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玄愛《雅鷹side》
玄愛《雅鷹side》3
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目の前に哀沢くんがいることに驚いた。
「あ、あの!哀沢くん!話聞いてほしくて!」
「いいから家入れ」
そう言って哀沢くんは家にあげてくれた。
お姉さんらしき人が、玄関で俺を見つけてタオルを渡してくれた。
「やっぱりひーくんの友達だったんだね」
「そうだよ」
友達―…
そう言ってくれて嬉しかった。
「ハルくん、お風呂案内してあげて」
「うん」
今度は弟くんらしき人が俺を風呂場まで案内してくれた。
「俺は部屋で待ってるから」
そう言って哀沢くんは自分の部屋に行った。
「何でそんなにずぶ濡れなの?」
弟くんが俺に濡れている理由を聞いてきた。
「哀沢くんに謝りたくて。バッシュ捨てちゃったから…でも迷ってたら濡れちゃったの」
「あー、じいちゃんがくれたやつ?兄貴怒ると怖いから謝るの勇気いるもんね。分かる分かる。怒ってなくても俺は怖いもん」
弟のハルカくんが笑いながら場を和ませてくれて、色々教えてくれた。
おじいさんからバッシュが送られてきて、次に会ったときにお礼を言おうと思っていた矢先に亡くなってしまったらしい。
おじいさんはアメリカに住んでいて、しかも優秀な医者で頻繁に連絡が取れなかったと言っていた。
「兄貴、じいさんのこと大好きだったからね」
「そうなんだ…」
湯船に浸かってゆっくり考えた。
俺、本当に最低なことしたんだ…
ちゃんと謝らないと。
でも、謝ってもどうしたらいいんだろう。
そんな大切な物捨てちゃって…
お風呂から上がると、調度リビングから飲み物を持って歩いている哀沢くんに出会った。
「あの…」
「俺の部屋こっちだから」
「うん」
俺は哀沢くんの後ろをついていって、哀沢くんの部屋に入った。
「ココア飲めるか?」
「あ…うん。飲めるよ」
そして哀沢くんはココアをテーブルに置いた。
俺は置かれた場所の前に座った。
「ハルカくんから聞いたよバッシュのこと。本当にごめん」
哀沢くんは黙ってこっちを見つめている。
俺は続けた。
「俺、お金で買えないものなんてないと思ってた。でもあるんだね。…どうしたらいい?」
「別に何もしなくていいよ」
「だってあれは大切な物なのに…」
哀沢くんは少し間をおいて話し始めた。
「やっちまったもんは仕方ねぇだろ。もう過去のことだ。じいさんに礼を言えなかったのも過去のことだって割りきるしかねぇし」
「でも…」
「金で買えないものがあるってお前が気付けたなら、それでいいと今は思ってる」
あぁ―…
「じいさんから貰ったバッシュも、きつくなってきたから替え時だったし。いい機会だったんじゃねぇかな」
哀沢くんは、優しいんだ。
「あと、ボール抜いたのお前じゃないんだってな。先輩から犯人捕まえたって連絡きた。怒鳴って悪かった」
もともとは俺の指示なのに。
俺なんてもっと酷いことたくさんしたのに。
哀沢くんが俺に謝る必要なんてないのに…。
「バカ、泣くなよ」
「バカって言ったほうがバカだもん」
「ガキかよ」
「ガキだもん!」
俺が泣いたのが意外だったのか、哀沢くんは少し驚いていた。
「あと、あとで俺が今欲しいバッシュの情報教えるから買ってくれよ。それでチャラな」
新しいの買えば許してくれるの?
そんな簡単なことでいいの?
叩いたり、殴ったりしてくれても足りないぐらいなのに。
「…いくらぐらいのやつ?」
「1万か2万ので悩んでる」
「もっと高いやつ買いなよ!むしろどっちも買ってあげる」
「そんなにいらねぇよ」
だってそれだけじゃ俺への制裁が軽すぎる。
いくらでも買ってあげたい。
俺が悪いんだから。
「いーの!俺があげたいの!気になってるやつは全部買ってあげる」
「結局金じゃねぇかよ。成長してねぇな」
あっ…
…笑った。
哀沢くんが俺を見てクスッと笑った。
それがすごく嬉しかった。
もっとその笑顔が見たくなった。
それからは俺が勝手に哀沢くんの傍に行って一緒に行動するようになった。
哀沢くんも何も言わずに一緒にいてくれた。
そんな哀沢くんを好きになるのに時間はかからなかった。
ある日、部活終わりの哀沢くんを驚かそうと隠れて待機してるとバスケ部の先輩が哀沢くんに話しかけていた。
「哀沢さぁ、最近山田と一緒にいるけど脅されてるの?」
まさかの俺の話だった。
脅されてるとは?
「脅されてないですよ」
「だって、あんなのと一緒にいたら怖いじゃん。機嫌損ねたらどうなるか…」
あんなのって…
みんなそんなこと思ってるんだ。
哀沢くんもそう思ってるのかな…
何て言うんだろう…
「山田がワガママなのは家庭環境のせいだと思うんで。あいつ根はいいやつですよ。一緒にいて飽きないです俺は」
「へー。そうなんだ」
哀沢くんはちゃんと俺のこと見ててくれてるんだ。
山田財閥の人間としてじゃなくて、山田雅鷹という一人の人間として見てくれている。
嬉しい。
一生ついてく。
この辺りから、俺は哀沢くんを好きになったんだと思う。
「あ、あの!哀沢くん!話聞いてほしくて!」
「いいから家入れ」
そう言って哀沢くんは家にあげてくれた。
お姉さんらしき人が、玄関で俺を見つけてタオルを渡してくれた。
「やっぱりひーくんの友達だったんだね」
「そうだよ」
友達―…
そう言ってくれて嬉しかった。
「ハルくん、お風呂案内してあげて」
「うん」
今度は弟くんらしき人が俺を風呂場まで案内してくれた。
「俺は部屋で待ってるから」
そう言って哀沢くんは自分の部屋に行った。
「何でそんなにずぶ濡れなの?」
弟くんが俺に濡れている理由を聞いてきた。
「哀沢くんに謝りたくて。バッシュ捨てちゃったから…でも迷ってたら濡れちゃったの」
「あー、じいちゃんがくれたやつ?兄貴怒ると怖いから謝るの勇気いるもんね。分かる分かる。怒ってなくても俺は怖いもん」
弟のハルカくんが笑いながら場を和ませてくれて、色々教えてくれた。
おじいさんからバッシュが送られてきて、次に会ったときにお礼を言おうと思っていた矢先に亡くなってしまったらしい。
おじいさんはアメリカに住んでいて、しかも優秀な医者で頻繁に連絡が取れなかったと言っていた。
「兄貴、じいさんのこと大好きだったからね」
「そうなんだ…」
湯船に浸かってゆっくり考えた。
俺、本当に最低なことしたんだ…
ちゃんと謝らないと。
でも、謝ってもどうしたらいいんだろう。
そんな大切な物捨てちゃって…
お風呂から上がると、調度リビングから飲み物を持って歩いている哀沢くんに出会った。
「あの…」
「俺の部屋こっちだから」
「うん」
俺は哀沢くんの後ろをついていって、哀沢くんの部屋に入った。
「ココア飲めるか?」
「あ…うん。飲めるよ」
そして哀沢くんはココアをテーブルに置いた。
俺は置かれた場所の前に座った。
「ハルカくんから聞いたよバッシュのこと。本当にごめん」
哀沢くんは黙ってこっちを見つめている。
俺は続けた。
「俺、お金で買えないものなんてないと思ってた。でもあるんだね。…どうしたらいい?」
「別に何もしなくていいよ」
「だってあれは大切な物なのに…」
哀沢くんは少し間をおいて話し始めた。
「やっちまったもんは仕方ねぇだろ。もう過去のことだ。じいさんに礼を言えなかったのも過去のことだって割りきるしかねぇし」
「でも…」
「金で買えないものがあるってお前が気付けたなら、それでいいと今は思ってる」
あぁ―…
「じいさんから貰ったバッシュも、きつくなってきたから替え時だったし。いい機会だったんじゃねぇかな」
哀沢くんは、優しいんだ。
「あと、ボール抜いたのお前じゃないんだってな。先輩から犯人捕まえたって連絡きた。怒鳴って悪かった」
もともとは俺の指示なのに。
俺なんてもっと酷いことたくさんしたのに。
哀沢くんが俺に謝る必要なんてないのに…。
「バカ、泣くなよ」
「バカって言ったほうがバカだもん」
「ガキかよ」
「ガキだもん!」
俺が泣いたのが意外だったのか、哀沢くんは少し驚いていた。
「あと、あとで俺が今欲しいバッシュの情報教えるから買ってくれよ。それでチャラな」
新しいの買えば許してくれるの?
そんな簡単なことでいいの?
叩いたり、殴ったりしてくれても足りないぐらいなのに。
「…いくらぐらいのやつ?」
「1万か2万ので悩んでる」
「もっと高いやつ買いなよ!むしろどっちも買ってあげる」
「そんなにいらねぇよ」
だってそれだけじゃ俺への制裁が軽すぎる。
いくらでも買ってあげたい。
俺が悪いんだから。
「いーの!俺があげたいの!気になってるやつは全部買ってあげる」
「結局金じゃねぇかよ。成長してねぇな」
あっ…
…笑った。
哀沢くんが俺を見てクスッと笑った。
それがすごく嬉しかった。
もっとその笑顔が見たくなった。
それからは俺が勝手に哀沢くんの傍に行って一緒に行動するようになった。
哀沢くんも何も言わずに一緒にいてくれた。
そんな哀沢くんを好きになるのに時間はかからなかった。
ある日、部活終わりの哀沢くんを驚かそうと隠れて待機してるとバスケ部の先輩が哀沢くんに話しかけていた。
「哀沢さぁ、最近山田と一緒にいるけど脅されてるの?」
まさかの俺の話だった。
脅されてるとは?
「脅されてないですよ」
「だって、あんなのと一緒にいたら怖いじゃん。機嫌損ねたらどうなるか…」
あんなのって…
みんなそんなこと思ってるんだ。
哀沢くんもそう思ってるのかな…
何て言うんだろう…
「山田がワガママなのは家庭環境のせいだと思うんで。あいつ根はいいやつですよ。一緒にいて飽きないです俺は」
「へー。そうなんだ」
哀沢くんはちゃんと俺のこと見ててくれてるんだ。
山田財閥の人間としてじゃなくて、山田雅鷹という一人の人間として見てくれている。
嬉しい。
一生ついてく。
この辺りから、俺は哀沢くんを好きになったんだと思う。
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