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糖度10*待ちに待ったGW
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聞いた話をまとめると・・・有澄の御両親は仕事で忙しく、相良さんの祖父母がお世話してくれていたらしい。
有澄の父は婿養子で、"香坂"というのは父方の旧姓。
母の祖父母は花野井グループの会長職に就任し外国暮らし、会社は父に任せているらしい。
花野井グループは主に二手に別れていて、花野井百貨店と花野井不動産が経営資本にあたる。
副社長になるまでは、花野井グループの御曹司だとバレない様に"香坂 有澄"と名乗り、社内でバイトをしていた。
母は独自の会社を設立し、有澄の成長と共に規模が大きくなった。
自身も御両親には頼らない生活をしていた母なので、後ろ指さされない様に、自立した一人前の人間になれる様にと、一般的に近い生活を送らせていたらしい。
現在の住んでいる1LDKのアパートも自分で貯めたお金で契約した。
厳しい生活を送らせていたのは、仕事の出来る一人前の御曹司として育てる為。
全ては、有澄に経営を任せる為の一連の流れだった事を大学時代に知ったと言っていた。
日下部さんの話が出なかったのは、有澄も何も知らないからか、話したくないかのどちらかだろう。
「…以上、昔話は終わりっ。ゆかりの話も聞きたいな」
私のグラスにシャンパンを注ぎながら、優しい目でこっちを見る。
私はシャンパンをひと口、喉に流しこんでから話を始めた。
「私は小さな時から絵を書くのが好きで、ずっとデザインとかの広告関係の仕事したいなって思ってたの。大学に行くより専門学校を選んだのは他の勉強をしたくなかったのもあるけど、一刻でも早く自立して、実家から出たかったのもあるかな。
実はデザイン系の専門学校に行く事も反対されていたから…ね」
お父さんもお母さんも学校の先生(お母さんは今は引退して専業主婦)、お兄ちゃんは税理士を目指し、私も同じ公務員等のレールに乗せられる所だった。
専門学校に行くと決断した時に『美大にしなさい。この際、何の先生だって良いわ』と勝手な事を言われたが、私は先生になる気もなかったので考えを曲げなかった。
だいたいにして絵画の勉強もした事がない娘が、美大に進路を変えても合格するはずがない。
それこそ何浪したら合格するのだろう?
最後には両親も諦めて、『女の子なんだから結婚してしまえば仕事は関係なくなる』と昔っぽい事を言っていたが、仕事ばかりで彼氏も連れてこない娘に対して『結婚は?』とせがむ様になった。
「…いろは雑貨のデザイナー募集してたから、ダメ元で受けたら受かったのは前に話したよね?」
「うん。ゆかりの事は社長の評価も高いよ。持ち込みデザインが気に入ったから即採用だったって教えて貰ったよ。きっと…ゆかりを連れて帰ったら喜ぶよ」
就職活動中、受けた会社は全て落ちてしまい、絶望感を味わいながらの最後の試験。
エントリーシートを記入するのも、就職の面談に行く時も緊張した。
記入間違えばかりするし、面談も上手く行かないし、持ち込みデザインも撒き散らしたりしたが、受かったのが不思議。
引き寄せられていたと言っても過言ではないかもしれない。
「さっき聞こうと思って聞けなかったんだけど…ゆかりは学生時代に…彼氏居た?」
おずおずと申し訳なさそうに聞いてくる有澄。
「高校の時と専門学校の時に一人ずつ。就職してからすぐ別れたの」
「そうだよね、居ないはずないよね…ゆかり、可愛いもんね」
「聞いたんだから、有澄のも教えて」
シャンパンの酔いが回って来て、頬が火照る。
「さっき言った彼女だけだよ」
「嘘、有澄はカッコイイからモテない訳がないでしょ!」
「高校の時も大学もバイトと勉強で忙しかったし、人付き合いが苦手だったから本当に居ないの!」
「本当…?私の知らない時間を彼女が知ってるから、嫉妬…しちゃう」
有澄の話を聞きながらシャンパンを飲み、なくなる度に注がれるのでほとんどの量を自分が消費していた。
ほど良く酔いが回って、発さなくても良い言葉までを口にしてしまう。
「…彼女にした事、全部…して?」
身を乗り出して、有澄の首の後ろに両手を絡める。
「うん、でも…ゆかりにしかしてない事が多いと思うけど…」
「口答えしなーいっ」
「ハイハイ、仰せの通りにお姫様」
ふわり、と身体が宙に浮いて、優しくベッドに降ろされた。
「有澄大好きっ」
「うん、俺も大好きだよ」
目線の先には、有澄の見下ろしている顔が見える。
手を伸ばして、有澄の髪や頬に触れる。
「浮気…しないでね。したら、有澄の大切な物捨てちゃうから、ね?」
「大切な物?」
「有澄の大切な本、ぜーんぶ捨てちゃうから!」
「浮気しないから大丈夫だよ」
「絶対に絶対に絶対…?」
「うん、約束する。ゆかり以外の女の子に興味ないから」
「興味あったら、や、なの!」
「だから、興味ないって。…ちょっと黙ってて…」
"うるさい"と言わんばかりに口を塞がれて、甘くトロける様なキス。
有澄の唇が首筋に触れるとゾクゾクとして、くすぐったい様な感覚。
浴衣がはだけて鎖骨が見えている有澄が妙に色っぽくて、脳内に鮮明に焼き付けられる。
有澄の事、もっと独り占めしたいなぁ。
欲ばかり出てくる。
この感情の行くつく先はどこなんだろう───・・・・・・
有澄の父は婿養子で、"香坂"というのは父方の旧姓。
母の祖父母は花野井グループの会長職に就任し外国暮らし、会社は父に任せているらしい。
花野井グループは主に二手に別れていて、花野井百貨店と花野井不動産が経営資本にあたる。
副社長になるまでは、花野井グループの御曹司だとバレない様に"香坂 有澄"と名乗り、社内でバイトをしていた。
母は独自の会社を設立し、有澄の成長と共に規模が大きくなった。
自身も御両親には頼らない生活をしていた母なので、後ろ指さされない様に、自立した一人前の人間になれる様にと、一般的に近い生活を送らせていたらしい。
現在の住んでいる1LDKのアパートも自分で貯めたお金で契約した。
厳しい生活を送らせていたのは、仕事の出来る一人前の御曹司として育てる為。
全ては、有澄に経営を任せる為の一連の流れだった事を大学時代に知ったと言っていた。
日下部さんの話が出なかったのは、有澄も何も知らないからか、話したくないかのどちらかだろう。
「…以上、昔話は終わりっ。ゆかりの話も聞きたいな」
私のグラスにシャンパンを注ぎながら、優しい目でこっちを見る。
私はシャンパンをひと口、喉に流しこんでから話を始めた。
「私は小さな時から絵を書くのが好きで、ずっとデザインとかの広告関係の仕事したいなって思ってたの。大学に行くより専門学校を選んだのは他の勉強をしたくなかったのもあるけど、一刻でも早く自立して、実家から出たかったのもあるかな。
実はデザイン系の専門学校に行く事も反対されていたから…ね」
お父さんもお母さんも学校の先生(お母さんは今は引退して専業主婦)、お兄ちゃんは税理士を目指し、私も同じ公務員等のレールに乗せられる所だった。
専門学校に行くと決断した時に『美大にしなさい。この際、何の先生だって良いわ』と勝手な事を言われたが、私は先生になる気もなかったので考えを曲げなかった。
だいたいにして絵画の勉強もした事がない娘が、美大に進路を変えても合格するはずがない。
それこそ何浪したら合格するのだろう?
最後には両親も諦めて、『女の子なんだから結婚してしまえば仕事は関係なくなる』と昔っぽい事を言っていたが、仕事ばかりで彼氏も連れてこない娘に対して『結婚は?』とせがむ様になった。
「…いろは雑貨のデザイナー募集してたから、ダメ元で受けたら受かったのは前に話したよね?」
「うん。ゆかりの事は社長の評価も高いよ。持ち込みデザインが気に入ったから即採用だったって教えて貰ったよ。きっと…ゆかりを連れて帰ったら喜ぶよ」
就職活動中、受けた会社は全て落ちてしまい、絶望感を味わいながらの最後の試験。
エントリーシートを記入するのも、就職の面談に行く時も緊張した。
記入間違えばかりするし、面談も上手く行かないし、持ち込みデザインも撒き散らしたりしたが、受かったのが不思議。
引き寄せられていたと言っても過言ではないかもしれない。
「さっき聞こうと思って聞けなかったんだけど…ゆかりは学生時代に…彼氏居た?」
おずおずと申し訳なさそうに聞いてくる有澄。
「高校の時と専門学校の時に一人ずつ。就職してからすぐ別れたの」
「そうだよね、居ないはずないよね…ゆかり、可愛いもんね」
「聞いたんだから、有澄のも教えて」
シャンパンの酔いが回って来て、頬が火照る。
「さっき言った彼女だけだよ」
「嘘、有澄はカッコイイからモテない訳がないでしょ!」
「高校の時も大学もバイトと勉強で忙しかったし、人付き合いが苦手だったから本当に居ないの!」
「本当…?私の知らない時間を彼女が知ってるから、嫉妬…しちゃう」
有澄の話を聞きながらシャンパンを飲み、なくなる度に注がれるのでほとんどの量を自分が消費していた。
ほど良く酔いが回って、発さなくても良い言葉までを口にしてしまう。
「…彼女にした事、全部…して?」
身を乗り出して、有澄の首の後ろに両手を絡める。
「うん、でも…ゆかりにしかしてない事が多いと思うけど…」
「口答えしなーいっ」
「ハイハイ、仰せの通りにお姫様」
ふわり、と身体が宙に浮いて、優しくベッドに降ろされた。
「有澄大好きっ」
「うん、俺も大好きだよ」
目線の先には、有澄の見下ろしている顔が見える。
手を伸ばして、有澄の髪や頬に触れる。
「浮気…しないでね。したら、有澄の大切な物捨てちゃうから、ね?」
「大切な物?」
「有澄の大切な本、ぜーんぶ捨てちゃうから!」
「浮気しないから大丈夫だよ」
「絶対に絶対に絶対…?」
「うん、約束する。ゆかり以外の女の子に興味ないから」
「興味あったら、や、なの!」
「だから、興味ないって。…ちょっと黙ってて…」
"うるさい"と言わんばかりに口を塞がれて、甘くトロける様なキス。
有澄の唇が首筋に触れるとゾクゾクとして、くすぐったい様な感覚。
浴衣がはだけて鎖骨が見えている有澄が妙に色っぽくて、脳内に鮮明に焼き付けられる。
有澄の事、もっと独り占めしたいなぁ。
欲ばかり出てくる。
この感情の行くつく先はどこなんだろう───・・・・・・
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