上 下
225 / 254

48話(3)カラオケ勝負は飛んでいきたい?!計量スプーンは人生の目分量?!

しおりを挟む


 ふっ。93点!!! 勝ったでしょ!!! これは!!! 我ながら人生最高得点!!! これはイケたな!!!


 マイクの電源を切り、机の上に置く。旭がマイクを持ち、立ち上がった。目の前に表示された曲名『翼をください』。はぁあぁあぁあぁあ?!?!


 アリなの?!?! それ、アリなの?!?!


「いま~~わたしの~~ねがぁ~~いごとがぁ~~」


 何真顔で歌っちゃってんだぁあぁぁあぁあ!!!! しかもめっちゃ点上がっていくんですけどぉおぉおぉお!!!!


「この大空にぃ~~翼を広げ~~飛んでぇゆきたいよぉ~~」


 俺がお前を大空にぶっ飛ばしてやろうかぁああぁあぁあ!!!! ちょっとぉ!!! 点がやばいんですけど!!! 負ける!!! このままじゃ負ける!!!!


「翼~~はため~~か~~せ~~ゆきたいぃ~~」
「いやぁああぁああぁあぁあぁあ!!!!! いくなぁあぁあぁあぁあぁああ!!!!!!」


 98点。


 winner旭。


「負けたぁあぁあぁあぁあぁ!!!!! くそがぁああぁあぁあぁ!!!!」
「むっちゃん、さっきからうるさいよ」


 何?!?!『翼をください』で点取りに来るってなんなの?!?! アリなの?! 反則じゃないの?!?! ズルでしょ!!!


 旭の服を掴み、揺さぶる。


「それ反則だってば!!!」
「ちょっと~~負けたからってやめてー歌に指定はなかったでしょー」
「そうだけど!!! あんな単調な曲、絶対高得点取れるやつ!!!」
「これも戦略。約束は守れー」


 まぁでも、それを言ったら旭だって、どこにキスするかなんて、指定してない訳だし。口にする必要はない!!!


 旭の方をじぃっと見つめると、旭の頬が赤く染まった。なんだよ、そんな反応されるとキスしづらいっての!!!


「口にはしないから!!!」
「いいよ、口じゃなくて。半分冗談だったし。あと、むっちゃんが弥生さんと別れることは望んでないから。2人にはずっと仲良く過ごして欲しい。これでも応援してるんだ。2人のことは。セクシュアルマイノリティを持つ者として」


 ……でも半分は本気じゃねぇかよ。


 穏やかに笑みを浮かべながらも、恥ずかしそうに旭が俯く。そっと旭の顎に触れ、持ち上げる。旭の頬が一段と赤く染まった。


 こんなに照れている旭は初めて見る。無言の空間が俺と旭を緊張で包む。旭の感じている恥ずかしさが、俺にまで伝わり、段々と恥ずかしくなってくる。


 旭の頬に顔を近づけ、そっと口付けする。


 ちゅ。


 最初で、最後だからな。ばぁか。


 これは墓場まで持っていく。一生の秘密だ。旭を見ると、顔に両手を当て、全てをシャットアウトしていた。初恋みたいな反応が初々しい。


 でも、友達以上の感情はない。


「もう二度としないから」
「……分かってるよ、ありがとう」


 こちらを見ようとしないどころか、俯いて、顔すらも上げない旭に手を伸ばし、優しく頭を撫でた。


 *


「回鍋肉ってどうやって作るの?」
「それ、私に聞きます?」


 私はもうその手には乗らない!!!(?)勤労感謝大作戦なのだから、お兄ちゃんには絶対に美味しい回鍋肉を食べてもらう!!!


 ポケットからスマホを取り出し、予め入れておいた、レシピアプリで回鍋肉を検索する。よし!!! これで作ろう!!!


「豚肉とキャベツはひと口大に切るだって!!!」
「なるほど」


 肉は後回しにして、ピーマンやねぎ、キャベツなど、野菜から先に切っていく。


 とんとんとん。


 カレーの時に比べたら、少しは包丁の扱いもまともになった。ピーマンを半分に切り、種を手で取り出す。なんか種細かい。取りづら。


「なんか、種、面倒~~」
「水で流せば良いのでは?」
「なるほど」


 じゃーー。


 水で種を綺麗に洗い流す。よし、綺麗になった。


「野菜切れましたね」
「うん!!! 次は調味料の調合だって!!!」


 時計を見ると、13時を過ぎていた。意外と時間かかっている。まだお昼ご飯は食べていない。どうしよう。


「お昼ご飯どうしよう?!」
「うーばー頼みますか?」
「さんせーー!!!」


 如月のスマホから食べたいものを注文する。兄がいると、節約で外食も出前も出来ないから、普段と違うものが食べられるのは嬉しい。


 もう一度、レシピを見る。調味料の統合をしなくては。まず、味噌大さじ1.5。1.5とはどのくらいの量なのか。引き出しを開け、計量スプーンを探すが見つからない。


「如月!!! 計量スプーンがない!!!」
「睦月さんは普段、どうやって作っているのですか?」
「長年の感覚?!?!」
「そんな何十年も料理歴あるんですか」


 う~~ん。


 少し不服だけど、ここは目分量でやろう!!! カレースプーンで味噌をなるべく平らにしながら、ひと掬いする。大さじ1って、このくらいかな?!?!


 残り、あと0.5!! 0.5とはどのくらい?!?!


「大さじ1.5の0.5ってどのくらい掬うのかな?!」
「半分くらいじゃないですか? 貸してください」


 ぐさっ。


 如月がスプーンで思いっきり味噌を掬っている。それは半分なの?!?! 私の大さじ1見てた?!?! スプーンの上に山のように味噌が盛られた。


「はいどうぞ」
「多くね?!?!」
「人生こんなもんです」
「人生の目分量を味噌でたとえたらそんなもんなのか!!! なるほど!!!」
「知らんけど」


 スプーンを受け取り、小皿に味噌を乗せる。あとは砂糖、醤油、酒、ごま油が大さじ2分の1。2分の1とはスプーンでどうやって測るのだろうか?


 スプーンの中で2分の1とか、綺麗に半分に割れないし!!! 液状のものとか絶対無理じゃない?!?!


「如月ぃ!!! 大さじ2分の1は流石にスプーンじゃ無理説!!!」
「むしろ大さじ1で良いのでは?」
「むしろとは?!?!」
「正確に量れず、分量がバラバラになるくらいなら、最初から大さじ1で揃えて作れば問題ない気がします」
「なるほど!!!」


 それは大丈夫なのか?! そもそもレシピの調味料からズレている気もするが、少しずつ増えたくらいなら、味に差は出てこないのかも!!! 知らんけど!!!


「ま、これくらい大丈夫だな!!!」


 調味料を測り小皿に入れ、混ぜ合わせる。


 まぜまぜ。


「下準備は完成だね!!!」
「こちらも肉切れました」


 届いた出前で腹を満たし、また夕食作りに取り掛かる。えっと、次はフライパンに塩を入れ、キャベツを炒める!!! おけ!!!


「如月!!! 油!!!」
「どうぞ」


 どば。


 だから、多い!!!! 少しイラっとしながら、キッチンペーパーで油を拭き取り、塩を少々入れ、キャベツを炒め、皿へ移した。


「もうあとは肉と野菜炒めるだけですね」
「先に洗濯物取り込んで畳む?!」
「そうですね、そうしますか」


 ベランダから洗濯物を取り込み、リビングへ運ぶ。外の空気が冷たいせいか、洗濯物がひんやりとする。


「寒い~~」


 外に出て冷えた手を擦り合わせながら温める。取り込んだ洗濯物を手に取ると、如月が何かを思い出したように、目を見開いた。


「あっ!!!」
「どうしたの~~」
「味噌汁作っていません!!!」
「確かにぃ」
「私、作ってきます!!」


 如月が立ち上がり、キッチンへ向かった。いや、大丈夫か? 1人で。不安なんだけど。洗濯物を畳みながら、キッチンに立つ、如月の背中を見守った。





しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

イケメンの後輩にめちゃめちゃお願いされて、一回だけやってしまったら、大変なことになってしまった話

ゆなな
BL
タイトルどおり熱烈に年下に口説かれるお話。Twitterに載せていたものに加筆しました。Twitter→@yuna_org

処理中です...