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恋人みたいな過ごし方

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焼肉屋を出た後、私達は再び車に乗り込んだ。私はいつの間にか寝てしまい、気付いた時には自宅のアパートまで着いていた。

「佐藤……、委員長……!起きて!着いたから」

「っわぁ!ここ、……どこ?」

「……っぷ!佐藤、ヨダレ垂れてる!爆睡してたもんな!」

日下部君にティッシュでヨダレを拭かれた。車の微々たる揺れが心地好くて、ふと目を閉じたら意識が飛んでいた。爆睡してヨダレを垂らすって、私は恥じらいはないのかしら?日下部君もだけれど、私も昨日の寝不足から、状況次第ではすぐに眠りにつきそうな位に張り詰めていた。

「ごめんなさい……、すぐに荷物取ってくるから……!」

日下部君の手の内にあったティッシュを奪い取り、勢い良く車を降りた。日下部君に気を許し過ぎて、素の情けない私を出し過ぎて優等生の私の影は薄れて行く。しかも、泊まりに行く事に対して返事も不確かにしていたくせに、咄嗟に承諾してしまった。爆睡してヨダレ垂らした辱めのせいで、恥じらいを隠す為に捨てセリフのように言ってしまった。

待たせているから早くしなくては……と思いつつ、アレもコレもとか考えてバッグに詰め込んだが、おひとり様でホテルに宿泊用セットをそのまま持って行けば良い事に気付いた。キャリーだけれど、良いよね?キャリーの中にはお泊まり用の専用化粧品からヘアーアイロンまで入っている。着替えだけ入れれば完了。

慌てて着替えを詰めて、電気を消して玄関から外へと飛び出す。夜にも関わらず、私はバタバタとしているから後から苦情が来るかもしれない。

「……随分と大袈裟な荷物だな?」

「女の子はね、いつもこれくらい必要なの!」

車から降りてアパートの階段下で待っていた日下部君が二階から降りてくる私を見つけて、キャリーバッグを受け取ってくれた。

「泊まる気、充分じゃん」

私の肩を抱いて耳元で囁いた。私は自分の顔が次第に火照っていくのを感じた。

日下部君の自宅マンションに行くまでにコンビニに寄り、酒類とツマミになりそうな物をカゴに入れた。ついでに朝食に使えそうなベーコンやカットレタスなども見繕い、レジに持って行く。

日下部君が支払おうとしたが、先程の映画と焼肉代は日下部君持ちだったので頑固として払わせなかった。私が会計を済ませるとコンビニ袋の荷物を受け取り、車に乗せる。

「日下部君には出して貰ってばっかりだから……明日のお出かけ代も私が出すからね!」

自分自身も車に乗ってから、日下部君に啖呵を斬った。

「別に良いのに気にしなくて。女と二人きりで出かけるのに、男として格好つかないだろ。ましてや、嫁さん候補と出かけるのに……」

「と、とにかく……!私が明日のお出かけ代は出すからね!」

”嫁さん候補”と呼ばれるとくすぐったくてたまらない。照れを隠す為に話の流れを元に戻す。

「佐藤の意固地め。だったら、佐藤がお金なくなっちゃったから日下部君ちに今日から住ませてくれる?って自分から懇願する位に高い所にしようっと」

「え?どこに行く気?」

「日下部君の言う事何でも聞きますからお願いします~って言う位の所」

「だから、どこ?」

「………さぁ?」

日下部君がニヤニヤしている。きっと私をからかって遊んでいるだけだ。たまに見せる艶やかな甘さと子供らしさが程良く、私を捉えて行く。高校時代の硬派な日下部君、大人になった色気を持ち合わせた日下部君、私はどちらも好きなんだよなぁ。

マンションの駐車場に着き、私達は車から降りる。日下部君の部屋に行くまでにマンションの住人の男性に出会い、頭を下げられる。

「さっきの人は違う階の人。たまにエレベーターで会ったりすると会話する。同じ世代のリーマンだし、会話しやすい」

「ふうん?そうなんだ」

「あっちも彼女連れの時は話をかけない。お互いに一人の時に話す関係。佐藤も彼女だと思われたかもな?」

「そ、そうかな……」

部屋に入り、そんな話を急にし始めた日下部君。

「風呂はどうする?湯船に入る?酒飲む前に入った方が無難じゃない」

「シャワーだけでも良いよ。もう遅い時間だから……」
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