上 下
6 / 56

〜罪とギルドマスター〜

しおりを挟む
 明くる日,クロエを叩き起こしてギルドへと向かった。
 
 カウンターのお姉さんにギルドマスターに会いたいことを伝える。お姉さんは裏の方へと消えていく。少しすると奥から凄い綺麗な人物が現れた。あれがギルドマスターなのか?
 「初めまして,私がギルドマスターのルネと申します。こちらに来てもらえますか?」 
 「カナデです。わかりました」
 声を聞くと男だという事は分かった。しかし見た目では女性だと見間違うほどの姿をしている。冒険者の荒くれ者達を束ねる長とは思えない風貌だった。

 ギルドの二階に上がり,案内された場所は応接室のような部屋だった。 
 「私が使っている部屋ですどうぞ! こちらに座ってください」
 俺とクロエは椅子に腰掛ける。

 「それで私に言いたい事があると聞きましたがどういった事でしょうか?」
 「それはですね……クロエ! 昨日の書類出して」
 「ほいよ」

 クロエがアイテムボックスから大量の書類を出した。
 「この書類は??」
 「ヨーゴレット伯爵が今までしてきた悪事の書類だと思います」

 「というと?? 昨日の伯爵邸での騒ぎはあなた達ですか?」
 「ええ……まあ」

 「この書類を俺達が持っていても意味がないと思うので,然るべき場所で扱ってもらって然るべき対処をしてもらえたらと」
 「なぜ私の所に??」

 「ローレンツに教えてもらったんです。ギルドマスターを頼れば間違いないと」
 「なるほどローレンツからですか……」
 ギルドマスターのルネさんは書類に目を通している。

 「カナデさんはこれを私に預けてどうしてほしいんでしょうか?」
 「多くは望んでいません。罪があればその罪を償ってほしいだけです」
 「後は酒場ライデンにちょっかい出してほしくないという事ぐらいですかね」
 俺はこの時ルネが少し笑ったかのように見えた。

 「なるほどそうですか。私にお任せ下さい。実を言うと伯爵は前々から色々と悪い噂が絶えなくてですね。どうにかしたいという事は貴族の間でも言われていたんですが,中々証拠がなかったものですから,これはありがたいです」

 「それなら良かったです」
 「それよりも隣にいる,この強大な魔力を持ったクロエさん? でしたっけ? 一体何者なんですか??」

 「ほう! お主中々やるのぉ。余は伝説の黒竜じゃ!」
 俺はため息をついた。

 ギルドマスターと呼ばれるような人の前で,自信満々に腰に手を当てて答えるセリフじゃないだろ……

 「黒竜ですか……にわかに信じ難いですが,目の前の強大な魔力を見ると信じるしかないといった所ですね」
 「黒竜クロエさん,あなたはこの街や人族に害をもたらしますか?」

 「そのような事はせんよ! ライデンの食事は美味しいからの~。でも余が大切にしているものとカナデが大切に思っているものに害をもたらした場合は容赦はせん」

 「そうですか。わかりました感謝致します」

 「そういえばお前って三百年前は街を破壊したんだろ? どうして破壊したんだ?」
 「余を自分達の所有物にしようとした愚かな国があったのじゃ! こちらが友好的に接していたのに,いきなり攻撃してきたのでな,潰してやったのじゃ」

 「そんな真実が……本では黒竜がいきなり現れて勝手に破壊したとなってますね」
 「何!?!? 真実は全然違うぞ! まあ昔の事だからよい」
 「クロエさんが何故人族のカナデさんと一緒に?」
 「うむ! カナデが鳴らす音が気に入ってな。従魔として契約したのじゃ。ルネも一度ライデンに聴きに来たほうが良いぞ!」

 「え!?」
 ルイーザがルネは表情が変わらないからと言っていたが,信じられない程表情が変わった。

 「黒竜が従魔ですか??」
 「カナデの音をずっと聴いていたいからな~従魔契約が一番じゃと思ったのじゃ」
 「従魔契約って知らないんですけど,どういうことなんですか?」

 「従魔契約は主人には絶対服従で,命令をしたら断れないんです。だからカナデさんの命令一つでクロエさんを操る事が出来るんです」
 「クロエそんな事一つも言わななかったじゃないか!」
 「言ったって仕方なかろう」

 「まあいいや……考えたって仕方ない。クロエが仲間になったのは確かです」
 「そうじゃ。カナデと余は仲間じゃ」
 「なるほどそうですか。それじゃあとりあえずはこの書類と伯爵の件に関しては私に任して下さい」

 「ルネさんお願いします」
 「カナデさん最近冒険者になったばかりだとか。良かったら依頼をしてみてはいかがですか?」

 「でも俺,身体を動かしたりとか戦いとか苦手なんですよね……根っからのインドアで」
 「何を言っておるのじゃ! 戦いなら余がおろうではないか」
 確かに戦いはクロエに任しておけばいいけども,手を怪我したりするのは嫌なんだよな。
 「俺の事を守ってくれる魔法とかないのか? 腕や手,指を怪我したくないんだ。怪我したらクロエが聴きたい音楽も聴けなくなるぞ??」
 「確かにそれは駄目じゃ。任せろ!! カナデに黒竜の加護を付与する。結界を張ったのじゃ。これでほぼ全ての攻撃を守ってくれるじゃろ」

 俺の身体が光りだした。これが加護というやつなのか。
 「よし。これでカナデの安全は確保された。依頼というやつを受けようぞ」
 「はいはい」
 「それじゃあルネさん俺達は依頼でも受けてきますよ」
 「行ってらっしゃい」

 俺とクロエは部屋を出て,下の階のカウンターへと向かう。
 カウンターにいる受付嬢に依頼を聞いてみた。

 「そうですね。Gランクとなると,雑用の依頼や薬草などの採取などが主な依頼になりますね」
 「なんじゃ。モンスターの討伐は出来んのか?」

 「そうですね。出来ないですね。依頼の最中に出くわしたモンスターを討伐するのはいいんですが,依頼自体を受ける事はまだ出来ません。弱いモンスターと言えど,怪我をするリスクもありますから新人,Gランクには受けられないようになっています」

 「なるほど。それじゃあGランクの依頼をいくつか見せてもらってもいいですか?」
 いくつかの依頼を見せてもらう。

 「じゃあこの依頼を受けます」
 「わかりました。依頼を受理しました。頑張って下さい」
 「ありがとうございます」
 「クロエ行くぞ!!」
 「待つのじゃ」

 俺達は受けた依頼の場所へと向かう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。

つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。 そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。 勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。 始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。 だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。 これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。 ※他サイトでも公開

聖女が追放されたことで豊穣チートを失ったけど、プロテインとヤンデレ美少女のおかげで人生逆転しました

フーラー
ファンタジー
聖女を失って、いわゆる「ざまぁ的展開」に陥ってしまった領民達が、力を合わせて再起を図る異色の異世界ラブコメファンタジー。 主人公のシリルが住む『カルギス領』は、聖女と呼ばれるエルフの少女ミレイユの能力によって芳醇な恵みがもたらされていたが、ある日領主は彼女を追放してしまう。 そして彼女が隣の『グリゴア領』に亡命したことによってシリルたちの国は加護を失い荒れ果ててしまう。 一方で聖女が逃げたグリゴア領は、まともに努力をしなくても芳醇な作物が実るようになっていき、その中で聖女ミレイユは薬屋として友人に囲まれながら、スローライフを送る生活を過ごしていた。 若い女性も大量に流出し、中高年ばかりとなってしまったカルギス領で、シリルは、使用人仲間のセドナと共に、少しでも自領を良くしようと尽力する毎日を送る。 そんな中、雑豆を用いて調合した『プロテイン』を『サブスク方式』で移動販売する商法が大ヒットしたことで、徐々にカルギス領と立場が再逆転していく。 更に自称『優しい男』であるコミュ障な獣人『ザント』や、 ミレイユの友達のふりをして惚れ薬を調合させ、シリルを自分のものにしようとするヤンデレ美少女『スファーレ』。 その他、様々なキャラの様々な思惑が、プロテインの市場を巡って波乱を引き起こしていく。 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...