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公休日は予想外な一日!?
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「あの、お金払います!」
「いいよ、俺が誘ったんだし…。それより、腹減らないか?」
私が預けていたバックを受け取っている時には既に、カード払いでスムーズに支払いを済ませてくれていた支配人。美容室を出た後に財布を取り出すと頑なに拒否をされた。
時刻は午後二時半に近い。
仕事上、お昼時間はまちまちで遅い食事も慣れっ子だったので気にはしてなかったが、言われてみればお腹が空いたかも?
助手席に座り、ベルトを締めた後に
「お昼は出します!」
と気合いを入れて支配人に言った。
「バーカッ!俺は女に払わせる事は致しません!」
と言われて、コツンと拳で軽く頭を叩かれる。
「それに…俺が誘ったんだから、大人しく着いてくればいい」
話の流れから私の方を見て、柔らかな笑みを落とす。
私はドキドキと鼓動が早くなるのを感じて返事も出来ずに顔を反らすと、頬に手を触れられて支配人の方向に顔を向けられた。
「綺麗になったな…」
顎に手を触れられ、上に少しだけ傾けられると親指で唇をなぞるように触れた。
「………っ、」
緊張し過ぎて、目を思い切り閉じると唇から親指が離されたので、うっすらと目を開けた。
「お前の上目遣いは男を煽る。俺を煽ってどうする気だ?」
「……煽って、など…いません」
何気なく目を開けた時に上目遣いで見ていたらしく、支配人に咎められ、絞り出すような小さな声で否定をした。
支配人の綺麗な顔が間近にあり、目と目が合って逃れられない。
耳まで赤くなっているのが自分でも分かる程、顔全体に火照りを感じる。
「……合意の上で"したい"から、嫌じゃなかったら目を閉じて」
これから"される"事が分からない程、子供ではない。
流されるままに目を閉じると、シートベルトを外す音が聞こえて唇同士が重なる。
誰も居ない二人だけの空間、二人だけの秘密。
愛しているかも、愛していないのかも分からずに交わしたキス。
大人の階段を登るという事は、好き合っているかどうかも確認をせずに発展してしまう事なのだろうか?
理屈では流されてはいけないのだと理解はしていても、理性に歯止めが効かなかった。
一度目は触れるだけのキス、二度目は吐息が漏れるようなお互いを確かめ合うキス。
「……っふぁ」
「ココが車内で良かったな。歯止めが効かなくなるところだった…」
解放された時には息も絶え絶えな私の頭を優しく撫でて、再びシートベルトをする支配人。
車が走り出し、駐車場から車道に出て少しだけ時間が過ぎた後に問いかける。
「…あの、えっと、」
「………?何だ?」
「…やっぱり何でもないです」
『恋人同士になれますか?』と聞いてみようと思ったけれど、支配人にとっては一時の迷いでキスをしただけかもしれないので、言葉を飲み込んだ。
キスぐらいで付き合えだなんて幼稚だって笑い飛ばされるかもしれないから、背伸びをして確認する事を我慢する。
キスぐらい大丈夫、キスぐらい平気。
ちょっと優しくされたからって、勘違いして好きになったりしない。
「…場の雰囲気に流されるのは俺だけにしとけよ。他の男が近寄っても自分自身で対処する事!」
「………?何でですか?」
「つまり、そのままの意味だ。仕事上、一ヶ月間の所有者は俺だ。他の男との恋愛沙汰は一切禁止だ」
「良く分からないのですが、支配人とは恋愛しても良いのですか?」
「……さぁな。自分で考えろ」
一筋縄では行かなそうな成り行き任せの恋愛もどきは、正直どうして良いのか分からない。
自分自身の恋心にセーブをかけているのに、崩壊寸前なのは横にいる支配人のせい。
今日は同僚としてのデートでも、明日からは上司と部下。
「……じゃあ、一ヶ月間は所有されます。延長は可能ですか?」
何となくだけれど、罠を仕掛けるかのように聞いてみた言葉。
どんな反応をするのだろう?
「仕事上の所有期間は一ヶ月だ。その他は延長可能だ」
「そうですか…」
淡々と会話が進んで行くが、肝心な話はしないままだった。
「とにかく仕事は一ヶ月間で覚えて、目標を探せ。その他はゆっくり考えてくれれば良い。さっきは先走って悪かったな…」
「先程からの"その他"とは何ですか?」
「……本気で分からないのか?」
「ふふふっ」
「………っ、篠宮のくせにからかいやがって。本当は分かってるんだろ?」
「何となく…」
お互いがお互いを気にかけている段階だからか好きだとか愛してるとか、そんな言葉はなく、駆け引きを続ける。
冷静さを保てないのか、普段は冷酷鬼軍曹のポーカーフェイスが崩れて、ほんのりと頬が赤い支配人が可愛い。
駆け引きは続き、食事を終えて、寮から少し離れた場所に送り届けられて車を降りる間際に、
「お前が遅番の時は起こしに来い」
と命じられた。
「寝起きが悪いので嫌です」とお断りをしたが、「却下」と即答される。
成り行き任せの恋愛関係もとい所有関係は今後はどう動くのか、自分でも想像出来ない。
「いいよ、俺が誘ったんだし…。それより、腹減らないか?」
私が預けていたバックを受け取っている時には既に、カード払いでスムーズに支払いを済ませてくれていた支配人。美容室を出た後に財布を取り出すと頑なに拒否をされた。
時刻は午後二時半に近い。
仕事上、お昼時間はまちまちで遅い食事も慣れっ子だったので気にはしてなかったが、言われてみればお腹が空いたかも?
助手席に座り、ベルトを締めた後に
「お昼は出します!」
と気合いを入れて支配人に言った。
「バーカッ!俺は女に払わせる事は致しません!」
と言われて、コツンと拳で軽く頭を叩かれる。
「それに…俺が誘ったんだから、大人しく着いてくればいい」
話の流れから私の方を見て、柔らかな笑みを落とす。
私はドキドキと鼓動が早くなるのを感じて返事も出来ずに顔を反らすと、頬に手を触れられて支配人の方向に顔を向けられた。
「綺麗になったな…」
顎に手を触れられ、上に少しだけ傾けられると親指で唇をなぞるように触れた。
「………っ、」
緊張し過ぎて、目を思い切り閉じると唇から親指が離されたので、うっすらと目を開けた。
「お前の上目遣いは男を煽る。俺を煽ってどうする気だ?」
「……煽って、など…いません」
何気なく目を開けた時に上目遣いで見ていたらしく、支配人に咎められ、絞り出すような小さな声で否定をした。
支配人の綺麗な顔が間近にあり、目と目が合って逃れられない。
耳まで赤くなっているのが自分でも分かる程、顔全体に火照りを感じる。
「……合意の上で"したい"から、嫌じゃなかったら目を閉じて」
これから"される"事が分からない程、子供ではない。
流されるままに目を閉じると、シートベルトを外す音が聞こえて唇同士が重なる。
誰も居ない二人だけの空間、二人だけの秘密。
愛しているかも、愛していないのかも分からずに交わしたキス。
大人の階段を登るという事は、好き合っているかどうかも確認をせずに発展してしまう事なのだろうか?
理屈では流されてはいけないのだと理解はしていても、理性に歯止めが効かなかった。
一度目は触れるだけのキス、二度目は吐息が漏れるようなお互いを確かめ合うキス。
「……っふぁ」
「ココが車内で良かったな。歯止めが効かなくなるところだった…」
解放された時には息も絶え絶えな私の頭を優しく撫でて、再びシートベルトをする支配人。
車が走り出し、駐車場から車道に出て少しだけ時間が過ぎた後に問いかける。
「…あの、えっと、」
「………?何だ?」
「…やっぱり何でもないです」
『恋人同士になれますか?』と聞いてみようと思ったけれど、支配人にとっては一時の迷いでキスをしただけかもしれないので、言葉を飲み込んだ。
キスぐらいで付き合えだなんて幼稚だって笑い飛ばされるかもしれないから、背伸びをして確認する事を我慢する。
キスぐらい大丈夫、キスぐらい平気。
ちょっと優しくされたからって、勘違いして好きになったりしない。
「…場の雰囲気に流されるのは俺だけにしとけよ。他の男が近寄っても自分自身で対処する事!」
「………?何でですか?」
「つまり、そのままの意味だ。仕事上、一ヶ月間の所有者は俺だ。他の男との恋愛沙汰は一切禁止だ」
「良く分からないのですが、支配人とは恋愛しても良いのですか?」
「……さぁな。自分で考えろ」
一筋縄では行かなそうな成り行き任せの恋愛もどきは、正直どうして良いのか分からない。
自分自身の恋心にセーブをかけているのに、崩壊寸前なのは横にいる支配人のせい。
今日は同僚としてのデートでも、明日からは上司と部下。
「……じゃあ、一ヶ月間は所有されます。延長は可能ですか?」
何となくだけれど、罠を仕掛けるかのように聞いてみた言葉。
どんな反応をするのだろう?
「仕事上の所有期間は一ヶ月だ。その他は延長可能だ」
「そうですか…」
淡々と会話が進んで行くが、肝心な話はしないままだった。
「とにかく仕事は一ヶ月間で覚えて、目標を探せ。その他はゆっくり考えてくれれば良い。さっきは先走って悪かったな…」
「先程からの"その他"とは何ですか?」
「……本気で分からないのか?」
「ふふふっ」
「………っ、篠宮のくせにからかいやがって。本当は分かってるんだろ?」
「何となく…」
お互いがお互いを気にかけている段階だからか好きだとか愛してるとか、そんな言葉はなく、駆け引きを続ける。
冷静さを保てないのか、普段は冷酷鬼軍曹のポーカーフェイスが崩れて、ほんのりと頬が赤い支配人が可愛い。
駆け引きは続き、食事を終えて、寮から少し離れた場所に送り届けられて車を降りる間際に、
「お前が遅番の時は起こしに来い」
と命じられた。
「寝起きが悪いので嫌です」とお断りをしたが、「却下」と即答される。
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