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第六章【エルフの隠れ里】

6-5 月日が流れ

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・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 1か月後 早朝 】 
 
魔剣士「…」フゥゥ
白姫「…」パァァッ…

猛竜騎士「魔剣士、脚力部分へ魔力を集中。それと同時に前方へ飛び出せ」

魔剣士「…シッ!」ダッ!
タァンッ!ダァンッ、ダァンッ、ダァンッ!!!
 
猛竜騎士「飛ぶ間隔がまだ狭いぞ。もっと先へ踏み出せる様、大きく踏み出せ!」

魔剣士「…っ!」ダッ!!
ダンッ、ダンッ、ダンッ!!!ズザザァッ…!!

幼ウィッチ「…ほう、縮地の動きか」
幼ウィッチ「姿は完全に消えていないが、瞬間移動のようには見えているな」

猛竜騎士「…一先ず止め!」
猛竜騎士「次、白姫!光魔法を具現化し、身体全体に魔力を纏え!」

白姫「…っ」パァァ…

猛竜騎士「…おらよっと」ビュッ
ズブシュッ!ポタタッ……
猛竜騎士「今、俺が自分でナイフで傷つけた部分をヒーリングで止血し、痛覚を麻痺させろ」ズキズキ…
白姫「……っ」パァァ
猛竜騎士「…魔力の練りが遅い」
白姫「ひ、ヒールッ!」パァァッ!!
シュウウッ…
猛竜騎士「…」
ポタ…ポタ……、
ポタ…………、ピタッ…
猛竜騎士「……よし」

幼ウィッチ「まだ慣れていないようじゃが、治癒効果は出ているな」
幼ウィッチ「深い傷はまだ無理だろうが、簡単な怪我程度なら治せるレベルにはなったか」

魔剣士「…ふぅ!」
白姫「はぁ~…!」

猛竜騎士「二人とも、まだ甘い部分はあるがだいぶ形にはなってきたな」
幼ウィッチ「そろそろ魔剣士には、お前が相手で実践も含めた戦闘技術を教えてもいいんじゃないか?」
猛竜騎士「基本は教えられるだろうが、俺は槍術だからなぁ」
幼ウィッチ「縮地、部分強化、それだけでだいぶ違うだろう?」
猛竜騎士「それも含めた基本だったんだが…。そう言われるとそうか、そろそろ…魔剣士といっちょ戦ってみるか」
魔剣士「おっ!?オッサンと戦うのか!?」
猛竜騎士「体力、技術、縮地の基本は学んだし…まぁ戦える…か?」
魔剣士「はっはっは、俺が勝っちまうんじゃねえのか!」
猛竜騎士「バカ言え、お前にやられるほど俺は堕ちてないっつーの」

幼ウィッチ「だとすると、ここではちと狭いな…」
幼ウィッチ「もう少し東側に進んだあたりに、ひらけた場所がある」
幼ウィッチ「そこなら存分に戦えるじゃろ」

魔剣士「おうおう、さっさと行こうぜ!」ダッ!
タタタタッ…!

猛竜騎士「あ、おい!早すぎるっつーの!」ダッ!
タッタッタッタッ……

幼ウィッチ「…」ハァ
幼ウィッチ「…やれやれ、どっちも子供のままじゃのう」

白姫「……魔剣士と猛竜騎士さんの戦いかぁ」
白姫「どっちが勝つんだろう…」ワクワク…

幼ウィッチ「…万に一つも、今の魔剣士では猛竜騎士に勝ち目はないだろうな」ククク
白姫「そうでしょうか?」
幼ウィッチ「たかだか縮地の真似事を覚えた時点で、猛竜騎士の実力の足元にも及ばんよ」
白姫「うーん…」
幼ウィッチ「手を抜いて1分、本気なら数秒で終わるじゃろうな」
白姫「む…」
幼ウィッチ「ま、見てみれば分かる。魔剣士も、今の実力を分かるいい機会じゃろうて」クスクス
白姫「…はい」

…………
……


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 東側にある広場 】

…ザッ!

魔剣士「ほう、確かに広いな」キョロキョロ

猛竜騎士「ここならある程度暴れても大丈夫そうだ」コキコキ

白姫「頑張れ、魔剣士~っ!」

魔剣士「おうよ!」 

幼ウィッチ「…サービスじゃ。このエリア一帯に強力な防護壁を貼ってやる」パァァッ!
ヴヴゥゥ……ン……ヴン……!!

魔剣士「なんじゃそりゃ?」

幼ウィッチ「暴れても、外側に波動や音が漏れることはない。」
幼ウィッチ「思いきり暴れてみろということじゃ」ハハハ
魔剣士「ほっほう、ババァのくせに良いサービスすんじゃねえか!」
幼ウィッチ「しばくぞ貴様」

猛竜騎士(…魔剣士は大暴れできる環境があったほうが良さを出せると踏んだか)
猛竜騎士(俺のような細かい技術を駆使するのではなく、大技で大味な一撃タイプに近いからなこいつは…)
猛竜騎士(だが、こいつの使う技のほとんどの本質は繊細かつとんでもない技量の塊がいるもの)
猛竜騎士(……面白いやつだ、本当に)

魔剣士「……おっしゃ!」チャキンッ!
猛竜騎士「やるかい」スチャッ

白姫「…っ!」ドキドキ…

幼ウィッチ「では、準備はいいかの」


魔剣士「…」

猛竜騎士「…」

ヒュオオォッ……サァァッ……

幼ウィッチ「…」
幼ウィッチ「…」
幼ウィッチ「試合……」サッ!
幼ウィッチ「……開始じゃっ!!」バッ!!

魔剣士「…はぁぁああっ!!」パァァッ!
…ボォンッ!!ゴォォォオッ!!!…

白姫「…魔剣士の得意技だ!」
幼ウィッチ「ほう、剣に炎を纏わせたか。話は聞いていたが、見事に纏っておるな」

魔剣士「いくぜ、オッサン!!」
猛竜騎士「話す暇があるのか?」ビュッ!
魔剣士「へ…」
…バキィッ!!
魔剣士「がっ!?」
ズッ、ズザザァッ!!
魔剣士「くっそ…!?」
猛竜騎士「勝負という以上、"目に見えた"手加減はせんぞ!」
魔剣士「…面白ぇ!」パァァッ!
猛竜騎士「魔法を使わせると思うか?」ダッ!
ダダダダッ!!
魔剣士「…アンタが走ってくるより、俺の魔法のほうが早い!」パァッ!
猛竜騎士「…ん、既に後ろにいるのにか?」ボソッ

魔剣士が魔法を放とうとした瞬間、
いつの間にか猛竜騎士は魔剣士の後ろへと移動していた。

魔剣士「!?」ハッ
猛竜騎士「…槍突ッ!!」ビュオッ!
…ズドォンッ!!
魔剣士「ゲホッ…!?」

白姫「…えっ!?」
幼ウィッチ「前方を走りながら、後ろへ縮地で一瞬で移動したんじゃ。初期テクニックだな」
白姫「…見えなかった」
幼ウィッチ「今のが刃側で突かれていたら、死んでいたな」

これがいわゆる縮地の効果である。
魔剣士は前方から迫る猛竜騎士より魔法を早く撃てると踏んだが、
実際は既に魔剣士の裏へと縮地(移動)していた。
虚を突かれ、魔法の練りが解除されたうえに驚き、
攻撃を受ける構えの準備もしなかったためダメージが数倍に跳ね上がる。

ヨロッ…ズシャッ!
魔剣士「な、なん…だ…!」ゲホゲホッ!
猛竜騎士「まだ、俺の動きは捉えることはできないか?」
魔剣士「なんだよ…今の……!」
猛竜騎士「お前が鍛錬に励んでいる"脚の強化"の完成版だ」
魔剣士「うっそだろ…。完全に見えなかったぞ……」
猛竜騎士「…無駄口はそれだけか?」ググッ
魔剣士「いっ!?」
ビュオッ、ゲシィッ!!
魔剣士「ぬがっ!?」
ズザッ…ザザザァッ、ズドォンッ!!
パラパラッ…

……追い打ち。
ダウンしている魔剣士に対し、顔面へと蹴りを放った。
 
魔剣士「…ッ!」

ザッ…ザッ……
猛竜騎士「……おいおい」
猛竜騎士「どうした、そんなものか……?」

魔剣士(……っ!)ゾワッ!
魔剣士(……つ、つえぇっ!)
魔剣士(パワー、スピード、テクニック、どれをとっても今の俺より遥かに上じゃねえか……!)
魔剣士(し、しかも……)
 
幼ウィッチ「…本気も出していないではないか、猛竜騎士め」
白姫「えっ、あれで本気じゃないんですか!?」
幼ウィッチ「あやつが言っておっただろう…。"目に見えた"手加減はしないと」
白姫「……本気じゃないんだ」ゾクッ…
幼ウィッチ「あいつが"猛竜"と呼ばれる所以を聞いていないのか?」
白姫「…あ、それは前に聞く機会があったのですが聞いておりませんでした」
幼ウィッチ「ふふ、ならば教えてやろう」
白姫「…っ」ゴクッ
幼ウィッチ「あいつはな……」

猛竜騎士「…一撃だけだ。あまり表でやるスキルじゃないんでな」ニヤッ
魔剣士(…な、なんだ!)
猛竜騎士「俺は、属性に特化した魔法が苦手でな。故に、物理技や純魔力を鍛えてきた」パァァッ…!!
魔剣士(…っ!?)
猛竜騎士「己の筋力を増大させ、純魔力をオーラとし、その槍に具現化し、それを突出する…」コォォッ…!
魔剣士(…や、槍に魔力のオーラが!?)

猛竜騎士の魔力が、槍へと集中していく。
普通は見えないであろう魔力の塊が、
大気を揺らし、形作られ、ひずみを生んでいる。

猛竜騎士「猛々しい竜が如く、この槍は……!!」ゴォォォッ!!
魔剣士(……オーラに、振動が!!)
猛竜騎士「まさに、竜が突撃する様となるっ!!」ゴッ!!!
魔剣士「…っ!!!」

……


猛竜騎士「はぁあああああっ!!!猛…虎……!」
猛竜騎士「竜撃ッ!!!」


……

ゴッ…!
ゴォォォッォオオオォォォオッ!!!!!

魔剣士「う、うおぉぉおおっ!!?」

猛竜騎士の槍先から、
魔力の塊がまるで"竜"の形のように描かれ、それが突出した!
轟音をあげながら、猛スピードで魔剣士へと突っ込んでいく。

猛竜騎士「これが捌けるか、魔剣士っ!!」

普通は突然の見たこともない攻撃に対し、普通は瞬時に対抗が出来るはずはない。
猛竜騎士はそれを踏まえ、
痛みを持って「自分との差」を教えるつもりであった。
……そう、"普通"は。

魔剣士「……ぬっ、ぬあああああああっ!!」パァァッ!!
魔剣士「純粋な魔力を形とするなら、魔力防護壁の展開で防げるはずだああああっ!!」ピカッ!
魔剣士「魔法障壁ぃぃいいあああっ!!」
…ヴォォンッ!!…
 
白姫「ま、魔剣士がんばれええっ!!」
幼ウィッチ(……何っ!?)
幼ウィッチ(魔力防護壁に気づき、その展開スピードの速さ!!)

………


猛竜騎士「…よく気づいたな!」
猛竜騎士「だけどよ、しゃらくせぇんだよぉぉおっ!!」
ゴォォォオオッ!!!

魔剣士「防ぎきってやるぜぇぇえええっ!!」
ヴォォォオンッ!!!

猛竜騎士「てめーなんかに、このオレの攻撃が防げるわきゃねぇだろうがあああっ!!!」

魔剣士「ぬっ、ぬぅうおおおおあああっ!!」


………
 
幼ウィッチ(……やれやれ、昔の口調に戻りおって)
白姫(ま、魔剣士っ……!)ギュッ…

……ピカッ!!……

ズドオオオォォォォォォオオォォンッ!!!

ビリビリビリッ……!!

白姫「きゃああぁぁあっ!!?」
幼ウィッチ(ワシのフィールド毎破壊する気か、馬鹿が!)

ビリビリビリッ……!
パラパラッ…!
 
猛竜騎士「…」フゥゥ…
猛竜騎士「……柄での攻撃だ。刃ではない分、威力は半分以下」
猛竜騎士「魔剣士、どうだ……!」

全身が揺れるほどの爆音に、
前が見えないほどの土が周囲に舞い上がった。

白姫「つ、土煙で……」ケホケホッ
幼ウィッチ「魔剣士、吹き飛んでいないじゃろうな……」ピクピク
白姫「え、縁起でもないことを言わないでくださいよっ~!」
幼ウィッチ「…まぁ、今見えるじゃろ」


モクモク……
モワッ…
サァァアッ……!

土煙が晴れていく。
猛竜騎士は仁王立ちし、魔剣士がきっと既に倒れているものと、待っていた。
しかし、その刹那。

……ビュオッ!!
猛竜騎士「うおっ、剣ッ!?」バッ!
ガキィンッ!!クルクルクルッ……ザスッ!

白姫「!」
幼ウィッチ「!」

猛竜騎士めがけ、魔剣士の片手剣が突然吹き飛んできたのだ。
それは、つまり―……

白姫「あれは、魔剣士の…剣……!」
幼ウィッチ「ということは、まさか……」
 
…ザッ!!
魔剣士「……やってくれるじゃねえか、オッサンよ」ギロッ

白姫「あっ……!」
幼ウィッチ「な、なんと!?」
猛竜騎士「なんだと……!」

ザッ…ザッ…ザッ……
魔剣士「…クソ重い技を食らわせやがって、また気絶するところだっただろうが」

猛竜騎士「…どうやって防いだ!」
幼ウィッチ「魔剣士、どうやったんじゃ!?どう考えても、あの障壁では防ぎ切れなかったはず!」

魔剣士「あ?」

猛竜騎士「確かにあの障壁で一応は防げる技ではあるが、あの障壁は完璧に破る威力だったはずだ!」
猛竜騎士「一体どうやって俺の技を切り抜けた!?」

魔剣士「……最初の障壁とのぶつかり合いで、俺の障壁を貫くことが分かったんだよ」
魔剣士「だから咄嗟に炎を剣に纏わせる要領で自分の身体に、オッサンがやったようにオーラみたく障壁を纏わせた」
魔剣士「もしかしたら、最小限に纏った魔力なら、氷同士のぶつかり合いのように滑りあうかなと思ってな……」
魔剣士「それがたまたま大正解、そのまま身体を捻って、攻撃を滑らせたんだ」
猛竜騎士「曲芸師のように、傘でボールを転がす感じに俺の猛虎竜撃を避けたのか!?」
魔剣士「ま、そうなるかね……」ゲホッ…!

片手剣に炎を纏わせるように、身体へ純粋魔力を纏わせたのだ。
それも薄く、非常に繊細で、魔力同士が滑る程に。
猛竜騎士の魔力槍に対してそれは効果的で、
魔剣士の考え通り、槍から放たれた魔力はツルリと滑り、最小限のダメージで済んでいた。

魔剣士「だが脇腹をえぐっちまったし、クッソ痛くて立ってるのもやっとだけどな…」ズキズキ…
魔剣士「だけどオッサンの攻撃は"柄"側だろ…?」
魔剣士「もしもあれが刃側だったり、もっと本気だったらそんなこと出来なかっただろうが…」ゴホゴホッ!!

猛竜騎士「おいおい……」

幼ウィッチ(……面白いっ!!)ドクンッ!!
幼ウィッチ(瞬時的な判断に、即反応できる魔力の練り、それを実行する勇気、最後まで反撃をする気合!)
幼ウィッチ(あの技をそんな避け方で対処するとは……!)

魔剣士「……だけど、もう身体が動かねぇよ」ガクガク…
魔剣士「おもっくそ魔力を放ったせいか……おえぇっ!!」ゴホッ!

猛竜騎士「魔力枯渇か…」

魔剣士「うっ…くっ…!クッソ……!」ガクッ
…ドシャッ!
魔剣士「動か…ねぇ……。負け…か……」
猛竜騎士「……っ!」
白姫「ま、魔剣士!」ダッ!
タタタタッ、バッ!
魔剣士「あー…白姫……。負けちまった……」
白姫「す、凄かったよ…。魔剣士、凄くかっこよかったよ!」
魔剣士「へへ、そう……?」
白姫「うんっ……!」
魔剣士「そいつぁ…嬉しいねぇ……」
白姫「い、今痛いの治すから!ヒール、ヒールッ!!」パァァッ!!
シュウウゥッ……!!
魔剣士「げほげほっ…!」
白姫「あうぅぅ、どうすればいいの~!!」オロオロ…
 
…ザッ
猛竜騎士「……ウィッチ、どう思う?」
幼ウィッチ「非常に面白い。あやつ、本当に最近まで初心者だったのか?」
猛竜騎士「消費量と威力が見合わず、低年齢用の魔導書をつい最近まで読んでたんだぞ」
幼ウィッチ「元々魔法に長けていたとはいっていたが、並みの技量ではない」
猛竜騎士「だから面白いんだ」
幼ウィッチ「まだまだ戦闘テクニックや制圧力には欠けるが、体力も技術も秀でたものがあるな」
猛竜騎士「幼いころから独りで鍛錬をしてきた成果なんだろうな」
幼ウィッチ「剣術は見れなかったが、そちらも出来るほうなのか?」
猛竜騎士「油断しやすいところがあるが、並みレベルってだけ言っておこうか」
幼ウィッチ「魔法と剣術を併せれば化ける可能性がある、か」
猛竜騎士「その通りだ」
幼ウィッチ「…お世辞にも、今の状況ではまだまだだがな」フフ
 
白姫「うぅぅ、魔剣士、死なないでっ!」オロオロ
魔剣士「し、死なねぇよ!勝手に殺すな…げほげほっ!」
白姫「ひーる、ひーーーるっ!治してあげるから待っててっ!」パァァッ!
魔剣士「そ、それじゃ魔力枯渇は治らねぇから……」ゴホッ…!

猛竜騎士「……ん~、あいつ、以前にもあったが魔力の消費に妙に弱いところがあるな」
幼ウィッチ「元々持っている魔力が多くないのかもしれん」
猛竜騎士「だとすると、火炎を纏わせる術は長期戦になるほど不利になる……」
幼ウィッチ「身体に宿す魔力は鍛錬で増えることはないぞ?」
猛竜騎士「…ちっとまずいことに気が付いてしまったかもしれん」
幼ウィッチ「魔力のタンク…か……」
猛竜騎士「魔剣士には、その全てを扱う魔力がないんだ…」
幼ウィッチ「あいつが知ったら哀しむぞ」
猛竜騎士「…」
幼ウィッチ「伝えるのか?」
猛竜騎士「いや、今はやめておこう…」
幼ウィッチ「だがいずれ分かることじゃろう」
猛竜騎士「上手く伝えるさ」
幼ウィッチ「……そうか」

……ムクッ
魔剣士「はぁ…はぁ……!」
魔剣士「やっと立てたぜ……」

猛竜騎士「…お疲れさん」
魔剣士「くっそ…!げほげほっ!」
猛竜騎士「悔やむなよ。俺に勝てなくて当たり前なんだからな」
魔剣士「わーってるよ……」
猛竜騎士「だが大したもんだ。あそこまでやれるとは思わなかったぞ」
魔剣士「バカにすんじゃねー!」
猛竜騎士「はっはっはっ!」
魔剣士「……くっそ!次はぜってーに勝つからな!」
猛竜騎士「おう、楽しみにしてるぜ」
魔剣士「ふん……」
幼ウィッチ「……さて、戦いも終わったが魔剣士は魔力の枯渇状態のようじゃの」
魔剣士「どうってことねーよ」
幼ウィッチ「お主は今日は休みじゃ。あとは寝ておれ」
魔剣士「ばっか、修行があるだろーが……」ゲホゲホッ!
幼ウィッチ「そんな身体で何を言うか」パァッ!
バチバチッ!!
魔剣士「のごっ!!?」ビリビリッ!!
……ドサッ!
幼ウィッチ「……休む時は休んでおけ、たわけ!」
魔剣士「お、ま……!」ビクンビクン!

猛竜騎士「はは…。それじゃ、ツリーハウスに戻ろうかね。魔剣士は俺が背負うぞ」グイッ
魔剣士「」チーン
白姫「わかりましたっ」
幼ウィッチ「やれやれじゃな」

…………
……


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 数分後 ツリーハウス 】

……ドサッ!
魔剣士「」

猛竜騎士「ふぅ、ウィッチの電撃を食らったら明日までは動けないだろうな」
幼ウィッチ「身体の芯に打ち込むからのう。暴れる相手はこれで沈黙させてやるんじゃ」フフフ
猛竜騎士「……痛いんだよ」
幼ウィッチ「お前も何度も喰らったのう?」ニヤニヤ
猛竜騎士「…」

白姫「…えっと、それで私はどうすれば?」
猛竜騎士「ん、あぁそうか…。とりあえず俺と勉強するか」
白姫「わかりました」
猛竜騎士「とはいえ、姫様にも教えることが少なくなってきたなぁ…」
白姫「そ、そんなこと」
猛竜騎士「どっかの誰かと違って頭の回転も早いし、秀才っていうんだろうな」ハハハ

魔剣士「」チーン

白姫「魔剣士みたく強くはなれないので、少しでも勉強したいなって思って……」
猛竜騎士「肉体馬鹿と知恵役はパーティの必須だからな」ククク
幼ウィッチ「お前とワシじゃな」ニヤニヤ
猛竜騎士「誰が肉体馬鹿だ」
幼ウィッチ「自分で言ってどうする」
猛竜騎士「うぐっ…!」
幼ウィッチ「やっぱり肉体馬鹿じゃったな」
猛竜騎士「……はいはい、わかったよ!」
幼ウィッチ「ハハハ!それじゃワシは家に戻るからのう」フリフリ
猛竜騎士「はいよ、またな」
幼ウィッチ「うむ」
トテテテテ……
幼ウィッチ「…」ピタッ
幼ウィッチ「…っ」
猛竜騎士「……ん、どうした?立ち止まって」
幼ウィッチ「い、いやなんでもない。またな」
猛竜騎士「おうよ」
ガチャッ、バタンッ!
猛竜騎士「……ったく、あいつといると俺のボロが出てしまうってのな」
白姫「でも、猛竜騎士さんは充分強いしかっこいいですよ!」
猛竜騎士「そうかね?」
白姫「勉強もできますし、文武両道ってことですよね?」
猛竜騎士「あー…、ん~……」
白姫「?」
猛竜騎士「文武両道って言葉なら、たぶん…ウィッチのほうがそうだろうな」
白姫「!」
猛竜騎士「俺みたいな知識レベルは、当時の冒険者じゃ当たり前のレベルだったからな」
白姫「そうなんですか!」
猛竜騎士「そもそも、こいつが勉強嫌いすぎるだけだ」チラッ

魔剣士「」

白姫「…」クスッ
猛竜騎士「それじゃ、肉体馬鹿はほっといて勉強すっかぁ」
白姫「はいっ!」
猛竜騎士「んじゃー、えーとどこからするか……」
白姫「…♪」

…………
……


―――その後。
勉強を終えた頃、ようやく魔剣士は動けるようになったが、夕食を食べ終えるとそのまま倒れ込み、白姫とともに夢の中へと落ちて行った。
猛竜騎士は二人が寝たのを見計らい、自分も休憩しようとしたのだが……その時。
ツリーハウスの外に"妙な気を飛ばす"ウィッチの気配があることを感じた。

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