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第九章【セントラル】
9-9 世界の明日へ捧ぐ
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そして、魔剣士たちがガンザン村を出発して間もなくした頃。
―――同時刻、セントラル地下実験場にて。
ブレイダー「……ふぅ!」
かつて魔剣士を追い続けていたブレイダーは、もはやセントラルにおける主軸の一人となっていた。
追い求める強さは果て無く、まるで狂気の如く殺しを快感として受け止める。
ブレイダー「……うん?」
ふと、その場所へ誰かの気配を感じる。
ブレイダー「おっとっと……」
狂気の殺戮者は、現れた"男"に対して慌てて頭を下げた。
これほどの強さと狂人たる者が頭を下げる相手、それこそ―――。
ハイル「……良い、頭を上げろ」
今、この瞬間。世界の王、覇王とも呼ばれた男、セントラルの王、それであった。
もっとも、世界を本当の意味で手に入れられる計画が整った現在において、その名を希望の十字架の意である"ハイル・クロイツ"と名乗っていたのだが。
ブレイダー「では、失礼して……」
ハイルの言葉に、ブレイダーは頭を上げる。
ハイル「……ブレイダーよ」
ブレイダー「は…」
ハイル「よく闇魔法を会得した。大勢の戦士たちが死に行く中で、お前だけが強さへの執念を持っていたということか」
ブレイダー「そんな、僕がここまで強くなるきっかけを与えてくれたことに大変感謝してますよ」
ハイル「直に軍は整う。お前はクロイツ軍を率いて、世界を掌握する象徴となる時は近い」
ブレイダー「ハハ、夢みたいな話ですよ。僕みたいなただのハンターにこんな……」
ハイル「夢では困るという話だ」
ブレイダー「……分かってますよ。その荒くれ者たちを支配するのも、また一興ですから」
ブレイダーが"くすり"と笑った、その時。
切り殺された山積みになった遺体の中から、一人、かろうじて息のあった男が剣を持って飛び出した。
「貴様らァァァッ!!」
大声を上げ、王へと突撃する男。その熟練された構えと動きから、相当な実力者であったことは伺えたの…だが。
ブレイダー「ちょっと待ってよ、話をしていたところなのに」
男に目線を向けるやいなや、男の両足は地面から生成された氷に飲み込まれ、二度目の睨みで両腕が氷結し、その動きの一切を封じる。
ハイル「おぉ……」
ブレイダー「人の話をしているときに割り込むと、モテないよお兄さん?」
男「ぐっ…!?」
ブレイダーは微笑みながら男の前でポンポンと頭を撫でる。
男「こ、この化け物が……!」
ブレイダー「うわっ、心外。別に人の生み出したもので手に入れた力だよ、化け物っていうことはないんじゃない?」
男「その力は人の命を引き換えに、俺の弟を引き換えに手に入れたものだろうが……!!ブレイダァァッ!!!」
ブレイダー「……あぁ!」
そう、実はこの男。ブレイダーに"闇魔力"を宿すきっかけとなった生命の幹を提供した魔術師の"兄"であった。
ブレイダー「話は聞いてるよ、最後まで君の名前を呼んでいたっけなぁ…。そう、確か……君はシンマっていったっけ?」
シンマ「貴様ぁぁっ!!!」
ブレイダー「仄かな光という名、嫌いじゃないよ」
シンマ「やかましい…!俺は貴様を殺し、我が弟の恨みを晴らす……!!」
ブレイダー「そんなこと言わないでよ。僕は弟さんに感謝してるんだ。こんな素晴らしい力を与えてくれたんだから」
シンマ「うるさい…!このくらいの氷など、どうってことはないっ!!!」
ブレイダー「ん……」
シンマは全身から熱を発し、氷結された両手両腕に張っていた氷塊を一気に溶かした。
ブレイダー「おっ…!」
シンマ「ブレイダー、覚悟しろォォォォッ!!」
剣に炎を宿し、ブレイダーめがけて振り下ろす。だが、その剣技は空を切って地へと落ちて火花を散らす。
シンマ「くっ!?」
ブレイダー「落ち着いてよ。君さぁ、僕の力を知ってて挑むの?」
シンマ「男には退けない戦いがあると…知らぬのかァァッ!!」
二度目の斬撃。しかし、またもや空を切る。
ブレイダー「あのさぁ、無駄に命を散らすことはないよね。今まで死体の山に隠れてたのも凄いと思うし、君が良ければクロイツ騎士団に入れてあげるよ?」
シンマ「うるさい…!うるさい、うるさいっ!!」
聞く耳はなく、三度目の斬撃を繰り出すが、意味はない。
ブレイダー「……仕方ないな」
ブレイダーは再び魔法を発する。先程と同じように、彼の両手両足を氷結させた。
シンマ「ぐっ、ぬっ!?こ、このくらいの氷は……!」
再び全身から熱を放出し、溶解させんとしたが、何故か二度目の氷は溶けることがなかった。
シンマ「な、何だと!?」
ブレイダー「無理無理。今度のは純度を上げたから、普通の魔法じゃ溶かせないよ」
シンマ「…ッ!!」
ブレイダー「さっきのはサービス。本当なら闇魔力には闇魔力じゃないと打ち勝てない。僕はすでに、唯一無二の存在なんだ」
シンマ「化け物めが……!」
ブレイダー「あのさ、僕が化け物なら君の弟クンも化け物だよね。この力は君の弟にもらったんだよ?」
シンマ「黙れ、黙れェェッ!!」
ブレイダー「吠えているほど見苦しいことはないよ。僕は今まで…く、屈辱的に見降ろされたことはあるけど、落ち着いていたものだったよ……?」
剣を交えた魔剣士、猛竜騎士の姿を思い出してわずかに顔をひきつらせた。
だが、そのわずかな一瞬が経験のあったシンマにとって突く隙となり、己を滅ぼすきっかけになる。
シンマ「ほぅ……」
ブレイダー「ん?」
シンマ「今、お前は動揺したな。俺には分かったぞ……」
ブレイダー「……え?」
シンマ「なるほど、お前はよっぽど負けるということが怖いらしいな……」
ブレイダー「何を言ってるんだい?」
シンマ「訳は知らぬが、貴様…負けたことをよっぽど根に持つ弱者らしいな…ククッ……!」
ブレイダー「変なことを…言わないでくれる……?」
シンマ「詳しいことは分からぬが、お前は負けたことがある。屈辱的に見降ろされたことに、とてつもない劣等感を覚えているんだな……!」
ブレイダー「……そ、そんなことはないよっ!」
はっきりとした動揺を見せるブレイダー。
シンマ「どうだ、お前は弱者ということだ…。雑魚が、敗北者が!!」
ブレイダー「僕は敗北者なんかじゃない…!黙れ……!」
シンマ「いーや、クソみてぇな劣等感に恐怖してんだろ、なぁ!!」
ブレイダー「それ以上を言うと……!」
"シンマ「負け犬が」"
ブレイダー「……っ!!」
その一言は、ブレイダーの負っていた傷を拡げるのに充分だった。
怒りのあまり、彼の氷結された両腕を瞬時に切り落とした。氷結された両腕は、床にたたきつけられた衝撃で粉々に砕け散る。
シンマ「クク、両腕なんぞ持っていけ!!貴様がクソ負け犬だということを分かったことが、弟へ伝えるいい冥土への土産だ!!」
氷結された腕を切り落とされても、痛みはない。どうせ死を覚悟していたことに、恐怖もない。
ブレイダー「そんなに…死にたいらしいね……!」
シンマ「負け犬が、バカめが……」
ブレイダー「ッ!!」
続いて、片脚。体勢を整えられなくなったシンマは氷結された片足のみ、まるで駒のような状態となっても、その眼に宿った炎は消えることはない。
ブレイダー「……強がりばかりいうから、そうなるんだよ。みっともない、両腕なし、片足だけのオブジェ。まるで…人間駒だね、アハハッ!」
シンマ「フン…。例えどうなろうと、貴様が負け犬には…変わりないんだろう……?」
挑発は終わらない。肉体的に痛みを与えられないのなら、心への傷を突く。
そして、果てぬ執念の言葉はブレイダーにとって予想外なダメージがあった。
ブレイダー「まだ、言うのか……!」
最後の、片足を切り落とされる。すでに、五体も無い、表現すら悍ましいような状態である。
ブレイダー「どう、気分は。最高じゃない……?」
それを見降ろし、ブレイダーは頭を足で踏みつける。屈辱には屈辱を。屈服させるまで。
ブレイダー「さぁ、僕に謝れ。僕なら、君が本気で泣いて屈服したら特別に……」
―――しかし。
シンマ「……フハハハハッ!!!」
シンマは、笑った。
ブレイダー「……え?」
シンマ「バカめがと…言っているだろう……!」
ブレイダー「今、なんて…?」
シンマ「た…例え!例え両手両足がなくとも……。貴様に噛みつける、頭がある……!」
ブレイダー「いい加減に……」
シンマ「負け犬野郎……」
ブレイダー「……しろよぉぉっ!!」
ついに、最後の太刀が振り下ろされた。呆気なく死を迎えたシンマであったが、その表情は優秀たる戦士の証か、恐怖よりも優しさに満ちていた。
ブレイダー「はぁ…はぁ…………!」
一方、最後まで彼を屈服させられなかったブレイダーは、肩で息をするほど荒れ、どちらが勝者であったか分かったものではない。
それを見ていたハイルは、当然ながら問いかける。
ハイル「……ブレイダーよ」
ブレイダー「なんでしょうか、王……!あ、いや…お見苦しい姿を……!」
ハイル「よく知らなんだが、お前は…何をそんなに恐れている?」
ブレイダー「お、恐れている!?僕が!?」
ハイル「正直になれ。そのままでは、お前にクロイツ騎士団を託すことは出来ぬ」
ブレイダー「なっ…!ぼ、僕は何も恐れてなどいない!」
ハイル「ワシを誰だと思っている」
ブレイダー「だ、誰だって…!」
ハイル「貴様の目や行動を見れば、それが虚であり、あの死に行った男の言葉が全て本当であったことが誰でも分かるぞ……?」
ブレイダー「……ッ!」
殺してしまえば楽な話だろうと思うかもしれないが、支配者は武力だけでなるものではない。
自分に持っていない、いわゆる"帝王学"。彼を殺しても自分に着いてくる人間はいないということは分かっている。
ブレイダー「み、認め…ます……」
だから、認める他はない。どんなに悔しかろうとも、"今は、まだ"。
ハイル「ふむ……」
きっと、この考えも読まれているのだろうが。
ブレイダー「認めます。自分は、恐怖……している。いえ、恐怖というよりは屈辱を……」
ハイル「何があった」
ブレイダー「そ、それは……」
ハイル「話せ」
ブレイダー「くっ……!そ、それは…その……魔剣士と猛竜騎士という男に……」
ハイル「……何!待て!」
ハイルの顔色が変わる。それも当然、知っている名だからだ。
ハイル「魔剣士…だと……!」
ブレイダー「えぇ、そうです……。王もご存知かと……」
ハイル「その名はよく知っている……。ワシに汚点を付けたあの男か……!!」
ブレイダー「そうです……」
ハイル「おのれ、まさかその名をまた聞くことになるとは……!!」
ブレイダー「今はどこで何をしているのか、分かりませんが…」
ハイル「裏切り者の姫と共に、どこぞで死んでいるに違いないだろう!今はアイツらを追うことより、覇権が先であるがな!」
ブレイダー(……え?)
ハイルに気付かれぬくらいの、小さい反応をする。
ブレイダー(……のたれ死ぬ?彼らが?)
有り得ない話だと思った。猛竜騎士のような歴戦の冒険者がいて、倒れることはないはずだ。
仮にも自分を倒した相手であること、魔剣士の強さは成長途中だったこと、そもそもハンターに狩られていたらとっくにセントラルに首が運ばれているだろうということ。
ブレイダー「彼らが死ぬ…そうは思えませんが……」
ハイル「……フン!今はどうでも良いわ!今のお前に敵はいない。闇魔術師バーサーカーの始祖として、活躍すればいいだけのことだ」
ブレイダー「願えることなら…この手で彼らを滅したかったと思いますけどね……」
ハイル「世界を手に入れてから。アイツらを炙り出してからでも遅くはないだろう」
ブレイダー「えぇ、まぁ……」
この時、まだ二人は知らなかった。
本当の始祖と呼ぶべきはブレイダーではなく、アサシンであったこと。そして、その力を受け継いだ本当の二代目がいることを。
ブレイダー「……しかし、少し不思議なことがありまして」
ふと、ブレイダーは"力"の話題であることを思い出す。
ハイル「なんだ?」
ブレイダー「この闇の力、確かに無造作たる魔力を持ち合わせてはいるのですが、まだ何か…奥底に秘密があるような気がするんです」
ハイル「秘密だと?」
ブレイダー「どうにも、これだけで秘術師と呼ぶには余りにも貧弱。故に、隠された秘密があるんじゃないかと…そう……」
ハイル「通常の魔力と異なる、闇魔法。無造作に生み出されるそれは、敵などいないはずだ」
ブレイダー「そうです…よね……」
―――違う。
この二人は、闇魔法にレベルが存在していることも知らない。
全てを魔法を無に帰す"絶対領域"と呼ぶオーラの存在、魔法と一体化する究極の秘術"魔法化"の存在。
勿論、セージはオーラの情報を既に知っていたが、漏らすことはなかった。少なくとも、ブレイダーは何かを感じ取っているようではあったが。
ハイル「……どこか納得のいかない様子だな。貴様、何かを感じているのか?」
ブレイダー「あ、その……」
ハイル「素直に申せ」
ブレイダー「あ、いえ……。やっぱり少し、違和感というか、まだ成長できるような何かを感じてというか……」
ハイル「……ワシは闇魔法を会得しているわけではない。お前の違和感がワシに反抗するほどに感じるのならば、そうなのかもしれぬ」
王も無知ではない。体感している人間がそう言っているのならば、自分に分からない感覚があるのだと信じた。
ブレイダー「はい…、少し…感じています……」
ハイル「……フン、ならば丁度良い。そういうことだったか」
ブレイダー「…はい?」
ハイル「もうお前の実力が成熟しきっていると思ってな、次のクロイツ騎士団で最後の募集にしようとしていたのだ」
ブレイダー「それが、丁度いいことなのですか?」
ハイル「話は最後まで聞け。それで、これからの計画は知っているな?」
ブレイダー「まぁ、それは……」
ブレイダーを象徴として、クロイツ騎士団を利用して世界へ宣戦布告を行い、強襲。圧倒的な実力を用いて世界戦争の中で有利に進めて恐怖による世界絶対政治、絶対統治を行う計画のことだ。
ハイル「念には念を入れ、我が国の最大の敵になる可能性がある相手に敵を送り込むことは必須であろう?」
ブレイダー「そりゃそうですけど、それが僕のこの感覚と何の関係が……?」
ハイル「さて、な…。ワシが全てを信じると思うな。クク……」
ブレイダー「一体何を言って……」
ハイル「氷山帝国のマスターめ、セージといったか。あの女、とんでもない食わせ者よ」
ブレイダー「食わせ者、ですか」
ハイル「頭が切れる。故に、恐らくは気づいている。だが、遅い。先に死んでもらうだけよ……」
ブレイダー「まさか、刺客……!」
ハイル「さぁ、どうだかな。しかし、ワシはあいつが何か隠し事をしていると思っていたのは事実。教えられる情報が、どこか作為的に感じていた」
ブレイダー「ま、まさか……!」
ハイル「正解ではないかもしれぬ。だが、どうにも引っかかる。そしてお前の話、今回の話はそれと繋がるのではないかと…そう感じたのだ」
ブレイダー「なるほど……」
ハイル「もうじき、それを知る人間が来るはずだ。もちろん、セージの首を狙う刺客も送ってはある……」
ブレイダー「さすが王だ。抜け目がない……」
つまり、ブレイダーが感じている違和感と、ハイルが感じていた"何かを隠しているように思えた違和感"は、一致するのではないかということだ。
また、その情報を握る者、セージを消す者、それぞれが動いていた。
ハイル「ともかく、この募集が終われば世界への宣戦布告に動き出す。お前もそれに備えて励むことだ」
ブレイダー「分かりました」
ハイル「クク、もうすぐだ……、もうすぐ…………」
―――全ての準備は整った。
いよいよセントラル側は覇王"ハイル・クロイツ"が率いる、闇魔術師"ブレイダー"を筆頭にした腕利きの冒険者たちで成り立つ"クロイツ騎士団"が結成されることになる。
闇魔術師の誕生、クロイツ騎士団の結成、敵となり得る氷山帝国への刺客、隠された秘密を握るスパイ。
ハイルはあらゆる方向から、この世界掌握を成功させるために動いたと言える。
だが、それに対抗せんと動く者たちの存在がある。
それこそ、氷山帝国の"マスター・セージ"率いる裏の制約で結ばれた者たち、言うなれば世界レベルで動くレジスタンス軍である。
指導者セージ、世界踏破を経験した猛竜騎士、武装国家"砂国"の共同戦線協定によって結成されるアイスサンド連合軍。
それに何よりも心強い味方となるのは、バーサーカーとして覚醒した魔剣士と、戦後の希望となるであろう"白姫"の存在。
しかし、このまま戦争になればクロイツ騎士団とアイスサンド連合軍の戦いは世界規模となることは必須。大勢の命が奪われる事態となる。
それこそハイルの思うつぼとなる話であるが、それを阻止すべく、ただ今は魔剣士たちはセントラルの目の前まで足を運んでいた。
―――そう。
猛竜騎士とセージはこの状況を理解しているからこそ、裏切る者がいなければと、願うばかりだった。
この戦いは、どこへ向かうのか。
魔剣士たちがセントラルへ到着するまで、あと…"一日"。
それは、たまたまのことだろうが、クロイツ騎士団の最終選考と同じ日であったことは、何かの運だったのかもしれない。
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ブリレイ「……はて、さて」
魔剣士「ん?」
ブリレイ「あ、いえ…。何でもありませんよ……。何でも……」
白姫「ブリレイさん…?」
ブリレイ「世界の行く末が、どのような結果であろうとも、それは天の決めたこと…となるのでしょうかね」
猛竜騎士「…」
…………
……
…
そして、魔剣士たちがガンザン村を出発して間もなくした頃。
―――同時刻、セントラル地下実験場にて。
ブレイダー「……ふぅ!」
かつて魔剣士を追い続けていたブレイダーは、もはやセントラルにおける主軸の一人となっていた。
追い求める強さは果て無く、まるで狂気の如く殺しを快感として受け止める。
ブレイダー「……うん?」
ふと、その場所へ誰かの気配を感じる。
ブレイダー「おっとっと……」
狂気の殺戮者は、現れた"男"に対して慌てて頭を下げた。
これほどの強さと狂人たる者が頭を下げる相手、それこそ―――。
ハイル「……良い、頭を上げろ」
今、この瞬間。世界の王、覇王とも呼ばれた男、セントラルの王、それであった。
もっとも、世界を本当の意味で手に入れられる計画が整った現在において、その名を希望の十字架の意である"ハイル・クロイツ"と名乗っていたのだが。
ブレイダー「では、失礼して……」
ハイルの言葉に、ブレイダーは頭を上げる。
ハイル「……ブレイダーよ」
ブレイダー「は…」
ハイル「よく闇魔法を会得した。大勢の戦士たちが死に行く中で、お前だけが強さへの執念を持っていたということか」
ブレイダー「そんな、僕がここまで強くなるきっかけを与えてくれたことに大変感謝してますよ」
ハイル「直に軍は整う。お前はクロイツ軍を率いて、世界を掌握する象徴となる時は近い」
ブレイダー「ハハ、夢みたいな話ですよ。僕みたいなただのハンターにこんな……」
ハイル「夢では困るという話だ」
ブレイダー「……分かってますよ。その荒くれ者たちを支配するのも、また一興ですから」
ブレイダーが"くすり"と笑った、その時。
切り殺された山積みになった遺体の中から、一人、かろうじて息のあった男が剣を持って飛び出した。
「貴様らァァァッ!!」
大声を上げ、王へと突撃する男。その熟練された構えと動きから、相当な実力者であったことは伺えたの…だが。
ブレイダー「ちょっと待ってよ、話をしていたところなのに」
男に目線を向けるやいなや、男の両足は地面から生成された氷に飲み込まれ、二度目の睨みで両腕が氷結し、その動きの一切を封じる。
ハイル「おぉ……」
ブレイダー「人の話をしているときに割り込むと、モテないよお兄さん?」
男「ぐっ…!?」
ブレイダーは微笑みながら男の前でポンポンと頭を撫でる。
男「こ、この化け物が……!」
ブレイダー「うわっ、心外。別に人の生み出したもので手に入れた力だよ、化け物っていうことはないんじゃない?」
男「その力は人の命を引き換えに、俺の弟を引き換えに手に入れたものだろうが……!!ブレイダァァッ!!!」
ブレイダー「……あぁ!」
そう、実はこの男。ブレイダーに"闇魔力"を宿すきっかけとなった生命の幹を提供した魔術師の"兄"であった。
ブレイダー「話は聞いてるよ、最後まで君の名前を呼んでいたっけなぁ…。そう、確か……君はシンマっていったっけ?」
シンマ「貴様ぁぁっ!!!」
ブレイダー「仄かな光という名、嫌いじゃないよ」
シンマ「やかましい…!俺は貴様を殺し、我が弟の恨みを晴らす……!!」
ブレイダー「そんなこと言わないでよ。僕は弟さんに感謝してるんだ。こんな素晴らしい力を与えてくれたんだから」
シンマ「うるさい…!このくらいの氷など、どうってことはないっ!!!」
ブレイダー「ん……」
シンマは全身から熱を発し、氷結された両手両腕に張っていた氷塊を一気に溶かした。
ブレイダー「おっ…!」
シンマ「ブレイダー、覚悟しろォォォォッ!!」
剣に炎を宿し、ブレイダーめがけて振り下ろす。だが、その剣技は空を切って地へと落ちて火花を散らす。
シンマ「くっ!?」
ブレイダー「落ち着いてよ。君さぁ、僕の力を知ってて挑むの?」
シンマ「男には退けない戦いがあると…知らぬのかァァッ!!」
二度目の斬撃。しかし、またもや空を切る。
ブレイダー「あのさぁ、無駄に命を散らすことはないよね。今まで死体の山に隠れてたのも凄いと思うし、君が良ければクロイツ騎士団に入れてあげるよ?」
シンマ「うるさい…!うるさい、うるさいっ!!」
聞く耳はなく、三度目の斬撃を繰り出すが、意味はない。
ブレイダー「……仕方ないな」
ブレイダーは再び魔法を発する。先程と同じように、彼の両手両足を氷結させた。
シンマ「ぐっ、ぬっ!?こ、このくらいの氷は……!」
再び全身から熱を放出し、溶解させんとしたが、何故か二度目の氷は溶けることがなかった。
シンマ「な、何だと!?」
ブレイダー「無理無理。今度のは純度を上げたから、普通の魔法じゃ溶かせないよ」
シンマ「…ッ!!」
ブレイダー「さっきのはサービス。本当なら闇魔力には闇魔力じゃないと打ち勝てない。僕はすでに、唯一無二の存在なんだ」
シンマ「化け物めが……!」
ブレイダー「あのさ、僕が化け物なら君の弟クンも化け物だよね。この力は君の弟にもらったんだよ?」
シンマ「黙れ、黙れェェッ!!」
ブレイダー「吠えているほど見苦しいことはないよ。僕は今まで…く、屈辱的に見降ろされたことはあるけど、落ち着いていたものだったよ……?」
剣を交えた魔剣士、猛竜騎士の姿を思い出してわずかに顔をひきつらせた。
だが、そのわずかな一瞬が経験のあったシンマにとって突く隙となり、己を滅ぼすきっかけになる。
シンマ「ほぅ……」
ブレイダー「ん?」
シンマ「今、お前は動揺したな。俺には分かったぞ……」
ブレイダー「……え?」
シンマ「なるほど、お前はよっぽど負けるということが怖いらしいな……」
ブレイダー「何を言ってるんだい?」
シンマ「訳は知らぬが、貴様…負けたことをよっぽど根に持つ弱者らしいな…ククッ……!」
ブレイダー「変なことを…言わないでくれる……?」
シンマ「詳しいことは分からぬが、お前は負けたことがある。屈辱的に見降ろされたことに、とてつもない劣等感を覚えているんだな……!」
ブレイダー「……そ、そんなことはないよっ!」
はっきりとした動揺を見せるブレイダー。
シンマ「どうだ、お前は弱者ということだ…。雑魚が、敗北者が!!」
ブレイダー「僕は敗北者なんかじゃない…!黙れ……!」
シンマ「いーや、クソみてぇな劣等感に恐怖してんだろ、なぁ!!」
ブレイダー「それ以上を言うと……!」
"シンマ「負け犬が」"
ブレイダー「……っ!!」
その一言は、ブレイダーの負っていた傷を拡げるのに充分だった。
怒りのあまり、彼の氷結された両腕を瞬時に切り落とした。氷結された両腕は、床にたたきつけられた衝撃で粉々に砕け散る。
シンマ「クク、両腕なんぞ持っていけ!!貴様がクソ負け犬だということを分かったことが、弟へ伝えるいい冥土への土産だ!!」
氷結された腕を切り落とされても、痛みはない。どうせ死を覚悟していたことに、恐怖もない。
ブレイダー「そんなに…死にたいらしいね……!」
シンマ「負け犬が、バカめが……」
ブレイダー「ッ!!」
続いて、片脚。体勢を整えられなくなったシンマは氷結された片足のみ、まるで駒のような状態となっても、その眼に宿った炎は消えることはない。
ブレイダー「……強がりばかりいうから、そうなるんだよ。みっともない、両腕なし、片足だけのオブジェ。まるで…人間駒だね、アハハッ!」
シンマ「フン…。例えどうなろうと、貴様が負け犬には…変わりないんだろう……?」
挑発は終わらない。肉体的に痛みを与えられないのなら、心への傷を突く。
そして、果てぬ執念の言葉はブレイダーにとって予想外なダメージがあった。
ブレイダー「まだ、言うのか……!」
最後の、片足を切り落とされる。すでに、五体も無い、表現すら悍ましいような状態である。
ブレイダー「どう、気分は。最高じゃない……?」
それを見降ろし、ブレイダーは頭を足で踏みつける。屈辱には屈辱を。屈服させるまで。
ブレイダー「さぁ、僕に謝れ。僕なら、君が本気で泣いて屈服したら特別に……」
―――しかし。
シンマ「……フハハハハッ!!!」
シンマは、笑った。
ブレイダー「……え?」
シンマ「バカめがと…言っているだろう……!」
ブレイダー「今、なんて…?」
シンマ「た…例え!例え両手両足がなくとも……。貴様に噛みつける、頭がある……!」
ブレイダー「いい加減に……」
シンマ「負け犬野郎……」
ブレイダー「……しろよぉぉっ!!」
ついに、最後の太刀が振り下ろされた。呆気なく死を迎えたシンマであったが、その表情は優秀たる戦士の証か、恐怖よりも優しさに満ちていた。
ブレイダー「はぁ…はぁ…………!」
一方、最後まで彼を屈服させられなかったブレイダーは、肩で息をするほど荒れ、どちらが勝者であったか分かったものではない。
それを見ていたハイルは、当然ながら問いかける。
ハイル「……ブレイダーよ」
ブレイダー「なんでしょうか、王……!あ、いや…お見苦しい姿を……!」
ハイル「よく知らなんだが、お前は…何をそんなに恐れている?」
ブレイダー「お、恐れている!?僕が!?」
ハイル「正直になれ。そのままでは、お前にクロイツ騎士団を託すことは出来ぬ」
ブレイダー「なっ…!ぼ、僕は何も恐れてなどいない!」
ハイル「ワシを誰だと思っている」
ブレイダー「だ、誰だって…!」
ハイル「貴様の目や行動を見れば、それが虚であり、あの死に行った男の言葉が全て本当であったことが誰でも分かるぞ……?」
ブレイダー「……ッ!」
殺してしまえば楽な話だろうと思うかもしれないが、支配者は武力だけでなるものではない。
自分に持っていない、いわゆる"帝王学"。彼を殺しても自分に着いてくる人間はいないということは分かっている。
ブレイダー「み、認め…ます……」
だから、認める他はない。どんなに悔しかろうとも、"今は、まだ"。
ハイル「ふむ……」
きっと、この考えも読まれているのだろうが。
ブレイダー「認めます。自分は、恐怖……している。いえ、恐怖というよりは屈辱を……」
ハイル「何があった」
ブレイダー「そ、それは……」
ハイル「話せ」
ブレイダー「くっ……!そ、それは…その……魔剣士と猛竜騎士という男に……」
ハイル「……何!待て!」
ハイルの顔色が変わる。それも当然、知っている名だからだ。
ハイル「魔剣士…だと……!」
ブレイダー「えぇ、そうです……。王もご存知かと……」
ハイル「その名はよく知っている……。ワシに汚点を付けたあの男か……!!」
ブレイダー「そうです……」
ハイル「おのれ、まさかその名をまた聞くことになるとは……!!」
ブレイダー「今はどこで何をしているのか、分かりませんが…」
ハイル「裏切り者の姫と共に、どこぞで死んでいるに違いないだろう!今はアイツらを追うことより、覇権が先であるがな!」
ブレイダー(……え?)
ハイルに気付かれぬくらいの、小さい反応をする。
ブレイダー(……のたれ死ぬ?彼らが?)
有り得ない話だと思った。猛竜騎士のような歴戦の冒険者がいて、倒れることはないはずだ。
仮にも自分を倒した相手であること、魔剣士の強さは成長途中だったこと、そもそもハンターに狩られていたらとっくにセントラルに首が運ばれているだろうということ。
ブレイダー「彼らが死ぬ…そうは思えませんが……」
ハイル「……フン!今はどうでも良いわ!今のお前に敵はいない。闇魔術師バーサーカーの始祖として、活躍すればいいだけのことだ」
ブレイダー「願えることなら…この手で彼らを滅したかったと思いますけどね……」
ハイル「世界を手に入れてから。アイツらを炙り出してからでも遅くはないだろう」
ブレイダー「えぇ、まぁ……」
この時、まだ二人は知らなかった。
本当の始祖と呼ぶべきはブレイダーではなく、アサシンであったこと。そして、その力を受け継いだ本当の二代目がいることを。
ブレイダー「……しかし、少し不思議なことがありまして」
ふと、ブレイダーは"力"の話題であることを思い出す。
ハイル「なんだ?」
ブレイダー「この闇の力、確かに無造作たる魔力を持ち合わせてはいるのですが、まだ何か…奥底に秘密があるような気がするんです」
ハイル「秘密だと?」
ブレイダー「どうにも、これだけで秘術師と呼ぶには余りにも貧弱。故に、隠された秘密があるんじゃないかと…そう……」
ハイル「通常の魔力と異なる、闇魔法。無造作に生み出されるそれは、敵などいないはずだ」
ブレイダー「そうです…よね……」
―――違う。
この二人は、闇魔法にレベルが存在していることも知らない。
全てを魔法を無に帰す"絶対領域"と呼ぶオーラの存在、魔法と一体化する究極の秘術"魔法化"の存在。
勿論、セージはオーラの情報を既に知っていたが、漏らすことはなかった。少なくとも、ブレイダーは何かを感じ取っているようではあったが。
ハイル「……どこか納得のいかない様子だな。貴様、何かを感じているのか?」
ブレイダー「あ、その……」
ハイル「素直に申せ」
ブレイダー「あ、いえ……。やっぱり少し、違和感というか、まだ成長できるような何かを感じてというか……」
ハイル「……ワシは闇魔法を会得しているわけではない。お前の違和感がワシに反抗するほどに感じるのならば、そうなのかもしれぬ」
王も無知ではない。体感している人間がそう言っているのならば、自分に分からない感覚があるのだと信じた。
ブレイダー「はい…、少し…感じています……」
ハイル「……フン、ならば丁度良い。そういうことだったか」
ブレイダー「…はい?」
ハイル「もうお前の実力が成熟しきっていると思ってな、次のクロイツ騎士団で最後の募集にしようとしていたのだ」
ブレイダー「それが、丁度いいことなのですか?」
ハイル「話は最後まで聞け。それで、これからの計画は知っているな?」
ブレイダー「まぁ、それは……」
ブレイダーを象徴として、クロイツ騎士団を利用して世界へ宣戦布告を行い、強襲。圧倒的な実力を用いて世界戦争の中で有利に進めて恐怖による世界絶対政治、絶対統治を行う計画のことだ。
ハイル「念には念を入れ、我が国の最大の敵になる可能性がある相手に敵を送り込むことは必須であろう?」
ブレイダー「そりゃそうですけど、それが僕のこの感覚と何の関係が……?」
ハイル「さて、な…。ワシが全てを信じると思うな。クク……」
ブレイダー「一体何を言って……」
ハイル「氷山帝国のマスターめ、セージといったか。あの女、とんでもない食わせ者よ」
ブレイダー「食わせ者、ですか」
ハイル「頭が切れる。故に、恐らくは気づいている。だが、遅い。先に死んでもらうだけよ……」
ブレイダー「まさか、刺客……!」
ハイル「さぁ、どうだかな。しかし、ワシはあいつが何か隠し事をしていると思っていたのは事実。教えられる情報が、どこか作為的に感じていた」
ブレイダー「ま、まさか……!」
ハイル「正解ではないかもしれぬ。だが、どうにも引っかかる。そしてお前の話、今回の話はそれと繋がるのではないかと…そう感じたのだ」
ブレイダー「なるほど……」
ハイル「もうじき、それを知る人間が来るはずだ。もちろん、セージの首を狙う刺客も送ってはある……」
ブレイダー「さすが王だ。抜け目がない……」
つまり、ブレイダーが感じている違和感と、ハイルが感じていた"何かを隠しているように思えた違和感"は、一致するのではないかということだ。
また、その情報を握る者、セージを消す者、それぞれが動いていた。
ハイル「ともかく、この募集が終われば世界への宣戦布告に動き出す。お前もそれに備えて励むことだ」
ブレイダー「分かりました」
ハイル「クク、もうすぐだ……、もうすぐ…………」
―――全ての準備は整った。
いよいよセントラル側は覇王"ハイル・クロイツ"が率いる、闇魔術師"ブレイダー"を筆頭にした腕利きの冒険者たちで成り立つ"クロイツ騎士団"が結成されることになる。
闇魔術師の誕生、クロイツ騎士団の結成、敵となり得る氷山帝国への刺客、隠された秘密を握るスパイ。
ハイルはあらゆる方向から、この世界掌握を成功させるために動いたと言える。
だが、それに対抗せんと動く者たちの存在がある。
それこそ、氷山帝国の"マスター・セージ"率いる裏の制約で結ばれた者たち、言うなれば世界レベルで動くレジスタンス軍である。
指導者セージ、世界踏破を経験した猛竜騎士、武装国家"砂国"の共同戦線協定によって結成されるアイスサンド連合軍。
それに何よりも心強い味方となるのは、バーサーカーとして覚醒した魔剣士と、戦後の希望となるであろう"白姫"の存在。
しかし、このまま戦争になればクロイツ騎士団とアイスサンド連合軍の戦いは世界規模となることは必須。大勢の命が奪われる事態となる。
それこそハイルの思うつぼとなる話であるが、それを阻止すべく、ただ今は魔剣士たちはセントラルの目の前まで足を運んでいた。
―――そう。
猛竜騎士とセージはこの状況を理解しているからこそ、裏切る者がいなければと、願うばかりだった。
この戦いは、どこへ向かうのか。
魔剣士たちがセントラルへ到着するまで、あと…"一日"。
それは、たまたまのことだろうが、クロイツ騎士団の最終選考と同じ日であったことは、何かの運だったのかもしれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブリレイ「……はて、さて」
魔剣士「ん?」
ブリレイ「あ、いえ…。何でもありませんよ……。何でも……」
白姫「ブリレイさん…?」
ブリレイ「世界の行く末が、どのような結果であろうとも、それは天の決めたこと…となるのでしょうかね」
猛竜騎士「…」
…………
……
…
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