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第六章【エルフの隠れ里】
6-3 きっかけとは
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……
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 10分後 】
…ガチャッ!
猛竜騎士「魔剣士、白姫っ!!」
幼ウィッチ「二人とも、無事か!?」
魔剣士「よ、よー…オッサン……」
白姫「も、猛竜騎士さん…!ウィッチさん……!」
猛竜騎士「…っ!」
ォォ……オオォォ…ォォ……
剣士エルフ「…」
魔導エルフ「…」
兵士エルフ「…」
弓師エルフ「…」
光使エルフ「…」
ポタッ…ポタッ……
里長の家よりようやく戻ってきた猛竜騎士とウィッチだったが、
目の前の光景に言葉を失った。
若きエルフたちは全て倒され、床には血が飛び散り、部屋は凄まじい傷が刻まれていた。
ただ、誰も"死んではいなかった"。
猛竜騎士「……全員、お前がやったのか…」
幼ウィッチ「…!」
魔剣士「遅いぜ…」フラッ…
魔剣士「ウィッチだっけ…。部屋ぁ汚しちまった……」ゲホゲホッ!
幼ウィッチ「い、いや構わぬが……」
幼ウィッチ「このエルフたち、全員をお主が倒したのか……」
魔剣士「ちっと魔力とやらを使い過ぎたのか、攻撃受けてねぇのにフラフラしてるけどな……」ゲホッ!
幼ウィッチ(…感知魔法で全員が倒れていたのは予想していたが、)
幼ウィッチ(この目で見るまでは信じられなかった……)
幼ウィッチ(まさか、全員を倒すとは……)
魔剣士「オッサン、悪いな……。喧嘩しちまったよ……」
猛竜騎士「…いや、いいんだ」
魔剣士「へっへっ…。柄にもなく優しいじゃねえ…か……」
猛竜騎士「…少し休め。それが魔力枯渇の症状だ」
魔剣士「そう…か……」フラッ…
…ドサッ!
白姫「あっ、魔剣士!」
猛竜騎士「魔力を使い過ぎた疲労だ。しばらくすれば目を覚ますだろうし、大丈夫だ」
白姫「そ、そうですか……」ホッ
猛竜騎士「…」
幼ウィッチ「……して、どうするつもりじゃ猛竜騎士」
猛竜騎士「ん…」
幼ウィッチ「お縄につかなかった時点で、里長の怒りを買うじゃろう。ここにはいられぬようになったな」
猛竜騎士「…」
幼ウィッチ「お前はまだしも、その二人は永久追放ものじゃ…」
猛竜騎士「ふん…、追放のほうがましだ。休まる場所だと思って連れてきたのに、これじゃあな……」
幼ウィッチ「……すまん」
猛竜騎士「お前が謝ることじゃない。俺の配慮や、考えが足りなかったんだ」
幼ウィッチ「もう、里を出るしかなくなってしまったな…」
猛竜騎士「また攻撃される前に出ていくさ」
幼ウィッチ「…しかし、この村は西方大地の中心部寄りで人が住む村も少ない……」
幼ウィッチ「また時間をかけて歩かねばならないぞ」
猛竜騎士「鍛錬だと思えばいい」
幼ウィッチ「…」
猛竜騎士「……あぁ、そうだウィッチ」
幼ウィッチ「なんじゃ?」
猛竜騎士「言い忘れていたんだが、ここに来たときに持ってきたリュックがあるだろ?」
幼ウィッチ「あぁ、そこにあるバカでかいリュックか」
猛竜騎士「自然港で買った実用書や最新の情報誌が詰まってる。土産として持ってきたんだ」
幼ウィッチ「なにっ!」
猛竜騎士「100冊くらいあるはずだ。しばらくは楽しめるだろ?」
幼ウィッチ「おぉぉ、本当か!」ピョンッ!
白姫(…あ、そっか)
白姫(あの本は、私たちの勉強だけじゃなくてウィッチさんへのお土産だったんだ……)
ゴソゴソ…
幼ウィッチ「おぉぉっ!ワシが知らない本ばかり…!凄いな、これは楽しみだ!」
猛竜騎士「魔導書の一部は使ってるから渡せないが、それ以外は全部お土産だ」
幼ウィッチ「ほっほう!嬉しいぞ猛竜騎士!」
猛竜騎士「はは、喜んでもらって何より」
幼ウィッチ「ふーむ…!」キラキラ…
幼ウィッチ「しかし、これだけの本となると自宅にはおけないな。里の離れにあるワシの図書家屋へ運ぶか…」
猛竜騎士「お、そうか。なら手伝うよ」
幼ウィッチ「うむ、すまないな。ちとこの大きさのものはワシでも運べんよ」
猛竜騎士「どれ、すぐにでも運ぼう…」
幼ウィッチ「…」
幼ウィッチ「……あっ!図書家屋か!」
猛竜騎士「ん?」
幼ウィッチ「お主ら、もしよかったらワシの離れにある図書家屋でしばらく過ごすか?」
猛竜騎士「お?」
幼ウィッチ「本棚と読書用の机程度しかないが、それなりひ広いし布団を運べば寝れるだろう?」
猛竜騎士「ふむ…」
幼ウィッチ「お主の言う勉強というのも、本の置場ということでしやすいだろうに」
猛竜騎士「それはうれしい話だが、俺に手を貸したことがバレたら問題にならないか?」
幼ウィッチ「里には関係のないことだ。しばらく休む場所が欲しいというのなら、そこを提供するぞ」
猛竜騎士「いいのか…?」
幼ウィッチ「問題ない。ただし、食べ物も含め自炊を頼むぞ」
猛竜騎士「……ありがたい。感謝するよ」
幼ウィッチ「必要なものならワシが買ってやろう」
猛竜騎士「……感謝する」
幼ウィッチ「うむ!」
猛竜騎士「それじゃえーと、今は必要なものは布団だけ……か」
猛竜騎士「古いのでいいから、3つ程余ってたりするのか?」
幼ウィッチ「当時、お主たちが使った布団がそのまんま残っているはずだ」
猛竜騎士「……マジか」
幼ウィッチ「軽く洗って持っていく。先に図書家屋のほうへ行っておけ」
猛竜騎士「図書家屋はどこにあるんだ?」
幼ウィッチ「里の北門を出て、北西のほうに十数分歩けば見えてくる…でかい樹にくっついてるツリーハウスのところだ」
幼ウィッチ「鍵はかかってないし、しばらく行ってないから埃っぽいが……」
猛竜騎士「掃除もやっておくさ」
幼ウィッチ「わかった。布団を洗ったらワシも向う」
猛竜騎士「頼む」
幼ウィッチ「うむ、任せておけ」
…モゾッ
魔剣士「……ご、ごほごほっ!」ムクッ
魔剣士「うっ…くっ……」フラッ…
魔剣士「気絶…していたのか……っ」
白姫「魔剣士…、大丈夫……?」
魔剣士「ん…。うむ……」
猛竜騎士「……魔剣士、目が覚めるのが早いな」
猛竜騎士「本は俺が持っていくから、白姫と一緒についてこい」
魔剣士「…どこにだ」
猛竜騎士「素敵なツリーハウスだ」
魔剣士「……あん?」
…………
……
…
…
……
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――【 数分後 図書家屋-ツリーハウス- 】
ガチャッ!ギィィ……
…モワッ!…
魔剣士「…うわっぷ!?」
白姫「け、けほけほっ!」
猛竜騎士「うっへ…。マジで埃だらけじゃねえか……」ゲホゲホッ
魔剣士「こ、ここでしばらく過ごすのか?」
猛竜騎士「ここならバウンティハンターの追手も来ないだろうしな。」
猛竜騎士「拠点として、大自然の中で実践も含めた鍛錬、勉強、お前らの修行と行こうと思ってね」
魔剣士「次の目的地をあのウィッチと決めるんじゃなかったのか?」
猛竜騎士「無論決めるが、他の場所へ行くにはちーっと修行をしてこうと思ってな」
魔剣士「俺が実力不足だっていいたいのか」
猛竜騎士「お前だけじゃなく、白姫のことも考えろ」
魔剣士「あ……」
…ガチャッ!
幼ウィッチ「…けほっ!」ケホケホ
幼ウィッチ「久方ぶりじゃが、さすがにゴミがたまっておるのぉ……」キョロキョロ
猛竜騎士「はやいな…。もう布団持ってきたのか」
幼ウィッチ「水魔法と火魔法の応用で、すぐに終わるもんじゃ」
猛竜騎士「…さすがっすね」ハハ…
ギシギシ……
白姫「……でも、凄いですねこの部屋。本棚に、色々な本が…」キョロキョロ
幼ウィッチ「好きなのを読むといい。難しい本もあるが、面白いものばかりじゃ」
白姫「へぇ~…!」
幼ウィッチ「お主は本が好きそうじゃのお」ニコッ
白姫「はいっ…。小さいころから、ずーっと本ばっかり読んでて……」
幼ウィッチ「…知識は身を助ける。存分に励むがいいぞ」
白姫「はいっ♪」
魔剣士「ほ、本に囲まれての生活なんて地獄だ……」ピクピク
幼ウィッチ「…お主は本が嫌いなようじゃの」ハァ
魔剣士「当たり前だろ!」
幼ウィッチ「威張って言うことか…」
魔剣士「本を読むくらいなら、実践で覚えるっつーの!」
幼ウィッチ「……身体で覚えるのも、また必要なことじゃがの」ククク…
猛竜騎士「お互い、足りないものは逆」
猛竜騎士「少しの間ここで世話になって、鍛錬に励んでもらうぞ」
魔剣士「へーい…」
白姫「はいっ♪」
幼ウィッチ「ワシも手伝えることなら手伝うからの」
猛竜騎士「…うむ」
幼ウィッチ「…ちと、腰を下ろすか」
トコトコ…ボスンッ…
幼ウィッチ「…ふぅ。」
幼ウィッチ「しかしのう、話は変わるがお前が弟子を持つとはいまだに信じられぬよ」
猛竜騎士「何度言うんだお前は」
猛竜騎士「時の流れってことさ。俺は、ウィッチが変わらな過ぎることに驚いているんだからな」
幼ウィッチ「…」スッ
幼ウィッチ「……ほれ、猛竜騎士」ビュッ
ヒュオオオッ…
猛竜騎士「んおっ、なんだ」パシッ!
幼ウィッチ「懐かしいじゃろ。当時のメンバーで描いてもらったやつじゃ。ここに飾って置いたままだったのう」
猛竜騎士「…!」
魔剣士「なんだなんだ、見せてくれ!」ヒョコッ
白姫「なんですかそれ?」ヒョコッ
猛竜騎士「…20年前、俺がウィッチやパーティを組んだり、仲間たちで描いてもらった額縁絵画だよ」
魔剣士「……ほう、リアル描写だな。どれがオッサンだ?」
猛竜騎士「これだな」スッ
魔剣士「……若っ!?」
猛竜騎士「隣で手をつないでニコニコしてるのがウィッチだ」
白姫「変わってない!」
猛竜騎士「一番端っこでドでかい大剣を持ってるのが大剣術師、右端が古武士だ」
猛竜騎士「……懐かしいな」
魔剣士「へぇ~…。これが昔のオッサンのパーティなのか?」
猛竜騎士「まぁな…」
魔剣士「他のメンバーは今も元気なのか?」
猛竜騎士「解散したっきり会ってないからな…。どこで何をしているのか」
幼ウィッチ「お主は解散したあとも、ワシと一緒にしばらくいたけどもな」ククク
猛竜騎士「それはお前…」
幼ウィッチ「…ふふっ。無駄話はこれでお仕舞じゃ、ワシは自宅へ一回戻る」ピョンッ
トテテテ…
猛竜騎士「…ありがとよ。あとは適当にしてるから、たまに様子を見に来てくれ」
幼ウィッチ「うむ。また来る」
ガチャッ……バタンッ!
魔剣士「…」
白姫「…」
猛竜騎士「……さて、まぁどうするか」
猛竜騎士「今日は白姫が光魔法の感覚を、魔剣士は脚への部分魔法強化の感覚の魔導書を引き続きやってもらおうか」
魔剣士「へいへい…」
白姫「がんばりますっ!」
猛竜騎士「俺は部屋を軽く掃除したら、ちょっと晩飯用の獲物をとってくる」
魔剣士「俺がやらなくていいのか?」
猛竜騎士「魔力を枯渇させたばかりで何を言ってる。また毒を受けて吹き飛ばされるだろうが」
魔剣士「うっ…」
猛竜騎士「とりあえず、今日は落ち着いて部屋で魔導書や勉強の時間にしておいてくれ」
…………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 そしてウィッチの家 】
幼ウィッチ(やれやれ、魔剣士のやつめハデにやりおって……)ククク…
幼ウィッチ(掃除が大変ではないか…)
幼ウィッチ(しかし、猛竜騎士も楽しくやっているようで何よりじゃのう……)
幼ウィッチ(…)
幼ウィッチ(……ふむ。白の姫にはワシが直々に魔法を教えても面白そうじゃ)
幼ウィッチ(そのほうが、魔剣士に教示する時間が猛竜騎士も増えるだろうし……)
…ガチャッ…
幼ウィッチ「ん…?」クルッ
魔導エルフ「…っ」
幼ウィッチ「…魔導エルフか」
魔導エルフ「……何モンだあいつら。なんだあのガキは!」
幼ウィッチ「こっぴどくやられたようじゃのう」
魔導エルフ「ふざけやがって…!」ギリッ…
幼ウィッチ「お前がやられた魔剣士は、ワシの元パーティの弟子じゃ。強かっただろう?」
魔導エルフ「……人間に肩を持つのか!」
幼ウィッチ「ワシは人間を敵とは思ってはいない。全て…昔のことだろうに」
魔導エルフ「ぶち殺すぞ…」
幼ウィッチ「お前如きにやられるワシではない」
魔導エルフ「あのガキ…!無詠唱の魔法、剣術、滅茶苦茶だ…!」
魔導エルフ「あんな齢17,8のクソガキに…!くそがぁああっ!」
幼ウィッチ「…話はそれだけか?」
幼ウィッチ「すまないが、励ます言葉は持ち合わせておらん」
幼ウィッチ「掃除の邪魔じゃ、帰れ」
魔導エルフ「うるせえっ!」バッ!!
邪魔だ。その言葉に逆上した魔導エルフは、ウィッチの首に掴みかかった。
幼ウィッチ「…苦しいぞ」
魔導エルフ「……あいつの弱点はなんだ。ぶっ飛ばさねぇと気が済まないんだよ!」
幼ウィッチ「独りでやれ」
魔導エルフ「……あくまでも、人間の味方か」
幼ウィッチ「敵も味方もない。じゃが、あいつらに害はない以上…敵ではないと思っておる」
魔導エルフ「俺や、仲間を傷つけられたんだぞ!?」
幼ウィッチ「それは貴様らが仕掛けたことじゃ。自業自得だろう」
魔導エルフ「里長の命令だ!」
幼ウィッチ「ならば、里長に死ねといえば死ぬのか?」
魔導エルフ「な…に……!」
幼ウィッチ「里長は古き頭のままで、その考えも昔となんら変わってはおらん」
幼ウィッチ「これからは人を許し、未来を見据えるべき時代が来るというのに、いつまで石頭のままなのか……」
幼ウィッチ「お前らは石頭の部下だから…、いつまでたっても成長せぬのじゃ」
魔導エルフ「て、てめぇええっ!!」バッ
…ビリッ!
ビリビリビリッ……!!
無理やり服を破り、
ウィッチは魔導エルフの前にその素肌をさらけ出す。
だが、彼女は決して動じることはなかった。
幼ウィッチ「…子どもの裸が好きなのか、最低じゃな」
魔導エルフ「外見だけだろうが!このままやっちまうぞてめぇ……!」
幼ウィッチ「笑わせるな。お前ごときに抱かれるほど堕ちた身体ではない」
魔導エルフ「裸にしても余裕か。そのまま首をハネてやろうか?ヤってやろうか?」ククク…
幼ウィッチ「言葉の脅しなぞ、ワシにとっては何の意味もない」
魔導エルフ「そうかよ…」イラッ…
幼ウィッチ(…下衆が。今、魔法で吹き飛ばして)パァァ
幼ウィッチ(……ッ!)ドクンッ
幼ウィッチ「…げほっ!」
魔導エルフ「あん?」
幼ウィッチ(こ、こんな時に……!)
魔導エルフ「風邪かなんかか?弱ってやがるのかぁ……?」
幼ウィッチ「……わ、笑わせるな」ゲホッ!
魔導エルフ「なら、望み通りにやってや……!」
…ビュッ!バキャアッ!!!
魔導エルフ「る…ぶぇぇえっっ!!?」
ズザザザッ、ズドォンッ!!パラパラ……
幼ウィッチ「……おや?」
魔導エルフの身体が、いきなり消え、
気が付くと部屋の端でぶっ倒れていた。
代わりに、ウィッチの目の前に現れたのは……
…スタッ!
猛竜騎士「何してんだてめぇは」
幼ウィッチ「…ふん、礼は言わぬぞ?」
猛竜騎士「分かってますよ」
幼ウィッチ「しかし、また会いに来るとは。ワシがそんなに恋しいか?」フフ
猛竜騎士「あーはいはい!」
モクモク……!!
魔導エルフ「……ってぇな!」ギリッ…
猛竜騎士「おや、俺のパンチで起き上がるとはしぶといな……」
猛竜騎士「だがエルフ族も野蛮なもんだな。人間となんら変わらん」
魔導エルフ「…お前は!俺らを小汚い人間と一緒にするんじゃねえ!」
猛竜騎士「その言葉、そのまま返すぞ」
魔導エルフ「お前のことを里長が認めてもな、俺は認めねぇ!」
猛竜騎士「あっそう?」
魔導エルフ「あのガキどもと一緒に、てめぇはぶち殺すからな」ギロッ
猛竜騎士「へぇ…」
魔導エルフ「……ちっ!今日は勘弁してやるがな」ダッ!
タタタッ、ガチャッ!バタンッ!…
猛竜騎士「…」
猛竜騎士「……はぁ」
猛竜騎士「ほら、立てるか……」スッ
…ガシッ!
幼ウィッチ「ふん、礼は言わぬぞ」
猛竜騎士「…あのな」
幼ウィッチ「それとも、礼が欲しいのか?ほれほれ」フリフリ
猛竜騎士「裸のガキにゃ興味ありません。早く服を着れ」
幼ウィッチ「つれんのう…」
トコトコ…、パサッ……
猛竜騎士「ったくよ、戻ってみれば大ピンチじゃねえか。」
猛竜騎士「俺らのせいで、お前まで敵の存在になっちまったのか……?」
幼ウィッチ「いんや、あいつは魔導エルフと言って、里の厄介者でのぅ」
幼ウィッチ「前からワシに気があるようで、色々とやってくるんだが……」
猛竜騎士「怖い者知らずだなそりゃ」ゴクッ…
幼ウィッチ「どういう意味じゃ」ビュッ
…ズブッ
猛竜騎士「ごっ、ごあぁああっ!?」
猛竜騎士「め、目があぁぁあああっ!!」
ドシャッ、ゴロゴロゴロッ!!!
幼ウィッチ「……まぁ問題はないし、気にするな」
幼ウィッチ「それよりどうした、まだワシに何か用事があったか?」
猛竜騎士「いっててて……」
猛竜騎士「ま、まぁなんだ…。魔剣士と白姫を二人っきりにしてやろうと思って、気を利かせただけだ」
幼ウィッチ「……と、見せかけてワシに会いに来たんじゃろ?」ニヤニヤ
猛竜騎士「口の減らないやつだな……」
幼ウィッチ「違うのか?ん?」
猛竜騎士「……あのな、そうだよ…っつったらどうする?」フン
幼ウィッチ「喜ぶ」ニマー
猛竜騎士「……はいはい」
幼ウィッチ「…」ブスー
猛竜騎士「お前、いい加減に姿を戻せよ…。性格までガキのままじゃやりずれぇ」
幼ウィッチ「やりずらい?全く、男じゃのうお主も」
猛竜騎士「そっちじゃねえよ!!」
幼ウィッチ「…仕方ないのう」パァァッ!
…ボシュンッ!…
ウィッチ「……これでいいんでしょ?」ファサッ…
猛竜騎士「あぁ、そっちのほうが話やすい」
ウィッチ「面白くない人ねぇ。人によっては、幼いほうが好むらしいじゃない?」
猛竜騎士「だから俺は子供に興味ねぇから」
ウィッチ「じゃあこっち側に興味あるんだ~」ンフフー
猛竜騎士「…うっせ!」
ウィッチ「ひどいわねぇ……」
猛竜騎士「つーか、相談しに来たんだよ」
ウィッチ「相談?」
猛竜騎士「少しして、魔剣士と白姫がある程度強くなったら…俺らは人里離れたルートで世界を周ろうと思ってるんだ」
ウィッチ「…どういうこと?」
猛竜騎士「どうせ時間が出来たし、せっかくだからな。これはあいつらに内緒だぞ?」
ウィッチ「…ちょっと待って、世界踏破をするつもり?」
猛竜騎士「だからそう言ってるじゃねえか」
ウィッチ「あ、あのね…」
ウィッチ「どれだけ難しいことか分かってるの?」
猛竜騎士「金、体力、実力、全て揃っている」
ウィッチ「それはあなただけでしょう。世界踏破を出来るほど、あの子たちに体力と実力はない」
猛竜騎士「だから、ここに来たんだが」
ウィッチ「無茶を言わないで。短期間で世界踏破の実力をつけるなんて絶対に無理」
猛竜騎士「足りない部分は俺がフォローする」
ウィッチ「……あなた、いくつだと思ってるの?もう40近いのに、そんなの無理に決まってるでしょ」
猛竜騎士「無理という言葉はない」
ウィッチ「…バカじゃないの?あの当時のパーティですら、世界踏破にどれだけ苦労したことか」
猛竜騎士「あれから時間も経ち、馬車や船も発展した。舗装された道もあるだろうに」
ウィッチ「それでも、東方、南方、北方の険しい自然を乗り越えることはできない」
猛竜騎士「……あいつらを見ていて、もう1度挑戦したくなったんだよ」
ウィッチ「…!」
猛竜騎士「ここの自然港へ足を運んだ時や、門をくぐった時、俺は何でもない素振りを見せていた」
猛竜騎士「だが、実際はクラウドウッドや門をくぐった時の心は高鳴ってい。」
猛竜騎士「……その時、もう1度世界踏破を挑戦したいと思ったんだ」
ウィッチ「…確かに、今は昔と比べて世界踏破のグレードは下がっている」
ウィッチ「だけど、今は今で情勢も変わり、当時とは違った難易度となってる」
ウィッチ「……あなたのもう1度見たい夢で、あの子たちを犠牲に…巻き込むつもり?」
猛竜騎士「今回のことを、"夢のきっかけ"にしたいのさ」ニヤッ
ウィッチ「…っ!」
猛竜騎士「…お前にどうこう言われようが、俺の考えは揺るがない」
ウィッチ「あのね…!」
猛竜騎士「それに、世界踏破ということを教えてみろ。あいつらは喜んで快諾するだろうよ」
ウィッチ「…」
猛竜騎士「ま、今それを言えば調子に乗るし…隠し通さないといけないがな」フン
ウィッチ「……」ハァァ
ウィッチ「もう無理ね、そうなったあなたには何を言っても無駄……か」
猛竜騎士「よく分かってるじゃないの」ニカッ
ウィッチ「…えぇ、分かってるわよ」ハァ
猛竜騎士「で、そこで相談ってわけだ」
ウィッチ「何よ?」
猛竜騎士「……あいつらを、簡単により強くするための知恵を貸してくれ」
ウィッチ「…」
猛竜騎士「お前なら、それもチョイチョイとやれそうな気がしてな」
ウィッチ「…無茶なことばっかり言うんだから」
猛竜騎士「ははっ」
ウィッチ「ん~……」
ウィッチ「…」
ウィッチ「……ちょっと、こっちに来なさい」クイッ
猛竜騎士「お、なんだ?」
ウィッチ「…まぁ、ついてきなさい。こっちよ」クルッ
トコトコトコ……
猛竜騎士「ん、おうよ…」
ウィッチ「…」
…………
……
…
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