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支配人の大切なお客様です。
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12月も半ばになり、ホテル内ではクリスマスの話題が出始めた。従業員食堂でたまたま一緒になった女神様、ルームキーパーの三枝さんの話題もクリスマスだったりする……。三枝さんは私と優月ちゃんが、このホテルで心を開いている内の一人だ。
「恵里奈ちゃんは予定あるの?」
「ありませんよ。きっと仕事ですし…」
「そうよね、年末年始とか関係無しなのがサービス業の辛いとこよね…」
三枝さんは不動産関係の会社に勤める彼氏が居るらしいが、彼氏は土日のどちらかと平日一日が休みらしく、お互いに合わせなれば休みは同じにならないらしい。
「私は皆よりも早く上がれたりするけど…彼氏とは夜にしか会えなそうだわ。恵里奈ちゃんは彼氏居るの?」
「…い、居ますけど…凄く多忙な方で二人きりで会うのも難しいんです」
「そっかー…、それは切ないね。会社員?年上?」
「……まぁ、そんなとこです」
三枝さんはパスタをクルクル巻きながら質問して来た。どう返答したら良いのか分からずに曖昧な答えで返した。
「三枝さん、篠宮さん、お疲れ様です!」
「星野さん!休憩ですか?お疲れ様です」
「お疲れ様です!」
女子トークをしていた時に現れたのは、ホットカフェオレを片手に持った星野さんだった。私達の席にホットカフェオレのほんわかとした香りが漂って来る。
「一段落ついたから息抜きに来たんだ。何話してたの?」
「クリスマスの話よ。恵里奈ちゃんの彼氏がどんな方かお会いしてみたいわ」
星野さんが問いかけると、すかさず三枝さんが答えた。すると…
「……俺はその彼氏の友達なんだけど、切れ長の瞳で見かけはイケメンだけど…仕事となると鬼軍曹の様に厳しくて、頼り甲斐はあるけど…近寄り難いみたいな奴かな?…まぁ、根はとっても良い奴だけどね」
と星野さんがニヤニヤしながら返した。そんな星野さんの返事に三枝さんが食いつかないはずはなく…
「あら?ここの支配人みたいな彼ね。ますます会ってみたいな」
とか言っちゃいました。星野さんが更にニヤニヤして、「そのうち会えるんじゃないかな?」などと茶化すから、私は顔が真っ赤になってしまった。
三枝さん、今はまだお伝え出来ませんが…その支配人に似た彼が、似ているのではなくて正しく本物です。
「あ、総支配人様、お疲れ様です」
「……うるさいぞ、星野」
昼食を取ろうと従業員食堂に入って来た支配人に声をかけた星野さんは、笑いを堪えきれずに肩が震えていた。そんな星野さんを見た一颯さんは目がキョトンとしている。
「何がそんなにおかしい?」
冷たく言い放つ一颯さんが私の真っ赤な顔に気付き、良くも悪くも何となく察したらしい。
「星野、篠宮をからかうのは止めろ」と言ったが、三枝さんが追い打ちをかけてしまった。
「支配人、お疲れ様です。星野さんのお友達なら、支配人ともお友達ですか?恵里奈ちゃんの彼氏さん、知ってます?恵里奈ちゃんがどんな人を選ぶのか興味が湧いてしまって…」
悪びれもなく聞いてきた三枝さんに対して、一颯さんは怯むことはなかった。
「……あぁ、知ってます。相当良い男ですね、奴は。星野みたいに浮ついてないし」
ギロリ、と星野さんを睨みつけたが、星野さんはニコニコと笑顔を浮かべている。一颯さんをいじり倒して遊べる唯一の人。
三枝さんは「いつの日か会わせてね」なんて言ってるが、目の前に居るんですってば!
中々、私の彼氏の話が収束に向かわないので食べ終わったら先に出て来た。
クリスマスかぁ…。
一颯さんとは初めてのクリスマスだけれども、まだ何の計画も立てていないし、そもそもクリスマス自体の話もしていなかった。
残り時間は自分の休憩室(以前は支配人の為の宿泊部屋だったが、現在はバトラーの私と高見沢さんの休憩室兼宿泊部屋にもなっている)に行って休もう。
とぼとぼとゆっくり歩いていたら、一颯さんからメッセージアプリが入って、今から休憩室に向かうとあった。
「お疲れ様です、一颯さん、星野さんから逃げ出して来たの?」
「………っるさい、アイツが余計な事を言うから、三枝さんに恵里奈の彼氏について根掘り葉掘り聞かれて用事があるフリして出て来た。おかげで昼食を食べ損なった!」
「夜食用に入れといた冷凍パスタならありますよ?食べますか?」
「あぁ、食べる。半分こするか?」
「私は昼食を頂いたので大丈夫ですよ」
部屋でくつろいでいると後から来た一颯さんは酷く疲れてそうに見えた。冷凍パスタをレンジで温め中にクリスマスについて尋ねると…
「クリスマスイブと当日は大切なお客様が来るんだ。すまない…。夜も無理そうだ。埋め合わせはきっとする」
と言われてしまった。拍子抜けしてしまった。てっきり、夜は一緒に過ごせるものかと思っていたから。サービス業なんだから、お客様第一に考えなきゃいけないのに…目頭に涙が滲む。
「そ、そうですよね。クリスマス時期は混みますから夜遅くなるのも仕方ないです」
涙が目から零れないように必死で堪える。私はいつから、こんなに弱くなったのだろう?恋に溺れている自分が情けなくさえ感じる。
一颯さんにも依存し過ぎている。もしも…一颯さんが私から離れてしまった時、私は立ち直れるのかな?
「恵里奈ちゃんは予定あるの?」
「ありませんよ。きっと仕事ですし…」
「そうよね、年末年始とか関係無しなのがサービス業の辛いとこよね…」
三枝さんは不動産関係の会社に勤める彼氏が居るらしいが、彼氏は土日のどちらかと平日一日が休みらしく、お互いに合わせなれば休みは同じにならないらしい。
「私は皆よりも早く上がれたりするけど…彼氏とは夜にしか会えなそうだわ。恵里奈ちゃんは彼氏居るの?」
「…い、居ますけど…凄く多忙な方で二人きりで会うのも難しいんです」
「そっかー…、それは切ないね。会社員?年上?」
「……まぁ、そんなとこです」
三枝さんはパスタをクルクル巻きながら質問して来た。どう返答したら良いのか分からずに曖昧な答えで返した。
「三枝さん、篠宮さん、お疲れ様です!」
「星野さん!休憩ですか?お疲れ様です」
「お疲れ様です!」
女子トークをしていた時に現れたのは、ホットカフェオレを片手に持った星野さんだった。私達の席にホットカフェオレのほんわかとした香りが漂って来る。
「一段落ついたから息抜きに来たんだ。何話してたの?」
「クリスマスの話よ。恵里奈ちゃんの彼氏がどんな方かお会いしてみたいわ」
星野さんが問いかけると、すかさず三枝さんが答えた。すると…
「……俺はその彼氏の友達なんだけど、切れ長の瞳で見かけはイケメンだけど…仕事となると鬼軍曹の様に厳しくて、頼り甲斐はあるけど…近寄り難いみたいな奴かな?…まぁ、根はとっても良い奴だけどね」
と星野さんがニヤニヤしながら返した。そんな星野さんの返事に三枝さんが食いつかないはずはなく…
「あら?ここの支配人みたいな彼ね。ますます会ってみたいな」
とか言っちゃいました。星野さんが更にニヤニヤして、「そのうち会えるんじゃないかな?」などと茶化すから、私は顔が真っ赤になってしまった。
三枝さん、今はまだお伝え出来ませんが…その支配人に似た彼が、似ているのではなくて正しく本物です。
「あ、総支配人様、お疲れ様です」
「……うるさいぞ、星野」
昼食を取ろうと従業員食堂に入って来た支配人に声をかけた星野さんは、笑いを堪えきれずに肩が震えていた。そんな星野さんを見た一颯さんは目がキョトンとしている。
「何がそんなにおかしい?」
冷たく言い放つ一颯さんが私の真っ赤な顔に気付き、良くも悪くも何となく察したらしい。
「星野、篠宮をからかうのは止めろ」と言ったが、三枝さんが追い打ちをかけてしまった。
「支配人、お疲れ様です。星野さんのお友達なら、支配人ともお友達ですか?恵里奈ちゃんの彼氏さん、知ってます?恵里奈ちゃんがどんな人を選ぶのか興味が湧いてしまって…」
悪びれもなく聞いてきた三枝さんに対して、一颯さんは怯むことはなかった。
「……あぁ、知ってます。相当良い男ですね、奴は。星野みたいに浮ついてないし」
ギロリ、と星野さんを睨みつけたが、星野さんはニコニコと笑顔を浮かべている。一颯さんをいじり倒して遊べる唯一の人。
三枝さんは「いつの日か会わせてね」なんて言ってるが、目の前に居るんですってば!
中々、私の彼氏の話が収束に向かわないので食べ終わったら先に出て来た。
クリスマスかぁ…。
一颯さんとは初めてのクリスマスだけれども、まだ何の計画も立てていないし、そもそもクリスマス自体の話もしていなかった。
残り時間は自分の休憩室(以前は支配人の為の宿泊部屋だったが、現在はバトラーの私と高見沢さんの休憩室兼宿泊部屋にもなっている)に行って休もう。
とぼとぼとゆっくり歩いていたら、一颯さんからメッセージアプリが入って、今から休憩室に向かうとあった。
「お疲れ様です、一颯さん、星野さんから逃げ出して来たの?」
「………っるさい、アイツが余計な事を言うから、三枝さんに恵里奈の彼氏について根掘り葉掘り聞かれて用事があるフリして出て来た。おかげで昼食を食べ損なった!」
「夜食用に入れといた冷凍パスタならありますよ?食べますか?」
「あぁ、食べる。半分こするか?」
「私は昼食を頂いたので大丈夫ですよ」
部屋でくつろいでいると後から来た一颯さんは酷く疲れてそうに見えた。冷凍パスタをレンジで温め中にクリスマスについて尋ねると…
「クリスマスイブと当日は大切なお客様が来るんだ。すまない…。夜も無理そうだ。埋め合わせはきっとする」
と言われてしまった。拍子抜けしてしまった。てっきり、夜は一緒に過ごせるものかと思っていたから。サービス業なんだから、お客様第一に考えなきゃいけないのに…目頭に涙が滲む。
「そ、そうですよね。クリスマス時期は混みますから夜遅くなるのも仕方ないです」
涙が目から零れないように必死で堪える。私はいつから、こんなに弱くなったのだろう?恋に溺れている自分が情けなくさえ感じる。
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