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誕生日も仕事でしたが、人生最高の日になりました!

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白く大きめな皿にいちごのショートケーキやピンクのマカロン、小さめなガトーショコラやフルーツなどが上品良く乗せられて周りには生花が飾られている。Happybirthday! ERINAとチョコでデコレーションしてある。何とも華やかで可愛らしい。

「専用ラウンジにも行きたかったけど、食事の後は二人で過ごしたかったから…」

「バースデープレートまでお部屋に届くなんて、本物のお姫様みたいです!」

感激し過ぎて、自分でも何を言っているのか混乱中。そんな中、一颯さんは……

「どうぞ、お姫様、こちらにおかけ下さいませ」

と言った。夜景が見えるソファーにエスコートされて、腰を降ろす。

「お姫様は紅茶で宜しいでしょうか?」

「はい、紅茶を頂きます」

バースデープレートと一緒に届いたポットの紅茶をカップに注いで出された。その後に隣に座った一颯さんと目が合って、お互いに笑い出した。

「一颯さんの執事、もっと見たいです」

「悪ふざけはもう終わりにする……」

思いの外、一颯さんが執事みたいな口振りをするから、おねだりしたくなった。一颯さんは我に返ったみたいで、顔が赤くなる。

バースデープレートを食べる前に写真を撮らせてもらい、紅茶を一口含んでから食べ始めた。フレンチは美味しかったのだが、お腹が満たされるよりも心が満たされた感が強く、甘い物が何よりも嬉しかった。一颯さんがガトーショコラだけ食べたいと言ったので、フォークで掬い口に運んであげた。

「恵里奈、コレも受け取ってくれる?」

私が紅茶を飲んでいると一颯さんがジャケットのポケットから何かを取り出した。

「一生かけて幸せにします。結婚して頂けますか?」

紺色の四角の箱だった。返事をする前にポロリ、と涙が零れ落ちた。感極まってしまい、返事が出来ない。

「現在は同じサービススタッフとして仕事内容も理解していて、生活リズムもさほど変わらない。けれども結婚してからは互いの仕事が変わるかもしれないし、恵里奈が専業主婦になる日が来るかもしれない。今後の予測は出来ず、それによって不憫な思いもするかもしれないが……

何があっても全力で恵里奈を守るから、これから先の人生を共に歩んで下さい」

「はい…」

ポロポロと涙を流している私の左手を取って、薬指に指輪をはめてくれた。

婚約指輪は、センターにダイヤモンド、その両脇にピンクダイヤモンド、プラチナのリングの部分はひねりが加えてあり全体的に調和が取れているデザインの物。先日、一緒に見ていたブライダル情報雑誌に掲載されていて、私が「可愛い」と声を漏らしてしまったデザインと同じだった。私には勿体ない位の素敵なデザインの婚約指輪だ。

「ダイヤモンドは4月の誕生石で永遠の絆と言う意味合いもあるらしい。その隣はピンクダイヤモンド」

「……っふぇ、す、ごく、きれ…いれす…。それにコレ、こないだ一緒に…見て、た指、わ…」

「いい加減、泣き止め」

嬉しいのに涙が止まらず、困り果てた一颯さんは私の額にキスを落とす。そして、子供みたいにティッシュで鼻元を拭かれた。私のせいでロマンティックな雰囲気は台無しだったが、涙が止まって来て、一颯さんに抱き着いた。

「だって、嬉しくて…。大好き、一颯さん!こんな私で良かったら、一生一緒に居て下さいね」

「俺は他の誰かじゃなく、お前じゃなきゃ嫌なんだ。ずっと傍に居て、俺を支えて下さい」

一颯さんと目と目が合い、引き寄せられたかのようにキスを交わす。

「……ん、」

深みを増していくキスに歯止めをかけられ、一颯さんにお姫様抱っこされて連れて行かれたのはバスルーム。扉を開けるとふんわりとアロマの入浴剤の良い香りと薔薇の香りが漂っていた。バトラーとして要望があれば薔薇風呂を用意するのだが、今日は用意された側だった。色とりどりの薔薇が湯船に浮かんでいて、非常に綺麗。薔薇風呂を用意している時も花の効力で癒されるが、入る立場としては段違いだ。

「ゆっくり入っておいで」

いつもはお風呂に一緒に入りたがる一颯さんが、何故だか遠慮している。

「……一緒に入らないんですか?」

「薔薇風呂は抵抗がある…」

「先に入ってますから、後から来て下さいね」

「いつもは一緒に入るのは嫌がるくせに…」

「今日は特別です。せっかくの薔薇風呂なので、一人で入ってもつまらないです!」

私はお風呂に入る前に婚約指輪を外し、ベッドのサイドテーブルに置いた。

実際に湯船に入ってみると非日常の空間が日頃の疲れを浄化してくれる。普段は慌ただしく仕事をしているけれど、たまには安らぎも必要だと思った。今日はお姫様的な扱いをされて、人生最高の誕生日になった。

下旬の一颯さんの誕生日はどうしよう?お祝いと今までのお返しとして盛大にしたいけれど、一颯さんみたいにスイートルームを借りれる訳でも、フレンチレストランに行ける訳でもない。正社員と言えど、ホテルのサービススタッフは世間一般の会社よりも月給が低いのだ。公休も繁忙期は月に7回しかなく、その上、残業も多いくせに……!

結婚するまでに貯金も増やしたい。一颯さんの誕生日が終わったら、貯金額も増額しよう……。

「薔薇の香りがキツイ…」

「そうですか?私は嫌いじゃないですよ」

考え事をしながら湯船に浸かっていると一颯さんが入って来た。確かに薔薇の香りは独特なので、苦手な人もいるかもしれない。

一颯さんと話をしながら、ゆっくりと湯船に浸かった後はベッドのサイドテーブルに置いた婚約指輪を再び身につけて、ポスッとベッドに寝転がった。

天井の灯りに向けて、手を伸ばしてかざす。キラキラと光輝いているダイヤモンド達。綺麗だなぁ……。

「気に入ってくれた?」

お風呂から上がった一颯さんはバスローブ姿で私の横に座った。バスローブの隙間から見える鎖骨とサラサラな前髪をかきあげる仕草が何とも言えずに艶っぽい。

「はい、とっても。一颯さん、こんなに素敵な指輪を有難う御座います。それに何気なく呟いた事を覚えててくれて嬉しいです」

私は起き上がり、一颯さんの背後からギュッと抱きしめる。ペタッと背中に顔をつける。大好きが溢れていて、どんなに抱きしめても足りない。

「恵里奈が気に入った物が良いと思って選んだだけだ。そんなに喜んで貰えるなら贈りがいがあったな」

一颯さんはクスッと笑って、私を見た。

「一颯さんは誕生日に欲しい物はありますか?」

目が合ったので、一颯さんに欲しい物を尋ねては見たものの……抱きしめていた両腕を解かれて、ベッドに押し倒された。

「恵里奈以外は何もいらない」

「そ、そんな事言われても……!」

一颯さんは私を見つめた後、目を逸らして赤くなっている私をからかっているかのようにクスクスと笑っている。
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