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天の川に再会を願って
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今日は七夕。でもその1日も終わりを告げようとしている。就寝準備を済ませ、布団に寝転がる。くつろぎモード。隣の布団には睦月の恋人の如月。ふと、七夕がどんな物語か気になった。
隣の布団で枕を抱きながらスマホをいじる如月に声をかける。
「ねぇ、七夕ってどんな物語?」
「そんなことも知らないんですかぁ……」如月はスマホから目を離し、睦月の方へ体を向け、話し始めた。
「夜空に煌めく美しい天の川。その川のほとりでは天の神の娘、織り姫が美しいはたを織っていましたぁ~~」ふむふむ。
「織り姫の織る布は5色に光輝き、季節が変われば彩りまで変わるほどそれはそれは美しいものでしたぁ」織り姫すごい!
「天の神はそんな娘が自慢で溺愛していましたが、織り姫ははたを織るのが好き過ぎて、自分の髪や服を気にかけません」ほぉ。
「そんな娘を持つ天の神は言いました。『織り姫もいい年頃だ。はた織ってばかりじゃ結婚できない!! 行き遅れる!! そうだ! 結婚させよう!! 織り姫に相応しい、イケメンを連れてこよう!!』と」如月は手を胸元に当て、感情を込めて話す。
「絶対違うでしょ……」アホらしくて目が濁る。
「天の神はあちこちを探しましたが、イケメンは見つかりません。それに織り姫はあの見た目。高望みしすぎです」ご苦労だな、天の神。
「天の神は天の川の岸辺を歩いていると、牛の世話をする若い男と出会いました」彦星だな!
「若者は彦星といい、牛に餌をやったり、畑を耕したり、休む間もなく仕事をし続ける、ブラック企業で働く社畜でした」おぃいいぃい!! 彦星!!
「『あーーもう、こいつで良くね? もう探すの無理なんですけど。毎日真面目に働いてるし、良いでしょ』天の神はイケメンを探すのに疲れ、織り姫の結婚相手に彦星を選びました」如月は顎に親指と人差し指を当て、顔を傾け話す。
「100%そんな選び方してないでしょ!!」如月の頭を職員室のスリッパで叩く。
「痛っ!!! 何するんですかぁ!!」如月は叩かれたところを押さえ、話を続ける。
「織り姫と彦星はお互い一目惚れし、なんだかんだ仲の良い夫婦になりましたが、お互いを溺愛し過ぎて、仕事を放棄し、ニートになりました」
「ニートですか……」
「ニートです。仕事してないんで」うーん。
「はた織り機には埃がかぶり、牛は餌がもらえずどんどん痩せました。まぁ、ある意味、彦星は社畜から解放された訳です」
「そうなのか……?」訝しげに如月を見る。
「『お前らそろそろ仕事をしろぉおぉおぉお!!!』天の神はキレました。2人は『自宅警備員なんで』と言うだけで、いちゃいちゃしてばかり。仕事をしません」如月は手のひらを上にあげ、やれやれと、頭を左右に振る。
「完全にニートじゃん」
「ニートなんですって」本当に合ってんの? これ。
「織り姫がはたを織らなくなってしまったので、空の神さまの服はもちろん、天の神の服もボロボロで汚れ、臭くなりました。彦星も仕事を辞めたので、畑の作物は枯れ、牛は病気になりました」あーー……。
「『服くさいとかマジで無理だから!! もうお前ら二度と会うな!! そして働き、服を作れ!! くさい!!』と天の神はキレました」
「どんだけくさいの天の神」
「天の神は織り姫を天の川の西へ、彦星を天の川の東へ無理やり引き離しました。こうして2人は天の川を挟み、姿を見ることも出来なくなってしまいました」如月はそっと手を伸ばし、睦月の頭を撫でた。
「それからというもの、彦星に依存していた織り姫はメンヘラ化し、泣き叫ぶ毎日。彦星は彦星で、ニートの良さを知ってしまい、引きこもりに」
「いやいやいや~~もう絶対違うもん」布団をぱんぱんと叩く。
「天の神は言いました。『お前らが以前みたいにちゃんと働くなら1年に1回会ってもいいよ』これは現状に疲れた天の神の妥協」
「違う違う違う!!! 絶対違う!!」如月の頬を引っ張る。
「いだだだだだ!! いだい゛!! 離して!!」如月の頬から手を離す。
「2人は心を入れ替え、社畜のように働きました。そう、一年に一度、7月7日に会える日を楽しみにしてーー」如月は睦月の目を見つめる。しばらく見つめ合い、如月は話を続けた。
「やがて待ちに待った7月7日。夜になると織り姫と彦星は天の川を渡り、一年に一度の再会を果たすのでした。めでたしめでたし」
「……ん」如月は睦月の頬に手を触れ、顔を近づけた。そして優しく唇を重ねる。再会を果たした、織り姫と彦星のような、甘いキス。
「これ、話合ってるの?」
「流れは合ってると思うけど?」見つめ合い、お互い、笑みを溢す。
ーー短冊に願いを。
この想い、届きますように。
あとがき。
人物構成は自身の小説『如月さん、拾いましたっ!』メインキャラ抜粋。お笑いファイト用執筆。
企画用は文字制限があり、削らざるを得ない部分があったため本編に掲載したものは加筆と編集を加えたものだ。(おまけとして掲載)
如月のスマホをいじる姿は本編では見られない、短編企画ならではの姿となった。(本編では如月の性格に合わせたものに編集)
隣の布団で枕を抱きながらスマホをいじる如月に声をかける。
「ねぇ、七夕ってどんな物語?」
「そんなことも知らないんですかぁ……」如月はスマホから目を離し、睦月の方へ体を向け、話し始めた。
「夜空に煌めく美しい天の川。その川のほとりでは天の神の娘、織り姫が美しいはたを織っていましたぁ~~」ふむふむ。
「織り姫の織る布は5色に光輝き、季節が変われば彩りまで変わるほどそれはそれは美しいものでしたぁ」織り姫すごい!
「天の神はそんな娘が自慢で溺愛していましたが、織り姫ははたを織るのが好き過ぎて、自分の髪や服を気にかけません」ほぉ。
「そんな娘を持つ天の神は言いました。『織り姫もいい年頃だ。はた織ってばかりじゃ結婚できない!! 行き遅れる!! そうだ! 結婚させよう!! 織り姫に相応しい、イケメンを連れてこよう!!』と」如月は手を胸元に当て、感情を込めて話す。
「絶対違うでしょ……」アホらしくて目が濁る。
「天の神はあちこちを探しましたが、イケメンは見つかりません。それに織り姫はあの見た目。高望みしすぎです」ご苦労だな、天の神。
「天の神は天の川の岸辺を歩いていると、牛の世話をする若い男と出会いました」彦星だな!
「若者は彦星といい、牛に餌をやったり、畑を耕したり、休む間もなく仕事をし続ける、ブラック企業で働く社畜でした」おぃいいぃい!! 彦星!!
「『あーーもう、こいつで良くね? もう探すの無理なんですけど。毎日真面目に働いてるし、良いでしょ』天の神はイケメンを探すのに疲れ、織り姫の結婚相手に彦星を選びました」如月は顎に親指と人差し指を当て、顔を傾け話す。
「100%そんな選び方してないでしょ!!」如月の頭を職員室のスリッパで叩く。
「痛っ!!! 何するんですかぁ!!」如月は叩かれたところを押さえ、話を続ける。
「織り姫と彦星はお互い一目惚れし、なんだかんだ仲の良い夫婦になりましたが、お互いを溺愛し過ぎて、仕事を放棄し、ニートになりました」
「ニートですか……」
「ニートです。仕事してないんで」うーん。
「はた織り機には埃がかぶり、牛は餌がもらえずどんどん痩せました。まぁ、ある意味、彦星は社畜から解放された訳です」
「そうなのか……?」訝しげに如月を見る。
「『お前らそろそろ仕事をしろぉおぉおぉお!!!』天の神はキレました。2人は『自宅警備員なんで』と言うだけで、いちゃいちゃしてばかり。仕事をしません」如月は手のひらを上にあげ、やれやれと、頭を左右に振る。
「完全にニートじゃん」
「ニートなんですって」本当に合ってんの? これ。
「織り姫がはたを織らなくなってしまったので、空の神さまの服はもちろん、天の神の服もボロボロで汚れ、臭くなりました。彦星も仕事を辞めたので、畑の作物は枯れ、牛は病気になりました」あーー……。
「『服くさいとかマジで無理だから!! もうお前ら二度と会うな!! そして働き、服を作れ!! くさい!!』と天の神はキレました」
「どんだけくさいの天の神」
「天の神は織り姫を天の川の西へ、彦星を天の川の東へ無理やり引き離しました。こうして2人は天の川を挟み、姿を見ることも出来なくなってしまいました」如月はそっと手を伸ばし、睦月の頭を撫でた。
「それからというもの、彦星に依存していた織り姫はメンヘラ化し、泣き叫ぶ毎日。彦星は彦星で、ニートの良さを知ってしまい、引きこもりに」
「いやいやいや~~もう絶対違うもん」布団をぱんぱんと叩く。
「天の神は言いました。『お前らが以前みたいにちゃんと働くなら1年に1回会ってもいいよ』これは現状に疲れた天の神の妥協」
「違う違う違う!!! 絶対違う!!」如月の頬を引っ張る。
「いだだだだだ!! いだい゛!! 離して!!」如月の頬から手を離す。
「2人は心を入れ替え、社畜のように働きました。そう、一年に一度、7月7日に会える日を楽しみにしてーー」如月は睦月の目を見つめる。しばらく見つめ合い、如月は話を続けた。
「やがて待ちに待った7月7日。夜になると織り姫と彦星は天の川を渡り、一年に一度の再会を果たすのでした。めでたしめでたし」
「……ん」如月は睦月の頬に手を触れ、顔を近づけた。そして優しく唇を重ねる。再会を果たした、織り姫と彦星のような、甘いキス。
「これ、話合ってるの?」
「流れは合ってると思うけど?」見つめ合い、お互い、笑みを溢す。
ーー短冊に願いを。
この想い、届きますように。
あとがき。
人物構成は自身の小説『如月さん、拾いましたっ!』メインキャラ抜粋。お笑いファイト用執筆。
企画用は文字制限があり、削らざるを得ない部分があったため本編に掲載したものは加筆と編集を加えたものだ。(おまけとして掲載)
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