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真実を知りたい
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初夏は新たな就職先、日下部君の事、怒涛の様に生活に変化が訪れた。新しい生活にも慣れて、日下部君との関係性も変わらないままに秋になった。
「芋煮会……?」
「今年は総務部の企画。毎年、年替わりで担当部署が入れ替わるの。されで社内行事を企画するんだけど、今年は芋煮会だって……」
社員食堂の入口にある社内掲示板に張り紙がしてあった。昼食を食べに行く時に目に入ってしまい、立ち止まる。
「佐藤さんも一緒に行こう。和気あいあいで楽しいよ」
にこにこしながら話をするのは、Иatural+広報担当の小嶋 澪子さんだ。小嶋さんは彩羽コーポレーションの広報担当で、小柄で可愛いのに仕事をバリバリこなしているキャリアウーマンタイプ。他の部署の広報も掛け持ちしていたらしいが、仕事量が増えて来たので、近い内に専属になるそうだ。本社勤務の時には仲良くして貰っている。
「小嶋さんも行くなら、行こうかな?」
「きっと綾美ちゃんも日下部君も行くよ。芋煮会と言う名の飲み会だから」
芋煮会と言う名の飲み会なのか。……だとしたら、確かに二人は行きそうだな。小嶋さんと芋煮会の話をしながら、社長食堂で昼食を取る。本日は和食で、鯖の味噌煮定食にした。肉じゃがも付いていて、ボリューム満点。
「小嶋さんは大卒から彩羽コーポレーションで働いているんだよね?」
「そうなの、大学卒業後から働いているので、かれこれ8年目かな?結婚したら辞めようと思ってたけど、彼氏がなかなか煮え切らなくて未だにバリバリ働いているのです」
「そうなんだぁ。私も大卒から、8年目だけど……結婚出来ないままです」
日下部君と小嶋さんは同期で、同い年だ。社内で日下部君と対等に話をしていたから、小嶋さんって只者では無い感じはしてたけれど同い年だから納得。
「仕事もバリバリこなしてるし、日下部君にも引けを取らないから、実は一歩引いてたの。でも佐藤さんって話やすいね。失礼な話だけど……結婚してないってのも親近感湧くわー。是非とも仲良くしてね」
小嶋さんは日下部君の同期だけれどもИatura+所属では無い為、じっくり話をするのは今日が初めてだったりする。会えば世間話はするけれど、込み入った話はした事がない。小嶋さんは自分と同じ境遇だと知るとテンションが上がったのか、満面の笑みを浮かべてはしゃいでいる。はしゃいでいる小嶋さんは無邪気で可愛い。
「ねー、琴葉ちゃんって呼んでも良い?私の事も良かったら、名前で呼んでね」
「私も澪子ちゃんって呼ぶね」
「もうお互い、気軽に話し合おう!」
澪子ちゃんはフレンドリーなタイプで、ぐいぐい押してくる。日下部君とは高校の同級生で、たまたまここの採用募集を見て応募したら、上司が日下部君だったと澪子ちゃんに伝えた。
「うるさいぞ、お前ら」
コツン。拳で軽く叩かれたたと思ったら、日下部君だった。日下部君は私の隣の席が空いていたので、椅子を引き、勝手に座る。
「あっ、日下部君!私ね、琴葉ちゃんと仲良くなったんだ」
「うわー、小嶋と仲良くしたらノンストップで話を聞かされて大変だぞ!特に酔うと最強だし……」
「酷い!同期なのに、もっと優しく扱ってよね」
しれっと言う日下部君に対して、澪子ちゃんも負けてはいない。
「そうそう、日下部君って、ずうっと紫ちゃんに片思いしてたよね?日下部君って、学生時代も奥手だったの?」
「……な、何言ってんだよ、小嶋!」
「だって、バレバレだよ。生き残っている同期の中では日下部君と紫ちゃんがくっつくと思ってたんだからね。あんなに仲が良かったんだから、何かあるよね?って皆が思ってたよ」
「そんな話、今しなくても……」
珍しく日下部君が慌てている。同様鯖の味噌煮定食を注文した日下部君だったが、箸が進んでない。日下部君が秋葉さんを好きなのは知っている。本人には聞けないから、真相を知るチャンスは今しかない。
「私も聞きたいな、秋葉さんの事」
平常心、平常心。落ち着こう。無理矢理に笑みを浮かべて、聞き出そうとした。私の顔をじっと見てから、日下部君は口を開く。
「確かに秋葉の事は好きだったよ。でも、妹みたいな存在だったから、その延長で過ごしていた。もう終わった話だから……」
箸を置いて、俯き加減で話をした日下部君。
「日下部君がもっと早くに紫ちゃんに告っていたら、何かが変わっていたかもしれないのに。どうして、そんなに様子見みたいな事をしてたの?」
しんみりした答えに対して、澪子ちゃんは寂しげな表情を浮かべて尋ねた。
「それは……、さっきも言った通りに妹みたいな存在だったから関係性を壊したくなかったんだ。でも、気持ちは伝えた。振られたけどな!」
「副社長と紫ちゃんの結婚が決まったって聞いたから、流石に吹っ切れてるだろうなと思って、つい聞いちゃってごめんね。でも、何だか、日下部君が報われなくて悲しい……」
急に澪子ちゃんがメソメソと泣き出した。同期は皆、日下部君の気持ちに気付いていたので、秋葉さんとくっつくと思って応援していたらしい。
「芋煮会……?」
「今年は総務部の企画。毎年、年替わりで担当部署が入れ替わるの。されで社内行事を企画するんだけど、今年は芋煮会だって……」
社員食堂の入口にある社内掲示板に張り紙がしてあった。昼食を食べに行く時に目に入ってしまい、立ち止まる。
「佐藤さんも一緒に行こう。和気あいあいで楽しいよ」
にこにこしながら話をするのは、Иatural+広報担当の小嶋 澪子さんだ。小嶋さんは彩羽コーポレーションの広報担当で、小柄で可愛いのに仕事をバリバリこなしているキャリアウーマンタイプ。他の部署の広報も掛け持ちしていたらしいが、仕事量が増えて来たので、近い内に専属になるそうだ。本社勤務の時には仲良くして貰っている。
「小嶋さんも行くなら、行こうかな?」
「きっと綾美ちゃんも日下部君も行くよ。芋煮会と言う名の飲み会だから」
芋煮会と言う名の飲み会なのか。……だとしたら、確かに二人は行きそうだな。小嶋さんと芋煮会の話をしながら、社長食堂で昼食を取る。本日は和食で、鯖の味噌煮定食にした。肉じゃがも付いていて、ボリューム満点。
「小嶋さんは大卒から彩羽コーポレーションで働いているんだよね?」
「そうなの、大学卒業後から働いているので、かれこれ8年目かな?結婚したら辞めようと思ってたけど、彼氏がなかなか煮え切らなくて未だにバリバリ働いているのです」
「そうなんだぁ。私も大卒から、8年目だけど……結婚出来ないままです」
日下部君と小嶋さんは同期で、同い年だ。社内で日下部君と対等に話をしていたから、小嶋さんって只者では無い感じはしてたけれど同い年だから納得。
「仕事もバリバリこなしてるし、日下部君にも引けを取らないから、実は一歩引いてたの。でも佐藤さんって話やすいね。失礼な話だけど……結婚してないってのも親近感湧くわー。是非とも仲良くしてね」
小嶋さんは日下部君の同期だけれどもИatura+所属では無い為、じっくり話をするのは今日が初めてだったりする。会えば世間話はするけれど、込み入った話はした事がない。小嶋さんは自分と同じ境遇だと知るとテンションが上がったのか、満面の笑みを浮かべてはしゃいでいる。はしゃいでいる小嶋さんは無邪気で可愛い。
「ねー、琴葉ちゃんって呼んでも良い?私の事も良かったら、名前で呼んでね」
「私も澪子ちゃんって呼ぶね」
「もうお互い、気軽に話し合おう!」
澪子ちゃんはフレンドリーなタイプで、ぐいぐい押してくる。日下部君とは高校の同級生で、たまたまここの採用募集を見て応募したら、上司が日下部君だったと澪子ちゃんに伝えた。
「うるさいぞ、お前ら」
コツン。拳で軽く叩かれたたと思ったら、日下部君だった。日下部君は私の隣の席が空いていたので、椅子を引き、勝手に座る。
「あっ、日下部君!私ね、琴葉ちゃんと仲良くなったんだ」
「うわー、小嶋と仲良くしたらノンストップで話を聞かされて大変だぞ!特に酔うと最強だし……」
「酷い!同期なのに、もっと優しく扱ってよね」
しれっと言う日下部君に対して、澪子ちゃんも負けてはいない。
「そうそう、日下部君って、ずうっと紫ちゃんに片思いしてたよね?日下部君って、学生時代も奥手だったの?」
「……な、何言ってんだよ、小嶋!」
「だって、バレバレだよ。生き残っている同期の中では日下部君と紫ちゃんがくっつくと思ってたんだからね。あんなに仲が良かったんだから、何かあるよね?って皆が思ってたよ」
「そんな話、今しなくても……」
珍しく日下部君が慌てている。同様鯖の味噌煮定食を注文した日下部君だったが、箸が進んでない。日下部君が秋葉さんを好きなのは知っている。本人には聞けないから、真相を知るチャンスは今しかない。
「私も聞きたいな、秋葉さんの事」
平常心、平常心。落ち着こう。無理矢理に笑みを浮かべて、聞き出そうとした。私の顔をじっと見てから、日下部君は口を開く。
「確かに秋葉の事は好きだったよ。でも、妹みたいな存在だったから、その延長で過ごしていた。もう終わった話だから……」
箸を置いて、俯き加減で話をした日下部君。
「日下部君がもっと早くに紫ちゃんに告っていたら、何かが変わっていたかもしれないのに。どうして、そんなに様子見みたいな事をしてたの?」
しんみりした答えに対して、澪子ちゃんは寂しげな表情を浮かべて尋ねた。
「それは……、さっきも言った通りに妹みたいな存在だったから関係性を壊したくなかったんだ。でも、気持ちは伝えた。振られたけどな!」
「副社長と紫ちゃんの結婚が決まったって聞いたから、流石に吹っ切れてるだろうなと思って、つい聞いちゃってごめんね。でも、何だか、日下部君が報われなくて悲しい……」
急に澪子ちゃんがメソメソと泣き出した。同期は皆、日下部君の気持ちに気付いていたので、秋葉さんとくっつくと思って応援していたらしい。
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