ」
痛いところを突かれたらしく、青年は黙り込んだ。
それからしばらくして、聞かれてもいないのに自分の生い立ちを話し始めた。
「私は、この国のイサラフ王子だ。でも悪い宰相に国を乗っ取られて、父や母や兄は殺されてしまった。私だけ、宮殿の財宝を掻き集めて命からがら逃げてきたのだ」
イサラフ王子はそこまで言うと、深い溜め息を吐いた。
「私にはもう帰る場所がない。だから新たな移住先として、伝説のオアシスを探している」
「国に帰りたくないのかい?」
「帰っても殺されるか、奴隷にされるかだ」
「宰相が憎くないのかい?」
「私一人が立ち向かって勝てる相手ではない」
わざわざ苦労を背負い込むより、伝説のオアシスで気ままに暮らしたい。イサラフ王子はそう願っているらしかった。
「ところで、まさかここが伝説のオアシスって訳じゃないよな?」
イサラフ王子は辺りを見渡しながら言った。
岩の割れ目から、ネズミに似たグンディが顔を出し、チーチーと鳴きながら家族を探していた。
「ここは違うよ。まだ、だいぶ先さ。じゃあ太陽も陰ってきたし、ぼくは行くね」
DRKが歩きだしたのを見るや、イサラフ王子がしがみついてきた。
「私も連れていってくれ」
イサラフ王子は泣いて懇願した。
奇妙な道連れが増えた。
朝の間に移動して、太陽が天高い位置に来る頃、小さなオアシスの木陰で一服した。
すると、遠くの空気が揺らめいている方から、人影がふらふらと歩いてくるのが見えた。
人影はオアシスを見つけると、息も絶え絶えに駆け寄ってきた。
まだ若い青年で、やつれた顔にたくさんの無精髭を生やしている。青年は泉に顔を突っ込むと、獣のように一気に水を飲んだ。
しかし勢い余って、途中で咳き込んでしまった。
「あんまり一度に水を飲むと、体に良くないよ。人間の体は、ぼくたちのように便利にはできていないからね」
DRKは、声を掛けずにはいられなかった。
青年はDRKの姿に気付くと、飛び上がって驚いた。
「おまえは何者だ」
青年は訝しげな顔で、DRKの体をじろじろと見回した。人に見られることには慣れていたので、DRKは特に不快に感じることはない。
「ぼくはヒトコブラクダのDRK。伝説のオアシスを探しているんだ」
「何だって!?」
青年は、思わぬところで同志を見つけたと喜びの声をあげた。どうやら彼も目的地は同じらしい。
「その割りには、ずいぶん場違いな荷物ばかりだね」
今度はDRKが、青年をじろじろ見回す番だった。青年の背嚢には高そうな宝石や装飾品ばかり詰め込まれていて、旅に必要な道具は何ひとつ入っていなかったのだ。
「それに、人間のくせに日中の砂丘を歩いてくるなんて、自殺行為に等しいよ」
痛いところを突かれたらしく、青年は黙り込んだ。
それからしばらくして、聞かれてもいないのに自分の生い立ちを話し始めた。
「私は、この国のイサラフ王子だ。でも悪い宰相に国を乗っ取られて、父や母や兄は殺されてしまった。私だけ、宮殿の財宝を掻き集めて命からがら逃げてきたのだ」
イサラフ王子はそこまで言うと、深い溜め息を吐いた。
「私にはもう帰る場所がない。だから新たな移住先として、伝説のオアシスを探している」
「国に帰りたくないのかい?」
「帰っても殺されるか、奴隷にされるかだ」
「宰相が憎くないのかい?」
「私一人が立ち向かって勝てる相手ではない」
わざわざ苦労を背負い込むより、伝説のオアシスで気ままに暮らしたい。イサラフ王子はそう願っているらしかった。
「ところで、まさかここが伝説のオアシスって訳じゃないよな?」
イサラフ王子は辺りを見渡しながら言った。
岩の割れ目から、ネズミに似たグンディが顔を出し、チーチーと鳴きながら家族を探していた。
「ここは違うよ。まだ、だいぶ先さ。じゃあ太陽も陰ってきたし、ぼくは行くね」
DRKが歩きだしたのを見るや、イサラフ王子がしがみついてきた。
「私も連れていってくれ」
イサラフ王子は泣いて懇願した。
奇妙な道連れが増えた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
愁龍雨詩
チゲン
ライト文芸
村は長い日照りに苦しんでいた。だが太心には、幼なじみである方菊の病状の方がずっと気掛かりだった。方菊のために龍が棲む山へ霊水を汲みにいった太心は、ついでに村に雨を降らせてもらうよう龍を訪ねてみることにする。
2018年改稿。
小説投稿サイト『小説家になろう』にて同時掲載中。
おじいちゃんの遺影
チゲン
ライト文芸
死んだ祖父が夢枕に立って、交際間近の男性にあれこれケチをつけてくる。だったらご要望通り、吟味してもらおうじゃないの。と、彼を家に招待するのだが、そこに予期せぬ来客が現れて……。
2018年執筆(書き下ろし)。
小説投稿サイト『小説家になろう』にて同時掲載中。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ごはんがあれば、だいじょうぶ。~美佳と瞳子のほっこり一皿~
五色ひいらぎ
ライト文芸
シェアハウスで共に暮らす、大学三年瀬川美佳(せがわみか)と、短大一年宮原瞳子(みやはらとうこ)。
美佳に嫌なことがあった日、瞳子はそっと手料理を作ってくれる。
凝った料理ではないけれど、あたたかな一皿は不思議と美佳の心を癒す。
クレーマーに遭った日も、
仲間と袂を分かった日も、
悲しい別れがあった日も、
世の理不尽に涙した日も、
きっと、おいしいごはんがあればだいじょうぶ。
※約3万字の短編です。ほんのり百合風味の日常物語。
※第7回ほっこり・じんわり大賞にエントリーしています。
※表紙素材: 写真AC/チョコクロ様より https://www.photo-ac.com/main/detail/553254
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる