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第二章【強者と弱者】
2-5 道しるべ
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???「……お前、セントラル王国の魔剣士だろ」コキコキ
???「隣のは…姫様だな。その隣の男は…知らないがなぁ……」
???「まぁいい…。その首ぃ、貰い受けるぞ……?」
魔剣士「…まさか!」
市場商人「バウンティハンター…だな。噂をすればなんとやら」ハァ
Bハンター「…魔剣士とやら、大人しく捕まってもらおうか」
Bハンター「生きて渡したほうが、俺としても金になるし嬉しいんだがな~?」
魔剣士「…断ると言ったら」
Bハンター「…殺すまでぇっ!!!」ダッ!
ダダダダダッ!!!!
魔剣士「は、はえぇっ!!?」
魔剣士「くっ、くそがぁぁああっ!!」チャキッ!!
ビュンッ!!!
……ガキィンッ!!!……
Bハンター「!」
Bハンター「…ほほう、いい動作だ。抜くまでの早さはそれなりだ」ググッ…
魔剣士「ぐっ、あ…危ねぇ……!」ギリギリッ…
Bハンター「ククク、歯向かうなら仕方ねぇな…このまま首を落すっ!」グワッ!
魔剣士「ぬおっ、なんて力!!」
白姫「…い、市場商人さんっ!魔剣士がっ!」
市場商人「…」
白姫「い、市場商人さん…?」
市場商人「…あそこで殺されるようなら、他のバウンティハンターにゃ太刀打ちできん」
白姫「!」
市場商人「もしやられたなら、姫様の家出はここで終わりってことだな」
白姫「そ、そんなっ…!?」
…ガガキィンッ!!キィンッ!!!…
魔剣士「くっそ、なんだこいつ…!」
Bハンター「おぉ、やるじゃない!だけどねぇ……」ビュンッ!!
ガキャンッッ!!!
魔剣士「なっ、俺の剣が弾かれっ…!?」
クルクルクルッ……サスッッ!
Bハンター「君の剣術じゃ、俺には敵わない…ってね」ニタッ
魔剣士「や、やっべ!」ダッ!
Bハンター「剣を拾う前に、切り刻むっ!」バッ!!
魔剣士「…っち!剣術だけだと思うなッ!!」パァァッ!!
ピカッ…!!ボォンッ!!!
Bハンター「ぎゃっ!?」グラッ
魔剣士「…っしゃあ!!」
ダダダダッ…チャキッ!
魔剣士「剣も戻ればこっちのもの!このまま、連撃いくぜぇぇっ!!」
ダダダダダッ!!!
白姫「あっ、魔剣士が押してるっ!」
市場商人「……いや」
ダダダッ…!!!
魔剣士「おりゃああっ!!」ビュンッ!!!
Bハンター「…甘いねぇ!」バッ!
…ガキャアンッ!!
魔剣士「うぐっ!俺の魔法を受けてもまだ、防御をするか…!」
Bハンター「うへへっ…!」
……ザワッ!
魔剣士「んっ…」ピクッ
Bハンター「ん~…?」
ザワザワ…ガヤガヤ……!!
町人たち「…なんか、裏通りで凄い音がしてるぞ?」
町人たち「誰かいるみたいだ、まさかケンカじゃねぇだろうな……」
魔剣士「…げっ、他の人が」
Bハンター「あらあら、騒ぎになりそ…」
魔剣士「…まぁ、俺はこのままでも構わないぜ?」
Bハンター「…俺はあまり顔を見せたくないからな。また会おうかっ!」バッ!
タァンッ、タタタタァンッ……!!
魔剣士「!?」
魔剣士「な、なんて脚力してやがる…!」
魔剣士「壁同士が狭いとはいえ、壁を蹴って屋根の上に消えやがった……!」
市場商人「…」
市場商人「……たまたま、救われたな」ハァ
市場商人「あのままやってたら、恐らく負けていただろう」
魔剣士「…何?どういう意味だそりゃ、俺が押してただろうが!」
白姫「ま、魔剣士…」
市場商人「…とりあえず、人も多くなってきたし町の外へ行こう。」クイッ
……………
………
…
…
………
……………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 外の草原 】
ヒュウウッ……!
魔剣士「…市場商人さん、どういうことだよ!俺が負けてたって!」
市場商人「…気づかなかったのか?」
魔剣士「何が!」
市場商人「あいつの脚力の凄まじさだ」
魔剣士「…それがなんの関係がある!」
市場商人「俺らの前に現れた時、屋上から飛び降りても影響せず…」
市場商人「消える時に、壁同士を蹴りあげるほどの脚力」
市場商人「あの脚で足技を使われていたら、お前の首は一撃で折れていたはずだ」
魔剣士「うっ…!?」
市場商人「最初に現れた時点で、それに気付かずに剣術で接近戦を挑んだだろう」
市場商人「その時、足技で足を蹴られていたら…骨が折れ、崩れ落ちた」
市場商人「そこへ強烈な一撃をされれば、お前はもう…この世にはいなかった」
魔剣士「…ッ!」
市場商人「…粋がるな。お前が考えるほど、この世は簡単じゃねーんだぞ」
市場商人「自信を持つのはいい」
市場商人「だが、それが過信となることを忘れるんじゃない」
魔剣士「…うるせぇ。」
魔剣士「うるせぇ…!うるせぇっ……!!」
市場商人「…そうやって、お前はすぐに感情的、衝動的に行動してそれを口にする」
市場商人「雰囲気に流されやすいのもいいが、守るべき人がいるならもっと落ち着き行動しろ」
市場商人「…大人になれということだ」
魔剣士「うるせぇ……っ!!」
魔剣士「うるせぇんだよ、ぶっ殺すぞ!!!」チャキッ!!
市場商人「すぐに、そうなるか。衝動的になる以上、お前には姫様は守れんよ」
市場商人「……ただの、子供のようなお前にはな」
魔剣士「黙れ…!クソ野郎がああああっ!!!」ゴッ!!
……ボォンッ!!ゴォォォッ……!!……
市場商人「…炎を剣身に纏ったところで、今のお前はかっこもつかんぞ?」
魔剣士「黙れぇぇええええっ!!!」ダッ!
ダダダダダッ……!!
市場商人「……まっ。だから、俺はココへ来たんだがな」フゥ
魔剣士「意味の分からんことをっ!!」ビュンッ!!
市場商人「そんな属性バレバレで、俺に攻撃が入るかよ」スッ
…パシッ!!!
魔剣士「…なっ!?」
白姫「ま、魔剣士の攻撃を簡単に素手で受け止めた…!?」
魔剣士「な、なん…!」
市場商人「まぁ経験の差だ。それよりな、倒すべき相手は俺じゃねぇだろ」
魔剣士「…あぁ!?」
市場商人「ほれ、出てくるぞ」
タァンッ!!…ヒュオオォォォオッッ!!!
Bハンター「…仲間割れか!?隙あったぞ、そのクビいただいたぁぁぁっ!!!」チャキッ!
白姫「あっ!」
魔剣士「なっ、さっきのヤツ…空からの攻撃っ!?」
市場商人「俺らの後を着いてきて、奇襲を狙っていたんだよ。良い動きだな」
魔剣士「冷静に分析してる場合かよ!!」
市場商人「…面倒くせぇなぁ」ハァ
市場商人「ぬ、ぬぅぅぅっ……!!」ビキビキッ!!
魔剣士「はっ…!?」
市場商人「…ふんっ!!」ビュッ!!
Bハンター「へ…」
…ボゴォンッ!!!
Bハンター「あがっ!?」
魔剣士「!」
白姫「!」
ズザザザァッ……!ドゴォンッ!!
パラパラ……
Bハンター「…ッ」ピクピク
市場商人「…空からの奇襲の考えは悪くないが、落ちてくるボールを打つのは簡単だ」
市場商人「もっと腕ぇ磨いてから出直せ、二流バウンティハンターが」
魔剣士「い、一撃で……」
白姫「す、凄い…!」
市場商人「ふむ…」
ザッザッザッ…ゴソゴソ
Bハンター「…」ピクピク
市場商人「……気絶してるとこ悪いが、タバコ1本もらうぜ」パクッ
魔剣士「…っ!」
カチカチッ…シュボッ!
市場商人「…」スゥッ
市場商人「…」スゥゥゥ……
市場商人「…んむ、二流の割にいいタバコ持ってるじゃない」フゥ~…
魔剣士「…ッ」
魔剣士「い、市場商人さん…!」
魔剣士「今の一撃は…。あんた一体……!」
市場商人「……ん」
市場商人「あぁ、そうだったな……」
市場商人「クックック…、聞いて驚くなよ。実は、俺はな……」ニヤッ
魔剣士「…っ!」ゴクッ
白姫「…っ」ゴクッ
市場商人「……元、冒険しぇあごっふぉっ!!」ゲホッ!
魔剣士(エェェッ!!)
白姫(いいところで…咳込んだぁぁっ!!)
市場商人「ゴホゴホッ!?ゲェッホ!!!」
市場商人「う゛んっ、う゛ぅ゛ぅ゛んっ!!ゴホッ!」ゲホッ!!
市場商人「……ふぅ」
市場商人「…はっはっは、かっこつけて久々にタバコ吸うもんじゃないな」
魔剣士「いや、今はそういうのいいから!」
市場商人「ん、あぁ…そうか。」
市場商人「えっとな…」
市場商人「…」
市場商人「俺は、"元冒険者"にして…賞金首狩りもしていた"元バウンティハンター"……」
市場商人「元、猛竜騎士…って名前の人間さ」フゥッ
魔剣士「も、元…バウンティハンター!?」
白姫「そ、そうだったんだ…!」
猛竜騎士(市場商人)「…まぁ、引退して大分経つけどな」
猛竜騎士「もう俺はそんなスマートな存在じゃねぇし、自己紹介も恥ずかしいだけだが」ハハハ
魔剣士「…!」
白姫「凄い…」
猛竜騎士「……で、魔剣士」
魔剣士「な、なんだよ!」
猛竜騎士「古い仲のよしみだ、お前が姫様を守れるよう…手ほどきをしてやるよ」
魔剣士「…」
魔剣士「……なんだって?」
猛竜騎士「お姫様を守れるよう、俺が色々教えてやるっつーんだよ」
魔剣士「え…。な、なんでだ……?」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士「どうして、俺に教えようと…?」
猛竜騎士「どうしてって…」
魔剣士「…」
猛竜騎士「…どうしてだろうな?」
魔剣士「」
猛竜騎士「まぁなんだ…。面白そうなこと見ると、やっぱり冒険者でなぁ……」
猛竜騎士「首ぃ突っ込んでみたくなるんだよ。」
猛竜騎士「それの発端が、魔剣士だっつーなら尚更な」ハハハ
魔剣士「な、なんつーオッサン…」ピクピク
猛竜騎士「いや、お前がいらないっつーなら俺は帰るぜ?」
魔剣士「む…」
猛竜騎士「正直な話、お前がのたれ死のうが捕まろうが、関係のないことだ」
猛竜騎士「だが、教えてくれっつーなら教えてやる」
魔剣士「…」
猛竜騎士「…そこにダウンしてるバウンティハンターは、俺らの世界じゃマジで二流だ」
猛竜騎士「お前一人で、本当にこの先…あれより強い相手に、守れるのか?」
魔剣士「…っ」
猛竜騎士「それと、姫様もな」
白姫「は、はいっ」
猛竜騎士「正直な、コイツとの旅は現状…非常に危険だと思ったほうがいい」
白姫「そ、そうなんですか…?」
猛竜騎士「王様はアンタを早く連れ戻すために賞金を出したが、これは逆効果だな」
猛竜騎士「所詮、魔剣士は俺らの世界じゃ赤子とおなじ。」
猛竜騎士「こんないい"物件"、バウンティハンターが放っておくわけがない」
猛竜騎士「そこに一緒にいる、可愛らしいお姫様」
猛竜騎士「言葉にゃ悪いが……ハッキリ言わせてもらうぞ」
猛竜騎士「魔剣士の死体の前で、無惨な目に合い、絶望を味わいながら…身代金を要求されるだろう。」
猛竜騎士「そしてそれは、"そんなことがあるかもしれない"じゃないぜ」
猛竜騎士「もうすぐ、そうなる…だ」
魔剣士「…っ!」ゾクッ!
白姫「…!」
猛竜騎士「…魔剣士。お前、俺と戦って勝てる自信あるか」
魔剣士「えっ?」
猛竜騎士「…俺の一撃を見ただけで、お前が俺に勝てるかどうかを判断できるくらいの目利きはできんだろ?」
魔剣士「…」
猛竜騎士「…」ギロッ
魔剣士「ッ!」
猛竜騎士「…どうなんだ」
魔剣士「…ッ」
猛竜騎士「……言葉にならないか?」
猛竜騎士「分かってるな、お前じゃ俺に勝てん」
猛竜騎士「現役から退いた俺にですら…だ」
魔剣士「…っ」ギリッ…
猛竜騎士「……お前が決めろ」
猛竜騎士「俺に教えを請うか?」
猛竜騎士「……いらないのか」
魔剣士「…」
白姫「…」
魔剣士「…」
魔剣士「……オッサン」
猛竜騎士「なんだ」
魔剣士「…もし、アンタを受け入れたら…それが現実にならないんだよな」
猛竜騎士「知らん」
魔剣士「し、知らんってな!」
猛竜騎士「…少なくとも、すぐにはそうならない…だ。」
猛竜騎士「だが、今日…俺がいなければ。恐らく、この二流相手の時点でそれは現実になっていた」
猛竜騎士「良かったな、俺と知り合いでよ」
魔剣士「…!」
白姫「魔剣士…」
魔剣士「…っ」
白姫「…」
猛竜騎士「……で、どうするんだ」
猛竜騎士「決断力の遅い男はモテねぇぞぉ~?」
魔剣士「…」
魔剣士「……ッ」
猛竜騎士「…」
魔剣士「……わかった」ボソッ
猛竜騎士「んあ」
魔剣士「……たの…む…よ」
猛竜騎士「…」
魔剣士「…分かったよ。教えてくれよ。俺に白姫を守るくらいの…力を……」
魔剣士「俺自身を…強くする力を……教えてくれッ……!」
猛竜騎士「…」
猛竜騎士「…んっ。わかった」ニカッ
魔剣士「…っ」
白姫「…っ」
白姫「…ま、魔剣士」
白姫「そ、そんなに危険が伴うなら…私はお城に戻ってもいいんだよ……?」
魔剣士「な、なに…?」
白姫「こんなに危険になるなんて、思わなかったから…。」
白姫「魔剣士がこんなに危険な目に合うなら、私のわがままなんて……!」
魔剣士「…おいおい、それは退くなよ」
白姫「!」
魔剣士「なに、白姫の夢ってそんな簡単なもんだったの?」
白姫「え…?」
魔剣士「外の世界が見たい、美しい海が見たい、外の世界を知りたい。」
魔剣士「…城に戻ったら、それは一生叶わねぇんじゃねえの?」
白姫「で、でも…!」
魔剣士「…俺を従者と言った以上、姫様には従うけどよ」
魔剣士「家に帰ること…それが本当の望みなのか?」
白姫「…!」
魔剣士「…」
白姫「…でも、魔剣士が危険で!」
魔剣士「…オッサンが強くしてくれるっつーし、俺は重く考えてねーぜ?」
白姫「…っ」
魔剣士「ただ、俺と付き合う以上は白姫が危険っつーことも認識してくれ」
魔剣士「旅立つ前に言った通り、お前を守る努力はする」
魔剣士「精一杯、守ろうとはする。それがどうなるかは…正直分からん」
魔剣士「だけど……守ろうとする心は本心だ。それは分かって欲しい」
白姫「魔剣士…」
猛竜騎士(……魔剣士め。外見に出さないが…内面でに"キレ"てやがるな)
猛竜騎士(言葉はああいっても、俺は出来るから、着いてこいってオーラを出してやがる……)
猛竜騎士(どこかで、燃え上がるような言葉でも言われたか?)
猛竜騎士(お姫様と知り合い、冒険をするから"まるで主人公のようだ"とか…言われたんじゃないか)
猛竜騎士(…気付かぬ過信、気付かぬ自惚れは失敗を招くぞ、魔剣士)
魔剣士「……正直、今の俺は何もかも怖いとか思っちゃいないほど高揚してる。」
猛竜騎士(む…)
魔剣士「きっと、宿屋のオヤジに主人公みたいだなって言われたからかもしんねぇし…」
魔剣士「現実味のねぇことで、燃えたぎってるだけかもしれねぇ」
猛竜騎士(へぇ…)
魔剣士「…だけど、俺はそれでいいかなって思ってる」
魔剣士「なぁ、白姫…。お前は行きたかったんだろ、外の世界に」
魔剣士「なら行こうぜ…。ここまで来たら、あとは退けねぇだろ!」
白姫「…っ!」
白姫「本当に、いいの……?」
魔剣士「…本音でいいぜ。行きたいんだろ。」
白姫「…」
白姫「…っ!」コクン
魔剣士「…おう!行こうぜ!」ニカッ
白姫「ありがとう、魔剣士……」ニコッ…
魔剣士「…お、おうっ!」ドキッ
猛竜騎士(ふーん……。)
猛竜騎士(……ま、とりあえず俺がいれば魔剣士と白姫様はある程度は守ることができる)
猛竜騎士(だが、問題はあと一つ…)
猛竜騎士(白姫様にゃ言えないが、もし"家出"ということが王様に知れたら…どうするか)
猛竜騎士(あの王じゃ、白姫様をも狙う可能性は出てくる)
猛竜騎士(もしそうなれば、この二人はセントラル王国だけでなく世界中から追放扱いだ)
猛竜騎士(……そうならなけりゃいいがな。つっても、俺も例外じゃねえんだが)ハハ…
白姫「…それで、えっと」モジッ
猛竜騎士「ん?」
白姫「市場商人さんは、猛竜騎士さんで……何て呼べば?」
猛竜騎士「あぁ…」
魔剣士「…オッサン」ヘラヘラ
白姫「お、おじさま…?」
猛竜騎士「おい待てお前ら。」
猛竜騎士「確かにお前らから見たら、オッサンのオジサマだが、30代だ。お兄様と呼べ」
魔剣士「オッサン」ヘラヘラ
白姫「お、お兄様かぁ……」
猛竜騎士「…やっぱ魔剣士には何もおしえねー!」
魔剣士「おいコラ」
猛竜騎士「バーカバーカ、勝手に死んじまえバーカ!!」
魔剣士「んだと、やるかコラァ!」チャキッ!
猛竜騎士「感情的になるなと言ったばかりで…」
魔剣士「お前が言うかぁっ!!」
猛竜騎士「へいへい、それじゃなんだ…。最初の目的地はどこにすっか」
魔剣士「も、目的地だぁ?それなら……」
白姫「…う、海に行こうかなって思ってたんですっ!」
魔剣士「…うむ」
猛竜騎士「…海か。だから南方へ進んでいたんだな」
魔剣士「んむ…」
猛竜騎士「あいよ分かった、道案内も含めて任せとけ」クイッ
魔剣士「…おう」
猛竜騎士「じゃ、出発すっか?」
魔剣士「い、いやいや待てって。まだ買い物の準備とかも……」
猛竜騎士「…ここから歩いてすぐに、補給の村がある。」
猛竜騎士「この町じゃ騒ぎも起こしたし、次の村でサクっと補給して海へ向かおう」
魔剣士「そ、そうか…」
白姫「えへへ、海に早く行きたいな~」
猛竜騎士「…さて、んじゃ行くぞ~」クルッ
ザッザッザッ……
魔剣士「あ、待てよ!」
白姫「おーっ!出発~!」
ザッザッザッザッ……
…………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 その頃 セントラル王国 王城 】
側近「…見失っただと!?」
伝令兵士「南方道町に逃げ込んだモノと思われたのですが…」
側近「…早く探せ!1億の懸賞金もかけているのだぞ!」
伝令兵士「はっ!各地のバウンティハンターが動きだしたという情報もあり…」
伝令兵士「確保が完了するまで、さほど時間がかからないとは思いますが…」
側近「…っ」
側近「それと、例の話!アレは隠し通しているだろうな」
伝令兵士「…白姫様が、望んであの賊へと着いていったことですか?」
側近「声がでかいっ!」
伝令兵士「も、申し訳ありません…」
側近「…ただでさえ、王様への反発の声が少なくないんだ」
側近「もし王様にその事が耳に入り、民にも愛されている姫様も処刑されたりしてみろ……」
側近「セントラル王国内の反発が広がり、下手をすれば王国崩壊の引き金となるやしれん…」
伝令兵士「王様とて、そこまで理解しているとは思うのですが。」
伝令兵士「理解していて、わざわざ手から離れたと言って姫様を処刑するでしょうか?」
側近「…王様なら絶対に行使するはずだ」
伝令兵士「…」
側近「それじゃ…引き続き捜索も頼んだぞ」
伝令兵士「はっ…!」
……………
………
…
…コソッ…
王様「……なんだと」ギリッ
……………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
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???「隣のは…姫様だな。その隣の男は…知らないがなぁ……」
???「まぁいい…。その首ぃ、貰い受けるぞ……?」
魔剣士「…まさか!」
市場商人「バウンティハンター…だな。噂をすればなんとやら」ハァ
Bハンター「…魔剣士とやら、大人しく捕まってもらおうか」
Bハンター「生きて渡したほうが、俺としても金になるし嬉しいんだがな~?」
魔剣士「…断ると言ったら」
Bハンター「…殺すまでぇっ!!!」ダッ!
ダダダダダッ!!!!
魔剣士「は、はえぇっ!!?」
魔剣士「くっ、くそがぁぁああっ!!」チャキッ!!
ビュンッ!!!
……ガキィンッ!!!……
Bハンター「!」
Bハンター「…ほほう、いい動作だ。抜くまでの早さはそれなりだ」ググッ…
魔剣士「ぐっ、あ…危ねぇ……!」ギリギリッ…
Bハンター「ククク、歯向かうなら仕方ねぇな…このまま首を落すっ!」グワッ!
魔剣士「ぬおっ、なんて力!!」
白姫「…い、市場商人さんっ!魔剣士がっ!」
市場商人「…」
白姫「い、市場商人さん…?」
市場商人「…あそこで殺されるようなら、他のバウンティハンターにゃ太刀打ちできん」
白姫「!」
市場商人「もしやられたなら、姫様の家出はここで終わりってことだな」
白姫「そ、そんなっ…!?」
…ガガキィンッ!!キィンッ!!!…
魔剣士「くっそ、なんだこいつ…!」
Bハンター「おぉ、やるじゃない!だけどねぇ……」ビュンッ!!
ガキャンッッ!!!
魔剣士「なっ、俺の剣が弾かれっ…!?」
クルクルクルッ……サスッッ!
Bハンター「君の剣術じゃ、俺には敵わない…ってね」ニタッ
魔剣士「や、やっべ!」ダッ!
Bハンター「剣を拾う前に、切り刻むっ!」バッ!!
魔剣士「…っち!剣術だけだと思うなッ!!」パァァッ!!
ピカッ…!!ボォンッ!!!
Bハンター「ぎゃっ!?」グラッ
魔剣士「…っしゃあ!!」
ダダダダッ…チャキッ!
魔剣士「剣も戻ればこっちのもの!このまま、連撃いくぜぇぇっ!!」
ダダダダダッ!!!
白姫「あっ、魔剣士が押してるっ!」
市場商人「……いや」
ダダダッ…!!!
魔剣士「おりゃああっ!!」ビュンッ!!!
Bハンター「…甘いねぇ!」バッ!
…ガキャアンッ!!
魔剣士「うぐっ!俺の魔法を受けてもまだ、防御をするか…!」
Bハンター「うへへっ…!」
……ザワッ!
魔剣士「んっ…」ピクッ
Bハンター「ん~…?」
ザワザワ…ガヤガヤ……!!
町人たち「…なんか、裏通りで凄い音がしてるぞ?」
町人たち「誰かいるみたいだ、まさかケンカじゃねぇだろうな……」
魔剣士「…げっ、他の人が」
Bハンター「あらあら、騒ぎになりそ…」
魔剣士「…まぁ、俺はこのままでも構わないぜ?」
Bハンター「…俺はあまり顔を見せたくないからな。また会おうかっ!」バッ!
タァンッ、タタタタァンッ……!!
魔剣士「!?」
魔剣士「な、なんて脚力してやがる…!」
魔剣士「壁同士が狭いとはいえ、壁を蹴って屋根の上に消えやがった……!」
市場商人「…」
市場商人「……たまたま、救われたな」ハァ
市場商人「あのままやってたら、恐らく負けていただろう」
魔剣士「…何?どういう意味だそりゃ、俺が押してただろうが!」
白姫「ま、魔剣士…」
市場商人「…とりあえず、人も多くなってきたし町の外へ行こう。」クイッ
……………
………
…
…
………
……………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 外の草原 】
ヒュウウッ……!
魔剣士「…市場商人さん、どういうことだよ!俺が負けてたって!」
市場商人「…気づかなかったのか?」
魔剣士「何が!」
市場商人「あいつの脚力の凄まじさだ」
魔剣士「…それがなんの関係がある!」
市場商人「俺らの前に現れた時、屋上から飛び降りても影響せず…」
市場商人「消える時に、壁同士を蹴りあげるほどの脚力」
市場商人「あの脚で足技を使われていたら、お前の首は一撃で折れていたはずだ」
魔剣士「うっ…!?」
市場商人「最初に現れた時点で、それに気付かずに剣術で接近戦を挑んだだろう」
市場商人「その時、足技で足を蹴られていたら…骨が折れ、崩れ落ちた」
市場商人「そこへ強烈な一撃をされれば、お前はもう…この世にはいなかった」
魔剣士「…ッ!」
市場商人「…粋がるな。お前が考えるほど、この世は簡単じゃねーんだぞ」
市場商人「自信を持つのはいい」
市場商人「だが、それが過信となることを忘れるんじゃない」
魔剣士「…うるせぇ。」
魔剣士「うるせぇ…!うるせぇっ……!!」
市場商人「…そうやって、お前はすぐに感情的、衝動的に行動してそれを口にする」
市場商人「雰囲気に流されやすいのもいいが、守るべき人がいるならもっと落ち着き行動しろ」
市場商人「…大人になれということだ」
魔剣士「うるせぇ……っ!!」
魔剣士「うるせぇんだよ、ぶっ殺すぞ!!!」チャキッ!!
市場商人「すぐに、そうなるか。衝動的になる以上、お前には姫様は守れんよ」
市場商人「……ただの、子供のようなお前にはな」
魔剣士「黙れ…!クソ野郎がああああっ!!!」ゴッ!!
……ボォンッ!!ゴォォォッ……!!……
市場商人「…炎を剣身に纏ったところで、今のお前はかっこもつかんぞ?」
魔剣士「黙れぇぇええええっ!!!」ダッ!
ダダダダダッ……!!
市場商人「……まっ。だから、俺はココへ来たんだがな」フゥ
魔剣士「意味の分からんことをっ!!」ビュンッ!!
市場商人「そんな属性バレバレで、俺に攻撃が入るかよ」スッ
…パシッ!!!
魔剣士「…なっ!?」
白姫「ま、魔剣士の攻撃を簡単に素手で受け止めた…!?」
魔剣士「な、なん…!」
市場商人「まぁ経験の差だ。それよりな、倒すべき相手は俺じゃねぇだろ」
魔剣士「…あぁ!?」
市場商人「ほれ、出てくるぞ」
タァンッ!!…ヒュオオォォォオッッ!!!
Bハンター「…仲間割れか!?隙あったぞ、そのクビいただいたぁぁぁっ!!!」チャキッ!
白姫「あっ!」
魔剣士「なっ、さっきのヤツ…空からの攻撃っ!?」
市場商人「俺らの後を着いてきて、奇襲を狙っていたんだよ。良い動きだな」
魔剣士「冷静に分析してる場合かよ!!」
市場商人「…面倒くせぇなぁ」ハァ
市場商人「ぬ、ぬぅぅぅっ……!!」ビキビキッ!!
魔剣士「はっ…!?」
市場商人「…ふんっ!!」ビュッ!!
Bハンター「へ…」
…ボゴォンッ!!!
Bハンター「あがっ!?」
魔剣士「!」
白姫「!」
ズザザザァッ……!ドゴォンッ!!
パラパラ……
Bハンター「…ッ」ピクピク
市場商人「…空からの奇襲の考えは悪くないが、落ちてくるボールを打つのは簡単だ」
市場商人「もっと腕ぇ磨いてから出直せ、二流バウンティハンターが」
魔剣士「い、一撃で……」
白姫「す、凄い…!」
市場商人「ふむ…」
ザッザッザッ…ゴソゴソ
Bハンター「…」ピクピク
市場商人「……気絶してるとこ悪いが、タバコ1本もらうぜ」パクッ
魔剣士「…っ!」
カチカチッ…シュボッ!
市場商人「…」スゥッ
市場商人「…」スゥゥゥ……
市場商人「…んむ、二流の割にいいタバコ持ってるじゃない」フゥ~…
魔剣士「…ッ」
魔剣士「い、市場商人さん…!」
魔剣士「今の一撃は…。あんた一体……!」
市場商人「……ん」
市場商人「あぁ、そうだったな……」
市場商人「クックック…、聞いて驚くなよ。実は、俺はな……」ニヤッ
魔剣士「…っ!」ゴクッ
白姫「…っ」ゴクッ
市場商人「……元、冒険しぇあごっふぉっ!!」ゲホッ!
魔剣士(エェェッ!!)
白姫(いいところで…咳込んだぁぁっ!!)
市場商人「ゴホゴホッ!?ゲェッホ!!!」
市場商人「う゛んっ、う゛ぅ゛ぅ゛んっ!!ゴホッ!」ゲホッ!!
市場商人「……ふぅ」
市場商人「…はっはっは、かっこつけて久々にタバコ吸うもんじゃないな」
魔剣士「いや、今はそういうのいいから!」
市場商人「ん、あぁ…そうか。」
市場商人「えっとな…」
市場商人「…」
市場商人「俺は、"元冒険者"にして…賞金首狩りもしていた"元バウンティハンター"……」
市場商人「元、猛竜騎士…って名前の人間さ」フゥッ
魔剣士「も、元…バウンティハンター!?」
白姫「そ、そうだったんだ…!」
猛竜騎士(市場商人)「…まぁ、引退して大分経つけどな」
猛竜騎士「もう俺はそんなスマートな存在じゃねぇし、自己紹介も恥ずかしいだけだが」ハハハ
魔剣士「…!」
白姫「凄い…」
猛竜騎士「……で、魔剣士」
魔剣士「な、なんだよ!」
猛竜騎士「古い仲のよしみだ、お前が姫様を守れるよう…手ほどきをしてやるよ」
魔剣士「…」
魔剣士「……なんだって?」
猛竜騎士「お姫様を守れるよう、俺が色々教えてやるっつーんだよ」
魔剣士「え…。な、なんでだ……?」
猛竜騎士「ん?」
魔剣士「どうして、俺に教えようと…?」
猛竜騎士「どうしてって…」
魔剣士「…」
猛竜騎士「…どうしてだろうな?」
魔剣士「」
猛竜騎士「まぁなんだ…。面白そうなこと見ると、やっぱり冒険者でなぁ……」
猛竜騎士「首ぃ突っ込んでみたくなるんだよ。」
猛竜騎士「それの発端が、魔剣士だっつーなら尚更な」ハハハ
魔剣士「な、なんつーオッサン…」ピクピク
猛竜騎士「いや、お前がいらないっつーなら俺は帰るぜ?」
魔剣士「む…」
猛竜騎士「正直な話、お前がのたれ死のうが捕まろうが、関係のないことだ」
猛竜騎士「だが、教えてくれっつーなら教えてやる」
魔剣士「…」
猛竜騎士「…そこにダウンしてるバウンティハンターは、俺らの世界じゃマジで二流だ」
猛竜騎士「お前一人で、本当にこの先…あれより強い相手に、守れるのか?」
魔剣士「…っ」
猛竜騎士「それと、姫様もな」
白姫「は、はいっ」
猛竜騎士「正直な、コイツとの旅は現状…非常に危険だと思ったほうがいい」
白姫「そ、そうなんですか…?」
猛竜騎士「王様はアンタを早く連れ戻すために賞金を出したが、これは逆効果だな」
猛竜騎士「所詮、魔剣士は俺らの世界じゃ赤子とおなじ。」
猛竜騎士「こんないい"物件"、バウンティハンターが放っておくわけがない」
猛竜騎士「そこに一緒にいる、可愛らしいお姫様」
猛竜騎士「言葉にゃ悪いが……ハッキリ言わせてもらうぞ」
猛竜騎士「魔剣士の死体の前で、無惨な目に合い、絶望を味わいながら…身代金を要求されるだろう。」
猛竜騎士「そしてそれは、"そんなことがあるかもしれない"じゃないぜ」
猛竜騎士「もうすぐ、そうなる…だ」
魔剣士「…っ!」ゾクッ!
白姫「…!」
猛竜騎士「…魔剣士。お前、俺と戦って勝てる自信あるか」
魔剣士「えっ?」
猛竜騎士「…俺の一撃を見ただけで、お前が俺に勝てるかどうかを判断できるくらいの目利きはできんだろ?」
魔剣士「…」
猛竜騎士「…」ギロッ
魔剣士「ッ!」
猛竜騎士「…どうなんだ」
魔剣士「…ッ」
猛竜騎士「……言葉にならないか?」
猛竜騎士「分かってるな、お前じゃ俺に勝てん」
猛竜騎士「現役から退いた俺にですら…だ」
魔剣士「…っ」ギリッ…
猛竜騎士「……お前が決めろ」
猛竜騎士「俺に教えを請うか?」
猛竜騎士「……いらないのか」
魔剣士「…」
白姫「…」
魔剣士「…」
魔剣士「……オッサン」
猛竜騎士「なんだ」
魔剣士「…もし、アンタを受け入れたら…それが現実にならないんだよな」
猛竜騎士「知らん」
魔剣士「し、知らんってな!」
猛竜騎士「…少なくとも、すぐにはそうならない…だ。」
猛竜騎士「だが、今日…俺がいなければ。恐らく、この二流相手の時点でそれは現実になっていた」
猛竜騎士「良かったな、俺と知り合いでよ」
魔剣士「…!」
白姫「魔剣士…」
魔剣士「…っ」
白姫「…」
猛竜騎士「……で、どうするんだ」
猛竜騎士「決断力の遅い男はモテねぇぞぉ~?」
魔剣士「…」
魔剣士「……ッ」
猛竜騎士「…」
魔剣士「……わかった」ボソッ
猛竜騎士「んあ」
魔剣士「……たの…む…よ」
猛竜騎士「…」
魔剣士「…分かったよ。教えてくれよ。俺に白姫を守るくらいの…力を……」
魔剣士「俺自身を…強くする力を……教えてくれッ……!」
猛竜騎士「…」
猛竜騎士「…んっ。わかった」ニカッ
魔剣士「…っ」
白姫「…っ」
白姫「…ま、魔剣士」
白姫「そ、そんなに危険が伴うなら…私はお城に戻ってもいいんだよ……?」
魔剣士「な、なに…?」
白姫「こんなに危険になるなんて、思わなかったから…。」
白姫「魔剣士がこんなに危険な目に合うなら、私のわがままなんて……!」
魔剣士「…おいおい、それは退くなよ」
白姫「!」
魔剣士「なに、白姫の夢ってそんな簡単なもんだったの?」
白姫「え…?」
魔剣士「外の世界が見たい、美しい海が見たい、外の世界を知りたい。」
魔剣士「…城に戻ったら、それは一生叶わねぇんじゃねえの?」
白姫「で、でも…!」
魔剣士「…俺を従者と言った以上、姫様には従うけどよ」
魔剣士「家に帰ること…それが本当の望みなのか?」
白姫「…!」
魔剣士「…」
白姫「…でも、魔剣士が危険で!」
魔剣士「…オッサンが強くしてくれるっつーし、俺は重く考えてねーぜ?」
白姫「…っ」
魔剣士「ただ、俺と付き合う以上は白姫が危険っつーことも認識してくれ」
魔剣士「旅立つ前に言った通り、お前を守る努力はする」
魔剣士「精一杯、守ろうとはする。それがどうなるかは…正直分からん」
魔剣士「だけど……守ろうとする心は本心だ。それは分かって欲しい」
白姫「魔剣士…」
猛竜騎士(……魔剣士め。外見に出さないが…内面でに"キレ"てやがるな)
猛竜騎士(言葉はああいっても、俺は出来るから、着いてこいってオーラを出してやがる……)
猛竜騎士(どこかで、燃え上がるような言葉でも言われたか?)
猛竜騎士(お姫様と知り合い、冒険をするから"まるで主人公のようだ"とか…言われたんじゃないか)
猛竜騎士(…気付かぬ過信、気付かぬ自惚れは失敗を招くぞ、魔剣士)
魔剣士「……正直、今の俺は何もかも怖いとか思っちゃいないほど高揚してる。」
猛竜騎士(む…)
魔剣士「きっと、宿屋のオヤジに主人公みたいだなって言われたからかもしんねぇし…」
魔剣士「現実味のねぇことで、燃えたぎってるだけかもしれねぇ」
猛竜騎士(へぇ…)
魔剣士「…だけど、俺はそれでいいかなって思ってる」
魔剣士「なぁ、白姫…。お前は行きたかったんだろ、外の世界に」
魔剣士「なら行こうぜ…。ここまで来たら、あとは退けねぇだろ!」
白姫「…っ!」
白姫「本当に、いいの……?」
魔剣士「…本音でいいぜ。行きたいんだろ。」
白姫「…」
白姫「…っ!」コクン
魔剣士「…おう!行こうぜ!」ニカッ
白姫「ありがとう、魔剣士……」ニコッ…
魔剣士「…お、おうっ!」ドキッ
猛竜騎士(ふーん……。)
猛竜騎士(……ま、とりあえず俺がいれば魔剣士と白姫様はある程度は守ることができる)
猛竜騎士(だが、問題はあと一つ…)
猛竜騎士(白姫様にゃ言えないが、もし"家出"ということが王様に知れたら…どうするか)
猛竜騎士(あの王じゃ、白姫様をも狙う可能性は出てくる)
猛竜騎士(もしそうなれば、この二人はセントラル王国だけでなく世界中から追放扱いだ)
猛竜騎士(……そうならなけりゃいいがな。つっても、俺も例外じゃねえんだが)ハハ…
白姫「…それで、えっと」モジッ
猛竜騎士「ん?」
白姫「市場商人さんは、猛竜騎士さんで……何て呼べば?」
猛竜騎士「あぁ…」
魔剣士「…オッサン」ヘラヘラ
白姫「お、おじさま…?」
猛竜騎士「おい待てお前ら。」
猛竜騎士「確かにお前らから見たら、オッサンのオジサマだが、30代だ。お兄様と呼べ」
魔剣士「オッサン」ヘラヘラ
白姫「お、お兄様かぁ……」
猛竜騎士「…やっぱ魔剣士には何もおしえねー!」
魔剣士「おいコラ」
猛竜騎士「バーカバーカ、勝手に死んじまえバーカ!!」
魔剣士「んだと、やるかコラァ!」チャキッ!
猛竜騎士「感情的になるなと言ったばかりで…」
魔剣士「お前が言うかぁっ!!」
猛竜騎士「へいへい、それじゃなんだ…。最初の目的地はどこにすっか」
魔剣士「も、目的地だぁ?それなら……」
白姫「…う、海に行こうかなって思ってたんですっ!」
魔剣士「…うむ」
猛竜騎士「…海か。だから南方へ進んでいたんだな」
魔剣士「んむ…」
猛竜騎士「あいよ分かった、道案内も含めて任せとけ」クイッ
魔剣士「…おう」
猛竜騎士「じゃ、出発すっか?」
魔剣士「い、いやいや待てって。まだ買い物の準備とかも……」
猛竜騎士「…ここから歩いてすぐに、補給の村がある。」
猛竜騎士「この町じゃ騒ぎも起こしたし、次の村でサクっと補給して海へ向かおう」
魔剣士「そ、そうか…」
白姫「えへへ、海に早く行きたいな~」
猛竜騎士「…さて、んじゃ行くぞ~」クルッ
ザッザッザッ……
魔剣士「あ、待てよ!」
白姫「おーっ!出発~!」
ザッザッザッザッ……
…………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 その頃 セントラル王国 王城 】
側近「…見失っただと!?」
伝令兵士「南方道町に逃げ込んだモノと思われたのですが…」
側近「…早く探せ!1億の懸賞金もかけているのだぞ!」
伝令兵士「はっ!各地のバウンティハンターが動きだしたという情報もあり…」
伝令兵士「確保が完了するまで、さほど時間がかからないとは思いますが…」
側近「…っ」
側近「それと、例の話!アレは隠し通しているだろうな」
伝令兵士「…白姫様が、望んであの賊へと着いていったことですか?」
側近「声がでかいっ!」
伝令兵士「も、申し訳ありません…」
側近「…ただでさえ、王様への反発の声が少なくないんだ」
側近「もし王様にその事が耳に入り、民にも愛されている姫様も処刑されたりしてみろ……」
側近「セントラル王国内の反発が広がり、下手をすれば王国崩壊の引き金となるやしれん…」
伝令兵士「王様とて、そこまで理解しているとは思うのですが。」
伝令兵士「理解していて、わざわざ手から離れたと言って姫様を処刑するでしょうか?」
側近「…王様なら絶対に行使するはずだ」
伝令兵士「…」
側近「それじゃ…引き続き捜索も頼んだぞ」
伝令兵士「はっ…!」
……………
………
…
…コソッ…
王様「……なんだと」ギリッ
……………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
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