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第五章【西方大地】

5-2 真の冒険者へ

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――――【 西方大地 自然港 】

魔剣士「…ここが西方大地ってやつなのか」
白姫「ついたー!」
猛竜騎士「久しぶりだな、ここも」キョロキョロ

魔剣士「はっはっは、ここも人が多くて賑わって……」
魔剣士「……って」
魔剣士「なんだありゃっ!!?」

……………
………


…ゴォォ……ォォォオオォ……ォォ……


………
……………

魔剣士「で、でけぇぇっ!?」
白姫「な、何あれっ!?」
魔剣士「クッソでけぇ……"樹"、か!?」
白姫「わわっ、高すぎて雲を突き抜けてるよ!?」
魔剣士「大自然の大地っつったって、限度があるだろ!?」

猛竜騎士「……今日は天気がいいから、よく見えるじゃないか」
猛竜騎士「あれが西方大地のランドマークタワーの一つ、"クラウドウッド"だ。」

魔剣士「クラウド…」白姫「ウッド…!」

――――西方大地の自然港で最初見たものは、あまりにも衝撃的すぎる光景だった。
魔剣士らの遠くに見えたのは、雲を突き抜けるほどの巨大な大樹。
まるで巨大な建物が如く、
太陽へ届きそうなほどに高く、太く、生けとし生けるものを見下ろしていた。
ここはその名の通り、大自然が蠢く"西方大地"なのだ。
その情景に、魔剣士と白姫は絶句し、海を見たあの日のように、目を丸くし、感動をしていた。
そして猛竜騎士は、魔剣士と白姫の勉学のため、
その歴史について語ろうとしたの…だが……

猛竜騎士「え~、ゴホンッ」
猛竜騎士「西方の大自然を象徴するが如く、樹齢6000万年とも呼ばれる魔法樹の一つで……」ハッ

キャー!!ワイワイ!
白姫「これって、あの大きい樹からできてるんですか!?」
魔剣士「頑丈そうだな、魔法も宿ってるしアクセサリーとして使えそうだ」
自然商人「おうっ!おふたがた、お目が高いねっ!!」
ワイワイ!キャー!!

猛竜騎士「成長しねえなー君たちはー」シクシク

……当然が如く、話は聞いていないと…涙した。

魔剣士「……あぁ、いやすまん!」ハッハッハ
白姫「あ、あまりにも凄くて、その……!」
猛竜騎士「…ったく。興奮する気持ちは分からんでもないがな」ハァ

白姫「……し、信じられません。」
白姫「あれが本物で、なんか…もう…………!」ドキドキッ…

猛竜騎士「…まぁ、それはあとででいい。もう1つ、この港で買っていかねばならないものがあるんだ」
白姫「なんですか?」
猛竜騎士「この西方大地、通称"ネイチャーワールド"は見たまんま大自然なのは分かるな?」
白姫「はいっ」
猛竜騎士「この大地には多くの素材が眠り、俺のような元冒険家の商人や、冒険家が上級魔物の討伐に出入りをしているんだ」
白姫「へぇ~!」
魔剣士「秘宝!?つまり!俺の出番だな!?」バッ!
猛竜騎士「いやいらないです」
魔剣士「ひどい」

猛竜騎士「…ごほんっ!」
猛竜騎士「それで話を戻すが、木々が多いということは、書物も多く生産される。」
猛竜騎士「紙の原料が木材なのは知っているだろう?」

魔剣士「えっ?」
白姫「えぇっ!?」

猛竜騎士「」

魔剣士「冗談だろ!?」
白姫「紙って、材木からできているんですか!?」

猛竜騎士「……そうなの」
猛竜騎士「まぁいいです、話を続けます」
猛竜騎士「それで、西方大地の生産物の一つに"紙"が多いことで、多くの"魔術師"や"研究者"が住んでいるんだが……」
猛竜騎士「彼らは、その有り余る資源で様々な本を作成し、あらゆる場所で売っているんだ」

魔剣士「へぇ、それで?」

猛竜騎士「…ま、そこまで話せばあとは簡単。ちょっとついてこい」
猛竜騎士「すぐにわかるさ」

魔剣士「…?」
白姫「…?」
 
…………
……



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の本屋 】

…ズシッ!!!
魔剣士「ま、またかよぉぉぉおっ!!?」グギギ…!!
白姫「お、重そうっ…」

本屋店員「100冊全部で、98万ゴールドになります♪」
猛竜騎士「金貨1枚で。釣りはいらないから」スッ
本屋店員「ありがとうございまーす♪」
猛竜騎士「こちらこそありがとう」

魔剣士「…か、買いすぎだろ!!」
魔剣士「こんなに本ばっか、何するんだよ……!!」プルプル


猛竜騎士「西方大地は広くてな、俺の馴染みの家がある村まで相当遠い」
猛竜騎士「そこで休憩しつつこの本を読み、君たちは勉強してもらおうというわけだ」ニヤー…

魔剣士「はっ…?」
魔剣士「べ、勉強なんかぜってー嫌だかんな!!」プルプル

白姫「勉強ですか!?」

猛竜騎士「魔剣士と白姫には、教養を教えねばなるまいに……」
猛竜騎士「有無を言わさず、付き合ってもらうからな」

魔剣士「な、なんでだ……!嫌だぞ、絶対にやらんっ!!」
猛竜騎士「……まぁそう言うな」
魔剣士「あ?」
猛竜騎士「買った本の中には、ボーナスタイムのような本も入っているぞ」
魔剣士「本にボーナスタイムもクソもねーだろ…」
猛竜騎士「…魔導書だ」ボソッ
魔剣士「!」
猛竜騎士「興味がわくだろ?」
魔剣士「ま、マジで……!」
白姫「まどーしょって…なんですか?」

猛竜騎士「魔導書というのは、魔法技術を会得するための本のことさ」
猛竜騎士「本自体に魔力が宿っていて、普通より簡易に魔法を会得することができる凄い本なんだ」

白姫「す、凄いですね!?」
猛竜騎士「その本のほとんどが、この西方大地産でな。本場だから、安く入手できるんだよ」
白姫「も、もしかして私のとかも……」
猛竜騎士「もちろんだ。姫様にも、最低限の魔法や戦い方は会得してほしいからな」
白姫「……っ!」キラキラ
猛竜騎士(……はは、魔剣士と違ってこっちは目ぇ輝かせて)
白姫「せ、勉強も全部、精一杯頑張りますっ!よろしくおねがいしますっ!」
猛竜騎士「ん、任された」
魔剣士「…魔導書なら付き合うが、普通の勉強は嫌だぞ」
猛竜騎士「じゃ、魔導書もナシな。お前には何も教えん」
魔剣士「なっ…!」
猛竜騎士「勉強、するよな?」ニコッ
魔剣士「く、くそ…!卑怯だぞ……!」

猛竜騎士「…そんなに嫌ならいいんだぞ?」
猛竜騎士「お前が知らないところで、白姫に色々な悪影響な本読ませちゃうからなぁ……」ニタニタ

魔剣士「お、おいっ!」
魔剣士「どうしても、勉強しろっつーのか……!」

猛竜騎士「そーいうことだ」

魔剣士「くそったれ……!」
魔剣士「勉強なんかしたくねぇーっつーのに……」ハァァ

白姫「…魔剣士は、私と勉強するのが嫌なの?」シュン
魔剣士「へっ、いやっ!?」
白姫「じゃあ、一緒に勉強しようよ♪」
魔剣士「……ハイ」シュン

猛竜騎士「ぷっ…!」
猛竜騎士「ひゃーっはっはっはっはっ!!!」
猛竜騎士「はっはっはっはっ!!」

魔剣士「…ぶ、ぶっ殺す」プルプル


…………
……





……
…………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 少しして 自然港 大森林前の守門 】

三人は本を購入後、雑談をしながら自然港の更に西側へと移動した。
すると、目の前に巨大な壁と、頑丈そうな材木が隙間なく詰められた"門"が現れた。

猛竜騎士「……さてと、着いたぞ」
白姫「ここは……」
魔剣士「門、か?」

門番「…」ビシッ

白姫「立派な門に、強そうな門番さんが……?」

猛竜騎士「うむ…。その自然な大地は、全ての生き物にとって平等でな……」
猛竜騎士「多くの宝とも呼べる素材の他、弱肉強食という言葉が当てはまる世界が広がっている」
猛竜騎士「それは人間に対しても凶暴であり、時に町や村へも襲ってくることもある」
猛竜騎士「それに対し、古来より魔術者や研究家、強固な戦士たちが造り上げた門が強力な結界となり、」
猛竜騎士「自然港を始めとする、その西方大地の各所には人々を守る"門"が設置してあるんだ」

魔剣士「…つまり」
魔剣士「ここから出たら、死んでも文句はいえないとか……そういうことか?」

猛竜騎士「この大地は、自然とともに歩むべき大地。」
猛竜騎士「弱肉強食だと言った通り、そういうことだ」

白姫「ししし、死ぬんですか!?」ガクガク

猛竜騎士「ははは、まぁ…安心はしていい。」
猛竜騎士「門の近くは、魔術師の結界もあるし、ある程度の舗装された道もある」
猛竜騎士「だが、一たび道を離れ、獣や森の奥へと迷い込まなけりゃ大丈夫さ」

白姫「そうですかぁ…」ホッ
猛竜騎士「俺らの目的地は、その離れた道や大自然の獣道のルートだがな」ハハハ
白姫「」
魔剣士「ほう…。つまりなんだ、セントラルとかと違って魔物に襲われる前提ってことだな?」
猛竜騎士「自然界に足を踏み入れるのと一緒だからな」
魔剣士「今回、リュックには大量の本だけで、餌はない。つ~ま~り……!」
猛竜騎士「あの時と違って、出てくる魔物や獣は全て倒すってことさ。全てが敵だ……」ニヤッ
魔剣士「…っ!」ウズッ!
白姫「も、猛竜騎士さん!でも、食べ物も一切持ってないのは大丈夫なんですか?」
猛竜騎士「なんのための自然だ?」
白姫「!」
猛竜騎士「食べ物なんざ、どこにでもある。魔物だって、その例外じゃないんだ」
白姫「あ…!」

猛竜騎士「今回の旅は、ちょーっとばかし"楽しく"なるかもしれないな」
猛竜騎士「覚悟しろよ、俺の友人のいる村があるのは…相当な場所だぞ……?」ニタァ

魔剣士「……上等っ!!」ゾクッ!
白姫「が、頑張ります!危ないかもしれませんが、大自然を歩けるなんて楽しみですっ!」

猛竜騎士(ははは……)
猛竜騎士(二人にとって、初めてになる本格的な冒険修行だが……)
猛竜騎士(はてさて、どうなるかねぇ……)
猛竜騎士(俺も若い頃は、ここで痛い目見せられたし……)ククク

魔剣士「…早く行こうぜ、オッサン!」
白姫「怖いけど、楽しみだなぁ……」

猛竜騎士「そんなことを言っていられるのは今のうちかもしれんぞ……?」
猛竜騎士「とりあえず、出発しますか!」

魔剣士「…おうっ!」
白姫「はいっ!」
猛竜騎士「では、開けてくれるかい門番さん」

門番「…」ペコッ
門番「……お気をつけて」

ガチャッ!!ギィィッ…………!!

魔剣士「……出発だあぁああっ!!」
白姫「しゅっぱつ~!」
猛竜騎士「…久々だな、この自然の香り」クンッ


三人はそれぞれの想いを胸に秘め、
新たな大地のダンジョンへとその足を……

……ザッ!!!……

踏み入れた――――……!!


魔剣士(くぅぅ~っ!!来た来た来たぁぁああっ!!)ブルッ!
白姫(これが、私にとって重い一歩なんだ…!絶対に、忘れない!)
猛竜騎士(……)フッ

…………
……



・・・・・・・・・・・・
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・・・・
・・・
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ついに……。
西方大地の「自然ダンジョン」とも呼ぶべき大森森へと足を踏み入れた三人。
セントラルのあった中央大地と全く違う、
本当の「冒険者としての戦い」がここから幕を開けるのだ――――……!
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