233 / 391
短編・中編や他の人物を中心にした物語
短編 翠蘭の恋1
しおりを挟む
時は遡り、許靖たちが交州に避難してから数年が経った頃。
(翠蘭……またため息をついてる)
凜風は翠蘭の横顔に、心配の念を抱いた。
最近の翠蘭は少しおかしい。こうやってため息をつくことが多くなっただけでなく、突然ぼぉっとしたり、逆に頬を上気させるほど機嫌の良い時もある。
「翠蘭、もしかして体調でも悪い?」
凜風はこれまで何度も聞いた質問をあらためてした。
しかし、返ってきた答えはこれまでと変わらないものだった。
「えっ?いえ、別に悪いところはありませんわ。私は元気です」
そう言って笑う翠蘭の顔は確かに元気そうであり、実際に先ほどまで道場でもキレの良い動きを見せていた。少なくとも、身体的な健康面には異常がなさそうだ。
しかし、凜風から見るとやはりおかしい。
その変化は他の人間が気づくほどのものではないかもしれないが、凜風には分かる。いつも妹のことばかり見ているのだから。
二人は道場からの帰り道、少し回り道をしておしゃべりしながら帰宅していた。
最近は寒くなってきてあちこちに綺麗な紅葉が見え始めたので、それを眺めながらの帰路は楽しいものになるはずだった。
それなのに、先ほどのため息だ。
「なら、何か悩み事でもあるんじゃない?よかったら話してよ」
凜風の気遣いに、翠蘭は笑って首を横に振った。
「いえ、大丈夫ですわ。別に大した悩みでは……」
翠蘭の言葉が途中で止まったのは、凜風が翠蘭の着物の裾を摘んだからだ。
凜風としては翠蘭が話したくないことならば、無理に聞かない方がいいと思っている。しかし、聞きたかった。
大切な妹が苦しんでいるのなら助けたいし、何より妹のことで自分が知らないことがあるのが嫌だった。
翠蘭は凜風の顔を見つめ、少しだけ困ったように笑ってから話してくれた。
「あの……実は私、馬修さんのことを兄と思えばいいか、弟と思えばいいかで悩んでいるんです」
それを聞いた凜風は、まずほっと胸をなでおろした。
(良かった。本当に大した悩みじゃない)
実際に悩んでいる本人には失礼かもしれないが、正直なところそう思った。
馬修は凜風が結婚した馬雄の弟だ。
普段は診療所の小間使いのような仕事をしており、雑務や患者の世話、薬の準備などをして給金を得ている。
馬修は兄である馬雄とずっと一緒に暮らしており、それは凜風が嫁いで来てからも変わらなかった。つまり、馬修と凜風は同居している。
そして翠蘭は凜風の所によく遊びに行くから、必然的に馬修ともよく顔を合わしていた。
「馬修さんと顔を合わせる度に、どんな態度で望めばいいか分からなくなってしまって……」
翠蘭はそう言って肩を落とした。
申し訳ないが、凜風は少し笑ってしまった。
「どんな態度って……私の義理の弟って態度で望めばいいんじゃない?」
「お姉様には弟でしょうけど、私にとっては兄か弟かはっきりしないんです。同じ日に産まれてしまいましたから」
翠蘭と馬修は産まれた年月日どころか、産まれた時間まで正午ぴったりで全く同じだった。だから兄か弟かは齢では決められない。
それが翠蘭の悩みなのだが、凜風にはそもそもの所で疑問がある。
「っていうか、兄とか弟とか決める必要なんてある?そんなに大切なことかな?」
「大切ですよ。長は幼を教え導かなくてはなりませんし、幼は長を支えなければなりません。人の世にはとても大切なことです」
翠蘭は儒学者である袁徽の一人娘だから、そんなことを思ったりする。
しかし、言われた凜風は苦笑するしかなかった。
「私……いつも妹の翠蘭に教え導かれてる気がするけど。基本的にだらしないのは私の方で、翠蘭の方がしっかりしてるよね」
翠蘭は首を横に振って凜風の言葉を否定した。
「私はいつもお姉様から色々なことを学んでいますわ。それに、ちょっとだらしないお姉様もそれはそれで可愛いからいいんです」
「なにそれ」
それならもう何だっていいような気がするが、翠蘭にとって長幼の確定は大事らしい。確かに悩んでいる顔はしていた。
それに、馬修を前にした翠蘭の態度は凜風から見てもおかしかった。
礼儀作法のことで上から説教したと思ったら、今度は急に馬修のやる家事などをかいがいしく手伝い始める。
「でも、ちょっと納得したよ。それであんな風に態度が迷走してたんだ」
「迷走……そうですわね。確かにお姉さまのおっしゃる通り、迷走してますわ……」
翠蘭はため息をつきながら、色付き始めた紅葉を眺めた。
それはどこか寂寞とした色にも思えるし、舞い上がるほど鮮やかにも感じられる。
「家族が増えたことはとても嬉しいんです。でもお互いの関係がいまいち判然としないものですから、どう接したらいいか分からなくて……ここの所、気づけば馬修さんの事ばかり考えてますわ」
そう言って、またため息をつく。
凜風はそのため息に、妙な熱っぽさを感じたような気がした。
ため息だけでない。紅葉を見つめる翠蘭の目もどこか熱っぽく、そして紅葉ではない何かを見ているようにも思えた。
「翠蘭って……恋をしたことはある?」
凜風の質問に、翠蘭は笑った。突拍子もないことを聞かれたと思ったからだ。
「恋、ですか。いつかお父様が連れて来てくださる旦那様に恋できたら素敵だなって思いますわ」
そういう時代であったこともあり、翠蘭は自分で相手を選ばない結婚に関して大した疑問を抱いていなかった。
もちろん庶民は男女が恋に落ちて結婚することも多かったわけだが、翠蘭は高名な儒学者の娘だ。当然、父が然るべき相手を選んで連れて来てくれるものだと思っていた。
凜風はそんな妹の純な笑顔を、この上なく可愛らしいと思った。
しかしそれと同時に、どこか不憫にも感じるのだ。
「袁徽おじさんって、今日は家にいる?」
「え?ええ、お父様は家で書きものをされるとおっしゃっていました」
「そっか。今から翠蘭の家に行っていいかな?」
「構いませんけど、お兄様と馬修さんのお食事の用意はいいんですか?」
凜風は結婚して主婦になったのだから、当然そういった仕事がある。
「あー……そうなんだよね。でも、二人も大切な家族の方が優先順位が高いって分かってくれるからいいよ。適当に食べるって」
「……?よく分かりませんけど、それなら私も手伝いますから早くお食事を作って、それからうちに行きましょうか」
「いいの?助かるわ~、やっぱり持つべきものは有能な妹ね」
凜風は翠蘭を抱きしめて、その頭を撫でた。翠蘭は嬉しそうにされるがままにしている。
こんなに可愛い妹が、恋をしているかもしれない。
(この子を泣かすような男がいたら、ぶっ飛ばしてやろう)
凜風は念のため、義理の弟をボコボコにするための手順を頭の中で組み立てておいた。
***************
馬修はなぜか背筋に悪寒のようなものが走り、ブルッと体を震わせた。
(……なんだろう、最近寒くなってきたからかな?風邪を引かないようにしないと)
そう思い、襟元をきつく合わせる。仕事柄、風邪はもらいやすいのだ。
「馬修、あっちの患者さんには麻黄と葛根だ」
「あ、はい。分かりました」
雇い主である医師、衛玄から命じられ、言われた通りの生薬を手早く用意した。
馬修はもう何年も前から衛玄の診療所で働いている。
両親は早くに亡くなった。まだ親の恋しい時期だったので寂しくはあったが、よくできた兄が商家で働いてくれたため、食うに困ることはなかった。
ただ、兄の稼ぎも初めは多くはなかった。だから自分はそれを助けるために、幼い頃からこの診療所で雑用のようなことをして銭を稼いでいる。
馬修は俊敏で要領の良い子だったから、何をするにも仕事が速かった。その働きぶりは衛玄や他の従業員からも重宝され、今では馬修が休みの日には待ち時間が長くなるほどだ。
それに、もう何年もいるから診療所のことも患者のことも大抵は知っている。最近は患者の様子を見るだけで、なんの薬を用意すればいいか大体分かるようにまでなっていた。
(次の患者さんの薬、多分これだな)
そう思ったので、先ほど指示された薬を用意するついでに次の患者の分も出しておいた。こうやってまとめて仕事ができると効率は上がる。
馬修が待合に薬を持っていくと、咳をしている患者がいた。今日は風邪で来ているが、普段から定期的に受診している老人だ。
「はい、お待たせ。いつもの薬に追加で飲んでね。一緒に煮出していいから」
「おお、ありがとよ。それじゃ帰るとするか」
老人は礼を述べてから、立ち上がろうとした。
が、足腰が弱っているからすぐに立てない。
馬修は抱え上げるようにしてそれを手伝った。
「いつもすまんな。しかし前も言ったが、儂は自分でできることは自分でしたい。放っといてくれていいんだよ」
この老人は、そういう自立心の強い老人だった。馬修は今までに何度も同じようなことを言われている。
(でも、立ち上がるのに難儀してる患者さんに背を向けてよそへ行くのもな……かといって次の仕事も進めたいし……)
馬修はそういう思いで毎回手伝っていた。
立ち上がるまで見守っていると時間がかかるし、放っておいた結果として転倒されても困る。
それならさっさと抱え上げた方が早い、というのが俊敏な馬修の思考回路だった。
今回も、
「まぁまぁ……」
と、便利な言葉を口にしながら老人を手伝った。
そして立ち上がった老人が頭を下げてゆっくり歩き出した時、なぜか頭の中に一人の女性の声が響いてきた。
『人を、一人の人間として敬うのですわ』
それは、義姉の妹だという女性の声だった。
その人は兄が結婚してからしょっちゅう家に来るから、半ば家族のようになっている。
(翠蘭……そんなことを言ってたな)
翠蘭が馬修に礼儀作法の説教をしていた時、口にしていた言葉だった。
(礼儀作法なんて上っ面のもん、どうだっていいだろう)
馬修は正直そう思っていたので、そういう意味の文句を口にした。そして返ってきたのが『敬う』ということだった。
『礼は時として煩わしいものですし、生きていくのに必須のものでもありません。ですがその根底に相手を敬う気持ちがある限り、人の在り方を高め、幸せにしてくれるものなのです』
翠蘭はそう言っていた。一字一句、間違いなくそう言っていた。
ここの所、馬修の頭にはなぜか翠蘭のことばかりが浮かんでくる。何度も同じ言葉が脳内で再生されたから、間違いないはずだ。
(敬う、か……俺は今、あの患者さんを一人の人間として敬ってたかな?)
やった事自体は悪いことではないはずだ。むしろ足の悪い患者が立ち上がるのを助けていたのだから、周りから見れば親切な行為に見えるだろう。
しかし、自分はあの患者の意思を無視して抱え上げた。それは相手を一人の人間として敬っていたとは言えないような気がする。
(敬う……敬う……)
馬修はその日、頭の中でその言葉を繰り返しながら仕事をした。
そして夕方、患者も途切れてそろそろ診療所を閉めるという段になってから、馬修は衛玄に声をかけた。
「あの、先生」
「なんだ?」
「足の悪い患者さんのために、待合に手頃な高さの台か棚でも置いたらどうかと思ったんですが」
「……それは立ったり座ったりするのの助けになるから、ということか」
「そうです。あと歩き始めが危ない人が多いですし、手すりとしてあってもいいかなって」
そう言う馬修の顔を、衛玄の深い色をした瞳がじっと見つめた。
「……腰でも痛めたか?それとも患者さんを支えるのがしんどくて、自分で立ってくれればと思ったか?」
問われた馬修は頬を引きつらせた。
この衛玄は基本的に患者思いの優しい医師だが、仕事のことになると厳しいところがある。怠けて楽しようとしたと思われてはかなわない。
馬修は手と首を横に振って否定した。要らぬ事を言って不興を買ってしまったと後悔した。
「いえ、そういうわけじゃ……」
「正直に言え。人が人の体重を支えるのはきついものだ」
「そうじゃなくて……今日来た患者さんで、自分のことは自分でやりたいってずっと言ってる人がいたんです。だからその人が納得できるようにしてあげたいと思って……で、でもやっぱり手伝ってあげた方が親切ですよね!」
馬修はごまかすように笑って前言を撤回した。
衛玄はそんな馬修のことを厳しい目で見つめ続けている。
その視線にさらされた馬修は、痛いとすら感じていた。
冷たい汗をかきそうになっていると、衛玄はくるりと背を向けた。そして無言で診療所の奥へと入って行く。
(やっちゃったかなぁ……)
馬修がまた後悔の念を強くしていると、衛玄は竹簡(この時代の紙の代用品)の束を抱えて帰って来た。
「馬修、お前は字が読めるんだったな?」
「え?あ、はい。それなりには」
読み書きと計算はできた方がいい、というのが商家で働く兄の考えだった。
だから馬修は大した育ちでもないのに、そういうことは出来るように鍛えられていた。
「これを読め。暗唱できるくらい読むんだ」
「……え?これは?」
「医学書だ。私はお前が医者になれるよう、ここで教育しよう」
「え……え……えぇえ!?」
馬修は思わず声を裏返らせた。
自分はあくまで雑用で雇われている小僧のような存在であり、そんな高等な教育を受けさせてもらえるような立場ではない。
「もちろんお前にその気があれば、だが」
「な、なれるもんならなりたいですけど……でも、なんで急に?」
「以前から思ってはいたのだ。お前は物覚えも要領もいいし、仕事も速い。医者をやるのに申し分ない能力がある。ただ……」
衛玄はそこで言葉を切って、馬修へ手を伸ばした。そしてその肩に手を置いて先を続ける。
「……思いやりというのかな、それが足らなかったように思う」
馬修は置かれた手から、不思議な重さを感じたような気がした。
「思いやり……優しさが足りないということでしょうか?」
「思いやりと優しさは少し違う。お前には患者のために何かしたいという優しさはあった。しかし、仕事に追われていたからかもしれないが、患者の気持ちを尊重するということがなかった」
「尊重……」
「人を、一人の人間として敬うということだ」
その言葉を聞いて、目の前の医師と翠蘭の姿とが重なった。
自分と同い齢の女性が経験豊かな医師と重なるというのは、なんとも妙な気分だった。
「ついこの間、知り合いに同じことを言われて叱られました」
「良い知人だな。お前のことを考えてくれている。それで今日、あの患者を抱えて立たせた後に思うところがあったのか」
「み、見てらしたんですか……」
良い医師の条件かもしれないが、衛玄は目が良かった。見ていないようでも見ていることが多い。
「私には、お前が医者になった場合の姿が容易に想像できていた。腕は悪くないが、患者をただ捌いていくだけの医者だ。しかし診療の過程で患者を一人の人間として敬えない者は、医者をやるべきではない。人にはそれぞれ心があり、それを敬えない医者は患者の心を不幸にする」
馬修にはなんとなく衛玄の言っていることが分かる気がした。
患者の中には病や傷が治っても、どこか不満そうな顔をしている人間もいる。そういう患者は衛玄が少し時間をかけて話すと、大抵は表情を明るくして帰ってくれるのだ。
本人の納得や満足はまた違うところにあるのかもしれないと馬修は感じていた。
「お前が今日提案してきたことは、患者を一人の人間として敬っていて初めて口にできることだ。お前がそんなふうに成長したのなら、私はお前を医者にしたいと思う」
「俺は、成長したんですか」
「ああ、成長した。叱ってくれたという知人のおかげだろう。感謝するのだな」
医師はそう言って、馬修の背中を強く叩いた。
叩かれた馬修は前につんのめりながら苦笑した。
(翠蘭に礼を言った方がいいのかな?でも……なんて言おう)
どうも翠蘭を前にすると、馬修は上手く言葉が出てこなかった。妙に舞い上がったり、ついぶっきらぼうな態度をとってしまったりする。
それに、翠蘭は翠蘭で馬修に対する態度がコロコロ変わるのだ。上から説教を垂れることもあれば、逆にこちらを立ててきたりもする。
その度に一喜一憂してしまう自分が嫌で、馬修は翠蘭のことを苦手にすら感じていた。
しかしそれでも会いたいと思うし、話したいと思うのだ。
(やっぱり……礼は言った方がいいよな)
それで一つ会話ができる、ということを無意識に思った馬修はそうすることに決めた。
そして礼の言葉を考えている時、診療所の玄関に駆け込んできた男がいた。
「衛玄先生、急患です!もうすぐ運ばれてきますからお願いします!」
その男はどうやら搬送に先立ち、走って知らせに来てくれたらしい。
衛玄は仕事柄こういう事態にも慣れているから、落ち着いた声で尋ねた。
「状態は分かるか?」
「顔を見たら卒中じゃないかって話でしたけど」
「症状や年齢は?」
「詳しい症状はちょっと……中年の男ですけど、なんでも高名な儒学者の先生らしいですよ」
(翠蘭……またため息をついてる)
凜風は翠蘭の横顔に、心配の念を抱いた。
最近の翠蘭は少しおかしい。こうやってため息をつくことが多くなっただけでなく、突然ぼぉっとしたり、逆に頬を上気させるほど機嫌の良い時もある。
「翠蘭、もしかして体調でも悪い?」
凜風はこれまで何度も聞いた質問をあらためてした。
しかし、返ってきた答えはこれまでと変わらないものだった。
「えっ?いえ、別に悪いところはありませんわ。私は元気です」
そう言って笑う翠蘭の顔は確かに元気そうであり、実際に先ほどまで道場でもキレの良い動きを見せていた。少なくとも、身体的な健康面には異常がなさそうだ。
しかし、凜風から見るとやはりおかしい。
その変化は他の人間が気づくほどのものではないかもしれないが、凜風には分かる。いつも妹のことばかり見ているのだから。
二人は道場からの帰り道、少し回り道をしておしゃべりしながら帰宅していた。
最近は寒くなってきてあちこちに綺麗な紅葉が見え始めたので、それを眺めながらの帰路は楽しいものになるはずだった。
それなのに、先ほどのため息だ。
「なら、何か悩み事でもあるんじゃない?よかったら話してよ」
凜風の気遣いに、翠蘭は笑って首を横に振った。
「いえ、大丈夫ですわ。別に大した悩みでは……」
翠蘭の言葉が途中で止まったのは、凜風が翠蘭の着物の裾を摘んだからだ。
凜風としては翠蘭が話したくないことならば、無理に聞かない方がいいと思っている。しかし、聞きたかった。
大切な妹が苦しんでいるのなら助けたいし、何より妹のことで自分が知らないことがあるのが嫌だった。
翠蘭は凜風の顔を見つめ、少しだけ困ったように笑ってから話してくれた。
「あの……実は私、馬修さんのことを兄と思えばいいか、弟と思えばいいかで悩んでいるんです」
それを聞いた凜風は、まずほっと胸をなでおろした。
(良かった。本当に大した悩みじゃない)
実際に悩んでいる本人には失礼かもしれないが、正直なところそう思った。
馬修は凜風が結婚した馬雄の弟だ。
普段は診療所の小間使いのような仕事をしており、雑務や患者の世話、薬の準備などをして給金を得ている。
馬修は兄である馬雄とずっと一緒に暮らしており、それは凜風が嫁いで来てからも変わらなかった。つまり、馬修と凜風は同居している。
そして翠蘭は凜風の所によく遊びに行くから、必然的に馬修ともよく顔を合わしていた。
「馬修さんと顔を合わせる度に、どんな態度で望めばいいか分からなくなってしまって……」
翠蘭はそう言って肩を落とした。
申し訳ないが、凜風は少し笑ってしまった。
「どんな態度って……私の義理の弟って態度で望めばいいんじゃない?」
「お姉様には弟でしょうけど、私にとっては兄か弟かはっきりしないんです。同じ日に産まれてしまいましたから」
翠蘭と馬修は産まれた年月日どころか、産まれた時間まで正午ぴったりで全く同じだった。だから兄か弟かは齢では決められない。
それが翠蘭の悩みなのだが、凜風にはそもそもの所で疑問がある。
「っていうか、兄とか弟とか決める必要なんてある?そんなに大切なことかな?」
「大切ですよ。長は幼を教え導かなくてはなりませんし、幼は長を支えなければなりません。人の世にはとても大切なことです」
翠蘭は儒学者である袁徽の一人娘だから、そんなことを思ったりする。
しかし、言われた凜風は苦笑するしかなかった。
「私……いつも妹の翠蘭に教え導かれてる気がするけど。基本的にだらしないのは私の方で、翠蘭の方がしっかりしてるよね」
翠蘭は首を横に振って凜風の言葉を否定した。
「私はいつもお姉様から色々なことを学んでいますわ。それに、ちょっとだらしないお姉様もそれはそれで可愛いからいいんです」
「なにそれ」
それならもう何だっていいような気がするが、翠蘭にとって長幼の確定は大事らしい。確かに悩んでいる顔はしていた。
それに、馬修を前にした翠蘭の態度は凜風から見てもおかしかった。
礼儀作法のことで上から説教したと思ったら、今度は急に馬修のやる家事などをかいがいしく手伝い始める。
「でも、ちょっと納得したよ。それであんな風に態度が迷走してたんだ」
「迷走……そうですわね。確かにお姉さまのおっしゃる通り、迷走してますわ……」
翠蘭はため息をつきながら、色付き始めた紅葉を眺めた。
それはどこか寂寞とした色にも思えるし、舞い上がるほど鮮やかにも感じられる。
「家族が増えたことはとても嬉しいんです。でもお互いの関係がいまいち判然としないものですから、どう接したらいいか分からなくて……ここの所、気づけば馬修さんの事ばかり考えてますわ」
そう言って、またため息をつく。
凜風はそのため息に、妙な熱っぽさを感じたような気がした。
ため息だけでない。紅葉を見つめる翠蘭の目もどこか熱っぽく、そして紅葉ではない何かを見ているようにも思えた。
「翠蘭って……恋をしたことはある?」
凜風の質問に、翠蘭は笑った。突拍子もないことを聞かれたと思ったからだ。
「恋、ですか。いつかお父様が連れて来てくださる旦那様に恋できたら素敵だなって思いますわ」
そういう時代であったこともあり、翠蘭は自分で相手を選ばない結婚に関して大した疑問を抱いていなかった。
もちろん庶民は男女が恋に落ちて結婚することも多かったわけだが、翠蘭は高名な儒学者の娘だ。当然、父が然るべき相手を選んで連れて来てくれるものだと思っていた。
凜風はそんな妹の純な笑顔を、この上なく可愛らしいと思った。
しかしそれと同時に、どこか不憫にも感じるのだ。
「袁徽おじさんって、今日は家にいる?」
「え?ええ、お父様は家で書きものをされるとおっしゃっていました」
「そっか。今から翠蘭の家に行っていいかな?」
「構いませんけど、お兄様と馬修さんのお食事の用意はいいんですか?」
凜風は結婚して主婦になったのだから、当然そういった仕事がある。
「あー……そうなんだよね。でも、二人も大切な家族の方が優先順位が高いって分かってくれるからいいよ。適当に食べるって」
「……?よく分かりませんけど、それなら私も手伝いますから早くお食事を作って、それからうちに行きましょうか」
「いいの?助かるわ~、やっぱり持つべきものは有能な妹ね」
凜風は翠蘭を抱きしめて、その頭を撫でた。翠蘭は嬉しそうにされるがままにしている。
こんなに可愛い妹が、恋をしているかもしれない。
(この子を泣かすような男がいたら、ぶっ飛ばしてやろう)
凜風は念のため、義理の弟をボコボコにするための手順を頭の中で組み立てておいた。
***************
馬修はなぜか背筋に悪寒のようなものが走り、ブルッと体を震わせた。
(……なんだろう、最近寒くなってきたからかな?風邪を引かないようにしないと)
そう思い、襟元をきつく合わせる。仕事柄、風邪はもらいやすいのだ。
「馬修、あっちの患者さんには麻黄と葛根だ」
「あ、はい。分かりました」
雇い主である医師、衛玄から命じられ、言われた通りの生薬を手早く用意した。
馬修はもう何年も前から衛玄の診療所で働いている。
両親は早くに亡くなった。まだ親の恋しい時期だったので寂しくはあったが、よくできた兄が商家で働いてくれたため、食うに困ることはなかった。
ただ、兄の稼ぎも初めは多くはなかった。だから自分はそれを助けるために、幼い頃からこの診療所で雑用のようなことをして銭を稼いでいる。
馬修は俊敏で要領の良い子だったから、何をするにも仕事が速かった。その働きぶりは衛玄や他の従業員からも重宝され、今では馬修が休みの日には待ち時間が長くなるほどだ。
それに、もう何年もいるから診療所のことも患者のことも大抵は知っている。最近は患者の様子を見るだけで、なんの薬を用意すればいいか大体分かるようにまでなっていた。
(次の患者さんの薬、多分これだな)
そう思ったので、先ほど指示された薬を用意するついでに次の患者の分も出しておいた。こうやってまとめて仕事ができると効率は上がる。
馬修が待合に薬を持っていくと、咳をしている患者がいた。今日は風邪で来ているが、普段から定期的に受診している老人だ。
「はい、お待たせ。いつもの薬に追加で飲んでね。一緒に煮出していいから」
「おお、ありがとよ。それじゃ帰るとするか」
老人は礼を述べてから、立ち上がろうとした。
が、足腰が弱っているからすぐに立てない。
馬修は抱え上げるようにしてそれを手伝った。
「いつもすまんな。しかし前も言ったが、儂は自分でできることは自分でしたい。放っといてくれていいんだよ」
この老人は、そういう自立心の強い老人だった。馬修は今までに何度も同じようなことを言われている。
(でも、立ち上がるのに難儀してる患者さんに背を向けてよそへ行くのもな……かといって次の仕事も進めたいし……)
馬修はそういう思いで毎回手伝っていた。
立ち上がるまで見守っていると時間がかかるし、放っておいた結果として転倒されても困る。
それならさっさと抱え上げた方が早い、というのが俊敏な馬修の思考回路だった。
今回も、
「まぁまぁ……」
と、便利な言葉を口にしながら老人を手伝った。
そして立ち上がった老人が頭を下げてゆっくり歩き出した時、なぜか頭の中に一人の女性の声が響いてきた。
『人を、一人の人間として敬うのですわ』
それは、義姉の妹だという女性の声だった。
その人は兄が結婚してからしょっちゅう家に来るから、半ば家族のようになっている。
(翠蘭……そんなことを言ってたな)
翠蘭が馬修に礼儀作法の説教をしていた時、口にしていた言葉だった。
(礼儀作法なんて上っ面のもん、どうだっていいだろう)
馬修は正直そう思っていたので、そういう意味の文句を口にした。そして返ってきたのが『敬う』ということだった。
『礼は時として煩わしいものですし、生きていくのに必須のものでもありません。ですがその根底に相手を敬う気持ちがある限り、人の在り方を高め、幸せにしてくれるものなのです』
翠蘭はそう言っていた。一字一句、間違いなくそう言っていた。
ここの所、馬修の頭にはなぜか翠蘭のことばかりが浮かんでくる。何度も同じ言葉が脳内で再生されたから、間違いないはずだ。
(敬う、か……俺は今、あの患者さんを一人の人間として敬ってたかな?)
やった事自体は悪いことではないはずだ。むしろ足の悪い患者が立ち上がるのを助けていたのだから、周りから見れば親切な行為に見えるだろう。
しかし、自分はあの患者の意思を無視して抱え上げた。それは相手を一人の人間として敬っていたとは言えないような気がする。
(敬う……敬う……)
馬修はその日、頭の中でその言葉を繰り返しながら仕事をした。
そして夕方、患者も途切れてそろそろ診療所を閉めるという段になってから、馬修は衛玄に声をかけた。
「あの、先生」
「なんだ?」
「足の悪い患者さんのために、待合に手頃な高さの台か棚でも置いたらどうかと思ったんですが」
「……それは立ったり座ったりするのの助けになるから、ということか」
「そうです。あと歩き始めが危ない人が多いですし、手すりとしてあってもいいかなって」
そう言う馬修の顔を、衛玄の深い色をした瞳がじっと見つめた。
「……腰でも痛めたか?それとも患者さんを支えるのがしんどくて、自分で立ってくれればと思ったか?」
問われた馬修は頬を引きつらせた。
この衛玄は基本的に患者思いの優しい医師だが、仕事のことになると厳しいところがある。怠けて楽しようとしたと思われてはかなわない。
馬修は手と首を横に振って否定した。要らぬ事を言って不興を買ってしまったと後悔した。
「いえ、そういうわけじゃ……」
「正直に言え。人が人の体重を支えるのはきついものだ」
「そうじゃなくて……今日来た患者さんで、自分のことは自分でやりたいってずっと言ってる人がいたんです。だからその人が納得できるようにしてあげたいと思って……で、でもやっぱり手伝ってあげた方が親切ですよね!」
馬修はごまかすように笑って前言を撤回した。
衛玄はそんな馬修のことを厳しい目で見つめ続けている。
その視線にさらされた馬修は、痛いとすら感じていた。
冷たい汗をかきそうになっていると、衛玄はくるりと背を向けた。そして無言で診療所の奥へと入って行く。
(やっちゃったかなぁ……)
馬修がまた後悔の念を強くしていると、衛玄は竹簡(この時代の紙の代用品)の束を抱えて帰って来た。
「馬修、お前は字が読めるんだったな?」
「え?あ、はい。それなりには」
読み書きと計算はできた方がいい、というのが商家で働く兄の考えだった。
だから馬修は大した育ちでもないのに、そういうことは出来るように鍛えられていた。
「これを読め。暗唱できるくらい読むんだ」
「……え?これは?」
「医学書だ。私はお前が医者になれるよう、ここで教育しよう」
「え……え……えぇえ!?」
馬修は思わず声を裏返らせた。
自分はあくまで雑用で雇われている小僧のような存在であり、そんな高等な教育を受けさせてもらえるような立場ではない。
「もちろんお前にその気があれば、だが」
「な、なれるもんならなりたいですけど……でも、なんで急に?」
「以前から思ってはいたのだ。お前は物覚えも要領もいいし、仕事も速い。医者をやるのに申し分ない能力がある。ただ……」
衛玄はそこで言葉を切って、馬修へ手を伸ばした。そしてその肩に手を置いて先を続ける。
「……思いやりというのかな、それが足らなかったように思う」
馬修は置かれた手から、不思議な重さを感じたような気がした。
「思いやり……優しさが足りないということでしょうか?」
「思いやりと優しさは少し違う。お前には患者のために何かしたいという優しさはあった。しかし、仕事に追われていたからかもしれないが、患者の気持ちを尊重するということがなかった」
「尊重……」
「人を、一人の人間として敬うということだ」
その言葉を聞いて、目の前の医師と翠蘭の姿とが重なった。
自分と同い齢の女性が経験豊かな医師と重なるというのは、なんとも妙な気分だった。
「ついこの間、知り合いに同じことを言われて叱られました」
「良い知人だな。お前のことを考えてくれている。それで今日、あの患者を抱えて立たせた後に思うところがあったのか」
「み、見てらしたんですか……」
良い医師の条件かもしれないが、衛玄は目が良かった。見ていないようでも見ていることが多い。
「私には、お前が医者になった場合の姿が容易に想像できていた。腕は悪くないが、患者をただ捌いていくだけの医者だ。しかし診療の過程で患者を一人の人間として敬えない者は、医者をやるべきではない。人にはそれぞれ心があり、それを敬えない医者は患者の心を不幸にする」
馬修にはなんとなく衛玄の言っていることが分かる気がした。
患者の中には病や傷が治っても、どこか不満そうな顔をしている人間もいる。そういう患者は衛玄が少し時間をかけて話すと、大抵は表情を明るくして帰ってくれるのだ。
本人の納得や満足はまた違うところにあるのかもしれないと馬修は感じていた。
「お前が今日提案してきたことは、患者を一人の人間として敬っていて初めて口にできることだ。お前がそんなふうに成長したのなら、私はお前を医者にしたいと思う」
「俺は、成長したんですか」
「ああ、成長した。叱ってくれたという知人のおかげだろう。感謝するのだな」
医師はそう言って、馬修の背中を強く叩いた。
叩かれた馬修は前につんのめりながら苦笑した。
(翠蘭に礼を言った方がいいのかな?でも……なんて言おう)
どうも翠蘭を前にすると、馬修は上手く言葉が出てこなかった。妙に舞い上がったり、ついぶっきらぼうな態度をとってしまったりする。
それに、翠蘭は翠蘭で馬修に対する態度がコロコロ変わるのだ。上から説教を垂れることもあれば、逆にこちらを立ててきたりもする。
その度に一喜一憂してしまう自分が嫌で、馬修は翠蘭のことを苦手にすら感じていた。
しかしそれでも会いたいと思うし、話したいと思うのだ。
(やっぱり……礼は言った方がいいよな)
それで一つ会話ができる、ということを無意識に思った馬修はそうすることに決めた。
そして礼の言葉を考えている時、診療所の玄関に駆け込んできた男がいた。
「衛玄先生、急患です!もうすぐ運ばれてきますからお願いします!」
その男はどうやら搬送に先立ち、走って知らせに来てくれたらしい。
衛玄は仕事柄こういう事態にも慣れているから、落ち着いた声で尋ねた。
「状態は分かるか?」
「顔を見たら卒中じゃないかって話でしたけど」
「症状や年齢は?」
「詳しい症状はちょっと……中年の男ですけど、なんでも高名な儒学者の先生らしいですよ」
0
お気に入りに追加
46
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
大和型戦艦4番艦 帝国から棄てられた船~古(いにしえ)の愛へ~
花田 一劫
歴史・時代
東北大地震が発生した1週間後、小笠原清秀と言う青年と長岡与一郎と言う老人が道路巡回車で仕事のために東北自動車道を走っていた。
この1週間、長岡は震災による津波で行方不明となっている妻(玉)のことを捜していた。この日も疲労困憊の中、老人の身体に異変が生じてきた。徐々に動かなくなる神経機能の中で、老人はあることを思い出していた。
長岡が青年だった頃に出会った九鬼大佐と大和型戦艦4番艦桔梗丸のことを。
~1941年~大和型戦艦4番艦111号(仮称:紀伊)は呉海軍工廠のドックで船を組み立てている作業の途中に、軍本部より工事中止及び船の廃棄の命令がなされたが、青木、長瀬と言う青年将校と岩瀬少佐の働きにより、大和型戦艦4番艦は廃棄を免れ、戦艦ではなく輸送船として生まれる(竣工する)ことになった。
船の名前は桔梗丸(船頭の名前は九鬼大佐)と決まった。
輸送船でありながらその当時最新鋭の武器を持ち、癖があるが最高の技量を持った船員達が集まり桔梗丸は戦地を切り抜け輸送業務をこなしてきた。
その桔梗丸が修理のため横須賀軍港に入港し、その時、長岡与一郎と言う新人が桔梗丸の船員に入ったが、九鬼船頭は遠い遥か遠い昔に長岡に会ったような気がしてならなかった。もしかして前世で会ったのか…。
それから桔梗丸は、兄弟艦の武蔵、信濃、大和の哀しくも壮絶な最後を看取るようになってしまった。
~1945年8月~日本国の降伏後にも関わらずソビエト連邦が非道極まりなく、満洲、朝鮮、北海道へ攻め込んできた。桔梗丸は北海道へ向かい疎開船に乗っている民間人達を助けに行ったが、小笠原丸及び第二号新興丸は既にソ連の潜水艦の攻撃の餌食になり撃沈され、泰東丸も沈没しつつあった。桔梗丸はソ連の潜水艦2隻に対し最新鋭の怒りの主砲を発砲し、見事に撃沈した。
この行為が米国及びソ連国から(ソ連国は日本の民間船3隻を沈没させ民間人1.708名を殺戮した行為は棚に上げて)日本国が非難され国際問題となろうとしていた。桔梗丸は日本国から投降するように強硬な厳命があったが拒否した。しかし、桔梗丸は日本国には弓を引けず無抵抗のまま(一部、ソ連機への反撃あり)、日本国の戦闘機の爆撃を受け、最後は無念の自爆を遂げることになった。
桔梗丸の船員のうち、意識のないまま小島(宮城県江島)に一人生き残された長岡は、「何故、私一人だけが。」と思い悩み、残された理由について、探しの旅に出る。その理由は何なのか…。前世で何があったのか。与一郎と玉の古の愛の行方は…。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
戦国の華と徒花
三田村優希(または南雲天音)
歴史・時代
武田信玄の命令によって、織田信長の妹であるお市の侍女として潜入した忍びの於小夜(おさよ)。
付き従う内にお市に心酔し、武田家を裏切る形となってしまう。
そんな彼女は人並みに恋をし、同じ武田の忍びである小十郎と夫婦になる。
二人を裏切り者と見做し、刺客が送られてくる。小十郎も柴田勝家の足軽頭となっており、刺客に怯えつつも何とか女児を出産し於奈津(おなつ)と命名する。
しかし頭領であり於小夜の叔父でもある新井庄助の命令で、於奈津は母親から引き離され忍びとしての英才教育を受けるために真田家へと送られてしまう。
悲嘆に暮れる於小夜だが、お市と共に悲運へと呑まれていく。
※拙作「異郷の残菊」と繋がりがありますが、単独で読んでも問題がございません
【他サイト掲載:NOVEL DAYS】
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
剣客居酒屋 草間の陰
松 勇
歴史・時代
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる