和詩集

江馬 百合子

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歌女

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凜とした声音に 一片の曇りなどなく
静まる野山に響く別れ言
「これが今生の別れでもなし」
君を信じて 歌い続ける

紡ぐ私の言の葉さえ
凩がさらってゆくのだろう
声を枯らした歌でさえ、君に聞こえることはない

雪舞い狂う私の現世
音も届かない君の隠り世
私の歌がやむまでは
千年先に会いましょう


震える歌声は この寒さのせいにしたい
静まる野山に木霊させてみる
「これを今生の別れとせずに」
君を想って 流す恋水

のばす私の指でさえ
凩が氷らせてゆくのなら
声を枯らした歌にのせ、舞ってみるのも悪くない

袖舞い狂う私の隠り世
色も失った君の現世
私の歌がやんでなお
千年先に会いましょう

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