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一章 辺境の街の女達

二十五話 エピローグ 重ねた手

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「知らない天井だ……」

 お決まりのセリフをようやく言えた感動に震えながら周りを見渡すが誰もいなかった。こういう時は誰かがベッド脇で手を繋いで寝てたりするもんだろ!!

 周りを見渡せば部屋にはベッドとクローゼットと机と椅子。その横には棚が設置されている。半開きの窓からは明るい日差しが差し込んでいてピンクのカーテンを揺らしていた。質素ながらも可愛らしい小物などがに並べてあったり、見覚えはないがどうやらここは女性の部屋の様だ。

 体を起こしながら体調を確認するが、余程ぐっすり眠っていたのか体調は万全だった。凝り固まった体をほぐしながらステータスと呟きステータスウィンドウを出す。何があったのかわからないがウィンドウが全て消えていたからだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

カルマ Lv65

HP 18650/18650
MP   625/  625

筋力     65
魔力     30
耐久    286
俊敏     98
運      38

スキル 言語理解・生殖器強化Lv2・性感度操作Lv3・解析の右目・魅了の左目・???

称号 女の敵 性獣 巻き込まれ勇者 愛人

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 おい魔王、俺の体に何をした!?ちょっと引くくらいレベル上がってるんだが!?

 それに新しいスキルがいつの間にか増えている。魅了の左目だ。これはまた俺の目の色変わってんじゃ……不安はあるが鏡は見当たらないので諦めて魅了の左目に解析をかける。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

魅了の左目 任意発動、対象に自身へ向けて好意を持たせ同時に発情させる。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 おう……やっぱり魅了はサキュバスらしい能力だった。

 それと、魔王の話に『巻き込まれし魔王の勇者』って言葉があった。もしかしたらと思いあの称号に解析をかけてみる。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

巻き込まれ勇者 魔王により異世界召喚された者の証。神の法則の埒外にある者。夢魔インキュバスとして絶頂させた女性から『根源の欠片』を吸収する。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 解析できるようになっていた。そして魔王の話が本当だと証明するかのような内容だった。俺人間じゃなくてインキュバスなの?人間やめちゃった系ですか?それにこの説明文……魔王は『根源の欠片』=『経験値』だと言っていた。じゃあ俺は抱いた女から経験値を吸い取ってたってこと……になるよなぁ。

「……謝って済む話かな?」

 途方にくれていると部屋の扉が静かに開かれた。入ってきたのはマリーだ。マリーは男性物の服を両手で抱えていた。ベッドの上で体を起こした俺と目が合った瞬間、涙を流して服を投げ捨て飛び込んできた。おい服を投げるんじゃねぇ!!それ俺に着せるための服じゃないのか!?

「カルマ様ぁああああ!!」

「おぶっばっ!!」

 腹部に強烈な頭突きが突き刺さり悶絶する。

「……やぁ……マリー……ただいま」

「ごめんなさい!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!私が……っ!私が……!」

 やっぱりマリーは後悔していたようだ。そっと彼女の頭を撫でて落ち着かせる。ギュッと抱き着きながら謝罪を続ける彼女を腹の痛みを必死に堪えながら宥める。

「落ち着いてマリー。俺は生きてるし平気だから」

 ゆっくりゆっくり撫でているとマリーは落ち着いたのか泣いてはいるが静かになった。

「ごめんなさい……カルマ様……」

「もういいんだよ。マリーが泣いてる姿を見る方がつらいよ。それより俺はどのくらい寝てたの?」

「……カルマ様は三日間眠ったままでした。それに昨日までは息苦しそうにされていたり、胸を掻き毟って苦しんだりと、とても心配しましたよ……!」

「そんなことが……あ、俺の左目って今どんな感じ?」

「左目ですか?いつも通りですけど……」

「そっか、ならいいんだ」

色は変わってないようだ。任意発動とあったから発動すると変わるかもしれないな。

「カルマ様はクロエさんが背負ってギルドまで運んでくださいました。ですがカルマ様を預けたら事情は本人から聞くように言ってすぐに何処かへ行ってしまって……魔族に攫われた後なにがあったんですか?」

「ぁあーえっとな……俺を攫った魔族……魔人族?と色々あって……その……」

 言えねぇよ!!精子絞り殺されそうになって、ちんぽを化け物みたいに改造して生き延びましたなんて!!ましてやマリー達に散々心配かけてるときに他の女とSEXしてましたなんて……!!

「カルマ様!教えてください!なにがあったんですか!?」

 なんて説明しようか困っているとドアがバンッ!!と開かれついビクッ!と固まってしまった。

「御主人様!!!!」「旦那様!!」「カルマさん!」

 おなじみの龍の尾の三人が部屋へ飛び込んできた。エリシュアは安堵の表情で、普段は凛々しいオリビアは半泣きで、シュゼットはすでに泣いていた。

 それから意を決して、魔王に助けられたことから、俺が女性を絶頂させると俺に経験値が移動することや、ちんぽの現状も説明した。怖がられる覚悟もしてたのに話を聞いた皆の反応はきょとんとした顔だった。あれれ?

「あの……言いにくいのですが、カルマ様は三日間眠り続けてましたよね?」

「ん?……うん」

「その間、私達はわるわる寝間着を着替えさせたり、お湯を絞ったタオルで体を拭いたりしてました」

「……あっ!!」

「その……凄いなって思いました……ちょっと楽しみです」

 後半は擦れて聞こえなかったが寝ている間に既に見られていたようだ。まぁ拒絶されなくてよかったよ。拒絶されてないってなんでわかるのかって?掛布団でお腹まで隠れているにも関わらず四人揃って頬を赤らめ視線が俺の股間に集中してるからだよ。

 ぁあ、生きていて良かった。この子達のところに帰ってこれて良かった。何より拒絶されなくて本当に良かった。皆に近くに来るように頼み、疑うことなく近づいてきた皆を纏めて抱きしめる。

「ぁあ……生きて帰ってきたんだな」

 皆無言でギュっと抱きしめ返してくれた。




 暫くして落ち着くと龍の尾の三人はこれから依頼があるので名残惜しそうに出ていった。ここはギルドの近くにあるギルド職員向けの寮らしい。つまりマリーの借りてる部屋だ。その部屋にマリーと二人。マリーはベッド脇に椅子を持ってきて座った。無言だが気まずい感じはしない静かな時間が過ぎていく。

「……なぁマリー」

「はい?なんですか?あ、喉が乾きましたか?」

 ベッドに置かれた彼女の手を上から被せるようにそっと握る。

「カ……カルマ様?」

「魔人族に殺されそうになったときにさ……マリーの顔が浮かんだんだ。もう一度君の笑顔が見たくて生きて帰らなきゃいけないって思えた。それと同時に無性にマリーに会いたくなった。あの夕焼けのカフェで言えなかったことを本当に後悔したよ」

「言えなかったこと……ですか?」

「うん……俺はマリーが好きだ。マリーが一番好きだ。女好きで頼りないし、女性を抱くくらいしか特技もない俺だけど、きっとこれからもいろんな女性を抱くだろうけど、俺はマリーが一番好きだ」

 ぐっとマリーは目尻に浮かんだ涙を堪え、彼女の手に被せた俺の手にさらに手が被せられた。

「……甘いですね。私は初めてカルマ様と一夜を共にした時からずっと貴方を愛していますよ。それにカルマ様は女好きかも知れませんが、頼りなくなんてありません。戦う力がないのと頼りないのは別ですよ。カルマ様はとても頼りになります。私も含めて沢山の女性がカルマ様を頼っていますよ」

「そっか……この世界だとどうなるんだっけ。恋人かな?婚約者とか?」

「どちらでも構いませんよ。なんならけ、結婚しても……♡」

「結婚は……マリーの両親に挨拶に行かないとな」

「あーそのことなんですが……」

「わかってるよ。辺境伯なんだろう?貴族と話したことなんてないから無礼打ちとかされないか心配だな。必要なら教えてくれ」

「……どうしてそれを」

「俺の依頼表に思いっきりマリー=エスタって書いてあったじゃないか。マリーってどこか抜けてるよな」

「むぅ……ひどいですカルマ様」

「ごめんごめん……じゃあマリー何処かに家でも借りて一緒に住むか」

「はぅっ……ど、ど、同棲……♡」

「ははは……マリーって乙女チックだよなぁ」

「もう!笑うなんてカルマ様さっきからひどいです!」

 緩い告白に緩い返事、締まらないがそれが俺達らしくて心地よい。重なり合った手は、俺が彼女を捕まえ、彼女が俺を捕まえると誓うように握られていた。きつくしすぎないように。痛くしてしまわないように。
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