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条件4*週末でもお泊まり不可!
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わしゃわしゃと髪の毛を撫でられ、私のナチュラルショートボブの髪型が乱れた。
「ああぁっ、髪の毛ぐじゃぐじゃ!」
「…撫でやすいから仕方ないよ」
その理由は有り得ないでしょ…。
話題を切り替える為に誤魔化したのかもしれないけれど…。
私はぐじゃぐじゃの髪を手ぐしで直して、
「もうっ。子供じゃないんだから、もっと大人らしく接して下さい!」
とはっきりと伝える。
触られるのは嬉しいけれど、相良さんに会うために念入りにセットしたのに台無しじゃないか!
「…そっか、分かった。これからはそうする」
さり気なく手を伸ばし、私の頬を撫でて唇に指を這わせてなぞる。
その突拍子もない行動に驚き、私は目は丸くなって鼓動が早くなり、思わずフォークを床に落としてしまった。
「……今、替えのフォークお願いするから」
流し目で不敵な笑みを浮かべた相良さんは余裕そのもので、ただ単に私をからかって遊んでいるのだと思った。
私は心臓が張り裂けそうな位、ドキドキしてるって言うのに!
余裕があり過ぎて憎たらしい。
替えのフォークが届き、再びホットケーキを食べ始めるとアイスが溶けていた。
相良さんにからかわれつつ時間を過ごし、お店は閉店時間間近になり、お客さんも私達の他は居なくなった。
「…さて、と」
テーブル上にある食器類を相良さんが運び出したので、私も一緒に片づけた後、バーのカウンターに座らせられた。
言わずとも色の綺麗なカクテルが出てきて、後藤さんが「俺の奢りね」と言った。
私の座る隣の椅子の上には相良さんのジャケットとネクタイが置いてあり、その反対側に後藤さんも座ってミントが沢山入ったモヒートを口に含んだ。
静かにピアノの前に座ると少しだけ目を閉じてから、鍵盤に指が触れる。
「今日は本当に特別な日。大貴は和奏ちゃんに聞いて欲しいんだと思うよ」
コソッと耳打ちした後藤さん。
相良さんが弾き始めたのはクラシックでもジャズでもなく、車でかかっていた国民的バンドの恋の歌。
初めて車に乗せてもらった時に「この歌好き」と言った事を覚えていてくれたんだ。
心地よくアレンジしてあり、ピアノの音色に心が奪われる。
弾き終えた後、バンドの曲をもう一曲弾いてくれた。
余韻に浸っていた時、「おいで」って手を引かれてピアノの前に座らせられた。
「何か弾いてみて?」と無茶振りされて、久しぶりに鍵盤に触れたが、身体は覚えていた様で何となく完奏は出来た。
もう何年間触れていなかったのだろう?
短大卒業してからは全く弾いていなかった。
ピアノが弾けるし子供も好きだし…で、何となく入った短大。
保育学科を卒業しても、保育園の先生に空きがなく、たまたま受かった受付嬢をしていた。
今日忘れていた気持ちを思い出した。
何となくで生きていて、諦めて来た人生をまたやり直せる気がした。
「和奏ちゃん、上手だね」
パチパチと拍手をする後藤さんの横で、グラスに入った水を口に流し込みながら私を上から見下ろす相良さんに伝える。
「相良さんのおかげで忘れていた気持ち、思い出しました。ありがとうございます!」
ペコリとお辞儀をして、後藤さんとグラスをカチンと合わせて乾杯した。
相良さんは「…どういたしまして」と呟き、車のキーを取り、「暑いからエンジンかけてくる」と言って外に出た。
二人でカクテルを飲んでいると、
「大貴、照れているのかも。そう言えば、大貴が探していたのは和奏ちゃんだったのかな?…ピアノコンクールとか出た事ある?」
と後藤さんに聞かれたので、
「小学生の時に出ました。同じ場所に相良さんも居たみたいです」
と答えた。
「そっか!…だからか!うん、納得」と自己解決した後藤さんに頭を撫でられたが、私には何の事だかさっぱり分からなかった。
撫でられた時に相良さんが戻ってきて、私達は思いっきり睨みつけらて、「行くぞ」って腕を引っ張られた。
「またね」とヒラヒラと手を振る後藤さんに御礼を伝える間もなく、外に連れ出された私。
相良さん、ヤキモチ妬いてくれたのかな?
手を繋ぐでもなく、引っ張られている左腕が少しだけ痛い。
腕を解放されて、ひんやりとした車内の助手席に座ってシートベルトを締めた。
「…眼鏡外したままでいいんですか?見えるの?」
ポケットから眼鏡を取り出して、サイドに置いたので気になって声をかけた。
バックしようとギアに手をかけていた相良さんだったけれど、その手は私の右肩に置かれ、少し身を乗り出してから、右手で座席を少しだけ倒した。
暗い車内の中、右手で頬に触れられ、顎を上に向けられる。
ドキドキしながら自然に目を閉じた私だったけれど、唇は重ならず空振りに終わる。
「…胡桃沢さんって、俺の何が好きなの?"相良さん"みたいに冷酷な方が好きなの?」
間近で見下ろされていて恥ずかしいので目線を外す。
何故、眼鏡一つで追い詰められているのか…。
「…そーゆーんじゃないんですけど…。一目惚れです」
「…あ、そう…」
少し左横を向いていた私の顔を正面に向けて、唇を重ねる。
緊張して口を紡いだままだったので、鼻を摘まれ、無理矢理に口を開かせられ、舌が滑り込んできた。
車内に響く、水の滴るような音。
やっと解放され上を見上げた時、呼吸が乱れた相良さんはとても艶やかに見えた。
心臓が破裂するかと思う位に胸が高鳴り、落ち着かない様子の私に投げかけられた言葉。
「胡桃沢さんの好きな"相良さん"は優しくしてあげられないから、覚悟して下さい」
…と。
その言葉の意味する事柄が後々分かる事になるが、まだ先の話───……
気付けば、時計は午前2時を過ぎていた。
カクテルも一杯しか飲んでないし、酔ってもいないから記憶が飛ぶ事もない。
東京の街は午前2時でも輝いていて、車の通りも絶えない。
"遅くなる"と言った理由はピアノを弾く為で、私の為に耳コピして披露してくれた事がとても嬉しかった。
キスした後は何にも話さず、ただ助手席に乗って、外の景色を見ながら相良さんのピアノを弾く姿を思い出していた。
仕事している時の相良さんよりも、好き。
ピアノを弾いている時、横顔がとても綺麗で男の人の色気を初めて感じた。
「はい、着きました」
「…もう遅いし、仮眠しますか?」
話さないままに自宅アパートまで到着し、私は名残り惜しくて相良さんを誘導する。
「女性が易々と誘うもんじゃない」
そう言いながら鼻を摘まれ「ぷぎゃっ」と言う変な声を出してしまうと相良さんは苦笑いし、触れるだけのキスを落として「おやすみなさい」と返した。
「おやすみなさい…」と私も返したけれど、やっぱり名残り惜しくて降りられずにいた。
「降りないの?」
「降りたくありません。降りたら、またしばらく会えないんでしょ?」
「…全く、しょうがない人だ。今週の土日は忙しいので次の土日に会いましょう。プールも行くし…。それまで、また我慢していて下さい」
我儘を言って誘導したが明日明後日の土日は忙しいとお断りされた。
まぁ、来週の約束をしたので良しとするか!
「分かりました、じゃあ、おやすみなさい」
カチンとシートベルトを外して降りようとした時にギュッと抱きしめられた。
再度、「おやすみなさい」と言われて唇を塞がれ、息も絶え絶えしく舌を絡ませる。
車のハザード音が響き、光がカチカチと薄暗い通り道を照らす。
私が降りた後、部屋に入ったのを確認してから相良さんの車は走り出した───……
「ああぁっ、髪の毛ぐじゃぐじゃ!」
「…撫でやすいから仕方ないよ」
その理由は有り得ないでしょ…。
話題を切り替える為に誤魔化したのかもしれないけれど…。
私はぐじゃぐじゃの髪を手ぐしで直して、
「もうっ。子供じゃないんだから、もっと大人らしく接して下さい!」
とはっきりと伝える。
触られるのは嬉しいけれど、相良さんに会うために念入りにセットしたのに台無しじゃないか!
「…そっか、分かった。これからはそうする」
さり気なく手を伸ばし、私の頬を撫でて唇に指を這わせてなぞる。
その突拍子もない行動に驚き、私は目は丸くなって鼓動が早くなり、思わずフォークを床に落としてしまった。
「……今、替えのフォークお願いするから」
流し目で不敵な笑みを浮かべた相良さんは余裕そのもので、ただ単に私をからかって遊んでいるのだと思った。
私は心臓が張り裂けそうな位、ドキドキしてるって言うのに!
余裕があり過ぎて憎たらしい。
替えのフォークが届き、再びホットケーキを食べ始めるとアイスが溶けていた。
相良さんにからかわれつつ時間を過ごし、お店は閉店時間間近になり、お客さんも私達の他は居なくなった。
「…さて、と」
テーブル上にある食器類を相良さんが運び出したので、私も一緒に片づけた後、バーのカウンターに座らせられた。
言わずとも色の綺麗なカクテルが出てきて、後藤さんが「俺の奢りね」と言った。
私の座る隣の椅子の上には相良さんのジャケットとネクタイが置いてあり、その反対側に後藤さんも座ってミントが沢山入ったモヒートを口に含んだ。
静かにピアノの前に座ると少しだけ目を閉じてから、鍵盤に指が触れる。
「今日は本当に特別な日。大貴は和奏ちゃんに聞いて欲しいんだと思うよ」
コソッと耳打ちした後藤さん。
相良さんが弾き始めたのはクラシックでもジャズでもなく、車でかかっていた国民的バンドの恋の歌。
初めて車に乗せてもらった時に「この歌好き」と言った事を覚えていてくれたんだ。
心地よくアレンジしてあり、ピアノの音色に心が奪われる。
弾き終えた後、バンドの曲をもう一曲弾いてくれた。
余韻に浸っていた時、「おいで」って手を引かれてピアノの前に座らせられた。
「何か弾いてみて?」と無茶振りされて、久しぶりに鍵盤に触れたが、身体は覚えていた様で何となく完奏は出来た。
もう何年間触れていなかったのだろう?
短大卒業してからは全く弾いていなかった。
ピアノが弾けるし子供も好きだし…で、何となく入った短大。
保育学科を卒業しても、保育園の先生に空きがなく、たまたま受かった受付嬢をしていた。
今日忘れていた気持ちを思い出した。
何となくで生きていて、諦めて来た人生をまたやり直せる気がした。
「和奏ちゃん、上手だね」
パチパチと拍手をする後藤さんの横で、グラスに入った水を口に流し込みながら私を上から見下ろす相良さんに伝える。
「相良さんのおかげで忘れていた気持ち、思い出しました。ありがとうございます!」
ペコリとお辞儀をして、後藤さんとグラスをカチンと合わせて乾杯した。
相良さんは「…どういたしまして」と呟き、車のキーを取り、「暑いからエンジンかけてくる」と言って外に出た。
二人でカクテルを飲んでいると、
「大貴、照れているのかも。そう言えば、大貴が探していたのは和奏ちゃんだったのかな?…ピアノコンクールとか出た事ある?」
と後藤さんに聞かれたので、
「小学生の時に出ました。同じ場所に相良さんも居たみたいです」
と答えた。
「そっか!…だからか!うん、納得」と自己解決した後藤さんに頭を撫でられたが、私には何の事だかさっぱり分からなかった。
撫でられた時に相良さんが戻ってきて、私達は思いっきり睨みつけらて、「行くぞ」って腕を引っ張られた。
「またね」とヒラヒラと手を振る後藤さんに御礼を伝える間もなく、外に連れ出された私。
相良さん、ヤキモチ妬いてくれたのかな?
手を繋ぐでもなく、引っ張られている左腕が少しだけ痛い。
腕を解放されて、ひんやりとした車内の助手席に座ってシートベルトを締めた。
「…眼鏡外したままでいいんですか?見えるの?」
ポケットから眼鏡を取り出して、サイドに置いたので気になって声をかけた。
バックしようとギアに手をかけていた相良さんだったけれど、その手は私の右肩に置かれ、少し身を乗り出してから、右手で座席を少しだけ倒した。
暗い車内の中、右手で頬に触れられ、顎を上に向けられる。
ドキドキしながら自然に目を閉じた私だったけれど、唇は重ならず空振りに終わる。
「…胡桃沢さんって、俺の何が好きなの?"相良さん"みたいに冷酷な方が好きなの?」
間近で見下ろされていて恥ずかしいので目線を外す。
何故、眼鏡一つで追い詰められているのか…。
「…そーゆーんじゃないんですけど…。一目惚れです」
「…あ、そう…」
少し左横を向いていた私の顔を正面に向けて、唇を重ねる。
緊張して口を紡いだままだったので、鼻を摘まれ、無理矢理に口を開かせられ、舌が滑り込んできた。
車内に響く、水の滴るような音。
やっと解放され上を見上げた時、呼吸が乱れた相良さんはとても艶やかに見えた。
心臓が破裂するかと思う位に胸が高鳴り、落ち着かない様子の私に投げかけられた言葉。
「胡桃沢さんの好きな"相良さん"は優しくしてあげられないから、覚悟して下さい」
…と。
その言葉の意味する事柄が後々分かる事になるが、まだ先の話───……
気付けば、時計は午前2時を過ぎていた。
カクテルも一杯しか飲んでないし、酔ってもいないから記憶が飛ぶ事もない。
東京の街は午前2時でも輝いていて、車の通りも絶えない。
"遅くなる"と言った理由はピアノを弾く為で、私の為に耳コピして披露してくれた事がとても嬉しかった。
キスした後は何にも話さず、ただ助手席に乗って、外の景色を見ながら相良さんのピアノを弾く姿を思い出していた。
仕事している時の相良さんよりも、好き。
ピアノを弾いている時、横顔がとても綺麗で男の人の色気を初めて感じた。
「はい、着きました」
「…もう遅いし、仮眠しますか?」
話さないままに自宅アパートまで到着し、私は名残り惜しくて相良さんを誘導する。
「女性が易々と誘うもんじゃない」
そう言いながら鼻を摘まれ「ぷぎゃっ」と言う変な声を出してしまうと相良さんは苦笑いし、触れるだけのキスを落として「おやすみなさい」と返した。
「おやすみなさい…」と私も返したけれど、やっぱり名残り惜しくて降りられずにいた。
「降りないの?」
「降りたくありません。降りたら、またしばらく会えないんでしょ?」
「…全く、しょうがない人だ。今週の土日は忙しいので次の土日に会いましょう。プールも行くし…。それまで、また我慢していて下さい」
我儘を言って誘導したが明日明後日の土日は忙しいとお断りされた。
まぁ、来週の約束をしたので良しとするか!
「分かりました、じゃあ、おやすみなさい」
カチンとシートベルトを外して降りようとした時にギュッと抱きしめられた。
再度、「おやすみなさい」と言われて唇を塞がれ、息も絶え絶えしく舌を絡ませる。
車のハザード音が響き、光がカチカチと薄暗い通り道を照らす。
私が降りた後、部屋に入ったのを確認してから相良さんの車は走り出した───……
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