〜鉄塊〜

yuraaaaaaa

文字の大きさ
上 下
9 / 33

〜選抜演習〜

しおりを挟む
 学長室の前に着いた。ノックをする。
 「黒崎です!」
 「雄二か入れ!」

 学長室に入るとすでに和久さんが居た。
 「雄二今日一日ご苦労だったな! 今日一日過ごしてみてどうだった?」

 「どうだったと言われまして……とにかく大変でしたよ。走ったり戦ったり,戦ったり……」
 「そうか。まあ一日目だししょうがないだろう! ここに呼んだのは雄二に話があるからだ」

 「一週間後,選抜された一年生の鉄騎による実践訓練を行うんだが,雄二は選抜のメンバーに入ってもらう。一週間後本格的な実践訓練に加わってもらう」

 「え!? 実践訓練ですか!? そんな急に……」
 「五人一チームになってもらい,結界で守られている街の外に行き,Antsybalと戦ってもらうという事だ」

 「いきなりですか!?」
 「大丈夫だ! そんないきなり強いAntsybalと戦う訳じゃない。レベル0やレベル1しかいない巣。比較的安全だと判断された所に出撃して実際に戦ってもらう訓練だ」

 「なんで俺なんですか?」

 「何でってそれは今日自分自身で力を証明したではないか!」
 「財前に勝つぐらいだからな! 選ばれても不思議ではない」

 簡単になるほど分かりました。頑張りますとは正直ならない。
 しかし,逃げる事もできないとも思っている。
 「できる限りがんばります……」

 そう答えると,今まで静かにしていた和久さんが口を開く。
 「不安なのか? それとも嫌なのか? まあどっちもってところか」
 
 「そんな一週間後なんて急すぎて……鉄騎だって乗りこなせてないのに!」
 「操縦に関しては残り一週間もあれば,雄二の適合率なら乗りこなす事が出来るだろうよ」
 「今日の模擬戦を見た限りは,よほどの事がない限り心配する事もなさそうだしな!」
 「まあはい……わかりました。今日はとりあえず疲れたんで、帰ってもいいですか!?」
 「そうだな今日はもう帰っていいぞ雄二! わざわざご苦労だったな」
 俺はそのまま学長室を出た。

 寮に戻ると透が部屋で待っていてくれた。
 「おう雄二おかえり。話はどうだった!?」

 「大した話じゃないさ。それより腹減ったよ! 食堂に行こう」
 「まあそうだな! 食堂行くか」

 食堂に着くと寮生でいっぱいだった。
 透にならってカウンターでお盆に乗った今日の夜のメニューを受け取る。カウンターには飯田のおばちゃんが居て、俺にご飯を盛ってくれた。

 「雄二は今日から寮の仲間だからおまけしといたよ!」
 「あ、あ、ありがとう飯田のおばちゃん」

 「いいよ! いいよ! おかわりも沢山あるからねいっぱい食べな!」
 そう言って盛られたご飯の量は尋常ではない……

 大盛り!? いや! これは飯田盛りだ……
 正直食べれるかわからない。そう思ってると耳元で透が――

 「残したらぶっ飛ばされるから、死ぬ気で食えよ!」
 ある意味今日一番の試練かもしれない……

 俺と透はさっき一緒だった翔太と茂人の席で一緒に食事を取ることにした。
 席に着いて俺はとりあえず,死ぬ気でご飯を食べる。

 他の三人は色々と話をしているが,話に入れない程食事と俺は格闘している。
 どこかで聞いたか忘れたが,脳がお腹いっぱいとなる前に入れれば沢山食べる事が出来ると聞いた事があるから,俺は詰め込んでいる。

 「雄二,凄い量だけど,食べれそうか? 飯田のおばちゃん残すの嫌いだから残すのは駄目だけど,よかったら手伝うぜ!?」
 透がそう声をかけてくれたが,口の中がいっぱいな俺は大丈夫大丈夫と身振りをした。

 「まあ,大丈夫いいならいいけど,あんまり無理すんなよ!」
 
 死ぬ気で俺は食べきった。もう限界でホントに腹が破裂しそうだ……

 腹八分目ってよく言うけど,本当にそう思う。食べすぎはよくない。
 俺はお盆をカウンターに返しにいく……

 「ごちそうさまでした……」

 俺は透と部屋に戻りそのままベッドに倒れ込む。
 「いや! もう限界だ!」

 「まああれだけ食べたらそうなるわな」
 「俺先に風呂入るよ」
 「うん」

 透は部屋にある風呂に入る。今日一日がやっと終わった……そう思ったら急に眠気が襲う……

 「…………」
 どれくらい経ったかわからないが目が覚めた。部屋は暗く,透のイビキが聞こえる。

 俺はこのまま寝ようとも思ったが,身体が気持ち悪くシャワーを浴びる事にした。
 「透やつ起こしてくれればよかったのに……」

 そんな事を思いつつシャワーを浴びた。頭をタオルで乾かしながら部屋に戻ると,丁度月明かりが部屋に差し込んでいる。
窓の方に近づくと,外で誰かが何かしている。よく見ると自主練? をしているような感じだ。

 こんな時間に自主練なんかしてる努力家も居るんだなと感心した。
 シャワーを浴びて分かったが,俺は身体中がとんでもなく痛い事に気付いた。筋肉痛なのか,擦り傷なのか打撲なのかわからないが,身体中が痛い。
 
 明日も学校で一週間後には実践訓練がある。と考えると憂鬱になるから俺はとにかく寝た。



 「おい! 起きろよ雄二! 朝だぞ!」
 「ん~……あ~……透か?」
 「そうだよ! 朝だ朝。 早くしないと遅刻するぞ」

 俺は透に起こされ,食堂に向かい朝飯を食べ,急いで支度し学校へ向かう。
 「やばい! 雄二とにかく走るぞ!」

 「え!? 朝から!? てかなんでこんなギリギリなんだよ!」
 「雄二が起きないからだよ。俺は朝弱いし,いつもギリギリだよ」

 「そんな事自信満々に言うことじゃねえだろ」
 「とにかく走れ!! 遅刻すると,訓練の量増えるぞ」

 俺達はギリギリ間に合わなかった。
 「雄二と透アウト~!! 今日の訓練覚悟しておけよ」

 山口先生にそう言われ,俺と透は席に着いて授業を聴く。昨日と同じで座学から始まる。
 座学が終わるとグラウンドに行き,昨日とは違って俺らは15キロの重りを背負う羽目になった。その重りを背負いながら15キロ走る。全身が筋肉痛でかなりキツイ。

 どんどんクラスの皆に周回遅れになる。追い越すたびに妙に突っかかってくる奴がいる。
 財前だ……

 涼しい顔で荷物を背負いながらあっという間に駆け抜ける財前!
 俺は何回抜かれたか分からない……やっと15キロを走り終えた。

 終わったらと思ったらそのまま山口先生による個別指導の組手が始まる。
 山口先生と組手が始まったが,何をしても当たらなし,すぐにひっくり返されてしまう。
 
 「雄二……お前弱すぎて,一週間じゃあどうにもならないなぁ~」
 「大佐から一週間である程度形にしてくれ! とか言われたけど,普通に無理だな」

 「適合率が高いんだから,その潜在能力の使い方学んだほうが強くなりそうだな!」
 俺は山口先生にひっくり返されて空を見上げながら先生に聞いてみた。

 「山口先生,実践訓練って危なくないんですか? 俺大丈夫ですかね?」
 「まあ大丈夫じゃないか? 絶対なんて事はないけど,一年生の実践訓練はかなり安全な場所に送られるし,本当に慣れる為に行うといった感じだ」

 「気楽に行ってこいよ」
 「そうですかぁ……じゃあ頑張ってきますね」

 不意をついて攻撃を繰り出したが,逆にみぞおちに拳を食らって息ができなくなった。
 とにかくヘトヘトになり,それが終われば,今度は鉄騎に乗った訓練が始まった。

 模擬戦を繰り返し,和久さんがこの授業の時は来ていて,何かデータを取っているようだ。
 和久さんからアドバイスなどを受けて,基本的な動きをいくつも確認したり,出来る事出来ないことを確認した。

 俺はほとんどの行動は難なくこなす事ができた。本当に自分が頭で思い描く動き,自分の身体のように動く事がわかった。しかし,空を飛ぶ飛行に関しては練習が必要であるようだ。
 自分の身体で空を飛ぶなんて事したことないから,当たり前だろ! と和久さんに言われ確かにとそう思った。

 走ったりする事は問題ないから,空を飛ぶ飛行を中心に鉄騎の練習はしていこうという話になった。
 今日はそろそろ止めようかな? と思っている所にゆきが現れた。

 「おう! 雄二じゃねえか! 私と一勝負しようぜ!」
 「え!? ん~~……一回だけね」

 俺自身試してみたい事があって,勝負を受け入れた。大佐が言うように実践が一番なのかもしれない。


 お互いに鉄騎に乗り込んだ。開始の合図があり,模擬戦が始まる。
 俺はすぐに距離を取った。接近戦の技術がないから,俺には遠距離からの攻撃の方がどちらかといえば良いと思ったからだ。

 昨日の財前との模擬戦を見て,接近戦が得意そうなゆきの攻撃を躱す事ができれば,実践で後れを取ることはないだろう。

 俺は長距離の攻撃として銃を使ってみる。勿論経験がないから当てる事は困難だった。だから俺はさらに小型のドローンを数台展開させて,そいつらにも撃ってもらいとにかく数で押し切る作戦でゆきに対抗してみた。

 かなり複雑な攻撃にも関わらず,ドローンからの攻撃と俺からの攻撃をゆきの鉄騎はいとも簡単にすり抜けていく。スピードが速く上手く当てる事ができない。

 ゆきの鉄騎がどんどん俺に近づいてくる。その勢いで斬りかかってきた。
 俺は咄嗟に左腕に盾を出してガードをした。

 まだ俺には右手が残ってる……至近距離なら外すまい。
 ゆきの騎体は前宙をしながらアクロバティックな動きで,俺とドローンからの至近距離からの攻撃を躱して俺の背後を取り,身動きが取れないように関節を固められた。

 俺はやられたと思い攻撃を止めて武器を落として降参をした。
 「マジかよ――あんな事できるの!?」

 終了の合図があり勝負は決まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~

ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。 ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。 一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。 目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!? 「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

処理中です...