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誕生日も仕事でしたが、人生最高の日になりました!
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4月7日、私の誕生日当日。
本当は当日に公休日を入れるはずだったのだが、他の従業員との兼ね合いもあり、一颯さんも午前中は会議があるとかで出勤になってしまった。それでも8日を公休日にして、シフトをラウンジのモーニングに調整してくれた高見沢さんに感謝したい。今日は定時で上がるはずだったが、連泊のお客様の御要望があったりで、バトラーの仕事が長引き、残業になってしまった。ホテルのサービススタッフは残業なんて慣れっこだから仕方がないが……。
一颯さんは会議が終わったから、半休を使って先に上がっていると言っていた。高見沢さんと他のバトラーに引き継ぎをし、バタバタとホテルを出て急ぎ足で寮に向かう。
寮に着いたら直ぐに着替えをして、身なりを整えて、まとめてあった荷物を持ち、玄関を飛び出した。どうやら、今日は一颯さんが外食に連れて行ってくれるらしいので、身なりだけはきちんと整えたつもり。
私の為に半休を使って待っていてくれてるのだから、早くしなきゃ!
急げば急ぐ程に抜けていて、以前にプレゼントして頂いたネックレスをつけ忘れて部屋に戻り、スマホの充電器を忘れた事に気付き、再度、部屋に戻ったりした。
「お疲れ様。……酷く疲れてるみたいだけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。ちょっと忘れ物しちゃって…。それより、遅くなってしまいすみません!」
「想定内だから平気。上がれなかったんだろ?俺も半休を使うつもりが使えずに定時で帰って来たから」
待ち合わせ場所のマンションの駐車場に全力で向かう途中で、一颯さんの車に拾ってもらった。私の乱れた姿を見た瞬間に笑う。久しぶりに走ったから、息切れもしている。情けない。サイドミラーで自分自身を確認すると、ネックレスの飾りのハート部分がクルリと半回転して後ろ側に向いてしまっている。せっかくセットしてきた髪も化粧も台無しだ。
「……今日は会議が入ってしまったから、休めなくてごめんな」
「そんな事ないです!私の為に早番にして貰ったりとか色々と根回しして頂き有難う御座います!一颯さんは半休は使えなかったんですね。忙しいですもんね…。明日は休めるのですか?」
「副支配人にお願いして帰ろうと思ってたんだが、役員が来てたからなかなか上がれなかっただけだ。明日は全て任せてきたから大丈夫」
「私のわがままの為に色んな人に迷惑かけ…って、痛いです、一颯さん!」
左手で軽くゲンコツをされた。
「恵里奈は他人の心配までアレコレし過ぎ。借りは仕事で返しな。ホテルは残業当たり前、公休変更も当たり前、お客様の入り次第なんだから、仕事から離れたら楽しい事だけ考えろ」
「……はい、分かりました」
「分かればよろしい」
シュンとしている私の頭を優しく撫でてくれた。アメとムチ。このギャップにドキドキさせられる。
「今日はどこに連れてってくれるのですか?」
「秘密。その前に寄る所があるから黙って着いてきて」
「………?、分かりました。楽しみにしてます」
行先も分からないミステリーツアーみたいに車を走らせていたが、見覚えのある通りに出て来た。咲希さんの美容院に着き、手際良く髪をセットして貰った。大人っぽいアップだが可愛らしさもある。
「お誕生日おめでとう!恵里奈ちゃん。コレは私からのプレゼントね」
メイクもしてくれた上にイヤリングもプレゼントされた。パールの着いた長めなイヤリング。
「メイクも素敵なイヤリングも有難う御座います!嬉しいです」
「恵里奈ちゃんって本当に可愛いわぁ。一颯には勿体ない!」
椅子から立ち上がった私を抱きしめる咲希さん。
「口の減らない奴だな、まったく。行こう、恵里奈」
「相変わらず、かっわいくないわね。どの口が言ってんの!」
私の手を引いて美容院を出ようとした一颯さんの頬を咲希さんはつねった。一颯さんがつねられるなんて初めて見たから、心外かもしれないが私には面白くて思わず笑みがこぼれた。
「あはは、仲が良いですね」
「どこが!」
「そんな訳ないでしょ!」
子供の頃から、こんな感じの二人なのかな?大人になってもじゃれ合えるのは仲が良い証拠だと思う。
私達は咲希さんに別れを告げ、再び車で移動する。路地裏の駐車場に車を停めて、「着いてきて」と言われて降ろされた。少しだけ歩くとショーウィンドウに上品なワンピースなどが飾られているショップに着いた。
「いらっしゃいませ」
一颯さんが扉を開けてくれて、言われるがままに恐る恐るショップの中に入る。
見渡す限り、披露宴にお呼ばれした時に着るようなワンピースやカクテルドレスが沢山あった。
「一颯、久しぶり!咲希から聞いてるよ。どうぞ、こちらへ」
店員さんは一颯さんと気軽に話していて、名前を呼び捨てしてるので知り合いみたいだ。戸惑っている暇もなく、上半身からつま先までのコーディネートをされ、着替えをさせられた。一体、どういう事?
「はい、こんな感じで良い?」
袖がレース仕様になっている紺のワンピースにシルバーのクラッチバッグ、交差している紐が可愛い紺のヒール。
本当は当日に公休日を入れるはずだったのだが、他の従業員との兼ね合いもあり、一颯さんも午前中は会議があるとかで出勤になってしまった。それでも8日を公休日にして、シフトをラウンジのモーニングに調整してくれた高見沢さんに感謝したい。今日は定時で上がるはずだったが、連泊のお客様の御要望があったりで、バトラーの仕事が長引き、残業になってしまった。ホテルのサービススタッフは残業なんて慣れっこだから仕方がないが……。
一颯さんは会議が終わったから、半休を使って先に上がっていると言っていた。高見沢さんと他のバトラーに引き継ぎをし、バタバタとホテルを出て急ぎ足で寮に向かう。
寮に着いたら直ぐに着替えをして、身なりを整えて、まとめてあった荷物を持ち、玄関を飛び出した。どうやら、今日は一颯さんが外食に連れて行ってくれるらしいので、身なりだけはきちんと整えたつもり。
私の為に半休を使って待っていてくれてるのだから、早くしなきゃ!
急げば急ぐ程に抜けていて、以前にプレゼントして頂いたネックレスをつけ忘れて部屋に戻り、スマホの充電器を忘れた事に気付き、再度、部屋に戻ったりした。
「お疲れ様。……酷く疲れてるみたいだけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。ちょっと忘れ物しちゃって…。それより、遅くなってしまいすみません!」
「想定内だから平気。上がれなかったんだろ?俺も半休を使うつもりが使えずに定時で帰って来たから」
待ち合わせ場所のマンションの駐車場に全力で向かう途中で、一颯さんの車に拾ってもらった。私の乱れた姿を見た瞬間に笑う。久しぶりに走ったから、息切れもしている。情けない。サイドミラーで自分自身を確認すると、ネックレスの飾りのハート部分がクルリと半回転して後ろ側に向いてしまっている。せっかくセットしてきた髪も化粧も台無しだ。
「……今日は会議が入ってしまったから、休めなくてごめんな」
「そんな事ないです!私の為に早番にして貰ったりとか色々と根回しして頂き有難う御座います!一颯さんは半休は使えなかったんですね。忙しいですもんね…。明日は休めるのですか?」
「副支配人にお願いして帰ろうと思ってたんだが、役員が来てたからなかなか上がれなかっただけだ。明日は全て任せてきたから大丈夫」
「私のわがままの為に色んな人に迷惑かけ…って、痛いです、一颯さん!」
左手で軽くゲンコツをされた。
「恵里奈は他人の心配までアレコレし過ぎ。借りは仕事で返しな。ホテルは残業当たり前、公休変更も当たり前、お客様の入り次第なんだから、仕事から離れたら楽しい事だけ考えろ」
「……はい、分かりました」
「分かればよろしい」
シュンとしている私の頭を優しく撫でてくれた。アメとムチ。このギャップにドキドキさせられる。
「今日はどこに連れてってくれるのですか?」
「秘密。その前に寄る所があるから黙って着いてきて」
「………?、分かりました。楽しみにしてます」
行先も分からないミステリーツアーみたいに車を走らせていたが、見覚えのある通りに出て来た。咲希さんの美容院に着き、手際良く髪をセットして貰った。大人っぽいアップだが可愛らしさもある。
「お誕生日おめでとう!恵里奈ちゃん。コレは私からのプレゼントね」
メイクもしてくれた上にイヤリングもプレゼントされた。パールの着いた長めなイヤリング。
「メイクも素敵なイヤリングも有難う御座います!嬉しいです」
「恵里奈ちゃんって本当に可愛いわぁ。一颯には勿体ない!」
椅子から立ち上がった私を抱きしめる咲希さん。
「口の減らない奴だな、まったく。行こう、恵里奈」
「相変わらず、かっわいくないわね。どの口が言ってんの!」
私の手を引いて美容院を出ようとした一颯さんの頬を咲希さんはつねった。一颯さんがつねられるなんて初めて見たから、心外かもしれないが私には面白くて思わず笑みがこぼれた。
「あはは、仲が良いですね」
「どこが!」
「そんな訳ないでしょ!」
子供の頃から、こんな感じの二人なのかな?大人になってもじゃれ合えるのは仲が良い証拠だと思う。
私達は咲希さんに別れを告げ、再び車で移動する。路地裏の駐車場に車を停めて、「着いてきて」と言われて降ろされた。少しだけ歩くとショーウィンドウに上品なワンピースなどが飾られているショップに着いた。
「いらっしゃいませ」
一颯さんが扉を開けてくれて、言われるがままに恐る恐るショップの中に入る。
見渡す限り、披露宴にお呼ばれした時に着るようなワンピースやカクテルドレスが沢山あった。
「一颯、久しぶり!咲希から聞いてるよ。どうぞ、こちらへ」
店員さんは一颯さんと気軽に話していて、名前を呼び捨てしてるので知り合いみたいだ。戸惑っている暇もなく、上半身からつま先までのコーディネートをされ、着替えをさせられた。一体、どういう事?
「はい、こんな感じで良い?」
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