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誕生日も仕事でしたが、人生最高の日になりました!
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一颯さんは店員さんと軽く話をして、会計を済ませた。私は頭の中を整理する間もないままに車に乗せられて、更に移動する。
「い、一颯さん!」
「んー?さっきの店員の事?咲希の友達で俺の同級生でもある」
「それも聞きたかったんですけど、あの、この格好は一体…」
「……良いから、まだお楽しみ」
しばらく車を走らせると見覚えのある場所へと到着した。以前、一颯さんが連れて来てくれたランチブッフェがある高級ホテル。まさかのまさか、この高級ホテルでディナーなのかな?
車から降ろされると驚いている時間も与えられず、以前にお世話になった本橋さんへの挨拶も早々にエレベーターに乗せられた。直通運転の専用エレベーターなのかな?……だとすると行先はエグゼクティブフロア!
「いらっしゃいませ、真壁様」
丁寧に御出迎えして頂いた専用フロントでチェックインをして、強引に連れてこられた場所は見晴らしの良いスイートルーム。自分が働いているホテルと同じ位の高層で夜景も光り輝いていて綺麗だ。
「一颯さん……?」
「誕生日おめでとう、恵里奈。サービスする側ではなく、サービスをされる側を味わうのも良いだろ?ご褒美も兼ねて、俺からのプレゼント」
「もしかして、今日はココにお泊まりですか?」
「うん、思う存分、堪能して」
自分がスイートルームに泊まれる日が来るなんて、思っても見なかった。周りを見渡すだけで、胸が高鳴ってしまう。
「一颯さん、一颯さん、夜景が綺麗です!お風呂も広いです!アメニティもブランドです!こ、コーヒーマシーンもあります!」
「……自分の働いているホテルとさほど変わらないだろ。恵里奈は子供みたいだな」
仕事以外ではスイートルームに入った事がない私は感動してしまい、はしゃいでいると一颯さんはそれを見ては呆れていた。
「連絡はしておいたが、予約時間が過ぎてるから急いで行くぞ」
「はい?何処へ?」
「何処へじゃない!食事しに行くから」
浮かれて居たのも束の間、手を繋がれて早足で客室を後にした。食事の場所はドレスコード有りのフレンチレストランだった。
「わ、私には、高級フレンチなど敷居が高すぎます…」
フレンチのサービスをした事はあるが、自分が客になるなど初めてだ。前回のお箸で食べられるフレンチとは違い、格式高い。どうしよう…?考えれば考える程、怖い。席に座った瞬間から身震いがした。周りには紳士や貴婦人のような方々ばかりが食事をされていて、私自身は場に馴染んでいないように感じられた。絶対に浮いている気がする……。
「改めて、誕生日おめでとう」
注がれたシャンパンを手に持ち、一颯さんと乾杯を交わした。私の好みに合わせた甘口のシャンパンも味わえない程に身体がカチコチに固まっている。居酒屋で言う所のお通しの様なもので、アミューズと呼ばれるワンスプーンに乗っている物を食す。
その後に前菜が運ばれ、緊張しながらカトラリーを手にしようとした時、震えた指先からフォークが滑り落ちてしまった。絨毯に真っ直ぐに落ちて、小さくカツンッと音がした後に倒れた。スタッフさんが直ぐに新しいフォークに取り替えてくれたが、頭が真っ白になっている。
「ごめんなさい、一颯さん。初めてで緊張しちゃって…」
「大丈夫だよ、実は言うと俺もドレスコード有りのフレンチは初めてだから」
私が恐る恐る言うと一颯さんは小声で返した。それを聞いて不安も解消された気がした。
「どちらかと言うと父が板前だから懐石料理の方が馴染みがあって、小さい頃から作法に厳しかった。こんなんでも、茶道や華道も習わされた」
「わぁ、茶道や華道も習ってたなんて素敵ですね。さすが老舗の旅館の御曹司です!」
「御曹司なんて言える程じゃないけどな。茶道や華道は咲希と一緒にサボってばかりいたから、先生にも愛想を尽かれた。真面目に取り組んでたのは兄だけだった。咲希なんて、見てば分かる通り、じっとしていられない性格だから直ぐに飽きちゃってたけど…。兄は旅館を継ぐと幼い頃から子供ながらに決めてたから両親も俺達には期待してなかったと思うから良いけどね」
「でもでも、一颯さんは高級ホテルの支配人にまで出世したんだから、御両親も鼻が高いと思いますよ」
「そんな事言ってくれるのは、恵里奈だけだよ」
一颯さんの子供の頃の話を聞きながら食事をしていたら、次第に緊張も解けて来た。その後はカトラリーを落とすことなく、料理を堪能出来た。
初めて食べた高級フレンチは自分には大人の味だった気がする。鹿肉も初めて食べた。シャンパンも甘口で口当たりも良かった。一颯さんとフランス料理も様になっていて、食べながら眺めてしまった。何をしても、スマートで格好良いなんて反則だ。
「一颯さん、御馳走様でした。緊張し過ぎましたけど、美味しかったです」
「自分でもサービスしてるだけあって、作法は分かってたから緊張が解けたらなんて事なかっただろ?」
「うーん、そうですかね…。敷居が高いのは変わりませんけどね…。一颯さんに見とれてたら、緊張もいつの間にかなくなってましたよ」
「……あ、そう」
「今、照れましたね?」
「……ばぁーか」
客室に戻るエレベーターの中での会話。一颯さんをからかうと顔が赤くなる時があるから、可愛い。
食事を済ませて部屋に戻ると、誕生日のデザートプレートが届いた。
「い、一颯さん!」
「んー?さっきの店員の事?咲希の友達で俺の同級生でもある」
「それも聞きたかったんですけど、あの、この格好は一体…」
「……良いから、まだお楽しみ」
しばらく車を走らせると見覚えのある場所へと到着した。以前、一颯さんが連れて来てくれたランチブッフェがある高級ホテル。まさかのまさか、この高級ホテルでディナーなのかな?
車から降ろされると驚いている時間も与えられず、以前にお世話になった本橋さんへの挨拶も早々にエレベーターに乗せられた。直通運転の専用エレベーターなのかな?……だとすると行先はエグゼクティブフロア!
「いらっしゃいませ、真壁様」
丁寧に御出迎えして頂いた専用フロントでチェックインをして、強引に連れてこられた場所は見晴らしの良いスイートルーム。自分が働いているホテルと同じ位の高層で夜景も光り輝いていて綺麗だ。
「一颯さん……?」
「誕生日おめでとう、恵里奈。サービスする側ではなく、サービスをされる側を味わうのも良いだろ?ご褒美も兼ねて、俺からのプレゼント」
「もしかして、今日はココにお泊まりですか?」
「うん、思う存分、堪能して」
自分がスイートルームに泊まれる日が来るなんて、思っても見なかった。周りを見渡すだけで、胸が高鳴ってしまう。
「一颯さん、一颯さん、夜景が綺麗です!お風呂も広いです!アメニティもブランドです!こ、コーヒーマシーンもあります!」
「……自分の働いているホテルとさほど変わらないだろ。恵里奈は子供みたいだな」
仕事以外ではスイートルームに入った事がない私は感動してしまい、はしゃいでいると一颯さんはそれを見ては呆れていた。
「連絡はしておいたが、予約時間が過ぎてるから急いで行くぞ」
「はい?何処へ?」
「何処へじゃない!食事しに行くから」
浮かれて居たのも束の間、手を繋がれて早足で客室を後にした。食事の場所はドレスコード有りのフレンチレストランだった。
「わ、私には、高級フレンチなど敷居が高すぎます…」
フレンチのサービスをした事はあるが、自分が客になるなど初めてだ。前回のお箸で食べられるフレンチとは違い、格式高い。どうしよう…?考えれば考える程、怖い。席に座った瞬間から身震いがした。周りには紳士や貴婦人のような方々ばかりが食事をされていて、私自身は場に馴染んでいないように感じられた。絶対に浮いている気がする……。
「改めて、誕生日おめでとう」
注がれたシャンパンを手に持ち、一颯さんと乾杯を交わした。私の好みに合わせた甘口のシャンパンも味わえない程に身体がカチコチに固まっている。居酒屋で言う所のお通しの様なもので、アミューズと呼ばれるワンスプーンに乗っている物を食す。
その後に前菜が運ばれ、緊張しながらカトラリーを手にしようとした時、震えた指先からフォークが滑り落ちてしまった。絨毯に真っ直ぐに落ちて、小さくカツンッと音がした後に倒れた。スタッフさんが直ぐに新しいフォークに取り替えてくれたが、頭が真っ白になっている。
「ごめんなさい、一颯さん。初めてで緊張しちゃって…」
「大丈夫だよ、実は言うと俺もドレスコード有りのフレンチは初めてだから」
私が恐る恐る言うと一颯さんは小声で返した。それを聞いて不安も解消された気がした。
「どちらかと言うと父が板前だから懐石料理の方が馴染みがあって、小さい頃から作法に厳しかった。こんなんでも、茶道や華道も習わされた」
「わぁ、茶道や華道も習ってたなんて素敵ですね。さすが老舗の旅館の御曹司です!」
「御曹司なんて言える程じゃないけどな。茶道や華道は咲希と一緒にサボってばかりいたから、先生にも愛想を尽かれた。真面目に取り組んでたのは兄だけだった。咲希なんて、見てば分かる通り、じっとしていられない性格だから直ぐに飽きちゃってたけど…。兄は旅館を継ぐと幼い頃から子供ながらに決めてたから両親も俺達には期待してなかったと思うから良いけどね」
「でもでも、一颯さんは高級ホテルの支配人にまで出世したんだから、御両親も鼻が高いと思いますよ」
「そんな事言ってくれるのは、恵里奈だけだよ」
一颯さんの子供の頃の話を聞きながら食事をしていたら、次第に緊張も解けて来た。その後はカトラリーを落とすことなく、料理を堪能出来た。
初めて食べた高級フレンチは自分には大人の味だった気がする。鹿肉も初めて食べた。シャンパンも甘口で口当たりも良かった。一颯さんとフランス料理も様になっていて、食べながら眺めてしまった。何をしても、スマートで格好良いなんて反則だ。
「一颯さん、御馳走様でした。緊張し過ぎましたけど、美味しかったです」
「自分でもサービスしてるだけあって、作法は分かってたから緊張が解けたらなんて事なかっただろ?」
「うーん、そうですかね…。敷居が高いのは変わりませんけどね…。一颯さんに見とれてたら、緊張もいつの間にかなくなってましたよ」
「……あ、そう」
「今、照れましたね?」
「……ばぁーか」
客室に戻るエレベーターの中での会話。一颯さんをからかうと顔が赤くなる時があるから、可愛い。
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