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第五章【西方大地】

5-7 エルフ族との出会い

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―――【 次の日 朝10時頃 】

ザッザッザッ……ガサッ……!

白姫「!」

魔剣士「お…?」

猛竜騎士「お…」

…サァァッ…

白姫「…あれ?」
白姫「なんか、この辺から森林っていうよりなんか道っぽく整備されてるような……」

森林の茂みの一角を抜けると、ふと目の前に"道"が現れた。
それも獣道のようなものではなく、きちんと整備された、造られた道のようなもの。
そう、まるでそれは……

魔剣士「…最初の自然港の門の近くみたいな感じだな?」キョロキョロ
猛竜騎士「……やっとここまで来たか」
魔剣士「お?」
猛竜騎士「ここは、昨日話をした目的の村の領地内だってことさ」
白姫「ってことは…!」
猛竜騎士「ここからは、安全圏内。あと少し歩けば、もう村が見えるだろう」
白姫「…着いたんですね」
猛竜騎士「……あぁ。良く頑張ったな」

魔剣士「や、やっとか…!」プルプル
魔剣士「……ここまで面倒くせぇ場所に村ぁ作りやがって!」
魔剣士「俺が、どんな村だか拝んでやるぜコラァァァアアッ!」ダッ!
ダダダダダッ!!!

白姫「あっ、魔剣士!?」
猛竜騎士「子供か…」
白姫「本を持ってるのに、また倒れちゃうよ~!」
猛竜騎士「……いや」
 
………


ダダダダダダッ!!
魔剣士「はっはっはっはっ!置いてくぞお前らぁ~~っ!!」


………

白姫「…ほ、本を全部担いだまま行っちゃった」
猛竜騎士「体力、筋力、この短期間で成長したんだろうな」
白姫「で、ですけどこんなわずかな期間であそこまで…?」
猛竜騎士「自覚はしてないだろうが、魔力による筋力増加もしているんだろう」
白姫「え?」
猛竜騎士「姫様には見せたが、あの時の俺の技を覚えているか?」
白姫「えーっと…。部分的に強化するっていう……?」

猛竜騎士「そうそう…」
猛竜騎士「魔剣士は既に大体の基本もできているし、魔法も扱いは慣れているのは分かってると思うが……」
猛竜騎士「それを踏まえ、あいつは俺のような部分強化で剣術の純粋な力を強化し、」
猛竜騎士「より物理と魔法で押し込むパワー型に成長させてやりたかった」

白姫「ふむふむ」

猛竜騎士「だがあいつは、繊細な魔力の扱いや俺と同じ瞬間強化に耐える筋力がなかった」
猛竜騎士「そこで本を持たせ、体力をつけさせ、魔導書の基本を体感させた」
猛竜騎士「今のアイツは、自然と魔力による肉体強化もしている…」
猛竜騎士「俺は物理メインだが、あいつは幼いころからの鍛錬もあり、物理魔法どちらもパワーのある実力者になりそうだな」フゥ

白姫「凄く強くなるってことですね♪」
 
猛竜騎士「まだまだヒヨっこだが、そうなるやもしれん…な」
猛竜騎士「だが、これは内緒だぞ」
猛竜騎士「こういうことを言うと、あいつはすぐ調子に乗るんだから……」

白姫「あはは、わかりましたっ」クスッ


魔剣士「…うおーーーいっ!遅いぞお前ら、早く来いっつーのーーーー!!!」


猛竜騎士「……はぁ。それじゃ行きますか」
白姫「はいっ!」

…………
……


 

……
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 目的地 エルフ族の隠れ里 】

…ザッ…
魔剣士「……門が見えるぞ!」
白姫「ってことは……」
猛竜騎士「着いたんだ。ここが目的地、エルフ族の隠れ里だ」ニヤッ
魔剣士「…え」
白姫「エルフ族!?」

猛竜騎士「村についてから説明しようと思っていたが…」
猛竜騎士「ここは魔法に長けた人型の種族、エルフ族の隠れ里なんだ」

魔剣士「なんだエルフ族って……」
 
猛竜騎士「魔法に長け、美しい容姿を持ち、森に住む人型の魔族といったほうがいいかね」
猛竜騎士「魔族とはいえ、人間と変わらないと思ってもらっていい」
猛竜騎士「だが、ちょっとした事情があり…人間を嫌う種族でもある」

魔剣士「…そんな連中の里なのに、俺らが受け入れられるのか?」
猛竜騎士「俺の古い馴染みだと言っただろう。元パーティメンバーなんだよ」
魔剣士「ははぁ~……」
猛竜騎士「んじゃ、行くぞ」
魔剣士「おう…」
ザッザッザッ……
猛竜騎士「……あと言い忘れたが、門の前についたらちょっと静かにしてろよ」
猛竜騎士「馴染みとはいえ、エルフ族の村には違いないんだからな」

魔剣士「へいへい…」
 
ザッザッザッザッ……

魔剣士(エルフ族か、どんな奴らなんだろうな)
白姫(異文化との交流だぁ…。ドキドキしてきた……!)ドキドキ
猛竜騎士「…」キョロキョロ

歩みを進める一向。
エルフ族の話を聞いて、2…3分ほどだった頃であろうか。
三人が歩く先に"門"が見えてきた。

ザッザッ……
魔剣士(……お、門が近づいてきた?)
白姫(……あっ、だれか立ってるような)
猛竜騎士(さぁて、ここが面倒くさいんだよねぇ……)ハァ

…バッ!!…
門番エルフ「……待て、そこの者!そこで立ち止まれ!」バッ!

突然、声が聞こえた。
立ち止まれと、高い声が唸るようにして響き渡る。

魔剣士「!」ピタッ
白姫「!」ピタッ
猛竜騎士「…」ピタッ

門番エルフ「その姿、人間の冒険者と見受ける!」
門番エルフ「これより先はエルフ族の領地、人間が立ち入ることは許さん!」

魔剣士(…お、おいおい)
白姫(まだ全然離れているのに、あそこから私たちが認識できるの?)
猛竜騎士(相変わらずだねぇ……)

門番エルフ「5秒以内に離れなければ、我が魔弓術で貴様たちを射る!」ギリギリッ…!!

魔剣士「!」
白姫「こ、攻撃されるんですか!?」
猛竜騎士「あわてるなって。つーかマジで静かにしてろ、入れなくなるからな」

門番エルフ「…1つ!!」

猛竜騎士「……門番よ!声が聞こえるか!」

門番エルフ「…2つ!!」

猛竜騎士「我々は敵ではない、この里に住むとあるエルフを訪ねて来た!」

門番エルフ「…3つ!!」

猛竜騎士「俺は、その里の"ウィッチエルフ"の元パーティだ!」

門番エルフ「…4つ!!」

猛竜騎士「話を通せば分かる、里長とも顔見知りだ!猛竜騎士が来たと願いたい!」

門番エルフ「…5つ!!」

白姫「か、カウントが止まってないですよ!?」
魔剣士「おいおいっ!?」
猛竜騎士「あわてるな。とにかく静かにしていろ」

門番エルフ「…」
門番エルフ「……わかった」
門番エルフ「しばし、待たれよ……」スッ…

白姫「あっ、姿が消えた……?」
魔剣士「どっか行ったのか……?」
猛竜騎士「…5つを数えて動かなかったから、俺らの言葉を一旦は信用したんだ」
猛竜騎士「あそこで動いていれば、恐らく矢を放たれていた」
白姫「…!」
魔剣士「なるほどな……」

もしあそこで動けば、門番に立つエルフは魔剣士らを信用しなかっただろう。
エルフ族はとにかく人間へ疑り深い種族であり、それが例え真実だろうと容赦なく攻撃を仕掛けてくるのだ。

猛竜騎士「……っと、見ろ」
魔剣士「ん…」
白姫「あ…」

ゴッ…!ズゴゴゴゴッ……!!

白姫「門が…」
魔剣士「開いた……?」

…ザッ!
門番エルフ「……猛竜騎士殿よ!」
門番エルフ「里長に話は聞いた!その言葉を信用し、門を開ける!」
門番エルフ「歓迎しよう……!」

猛竜騎士「…行くぞ」
魔剣士「お、おうっ……」
白姫「は、はいっ!」

タッタッタッタッタッ……

…………
……


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