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条件6*公休は羽目を外して遊ぶ!

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「…相良さんもお酒飲めるんですね。いつも私ばっかりで申し訳なかったから、今日は電車で来たかったんです」

「ふふっ…だろうな、と思った。車出すよって言ったのに頑なに拒否すると思ったら、やたらお酒勧めてくるし」

相良さんにはお見通しだった様で、今更だけど太刀打ち出来ないと心底思った。

「……で、俺を酔わせてどうしたいの?」

先程と同じカクテルをお代わりした相良さんが、意地悪そうに私に尋ねる。

「…ど、どうしたいのって…」

「それとも、和奏が先に酔い潰れて、また誘ってくれるの?」

「さ、誘いませんっ!!」

「和奏は酒癖が良くないから、俺が居ない時は飲まない事。分かった?」

「……はい、分かりました」

ほろ酔い気分で話を聞いていた私。

肝心な事を話半分で返事をし、都合の悪い事は次の日には忘れていた───……

私がフラフラして危ないからともう一件、オシャレなカフェに寄って、今度はデザートタイム。

「食べますか?フルーツ?」

「……いや、いらない」

ヨーグルト入りのミニパフェとセットドリンクのアイスレモンティーを御飲食中。

相良さんはお決まりのカフェオレを飲んで、私の酔いが冷めるのを待つ。

「よく食べるね、和奏は。それなのに…小さいまま…」

「ぎゅ、牛乳飲んでも背は伸びないんだから仕方ないもん。もう伸びませんよ、だって、25歳だもん!」

相良さんが何気なく勧めてくるから、お言葉に甘えて注文してたけど…私は初デートの時から食べ過ぎ飲み過ぎだったと今頃、気付く。

もうどうしようもない事実にあたふたしても、もう遅い。

「こ、これからは少食になります」

「………?何で?」

「相良さんが甘やかすから沢山食べてましたが、流石に食べ過ぎだと気付きました。太っても嫌だし…」

「和奏は本当に美味しそうに食べるから、見てても気持ちが良いよ」

「もうっ、答えになってないっ!」

微笑を浮かべて私を眺める相良さんは犯罪級に甘くて、目が合っただけでとろけちゃいそうになる。

社内と社外でのこの変貌の違いに戸惑うばかりで、キュンキュンしっぱなし。

カフェを出た後は自宅アパートまで送ってもらい、楽しかった時間に終わりを告げる。

「また明日…」

「今日はありがとうございました。また明日…。おやすみなさい」

「おやすみ」

玄関先まで送ってもらったが部屋に入る素振りはなく、いつもみたいに頭を撫でられただけだった。

その先にあるものを心の奥底で期待していたけれど何もなく、はしたないが、ちょっとガッカリした様な気分。

今日はキス…しなかったな…。

お外デートは密室ではないし、する場所もないのは分かってはいたのだけれど…。

触れたい、独占したい。

こんな感情は初めてで、欲ばかり出てくる自分に嫌気がさす。

会う度に好きになっている。

明日会えば、もっと好きの気持ちが膨らむ。

人生初、恋愛に溺れちゃいそうです───……

デート2日目の今日もまた相良さんが駅までお迎えに来てくれて、電車でお出かけ。

大人向けのプラネタリウムに行き、周りのカップル同様にそっと手を重ねて鑑賞した。

子供の頃に見たプラネタリウムとは桁違いの無数に広がる星達、大人向けだけあって何ともロマンチックなストーリーに胸が高鳴る。

実家で見る満天の星空よりも隣に相良さんが一緒にいるせいか、私にとっては煌びやかに見えた。

30分と言う時間はあっという間に過ぎてしまい、名残惜しいくらいだった。

「すっごく綺麗でした!もっと見たかったなぁ…」

「もっと見たかったぐらいが丁度良いんだよ」

「そうかなぁ…?」

「そうだよ、きっと」

プラネタリウムのパンフレットを右手に持ちつつ、会場を後にする。

外に出ると太陽が高く昇っていて、陽射しが眩しく、うだるくらいに暑い。

「…ごめん、実はこの後はノープラン。和奏が行きたい場所ある?」

「行きたい場所…。昨日、沢山連れてってもらったから特にはないんですが…」

「そう…。じゃあ、映画でも見る?和奏が見たかった映画の上映、間に合うかな?」

「ほら」、と手を差し出され、昨日みたいに人差し指と人差し指を絡めて歩き出す。

ノープランだと相良さんは言っていたけれど、私が喜ぶ展開へと誘導される。

昨日の通り道、映画上映のポスターを見て思わず、「このテレビシリーズ、好きで見てたんです。最終章は映画なんですよね」と言った事を覚えていてくれたんだ。

言ったその場では、素っ気ない感じだったけれど…。

スマホで上映時間を調べて、現在地から近い映画館まで行った。

「最終章とか言いながら、まだ続きそうな感じがしました…」

「最終章は"章"であって、最終回ではないからじゃないの?」

「そっかぁ…そうですね。だったら、まだ続くんですね…。次がいつだとかも表示されなかったし、もどかしいですね」

映画上映が終わり、ラストに納得がいかなかった私は思わず愚痴をこぼしてしまったが、よく良く考えたら、相良さんの言う様に最終"章"だったのでまだ続きそうなラストでも仕方がない。

「……続きが上映されたら、また来ればいいでしょ?」

「…はい、また来ましょうね」

「うん。でも、ドラマ見てなかったから、よく分からない部分もあった」

「えーっ!?最初に言ってくれれば良かったのに!ごめんなさい…、今度レンタルして一緒に見ましょ」

今更ながら、話の流れでドラマを見てないと言い出した相良さんは、完全に私に合わせてくれただけだったと知る。

映画館に着いた時もそんなに待ち時間はなく、すんなりと見る事が出来た。

まるで、仕組まれたかの様な時間の繋ぎに疑問が生まれる。

「相良さん…、もしかしてですけど…ノープランとか言いながら、全部調べてましたか?余りにもスムーズ過ぎるんで変ですって!」

「………。うん、まぁ、…副社長の秘書ですから、計画性には優れてますよね」

驚いた顔をしている私を見て、笑いをこらえている相良さんは面白がる様に言った。

「き、昨日から、私はスムーズ過ぎるとは思ってましたが…!」

「……暑いから、スムーズに事が進んだ方が良くない?」

必死に笑いをこらえようとしている相良さんは、手のひらで口を軽く抑えて肩は小さく震えていた。

そんな相良さんの姿を見て馬鹿にされてると思った私は、
「もうっ、遠足じゃないんだから、事細かに時間調整しなくていーですっ」
と反論したのも虚しく、更に笑われる。

「…っぷ!…遠足、ね!やっぱり、昨日から俺は引率の先生だったわけか…」

歩道を歩いている中、膨れっ面をした私の隣では、社内では冷酷なイメージを持ったポーカーフェイスの男が笑っている。

よほど面白かったのか、目尻に涙が浮かんでる姿は微笑ましくもある。

「もうっ、笑い過ぎだからっ」

「はいはい、」

気の抜けた返事をしながら、なだめるように頭を撫でられるのはこれで何度目だろう。

大切な物に触れる様に、優しく触れる手をいつまでも離したくないと思う。

「……相良さんの馬鹿っ」

「馬鹿って言われ慣れないので、新鮮な響きです」

「……っうぅ、 」

口角を上げて、流し目で見下ろされたら、完全に私の敗北です。

太刀打ち出来ず、頬に熱を帯びてドキドキしかしません。

そんなこんなで過ごした2日目、遅めのランチを取った後は明日から仕事と言う事で早めに帰宅命令中。

電車内で「…まだ早いのに」、とボソリとつぶやくと小さな溜息を残してから、「じゃあ、和奏の部屋でさっきのドラマ見る?」と耳元で囁かれた。

立ち乗り乗車をしていたので背中から覆い被さる様に囁かれ、吐息が耳にかかる。

私はただ小さくうなづき、目を合わせられずに下を向いていた。
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