魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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第七章【氷山帝国】

7-8 面倒な錬金術店

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………………………………………………
―――30分後。
魔剣士と白姫は、幾度かのラインとおぼしき警備詰所を越えたところで"B"と表記される看板と、多くの店が立ち並ぶ市場へと足を運んだ。やはり市場ということで多くの人で賑わっており、さすがに天候からオープンカフェのような並びはなかったが、それでも掲げられている旗や看板に記載されているマークから様々なお店があることが伺える。
……尚、二人は自然と手を繋いでいたのだが、これは「お前とはぐれない為だ!」と言っていたので気にするところではない。

白姫「ふわぁ~!いっぱいお店があるよ~!」
魔剣士「氷山帝国の商業区っつってたし、やっぱ店も多いな」
白姫「見たことのない看板もあるね?」
魔剣士「アルケミスト…錬金道具の専門店か。面白そうだな」
白姫「そっか、魔法研究が凄いからかぁ」
魔剣士「入ってみるか?」
白姫「うん、ちょっと見てみたい!」
魔剣士「おう」

二人は大通り沿いに面している錬金術の看板を出しているお店のドアを開いた。

魔剣士「どんな感じなのかね」
白姫「わくわく♪」

中に入ると、内装はやや古びた感じの印象で、ガラスのショーケースにいくつかの錬金器具は並んでいたが、それ以外は木造の棚などの余り"氷山帝国"らしい特別な仕様ではなかった。

魔剣士「ふむ、なんか思ってたより普通だな」
白姫「並んでる道具は見たことないのが多いけど、特別って感じはしないね?」
魔剣士「やっぱB区の店だとこのレベルが平均なのかね」
白姫「うーん?」

錬金器具を扱う店といっても、どれも特別なわけではないのだろうか。入ってすぐにお店に対し、大変な失礼を話をしていたのだが、店主がのそっと不機嫌そうな顔で現れたのはその直後だった。
「古くて汚くて悪かっですね、オイ」
店主は低い声で、二人を睨みながら「汚いお店へようこそ」と嫌味のように口を開いた。服装は白いフード付きのダブっとした魔法使いをイメージさせるそれであったものの、奥で作業をしていたのか黒く汚れている部分が非常に目立っていた。

魔剣士「あっ」
白姫「あっ」

彼の胸には、ほつれそうになった"ALC"との小さな名札がプラプラとしており、そこから彼の名前が"アルク"であることが分かった白姫はすぐに頭を下げた。

白姫「あ、アルクさんごめんなさい!」
アルク「ん、俺の知り合いでしたっけ?」
白姫「え?」
アルク「……ん、なんで俺の名前を」
白姫「…え?」
アルク「…ん?」
白姫「……名札があったので」
アルク「名札?」
白姫「はい、そこです」

白姫は、彼の胸を指差す。

アルク「……ぬおっ!なんだこりゃあ!?」
魔剣士「自分で着けたんじゃねーの」
アルク「こんなダサいの着けないっての…!なんだぁ、アイツが勝手に着けたのか!」
魔剣士「アイツとか言われても知らないっつーの」
アルク「……勝手に外したらまた怒られるしな。まぁいいか」
魔剣士「そ、そうか」
アルク「まぁしゃあねえか…。んで、いらっしゃいませ~お二人さん。何用ですかね?」
魔剣士「いや…用っていうかただ入ったというか」
アルク「……なるほど。じゃ、ごゆっくりどうぞ」
魔剣士「うむ……」

何だかマイペースというか、アルクという男はどこか不思議な雰囲気を感じさせた。店主であるはずなのに、接客にまるで興味がないというか……。

魔剣士「店主なのにやる気ないのも珍しいなオイ」
アルク「ん…」
魔剣士「客が来ても、やる気なさすぎだろ!」
アルク「やる気がないというか、眠くて…悪いね……」

大きく欠伸をするアルク。

魔剣士「なんだコイツは……」

よく見ると、アルクは年老いていたものの、体系も顔も整ったいわゆる"ハンサム"を思い浮かべるような男だったのだが、やる気のなさと彼が出す空気はどこかだらけており、魔剣士は見ているだけでイラっとした様子だった。

魔剣士「もっときちんと接客できねーのか!」
アルク「……ん、服屋が好きなのか?」
魔剣士「どうしてそうなる!?」
アルク「ほら、服屋だと見てるだけで店員が"こちらもどうぞ~"とかって言うだろ。ああいうの邪魔じゃない?」
魔剣士「確かに邪魔だが」
アルク「ハハッ、そういうこと」
魔剣士「意味分からん!?」
アルク「察して」
魔剣士「何を!?」

言わんとすることは分かるが、ボケっとした態度にいい加減イライラする。魔剣士は更に喧嘩腰になろうとした時、白姫はあるものを見つけて"あっ"と声を上げた。

魔剣士「ん…どうした」
白姫「これ何ですか!?かっこい~!」
アルク「はいはい、えーっと…?」

白姫が見つけたのは、銀色の小さい箱のような、いわゆるライターのようなものだった。

アルク「属性の着火ライター、だね」
白姫「ちゃっからいたーですか?」
アルク「うんむ、武器に任意の属性を付与できるライターっすな。買いますかい?」
魔剣士「いらねぇよ」
アルク「あら…」
魔剣士「そんなのなくても武器に属性付与は出来る。いらねぇっての」
アルク「ふむ…そうですか」
魔剣士「品揃えが悪い!」

アルク「意外とイイつもりなんですがね…」
アルク「それに、ここはB区。見たところ冒険者のようだし、ここ以上は特級準区なんで入れないですよ」
アルク「D区以下も店はあることにありますが、警備も疎かで治安も悪く、オススメはしないですがね」

魔剣士「…警備もない?」
アルク「うんむ、D区がぎりぎりかねぇ。E以下はそもそも人権も与えられてないに等しく、治療院ですら受けられる状況じゃないからな…」
魔剣士「……何だって?」
白姫「えっ…」

デジャヴ、既視感。魔剣士の母親が亡くなった原因のそれに等しかった。

アルク「……ずいぶんと怖い眼をする。何かあったのかね」
魔剣士「うっ…!」
アルク「お兄さんが相談に乗ってあげようか」
魔剣士「……ちっ!余計な世話だ!」
アルク「おっと申し訳ない。出過ぎたマネをしたか」
魔剣士「つーか、このお店は特に良いモンなし!出るぞ白姫!」
白姫「え、あっ!うんっ……」
魔剣士「こんな腑抜けた接客野郎の場所にいられるかよ。他の店だ他の店」
白姫「う、うん…。それじゃ、早いですけど有難うございました!」
アルク「はいはーい。また~…」

手を引っ張られ出ていく白姫に、アルクは手をぷらぷらとして見送った。そして、彼らの姿が街中へ消えて行ったのを見計らい裏での作業へと戻ろうとした時、また、お店の扉が開いた。

アルク「ん、今日は客さんが沢山来るな」
猛竜騎士「失礼します」
アルク「いらっしゃいませ」
猛竜騎士「先ほど、こちらに男女のお客さんが来たと思うのですが…」
アルク「そのお二人なら、先ほど外へ」
猛竜騎士「あ、そうではなくて。自分の連れなのですが、ちょっと失礼なことをしなかったかなと」
アルク「……人の店を古いとか汚いとか、安物買いの銭失いとか、最低店主だなクソ野郎とか言ってました!」

※言ってません。

猛竜騎士「あ、あいつら…!主に魔剣士でしょうが、申し訳ない…。謝らせていただきます、この通りです……」
アルク「いえいえ、お気になさらず」
猛竜騎士「……代わりといっては何ですが、何か買わせていただきます」
アルク「んなことしなくてもいいですよ!」
猛竜騎士「いえ、安いものですが……例えばこれとかでも」

近くの棚に乗っかていたカゴの中に乱雑に置かれている花のブローチを取り出すと、アルクの前に差し出した。

アルク「いいんですか?」
猛竜騎士「お詫びの代わりです」
アルク「適当なことも言ってみるもんだな、普段は売れない装飾品が売れるとは」
猛竜騎士「はい?」
アルク「あ、いえ!何でもないです…ハハ!で、それは1,000ゴールドになります」
猛竜騎士「予想よりも高かった…。あぁ払います、こちらで」

1,000ゴールド紙幣をアルクへと手渡す。

アルク「はい、毎度ありがとうございます!」
猛竜騎士「白姫にでもやるか…。ちなみにこの花は何という?」
アルク「そちらはサクラという、ずっと遥かの大陸に存在する花です」
猛竜騎士「……聞いたことのない花ですね。そんな花が?」
アルク「北方大地の大雪山の裏側、つまり"裏の大陸"の東方側にある"東方大陸"という場所にある花なんです」
猛竜騎士「裏の大陸って、まさか……」
アルク「ご存知ですか?」
猛竜騎士「あの裏世界のことですか!?」

―――裏の世界。
冒険者にとっては"眉唾"ものだが、夢を見る一つの世界として認識されている。
この北方大地の極北には"豪雪連邦"という、危険種の魔族が蠢き、明けない雪山がそれ以上の進行を阻んでいた。
しかし、その頂上において魔力の歪みが観測されており、かつ数少ない帰還した冒険者たちはそのてっぺんで"見たことのない世界"を見たとの報告が上がっていた。
これはたちまち世界の冒険者たちを駆け巡ったのだが、その厳しい大地に阻まれ命を落とすものが多かったため、入山を著しく制限し、現在は閉山扱いとなってしまったことでその道は永遠に閉ざされたようなものだった。

猛竜騎士「そんなまさか、あなたは裏の大陸出身とでも!?」
アルク「……えぇ、実は」
猛竜騎士「冗談でしょう!?」
アルク「はい、冗談です」
猛竜騎士「……おいっ!?」
アルク「ハハハ!そんなまさか、そんなはずはないでしょう!あの豪雪連邦を抜けるのは不可能に近い!」
猛竜騎士「はぁぁ、それではこの花は?」
アルク「俺が自分で考えた花ですよ。錬金師として、創作には事欠かないですよ」
猛竜騎士「そういうことですか…驚いた……」

アルク「あの山を抜けるには、相当な錬金器具の腕で造られた防寒用具に、棲みつく敵を倒せる力……」
アルク「洞窟も多くありますし、それを抜ける鉱夫の知識も必要だと言われています。まず無理です。驚かせて申し訳ありませんでした」

猛竜騎士「本当だったら心も踊ったのですが、そうですか」
アルク「すみません」
猛竜騎士「いえいえ…ちょっと楽しかったですよ。それでは、失礼いたします」
アルク「えぇ、またお越しください」

猛竜騎士は一瞬でも信じた自分を恥じた様子で、お店から魔剣士を追って走って行った。アルクは「ククク、騙されてやんの」と笑いながら、やっと作業に戻れると重い腰を上げたのだが、そこでまたドアが開いたことに「おいおい」と呟いた。

アルク「どんだけ客来るんだよ!いらっしゃい!」
セージ「……お客さんが来た時、またそんな態度でやってるの!?」

そこに現れたのは、あの"セージ"だった。

アルク「げっ!セージ!?」
セージ「だからお母さんにも怒られるんでしょ!"お父さん"!」
アルク「わ、悪いって!怒るなって!」
セージ「さっきもお客さん来てたのに、どーせ変な態度で接したんでしょ」
アルク「は、ハハハ!ちゃんと接したって、いやホント」
セージ「……全く、いくつになってもお父さんは変わらないんだから」
アルク「変わらないってのは良い事だと思うぜ?」
セージ「あのね」
アルク「イケメンだろ」
セージ「……あ、の、ね?」
アルク「分かった分かった!怒るな怒るな!で、用事はなんだ!」

セージ「……何度もため息つかせないで」
セージ「お父さんに、良い知らせがあるのよ?」

アルク「ほう、儲け話か」
セージ「そうじゃないから」
アルク「じゃあ何だ?」
セージ「……もうすぐ、国が変わる。私が変えることができる」
アルク「またその話か」
セージ「聞いて!今度は確信があるの!いえ、必ず結果を出して、私はこの国のトップになれる!」
アルク「そんな良い研究対象を見つけたのか?」
セージ「うん…!それで私はこの国を根本から変えて、差別化をなくせる!」
アルク「……全ての人々を人の生活に戻すために、か」

セージ「……うん」
セージ「私が上に登れば、ランク制を廃止して人権を失った人々を救えるから。絶対に!」

アルク「無理はするなよ」
セージ「これが私の復讐だから。必ずやり遂げる」
アルク「そうか…。だが、お前じゃなくても誰かが立たねばこの国はいずれ滅ぶだろうな」
セージ「…ッ」

アルク「"誰かの入れ知恵なのか"、この国の方針はセントラルそのものだ」
アルク「急に技量の発展をしたのは誉めるべくことだが、この発展はおかしいことばかり。資金にしろ、この裏には何かあるハズだ」
アルク「お前が魔法連合に所属する以上、その立場を利用することに文句はいわない」
アルク「しかし、危険だと思ったなら必ず退け。そうでなければ、身を滅ぼすことになる」

セージ「分かってる……」
アルク「お前は大事な娘なんだ。みすみす殺されるようなら、俺が止めるからな」
セージ「……うん」
アルク「俺はずっとお前の味方だ。お前が戦うことを、誇りに思うよ」
セージ「有難う、お父さん……」

…………
……


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