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二 私の何が悪かったのか
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でも、ジョンといるときは気丈にみせていたけれど家に戻るとぐったりと疲れがでてしまった。
出迎えてくれた執事のサムに婚約破棄の話をすると顔色を変えた。
「お嬢様が婚約破棄されたと。それは一体、どういう……」
「今日は私も疲れたから、お父様達が帰ったら詳しく報告するわね。とにかく、今このときからマクレーン子爵家と我が伯爵家は何にも関係はないから」
「……分かりました。今後マクレーン家の支払いは全てお断りいたしてよろしいですね?」
「そうしてちょうだい。今までがどうかしていのよ。私は彼とニ度と婚約なんてしないわ。承諾書まであるのだから」
「承諾書まで、なんということでしょうか。それにしても些か……」
私が見せた承諾書にサムは眉根を寄せた。かなり納得のいかない様子だった。それに私も少しは気持ちも落ち着いてきた。
両親の二人は先日から仲良く湯治に行っていて明日には戻る予定だった。神経痛に良く効くところがあるそうな。二人が帰ると説明をどうしたらいいのか。私は少し休むと言って寝台に横たわった。
――愛情を持てない……。
ジョンの言葉が耳に残っている。婚約破棄はショックだったけれどお互い様だったのかもしれない。
だけどジョンは私に愛情が沸かなかったと言っていたけど、私はそれなりに結婚を意識して準備もしてきたし、ジョンの気に入るような女性になろうと努力してきたつもりだった。
服だってそう、装飾品だって、いろいろ頑張ったつもりなのに。それにジョンの身なりだっていろいろと揃えてあげたのよ。まるで奥さんみたいにしていたのに。
――それが全て認められなかったのだ。
そう思うと今更ながらぽろぽろと涙が溢れてきた。まあ、今日は仕方が無いわよね。人前、特にあのときジョンの前で取り乱して泣き叫ばなかっただけ自分を褒めたい。
ぐすぐすと泣きながら私は自分の何処が悪かったのか、どこが足りなかったのか、なんてとりとめもないことをぐるぐると考えているうちに気がつくと眠っていた。
翌朝も両親にどう話そうかと考えていると、執事のサムがいつになく取り乱した様子で部屋に飛び込んできた。
「お嬢様! 旦那様がっ! 大変なことに」
それは両親の訃報だった。帰宅中に馬車での事故に巻き込まれたとのことだった。
「お母様、お父様。こんなことになるなんて。私は一体どうしたら……」
「お嬢様。マクレーン子爵家にお知らせは……」
サムが言いかけたが、私は力なく首を振った。正直、今はジョンの顔など見たくない。子爵家のおじ様方だって婚約破棄した家の葬儀に出席なんて迷惑でしょう。
一人残された私は途方に暮れつつも、サムに手伝ってもらい何とか葬儀の準備などを進めていた。忙しい方が何も考えなくていいし、伯爵家を守らなくてはいけないもの。
出迎えてくれた執事のサムに婚約破棄の話をすると顔色を変えた。
「お嬢様が婚約破棄されたと。それは一体、どういう……」
「今日は私も疲れたから、お父様達が帰ったら詳しく報告するわね。とにかく、今このときからマクレーン子爵家と我が伯爵家は何にも関係はないから」
「……分かりました。今後マクレーン家の支払いは全てお断りいたしてよろしいですね?」
「そうしてちょうだい。今までがどうかしていのよ。私は彼とニ度と婚約なんてしないわ。承諾書まであるのだから」
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私が見せた承諾書にサムは眉根を寄せた。かなり納得のいかない様子だった。それに私も少しは気持ちも落ち着いてきた。
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――愛情を持てない……。
ジョンの言葉が耳に残っている。婚約破棄はショックだったけれどお互い様だったのかもしれない。
だけどジョンは私に愛情が沸かなかったと言っていたけど、私はそれなりに結婚を意識して準備もしてきたし、ジョンの気に入るような女性になろうと努力してきたつもりだった。
服だってそう、装飾品だって、いろいろ頑張ったつもりなのに。それにジョンの身なりだっていろいろと揃えてあげたのよ。まるで奥さんみたいにしていたのに。
――それが全て認められなかったのだ。
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ぐすぐすと泣きながら私は自分の何処が悪かったのか、どこが足りなかったのか、なんてとりとめもないことをぐるぐると考えているうちに気がつくと眠っていた。
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サムが言いかけたが、私は力なく首を振った。正直、今はジョンの顔など見たくない。子爵家のおじ様方だって婚約破棄した家の葬儀に出席なんて迷惑でしょう。
一人残された私は途方に暮れつつも、サムに手伝ってもらい何とか葬儀の準備などを進めていた。忙しい方が何も考えなくていいし、伯爵家を守らなくてはいけないもの。
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