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05 王都の大神殿へ
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そして、二年が過ぎ、私は十歳になった。
あれから結局一度も村に帰ることは無かった。
お母ちゃんや妹や村の皆がどうしているのか分からない。
お母ちゃんの顔を思い出すことも少なくなった。お父ちゃんの顔は……。
私がいた村はかなり田舎だったみたい。
村の名前さえ定かでないくらいのレベルなので地方神殿の巡回に行く人が嫌がるほどだった。一緒についていくには神殿での不在の期間が長すぎるので難しかった。
こんな私でも神殿では女神の祝福を賜るのが一番多かったからだ。
私が祈りを捧げると神殿がキラキラとして光に包まれてとても美しい。
そうすると一般の参拝者も増え寄進も多くなる。
「素晴らしい。女神様に感謝を……」
そう言われると私も嬉しかった。ここでは私を必要としてくれる、たとえ女神様の祝福の力だとしても……。
できれば家に手紙でも書いて託そうかと思ったけれどお母ちゃんは字なんて読めなかった。
年一回行くぐらいの村の一家族の様子を訊ねるのも憚られたので家がどうなっているのか何も分からなかった。
そして、十歳を過ぎると聖女見習いの中から聖女候補と認められたものは王都の大神殿に推薦されるシステムになっている。
ジョイみたいに地方都市で見習いのまま終える人も多い。
「ミリアなら大神殿で聖女候補になれるかもね。そしたら、聖女候補と一緒に修行したって自慢するわ! もしか、ミリアが聖女様? あはは。楽しみ」
ジョイがバンと背中を叩いてきた。
「ジョイはもう少し落ち着きなさい。粗忽ものでは玉の輿になど無理ですよ」
神官のお兄さんからお小言を言われるのも日常風景だった。
「ミリアなら確かに聖女候補として推薦できますね。正直手離すのは痛手になるけれど……」
そう言われるけれど、ここを離れるのは私もとても不安だった。
大神殿で本格的な聖女候補者としての生活が始まる。いずれはその中から聖女として女神様から選ばれるのだ。
数日、他の見習い達も推薦の話を聞いていく。魔力は成長と共に増えることもあるので十歳を過ぎている者は推薦の時期に訊ねられることになる。
ジョイは私より一年先輩でやっぱり今回もこのまま地方神殿で聖女見習いとして残るみたいだった。相変わらず目指すは玉の輿とも言っていた。
「ミリア、君には聖女候補になる資格は大いにある。だから王都の大神殿へ推薦しようと思うがどうだろう?」
神官のお兄さんはいつも何かと心配して世話をしてくれた。今回も神殿の意向より私の意見を聞こうとしてくれる。
「王都の大神殿……」
「もちろん嫌だったら、ここでいていいんだよ」
私はこの優しい神官のお兄さんの期待に応えたいと思った。
「私はここでの経験を生かして大神殿でも頑張りたいと思います」
そう答えると神官さんは穏やかに微笑んでくれた。
――これで良いのよね?
ジョイが横から顔を挟んできた。
「ミリアなら聖女だってなれるよ! いつも頑張っているし、可愛いし、魔力だってここの誰よりも多いもの。私は都会の堅苦しいのは嫌だからここで十分」
「可愛いとか……、でも魔力は確かに……」
私はジョイや神殿の皆から励ましてもらって王都の大神殿と各地方神殿を定期的に行き来する便に一緒に同行させてもらった。
そうして私は王都にある女神教会の大神殿へ向かった。それでも一週間以上かかった。
「マルクト神殿から来ました聖女見習いのミリアです」
一緒に来た神官さんと入り口で挨拶をする。神官さんは顔パスなので話が早い。神官さんから渡された聖女候補者の推薦の書類を見せる。
「あちらで手続きをしてください」
神殿奥の関係者立ち入り禁止ゾーンにある部屋の一室で女神様の選別を受けた。
地方神殿のより大きな女神像を使って行われた。
私が触れると部屋一面に祝福の光が満ち溢れた。
「これは……」
立ち会っていた大神殿の神官さんや聖女見習いの方々から魔力量の多さに驚かれた。私はそんなものかとあまり実感は沸かなかった。
マルクトから連れて来てもらった神官さんが帰り際に頑張れよと励まされて私の大神殿での生活は始まった。
他にも同じ時期に入った聖女見習いは数名いたけれど良い所のお嬢さんで私が平民の出身と分かるとあまり話してくれなくなった。
◇◇◇あとがきめいたも◇◇◇
遅出ヒーローの作者ですが、次こそヒーローでます。お待たせしました!
あれから結局一度も村に帰ることは無かった。
お母ちゃんや妹や村の皆がどうしているのか分からない。
お母ちゃんの顔を思い出すことも少なくなった。お父ちゃんの顔は……。
私がいた村はかなり田舎だったみたい。
村の名前さえ定かでないくらいのレベルなので地方神殿の巡回に行く人が嫌がるほどだった。一緒についていくには神殿での不在の期間が長すぎるので難しかった。
こんな私でも神殿では女神の祝福を賜るのが一番多かったからだ。
私が祈りを捧げると神殿がキラキラとして光に包まれてとても美しい。
そうすると一般の参拝者も増え寄進も多くなる。
「素晴らしい。女神様に感謝を……」
そう言われると私も嬉しかった。ここでは私を必要としてくれる、たとえ女神様の祝福の力だとしても……。
できれば家に手紙でも書いて託そうかと思ったけれどお母ちゃんは字なんて読めなかった。
年一回行くぐらいの村の一家族の様子を訊ねるのも憚られたので家がどうなっているのか何も分からなかった。
そして、十歳を過ぎると聖女見習いの中から聖女候補と認められたものは王都の大神殿に推薦されるシステムになっている。
ジョイみたいに地方都市で見習いのまま終える人も多い。
「ミリアなら大神殿で聖女候補になれるかもね。そしたら、聖女候補と一緒に修行したって自慢するわ! もしか、ミリアが聖女様? あはは。楽しみ」
ジョイがバンと背中を叩いてきた。
「ジョイはもう少し落ち着きなさい。粗忽ものでは玉の輿になど無理ですよ」
神官のお兄さんからお小言を言われるのも日常風景だった。
「ミリアなら確かに聖女候補として推薦できますね。正直手離すのは痛手になるけれど……」
そう言われるけれど、ここを離れるのは私もとても不安だった。
大神殿で本格的な聖女候補者としての生活が始まる。いずれはその中から聖女として女神様から選ばれるのだ。
数日、他の見習い達も推薦の話を聞いていく。魔力は成長と共に増えることもあるので十歳を過ぎている者は推薦の時期に訊ねられることになる。
ジョイは私より一年先輩でやっぱり今回もこのまま地方神殿で聖女見習いとして残るみたいだった。相変わらず目指すは玉の輿とも言っていた。
「ミリア、君には聖女候補になる資格は大いにある。だから王都の大神殿へ推薦しようと思うがどうだろう?」
神官のお兄さんはいつも何かと心配して世話をしてくれた。今回も神殿の意向より私の意見を聞こうとしてくれる。
「王都の大神殿……」
「もちろん嫌だったら、ここでいていいんだよ」
私はこの優しい神官のお兄さんの期待に応えたいと思った。
「私はここでの経験を生かして大神殿でも頑張りたいと思います」
そう答えると神官さんは穏やかに微笑んでくれた。
――これで良いのよね?
ジョイが横から顔を挟んできた。
「ミリアなら聖女だってなれるよ! いつも頑張っているし、可愛いし、魔力だってここの誰よりも多いもの。私は都会の堅苦しいのは嫌だからここで十分」
「可愛いとか……、でも魔力は確かに……」
私はジョイや神殿の皆から励ましてもらって王都の大神殿と各地方神殿を定期的に行き来する便に一緒に同行させてもらった。
そうして私は王都にある女神教会の大神殿へ向かった。それでも一週間以上かかった。
「マルクト神殿から来ました聖女見習いのミリアです」
一緒に来た神官さんと入り口で挨拶をする。神官さんは顔パスなので話が早い。神官さんから渡された聖女候補者の推薦の書類を見せる。
「あちらで手続きをしてください」
神殿奥の関係者立ち入り禁止ゾーンにある部屋の一室で女神様の選別を受けた。
地方神殿のより大きな女神像を使って行われた。
私が触れると部屋一面に祝福の光が満ち溢れた。
「これは……」
立ち会っていた大神殿の神官さんや聖女見習いの方々から魔力量の多さに驚かれた。私はそんなものかとあまり実感は沸かなかった。
マルクトから連れて来てもらった神官さんが帰り際に頑張れよと励まされて私の大神殿での生活は始まった。
他にも同じ時期に入った聖女見習いは数名いたけれど良い所のお嬢さんで私が平民の出身と分かるとあまり話してくれなくなった。
◇◇◇あとがきめいたも◇◇◇
遅出ヒーローの作者ですが、次こそヒーローでます。お待たせしました!
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