魔剣⚔葛根刀！〜漢方の力で世界を救うファンタジー〜

処方解説 桂枝湯

〈処方解説　桂枝湯〉

　衆方の祖、というカッケェ二つ名の付いている漢方薬です。

　本文の方でも触れた通り、この桂枝湯にさらなる生薬を加えていくことで他の様々な処方が出来上がります。

　桂枝湯自体は葛根湯や麻黄湯と同じく解表剤に分類されはしますが、発汗作用は強くないのですでに汗をかいている場合には良い適応となります。

　作用が比較的緩やかなため老人や虚弱者に向いていて、特にそういった人たちがしょっちゅう風邪をひく万年風邪と呼ばれる状態ならぜひ常備しておきたい漢方です。

　ジワッとしてブルッとしたらサッと飲む。それが桂枝湯です。

　ただし作用が強いとは言えないので、症状がひどい場合には他の処方を検討した方が良いでしょう。

　そんな解表剤としてはマイルドな桂枝湯ですが、じゃあどうやって効くのかというと、『調和営衛ちょうわえいえい』という作用によって体を支えます。（もちろん他にもあるんですが、それはアドバンス参照）

　この『営衛』とは『営気えいき』（栄養を巡らせる気）と『衛気えき』（病気の侵入を阻む気）の二つを合わせた呼び方で、古くからこれらが協調しあって健康が保たれていると考えられてきました。

　そして桂枝湯はこれらの和が崩れている状態を整えてくれます。両者が協調しないと上手く体が守れないのです。

　非常にざっくりとした認識になりますが、栄養と免疫の不和（営衛不和）を調和してくれる薬というイメージでしょうか。

　そう思えば様々な処方の基礎になる理由も分かりますよね。栄養と免疫なんて健康の二本柱みたいなものですから。


〈処方解説アドバンス〉

・生薬一つ一つをもう少し詳細に説明すると以下の通り。

「桂枝は気を温め鼓舞し、発汗解表し、営衛を調和させる」「芍薬は陰気を収斂し血脈を和す（血虚の治療）」「生姜と大棗は脾胃（消化機能）を補い、営衛を整える」「甘草は汗剤に入れば解肌・抗利尿作用で津液を保護する」

・漢方では気・血・水を重視するが、主として衛は気であり、営は血であるとされる。

・気が体の表層を巡ることで病邪の侵入を防ぎ、体表を温め、手足を動かし、発汗過多を抑え、止血する。

・血は体の内を巡ることで栄養を届け、筋骨を維持する。

・上記二点を合わせ『衛気営血』ともいい、協調して健康を維持していると考える。