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糖度12*決断すべき、お別れの時

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だから、本当は1LDKのアパートにこじんまりと暮らして、私の作る庶民的な料理が好きなのかもしれない。

「有澄って、何で一人暮らししたの?」

実家には相良さんも住んでるのに置いて出て行くなんて・・・!

「そんなの決まってるじゃん。ゆかりを連れ込む為だよ!他に何かある?」

ふわりと持ち上げられ、お姫様抱っこをされてベッドに降ろされ見下ろされる。

「わぁっ!?……あ、りとってお金持ちって言われるの嫌いそうだから、庶民的なものに憧れたのかなって思って?」

真上から直視されるのが今だに慣れなくて、心臓に悪い。

目を思わず反らして話をするが、ドキドキが止まらない・・・有澄の髪が濡れていて色っぽく見えるから余計だろうか?

「ご名答!それもあるね…。ゆかりはもう寝なさい!俺はソファーで寝るから、おやすみ」

おでこにキスをされて、有澄が去ろうとしたので咄嗟に腕を掴む。

「何でソファーで寝るの?」

「…だって、女の子の日が来ないとまだ妊娠の可能性が否定出来ないし、もしも妊娠してたら赤ちゃんに悪影響かなって思って」

検査薬はほぼ正確らしいけれど、妊娠の兆候の値がまだ薄いのかも知れず、絶対とは言いきれない。

「悪影響?どうして?」

「…はぁ。我慢はするけど…本当は赤ちゃんがいて成り行きでエッチしちゃって流産したら嫌だから、ソファーで寝るの!」

妊娠初期に無理なエッチをすると、流産の可能性が高くなる事を有澄が調べたのだろう。

「…今日1日、不安だったから有澄とくっついて寝たい」

「……そんなに可愛くお願いされたら寝るしかないけど、本当に本当に俺にとって拷問なんだから。今日みたいな日こそ、ゆかりを思い切り抱いてから寝たかったんだから…。

女の子の日が終わったら、覚悟しといてね!」

「それでも良いから、今日は一緒に寝てくれる?」

「うん、分かった」

有澄に腕枕をしてもらい、後ろから抱きしめてもらうと私は直ぐに眠りにつけた。

何か話しかけられたけれど、安心しきっていて目がトロンと眠くなっている私には聞こえなかった。

夜中に一度、目が覚めてお腹がチクチク痛むような感覚があったが眠気が半端なくて、直ぐにまた瞼を閉じる。

有澄に小さな女の子が抱っこされている夢を見た。

「パパ」って呼んでたから、娘ちゃんかな?

髪が長くて可愛い女の子。

私にも「ママ」と言って近寄って来たところで目覚ましが鳴り、夢から覚めた。

朝食を作りながらも夢の中を思い出す。

子供の居る結婚生活も悪くないな、有澄はきっと優しいパパになるはずだ。

「今日の朝方、有澄が女の子を抱っこしている夢を見たの。可愛い女の子だったよ」

「そんな未来も楽しみだね」

今日の朝ごはんは、ワンプレートに乗せたサラダとハムエッグとトースト。

お気に入りの生姜ドレッシングがかかったサラダを食べながら、有澄が優しく微笑む。

いつも通りに紅茶を入れていたら、有澄からのダメ出しが・・・。

「ゆかりはノンカフェインしか飲んじゃダメね。それじゃなくても、旅行の時にお酒飲んじゃってるし、昨日も紅茶飲ませてしまったし。結果がハッキリするまでダメ!」

「うぅっ…。寂しいけど我慢する」

私よりも有澄の方が神経質になっていて、どっちが女性なんだか分からない。

検査薬では陰性反応が出たけれど、二週間経っても女の子の日が来なければ産婦人科に行く予定。

*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚ .゚*。:゚

事件の事もあり、ドキドキしながら出勤したのだが、誰も何も聞いて来なかった。

日下部さんが上手く収めてくれたのかは定かではないが、他の部署の人からも何も聞かれず、コソコソ話を囁かれる様子もなく、いつもの職場に戻っていた。

時は過ぎて更に3日後。

春の心地良い気温に負けて、うたた寝しそうなお昼近く。

デスクワークをしていると、とてつもない眠気が襲ってくる。

妊娠初期もいつもとは違う眠気が出るとネットに記載されていた。

この眠気は女の子の日が近付いて来てるのか、妊娠初期なのか・・・よく分からない。

「秋葉、先日言ってた入浴剤の会社の"LUPINASU"に午後行く事になったから、一緒に打ち合わせに来て」

「分かりました」

少し前に有澄が言っていた入浴剤の会社だ。

コラボ商品を作る事が決定したらしい。

サンプルを見せて貰い、良さそうな物をピックアップしに行く。

商品決定会議を重ねるので、店頭に並ぶのはまだまだ先の話・・・。

取引先のLUPINASUバス株式会社には14時に待ち合わせと聞いている。

お昼時間になったら直ぐに会社を出るから駐車場の入口に来て、と日下部さんに言われたので言われるがまま来たのだけれど・・・相良さんが乗せて行ってくれるのかな?

「悪い、待たせたな。こっち来て」

遅れて登場の日下部さんは駐車場の奥の方へ進む。

相良さんの車はあるけれど通り過ぎて、シルバーの車の前で立ち止まる。

「……?誰の車ですか?」

営業の社用車にしては目新しい。

「俺の。とにかく乗って!」
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