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十二 生きていくために(レイノルド視点)

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 彼女なら馬車のからくりやアイテムボックスを見せても構わない気がした。

 これらは錬金術から派生したスキルだった。

 鞄や服にアイテムボックスは付与されていることが多い。では馬車だって問題ないだろう。

 そう思って開発した。やっとものになったものだ。

 アゼリア嬢ならむやみに言いふらしはしない。そんな気がした。

 彼女は最初驚いたものの。どんどん順応していった。

 乳兄弟のアドニスにも丁寧に対応していたし、いつもの横暴な物言いではなかった。

 昔は高飛車だったけれど大人になったのかもしれない。彼女は王国の庶民の今の暮らしをみて憤っていた。そう言えば昔から正義感が強かったな。

 今の彼女なら王妃としても十分責務も果たせるだろう。

 リーダイも父もどうしてあんな愚行を犯したのか。

 彼女の行き先を尋ねると、生活費を稼ぐために冒険者になると話したので、とりあえず一緒に行ってみようと提案してみた。

 アゼリア嬢とのやり取りを思い返していると、御者台に顔を出したアドニスに尋ねられた。

「ロータス公爵令嬢のことはどうされますか? このままお連れするのでしょうか?」

 心配そうなアドニスに、

「彼女をこのまま放りだすわけにもいかないよ。ご令嬢がこんなところで一人になるとどうなるか分かりきったことだろう? それにもうロータス公爵家と彼女は関係ないので公爵家の庇護も期待できそうにない」

 世間知らずの彼女がドレスや宝石をだまし取られて、娼婦か奴隷落ちというお決まりのパターンが目に浮かぶ。それはなんだか許せなかった。

「そうですか。ではレイノルド様のおっしゃる通りに」

 何故かアドニスも安心したようだった。それなら最初から聞かないでくれ。

「アゼリア嬢はお前も覚えているだろう。王宮で彼女は俺に優しかった唯一の……」

 魔法なしの俺にも普通に接してくれた少女。

 彼女は誰に対しても我儘で自分ルールを押し通した。

 光魔法の使い手に相応しい光いっぱいの少女。

「そうですね。あのお可愛らしいままでしょうね」

 アドニスも目元が綻んでいた。だから俺も微笑んでみせた。

「そう人間は変わらないさ」
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