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社内恋愛の事情を知ってしまいました!
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───一颯さんと一緒の休みで濃密な時間を過ごした翌々日、吉沢さんが仕事に復帰したらしい。
「篠宮ちゃん、こないだはありがとね!全回復したよんっ!コレはお礼です」
出勤して直ぐにエグゼクティブフロア専用の従業員の女子ロッカー室に向かった。私の姿を見つけると出勤を待ちかねていた様に吉沢さんが、私の目の前に有名パティスリーの紙袋を差し出して来た。熱を出してから3日ぶりに会う吉沢さん。
「もう大丈夫なんですか?」
「点滴に連れて行って貰ってから、熱も下がり始めてすっかり良くなったよ。篠宮ちゃん、受け取ってくれないと困る~」
差し出された袋を受け取らずにいると無理やりに右手に掴まされた。吉沢さんは扁桃腺が腫れやすい体質らしく、酷い時は抗生剤の点滴を打たないと熱が下がらないらしい。
「元気そうで安心しました!お菓子も頂いてしまい、何だか申し訳ないです…。有難うございます!」
「こちらこそ有難う!拓斗と一緒に買いに行ったの。ここの焼き菓子がめちゃ旨だから食べてね」
「………たくと?」
「拓斗って高根沢だよ」
「はい、そうですよね…」
ロッカー室は吉沢さんと二人きりだから、周りに気を遣わなくても平気だけれども吉沢さんが高見沢さんを拓斗って呼んでいる。今までは名字で呼んでいたのに、どういう風の吹き回しだろうか?
「私ね、本当はずっと前から拓斗の気持ちに気付いてたんだ。でもね、彼氏とも別れられなくて応えようとしなかった。私は本当に最低な女だから、彼氏の話をする事で諦めて欲しかったのに…拓斗はそれでも気持ちを伝えてきたの」
吉沢さんの胸の内を初めて聞いた。
「熱を出しても彼氏は来てくれない、心配もしてくれない。……これでやっと踏ん切りがついたの。彼氏にしがみつくのはやめようって……。拓斗とは付き合っている訳じゃないけど、彼氏候補として接してみようかな?って思ってる。彼氏と居るよりも、居心地も良いしね!」
「高見沢さんは口は悪いけど、良い人ですもんね」
「そうなんだよー、拓斗は性格は悪いけど、顔は好みなんだよ」
「性格は悪いとは言ってませんよ?」
「あはは、そっかー」
すっかり元気になった吉沢さんは楽しそうに笑う。高見沢さんと吉沢さんは美男美女だから、並んだら絵になるんだよね。二人が幸せになれる様に応援したい!
私達はそれぞれの職場に戻った。高見沢さんを見つけた瞬間に口元が緩んでしまう。吉沢さんから聞いた件について、おめでとうと言いたい。高見沢さんが病院の付き添いに行く為に急遽の有給を取り、その次の日は私が公休日、またその次の日は高見沢さんの公休日だったので、高見沢さんにも会えてなかったのだ。吉沢さんが状況を話してくれて嬉しい。
「遅刻しといて、何ニヤニヤしてるんだ!」
「出勤は時間内に押しました!吉沢さんと話していたんですっ。高見沢さん、おめでとうございます!」
「……っるさい、余計なお世話!まだ付き合ってないし!それより、彼氏と休みが一緒だったんでしょ?どこかに出かけて来たの?」
「……えっと、休みの日はドライブしてから夜御飯を食べに行きました」
詳しくは休みの前日にお泊まりして、沢山たくさんイチャイチャして、起きたら昼頃になってしまい、朝昼一緒の御飯を食べてドライブして、夜御飯を食べに行って、またイチャイチャして……夜更かししてしまって寝不足だった。思い出すだけでも、濃厚で幸せな一日だった。
「……優しい?」
「はい、とっても」
「そっか、良かったな。一颯君にも本気になれる人が出来たなら祝福するしかないか……」
「えへへ、有難う御座います!」
認めないと言っていた高見沢さんから祝福されるなんて、心が満たされて顔がほころんだ。
「いや、まだ何も言ってないからな!……でも、吉沢の件ではお世話になりました。ありがとな!」
素直な対応をし、少しだけ照れている高見沢さんが珍しい。私は吉沢さんから頂いたお菓子のお礼を高見沢さんにも伝えたら、更に照れていた。そんな高見沢さんは何だか可愛かった。
「連休の件、彼氏の予定が立ち次第、組ませてもらうから。二月はオフシーズンだから、それで良かったら大丈夫だよ」
「有難う御座います!よろしくお願いします」
高見沢さんが超絶優しい。吉沢さんパワーで私の前でもニコニコしている。決して営業スマイルの分類なんかではなくて、真の微笑みなのだろう。一颯さんとの事も認めてくれたのか、それとも一颯さんの願い事だからか、連休の事はきちんと考えてくれている。
「連休はあげるけどね、二人の関係を認めた訳じゃないからね!失格と思えば、あんたをいつでも引き剥がしてやるから!」
やっぱりね、そうなりますよね……。高見沢さんの笑顔は消えて、私に向けてビシッと言い切った。
「………なーんてね。あんたを好きになった理由、何となくなら理解出来そうだから、今のところは見守るよ」
意地悪そうに小悪魔っぽく笑った後、見守ると言ってくれた。一颯さんは高根沢さんにとっても大切な存在。大切な人の足枷にならない様に、相応しくなれる様に精一杯努力します。
同じ部署の上司を味方につけ、更には上司の秘密の社内恋愛にも参入し、お互いに秘密を握る事になった。
今後はお互いに良き相談相手になるでしょう。秘密の社内恋愛を知る者同士は信頼関係が必須?……だと思う。
「篠宮ちゃん、こないだはありがとね!全回復したよんっ!コレはお礼です」
出勤して直ぐにエグゼクティブフロア専用の従業員の女子ロッカー室に向かった。私の姿を見つけると出勤を待ちかねていた様に吉沢さんが、私の目の前に有名パティスリーの紙袋を差し出して来た。熱を出してから3日ぶりに会う吉沢さん。
「もう大丈夫なんですか?」
「点滴に連れて行って貰ってから、熱も下がり始めてすっかり良くなったよ。篠宮ちゃん、受け取ってくれないと困る~」
差し出された袋を受け取らずにいると無理やりに右手に掴まされた。吉沢さんは扁桃腺が腫れやすい体質らしく、酷い時は抗生剤の点滴を打たないと熱が下がらないらしい。
「元気そうで安心しました!お菓子も頂いてしまい、何だか申し訳ないです…。有難うございます!」
「こちらこそ有難う!拓斗と一緒に買いに行ったの。ここの焼き菓子がめちゃ旨だから食べてね」
「………たくと?」
「拓斗って高根沢だよ」
「はい、そうですよね…」
ロッカー室は吉沢さんと二人きりだから、周りに気を遣わなくても平気だけれども吉沢さんが高見沢さんを拓斗って呼んでいる。今までは名字で呼んでいたのに、どういう風の吹き回しだろうか?
「私ね、本当はずっと前から拓斗の気持ちに気付いてたんだ。でもね、彼氏とも別れられなくて応えようとしなかった。私は本当に最低な女だから、彼氏の話をする事で諦めて欲しかったのに…拓斗はそれでも気持ちを伝えてきたの」
吉沢さんの胸の内を初めて聞いた。
「熱を出しても彼氏は来てくれない、心配もしてくれない。……これでやっと踏ん切りがついたの。彼氏にしがみつくのはやめようって……。拓斗とは付き合っている訳じゃないけど、彼氏候補として接してみようかな?って思ってる。彼氏と居るよりも、居心地も良いしね!」
「高見沢さんは口は悪いけど、良い人ですもんね」
「そうなんだよー、拓斗は性格は悪いけど、顔は好みなんだよ」
「性格は悪いとは言ってませんよ?」
「あはは、そっかー」
すっかり元気になった吉沢さんは楽しそうに笑う。高見沢さんと吉沢さんは美男美女だから、並んだら絵になるんだよね。二人が幸せになれる様に応援したい!
私達はそれぞれの職場に戻った。高見沢さんを見つけた瞬間に口元が緩んでしまう。吉沢さんから聞いた件について、おめでとうと言いたい。高見沢さんが病院の付き添いに行く為に急遽の有給を取り、その次の日は私が公休日、またその次の日は高見沢さんの公休日だったので、高見沢さんにも会えてなかったのだ。吉沢さんが状況を話してくれて嬉しい。
「遅刻しといて、何ニヤニヤしてるんだ!」
「出勤は時間内に押しました!吉沢さんと話していたんですっ。高見沢さん、おめでとうございます!」
「……っるさい、余計なお世話!まだ付き合ってないし!それより、彼氏と休みが一緒だったんでしょ?どこかに出かけて来たの?」
「……えっと、休みの日はドライブしてから夜御飯を食べに行きました」
詳しくは休みの前日にお泊まりして、沢山たくさんイチャイチャして、起きたら昼頃になってしまい、朝昼一緒の御飯を食べてドライブして、夜御飯を食べに行って、またイチャイチャして……夜更かししてしまって寝不足だった。思い出すだけでも、濃厚で幸せな一日だった。
「……優しい?」
「はい、とっても」
「そっか、良かったな。一颯君にも本気になれる人が出来たなら祝福するしかないか……」
「えへへ、有難う御座います!」
認めないと言っていた高見沢さんから祝福されるなんて、心が満たされて顔がほころんだ。
「いや、まだ何も言ってないからな!……でも、吉沢の件ではお世話になりました。ありがとな!」
素直な対応をし、少しだけ照れている高見沢さんが珍しい。私は吉沢さんから頂いたお菓子のお礼を高見沢さんにも伝えたら、更に照れていた。そんな高見沢さんは何だか可愛かった。
「連休の件、彼氏の予定が立ち次第、組ませてもらうから。二月はオフシーズンだから、それで良かったら大丈夫だよ」
「有難う御座います!よろしくお願いします」
高見沢さんが超絶優しい。吉沢さんパワーで私の前でもニコニコしている。決して営業スマイルの分類なんかではなくて、真の微笑みなのだろう。一颯さんとの事も認めてくれたのか、それとも一颯さんの願い事だからか、連休の事はきちんと考えてくれている。
「連休はあげるけどね、二人の関係を認めた訳じゃないからね!失格と思えば、あんたをいつでも引き剥がしてやるから!」
やっぱりね、そうなりますよね……。高見沢さんの笑顔は消えて、私に向けてビシッと言い切った。
「………なーんてね。あんたを好きになった理由、何となくなら理解出来そうだから、今のところは見守るよ」
意地悪そうに小悪魔っぽく笑った後、見守ると言ってくれた。一颯さんは高根沢さんにとっても大切な存在。大切な人の足枷にならない様に、相応しくなれる様に精一杯努力します。
同じ部署の上司を味方につけ、更には上司の秘密の社内恋愛にも参入し、お互いに秘密を握る事になった。
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